ハリー・ポッターと王立国教騎士団   作:熊田ラナムカ27

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5 I am a vampire.But heart is still human

 

 

「よ、ようこそグリフィンドールに………。まさか、君がここに来るなんて、正直思っていなかった………」

 

「あっ、列車であったロンのお兄さん。………列車内でロンに暴力を振るったことはすいません。今後はもうなるべく問題は起こさないようにするので………どうか今回の事は水に流してくれ、なんて事は言いませんが許してください。本当に反省しています………」

 

「い、いいんだ!わかってくれれば!!ほら、頭上げて!!」

 

「気にするこないぜ、セラス。パーシーはお前が4年で習う呪文をホグワーツ入学する前から使えて、マルフォイの奴と随分仲良くしてるように見えたから、お前は名家の純血主義者何じゃないかって、心配してたんだ」

 

「そうそう。何せ、呼び寄せ呪文は監督生様のパーシーが、1番出来るようになるのに苦労した魔法だからな。ちょっと嫉妬しちまったんだろう。我が兄ながら、年下の、しかも女子に嫉妬するなんