その日の『闇の魔術に防衛術』は自身の著書を拾い読みし、その中でも劇的な場面を演じてみせるという、退屈な上に全く役に立たない授業だった。
ピクシー小妖精の事件以来、ロックハートは魔法生物を持ち込むの諦めたらしい。
というより、私にまた頭を爆破されるのを恐れているようであった。
事件以来ロックハートは私を授業で指名する事を止めたようだし、授業以外の時間でハリーと話をしようとする際も、私の姿を見た途端自室に逃げ帰るという事を繰り返していた。
あれで吸血鬼を倒したと言い張るのだから増々怪しい。
「信じられないよ。僕達が何の本を借りるのか、見もしなかった」
授業が終わり、トイレを勝手に使われる事を嫌がり、水を掛けようとするマートルをどうにか宥め、トイレでポリジュース薬を作る準備をして待っていると、そんな事を呟きながらハリー達が中に入って来た。
ハリー達と相談した内容を手紙にまとめてHELLSING本部に送ったところ、3日程たった頃の夜にインテグラさんから返事が返って来た。
どうも、魔法省との交渉は難航しており、たかだか猫一匹が石になったところでと、ファッジ魔法大臣はHELLSINGをホグワーツに派遣する案を却下したそう。
この事件に何かしらの
よって、内密で送ったポリジュース薬の材料を使い、苦肉の策ではあるがハリー達と協力して犯人を探れといった内容が、返事には書いてあった。
………やるからにはその責任は全てお前が取れとも、何行にも渡って書かれていたが。
「そりゃ、あいつ、能無しだもの。HELLSINGのトップが保証まで付けたんだから間違いないよ。欲しいものを手に入れたんだからもうどうでもいいけど」
何気もなしに言ったロンの言葉に、ハーマイオニーはまたも不満気になる。
薬の材料に関しては検知拡大不能呪文によって、手紙に同封されていた袋にまとめて送って貰えたものの、作り方の書かれた本については中に入っていなかった。
材料だけならまだしも、貴重な薬の作り方が記されている本を梟に運ばせるのは危険が大き過ぎるからだと、手紙には書かれていた。
肝心の本が手に入らなかった事に私達は一度は気が沈んだものの、『最も強力な薬』という題名で、ホグワーツの図書館の『禁書』の棚に本が管理されている事をハーマイオニーは知っていたし、インテグラさんもその本を使えと手紙に書いていたので、それが大した問題にならなかったのは幸いだったのだろう。
けれど、問題はその本の調達方法についての記述。
『生徒に騙される教師などそうはいないが、先日入った無能は別だ。奴は自身が
名前こそ出していないものの、その無能というのは確実にロックハートの事であったし、手紙を見たハーマイオニーは憤慨して2日程激しく不機嫌になった。
ピクシー小妖精の事件の詳細について書いた前の手紙で、インテグラさんはロックハートの事を無能+経歴詐称な人物だと確信したらしい。
本人が
ホグワーツの事件とは別件で、ロックハートの事を調べるよう魔法省に要請を出しているとも、手紙には書かれていた。
これを見たハーマイオニーは、更に不機嫌になった。
「彼には彼なりの考えがあるのよ。私達がポリジュース薬を作ろうとしているのを、きっと彼は見逃してくれたんだわ」
それは絶対にないだろうと私達3人は思ったが、それを口には出さない。
ハーマイオニーが不機嫌な間は宿題を見せてもらえずハリーとロンは困ったし、私は私でハーマイオニーを宥めるのにとても苦労からだ。
火に油を注ぐと碌な事がない。
「あったわ、これよ!」
ハーマイオニーが興奮した顔で『ポリジュース薬』と題のついたページを指差した。
そこには他人に変身していく途中のイラストが載っており、そこから何となく
前に何度か私も変身しようと練習した事はあるが、一度だって成功した試しはない。
「こんな複雑そうな薬は始めて。材料は揃っているからいいけど、今日だけじゃ時間が足りない。今日はやれて、そうね………全体の10分の1ってところかしら」
材料のリストと実物と照らし合わせながら、ぶつぶつとハーマイオニーは作り方を指で追った。
「おいおい、材料は全部は揃ってないよ。この変身したい相手の一部って、どういう意味?僕、クラッブの足の爪なんか入ってたら、絶対飲まないからね」
「そこは髪の毛でいいでしょ……多分」
今にも吐き出しそうな顔をするロンをハーマイオニーは無視した。
私の言葉否定しなかったあたり、薬に入れるのは髪の毛でも問題ないらしい。
髪の毛でも十分嫌だが………。
「とにかく、私達はやるしかないの。材料まで送って貰ったんだから後には引けない。マグル生まれを脅迫するなんて、許される事じゃない。私達がやらなきゃ、もっと酷い事になる。怖気ついたのならあなただけ抜ければいいじゃない!」
それはもう頬を赤くして、本を閉じたハーマイオニーは目を吊り上げた。
それにロンは大慌てで自らの首を振る。
「わかった!やるよ!だけど、足の爪だけは勘弁してくれ。いいかい?」
「それで、薬は造るのにどれぐらい掛かるの?」
ハーマイオニーが機嫌を直したところで、ハリーはそう尋ねる。
「材料を揃える時間は短縮できたけど、それでも少し掛かるわ。大体、半月ぐらいは掛かるんじゃないかしら?」
「半月も!?そんな!マルフォイはその間に学校中のマグル生まれの半分を襲っちまうよ!───でも、今のとこ、それがベストの計画だな。あと、犯人は、マルフォイ以外の誰かかもしれない」
ハーマイオニーの目が吊り上がって険悪になったのを見て、ロンは慌てて付け足した。
マルフォイがあくまで犯人候補であるという事を私は指摘しようとしただけなのだが、どうしてロンはその事を慌てて否定したのだろう?
私は怒ってなどいないのだが。
そんなこんなで、次の日の土曜日の朝。
その日はグリフィンドール対スリザリンのクィディッチの試合が行われるという事でスタジアムは生徒達でごった返していた。
マルフォイがこの試合から出場するという事で正直行く気にはなれなかったのだが、去年のような事が起きるかもとハーマイオニーが頻りに心配したので仕方なく行く事にした。
両チームの選手達が入って来ると会場はよりざわめき立ち、グリフィンドールへの声援とスリザリンへの野次が一斉に飛んで来る。
その内容の殆どは金の力でシーカーになったと噂されるマルフォイに向けられたもので、レイブンクローもハッフルパフもスリザリンがコテンパンにやられる様を見たくてたまらないようだった。
マルフォイなどもう私にとってはどうでもいい筈なのに、周囲のざわめき立ちようとは裏腹、私は自然と苛立ちを感じる。
「笛の合図で試合開始です。それでは、いち──に──さん!」
そう言ってフーチ先生が合図すると観客の声に煽られるように、14人の選手達とクアッフルが大空へと飛翔。
少し間隔を置いて黒いブラッジャーと金色のスニッチが飛翔したのを皮切りに、試合が瞬く間に展開された。
その直後、ブラッジャーがハリーを襲う。
「危ないっ!」
間一髪でハリーはどうにか迫るブラッジャーを躱したが、ブラッジャーは軌道を変えて直様ハリーに迫る。
フレッドとジョージが手に持つ棍棒でそれを打ち返すも、ブラッジャーはハリー以外興味ないといった様子でその軌道を変える事はなかった。
ハリーがビュンビュンスピードを出してスタジアムの反対側に向かって飛ぶと、ブラッジャーはその後を追い、スニッチを探す暇などない様子でハリーは逃げに専念するしか無くなってしまう。
「一体全体どうなっているんですか?ブラッジャーがいくら選手を襲うと言っても集中狙いなんて!」
去年のようにまたも誰かが魔法を掛けているのかと観客席を見渡すが、それらしき人物は一向に見つからない。
犯人らしき人物を探している間もハリーは追われ続け、スタジアムの一部がブラッジャーの衝突によって跡形もなく壊れ散った。
観客席にもその衝撃は響き渡り、大勢の観客が不安げに息を呑む。
「誰かがブラッジャーに細工をしたんだよ!それ以外あり得ない!」
「早く試合を中止しないとハリーの命に関わります!私は先生達のところに───」
「無理よ!先生達にも試合は止められない!下手に手を出したらそれこそハリーが危険よ!」
「かといってこのまま何もしない訳にもいかないでしょう!?じゃあどうすればいいんですか!?」
私が思わず叫ぶも、ハーマイオニーは俯いて何も言ってくれない。
先生達も異常事態こそ察知しているようだが何も出来ず、この試合の行く末を手をこまねいて見ているしかない。
私達が今この場で出来る事は何もないのだと、周囲の様子から否が応でも察してしまう。
「っ……ハリー……!」
試合が60対0でスリザリン有利に進み、手を固く握ってハリーの無事を祈っている最中に事態は突如大きく動いた。
マルフォイが金色のスニッチを発見したのだ。
試合が始まってからハリーを煽る様子も見せず、何処か心ここにあらずといった様子のマルフォイもこれにはハッとし、箒を反転させてスニッチを追い駆けた。
一瞬遅れてスニッチを見つけたハリーも追って箒を飛ばし、マルフォイの後に続く。
ハリーを追って迫るブラッジャーなど意識の外に追いやりデッドヒートを繰り広げ、2人は懸命にスニッチへと手を伸ばす。
箒の性能差でマルフォイの方が僅かにスニッチに迫っており、その顔からは笑みがちらりと見えた気がした。
その一瞬の油断が勝負を分けるとも知らず。
『おっと!ここでアクシデント!ブラッジャーがマルフォイの箒に激突!立て直す事も出来ずマルフォイは落下!ざまぁないぜ!!』
ハリーの躱したブラッジャーがマルフォイの乗る箒に激突し、箒の柄が壊れたマルフォイは姿勢を崩し、そのまま地面に落下したのだ。
隣でロンがやったとガッツポーズを取るが、頭が冷え切り小刻みに震え、私はいつの間にか大粒の冷たい汗を流す。
目の前で起きた事を認識できず、轟々と周りで声が上がる中で私はフリーズした。
幾つもの感情がグルグルと渦巻いて悲鳴を上げ、脳裏によぎる最悪の状況を必至に否定する。
『ハリー・ポッターがスニッチを掴んだ!グリフィンドールの勝利!!』
大声で叫ばれるリーの実況を鬱陶しく思いつつ、観客席から飛び降りて私はグラウンドに立つ。
思考は相変わらずフリーズしたままだったが、いつの間にやら体が勝手に動いていた。
スニッチを掴んで地面に転がるハリーの無事を一先ず確認すると、もう一方の倒れている人物の下に私は足を動かす。
何故激しく動揺しているかも分からなかいし、何故こんな事をしているのかも分からない。
あいつが何をしたのかも理解しているし、それを許すつもりだってない。
けれど、今だけは、この瞬間だけは、ごく僅か、ほんの少しだけ、そんな事どうでもよくなった。
「……セラス?どうして、君が?何でここに………」
目の前の意識を失っていた人物は朦朧とした意識で辺りをキョロキョロと見渡すと、ハリーがスニッチを掴んでいる事に気が付いた。
少し落胆して肩を落とすが、それ以上の感情は湧いてこない。
それ以上に私が目の前にいるという事実を、心底不思議がっているようだった。
「………わかんないですよ……私だって。勝手に体が動いて……勝手に安心してた。………それだけですよ」
色んな感情がごちゃ混ぜになって、私自身ですら自身の考えている事が分からなかった。
目の前にいる相手は死ぬほど嫌いなはずなのに、死んでいなくて良かったと安堵している。
もう、許してもいいと、また友達と思ってもいいと、そんな事を考えている。
矛盾した思考ばかりが浮かび上がって、その流れは止まる事を知らない。
「ずっと……君に言いたい事があった。僕はついカッとなって……グレンジャーにあんな事を言った。僕は……僕は………」
目の前にいる相手は何度も上手く言葉を出せず、何を言いたいのか自分でも分からないようだった。
それでも彼は自らの言葉を探し、それを表に出そうと口を懸命に動かそうとする。
まるで自らのありのままを曝け出そうするかのように。
「セラス!ハリー!伏せて!ブラッジャーがまだ狂ったままよ!!」
ハーマイオニーの叫びを聞いて、咄嗟に目の前の人物と自らの頭を伏せると、次の瞬間ブラッジャーが音を立てて髪を掠めた。
私の頭上を通過したブラッジャーはハリーに向かって飛んでいくと、その右肘に向かって思いっきり激突する。
ハリーは痛みのあまり絶叫し、片膝をついてその場で倒れ込んだ。
なおも暴れようとするブラッジャーが先生達によって捕らえられると、ウッドをはじめとしたグリフィンドールの選手達がハリーの下へ駆け寄り、グラウンドに遅れて着いたハーマイオニーとロンもそれに続く。
目の前で突然起きた事態に愕然としていた私も遅れて反応し、倒れ込んだハリーのところにまで勢いよく駆けて行く。
「ハリー、大丈夫ですか!?意識はまだありますね!?」
「骨が折れてる。ブラッジャーが細工されていただなんて………。とにかく、早く保健室に運ばないと」
真っ青なハーマイオニーの言葉に頷き、ハリーをどうにか立たせて保健室に向かおうとする。
そんな最中にあの男は人垣を掻き分けてやって来た。
ニコッと高らかに笑って格好をつけ、周囲に自身の偉業を見せつけるかのように。
「心配無用!今この場で私が彼の腕を治してあげましょう!」
「やめて!ほっといてくれ!」
「何を言う?さては気が動転しているね」
ハリーの制止も聞かずに杖を腕に向けるロックハートを止めようとするが、ハリーの立たせようと隣にいたせいもあって即座に動く事が出来ない。
ロックハートの腕を私が掴み上げた頃には、もう既に手遅れだった。
「あっ」
ロックハートが間抜けな声を上げた次の瞬間に、ハリーの腕はぐにゃりと地面に落ちる。
この男はハリーの腕を治療すると銘打って、腕の骨全てを抜き取ってしまったに違いない。
「そう、まぁね。時にはこんなことも起こりますね。でも、要するにもう骨は折れていない。それが肝心だ。それじゃハリー、医務室まで気をつけて歩いて行きなさい。ミス・グレンジャー、付き添って行ってくれないかね?マダム・ポンフリーがその──少し君を──あー、きちんと────」
ロックハートは自身の失敗を誤魔化すかのように、ハハハと笑ってその場から逃げようとするが、私がそれを許さない。
掴み上げた腕を骨がミシミシというまで捻り上げ、もう片方の手でロックハートの首元に掴み掛る。
「ふざけないで下さいよ、この能無しの無能。何が骨が折れてないですか?ただ怪我が悪化しただけでしょう」
「せ、せ、成功とは時として失敗を大いに孕んでいる!ハリーには悪いが、こ、こ、今回は偶々運が悪かったという事で───」
「運が悪かった?いいや違う。成功とは時として失敗を大いに孕んいる?冗談は休み休みにしろ。これは明らかな人災だ。あなたは自身の見得の為、ハリーに成功するという確信もないまま魔法を掛けた上、更にはその責任を放棄した。HELLSING職員である私の目の前で、果たしてそんな身勝手が、本当に通用するとでも?」
心底冷え切った声と目で一蹴すると、両腕の手をロックハートから放す。
それによって重力に従い地面に落ちていくロックハートの体の胴に向かって強烈な蹴りを繰り出し、結果ロックハートは数メートル程吹き飛んで大の字で気絶した。
この事態に周囲はしばらく唖然とするが、コリンが気絶したロックハートをカメラに収めた事でその空気も元通りになり、一斉に全員が私の事を見つめる。
「私、今回は謝りませんから。減点は覚悟しますけど謝りませんからね。全部ロックハートが悪いんです」
「まだ誰も何も言ってないぞ。けど、今のはナイスキック」
「パーシーが後でキレるだろうけど、今回のは仕方ないな。それはそうとナイスキック」
フレッドとジョージがそう言って場を茶化すと、グリフィンドールの選手達は溜息を付きながら私の肩を叩いた。
苦笑いをしているハリーは立ち上がらせると、今度こそ人垣を搔き分けて私達は保健室へと向かう。
そこでまず待っていたのはマダム・ポンプリーのお小言だった。
「まっすぐに私のところに来るべきでした!」
「そうしたかったですけど、あの無能が怪我を悪化させたんです。全部あいつが悪いんです」
「あなたもあなたです!生徒が教師に手を出すなんて信じられません!状況が状況なので強くは言えませんが、そうだとしても怪我をさせる事はなかったでしょう!」
「馬鹿に付ける薬はあれで調度いいんです」
ハリーのゴムのようになった腕を検査する傍ら、私とマダム・ポンプリーの言い争いは苛烈を極めた。
私が何度も生徒を保健室に送りにするせいで、彼女の中にフラストレーションが溜まっていたらしい。
気絶したロックハートを運んで来たマクゴナガル先生が仲裁に入ってくれなければ、その言い争いは夜明けまで続いていたに違いない。
それはそうと、最後まで謝る気は一切なかったが。(代わりに20点減点された)
「とにかく、今回の事ではっきりと分かりました。ロックハートは120%無能。経歴も何かしらで改竄したものに間違いありません」
「HELLSINGがやるっていう調査の結果が楽しみだよな。それまであいつの授業を受けなきゃってのが少し憂鬱だけど」
1晩入院する事となったハリーを残し、保健室を半ば追い出され私達は寮へと戻っていった。
ロンと意見が合うなんて思いもしなかったが、今回ばっかりは意見が合致する。
「誰にだって、間違いはあるわ。それに、もう、痛みは無いんでしょう?」
「痛みもないけど、感覚もない」
「間違いが誰にもあるのは認めますが、責任を取ろうとしなかった時点であいつは論外です。ハーマイオニーもあいつが逃げようとしたところは見たでしょう?あれがあいつの本性ですよ」
心底吐き気がするものを見たと言いたげに私が言うと、ハーマイオニーは反論もせずに暗い顔をした。
授業での出来事やインテグラさんの手紙。
そして今回の一件でハーマイオニーの中のロックハートという人物像は根底から揺らいでしまっているに違いない。
それでもロックハートを直接貶す様な事を言わない限り、心の中ではまだあの男を信じているようだが。
「結局ブラッジャーに細工をしたのは誰だったんだろう?やっぱりスリザリンの誰かの仕業なのかな」
「ブラッジャーはハリーを狙っていたから筋は通るけど、学生が保護魔法の掛かったブラッジャーに細工が出来るとは到底思えないわ。あれを破るには凄く強力な錯乱魔法を使わなきゃだもの」
「だからこそのマルフォイさ。部屋の力か何かでどうこうしたに違いないよ。もしくは闇の魔術を父親から習っていたとか。どちらにせよ、今回の事は完全にあいつの自業自得って奴だけどね。質問リスト加えておけばいいよ。あの時の気分はどうだったかって」
話を変えてブラッジャーの話を始めると、ロンはそう言って頷いた仕草をした。
けれど、私は逆に首を振る。
「いいえ、あれはドラコの仕業じゃありません。ハーマイオニーの言った通り保護魔法を破れる訳がありませんし、自分が出るクィディッチの試合で細工をするとも思えませんしね」
「何だよ、急にマルフォイを本格的に庇って。そんなことより君、マルフォイの事を今ドラコって………」
「………あいつの事はまだ許してませんけど、そんな事をする人間じゃないって事だけは、何となく分かったんです。唯一の手掛かりなので話を聞く事は変わりありませんし、あいつの事は相変わらず……嫌いなままですけど」
何とも言えない顔で私がそう言うと、ロンは肩をすくめて両手を上げる。
試合が始まる前はあんなにも何処か憂鬱だったというのに、今の私の心はほんの少しだけではあるけど確かに軽やかだった。
しかし、こうやって呑気にしていられるのも、ほんの僅かな時間だけ。
グリフィンドールが勝利した次の日。
コリン・クリービが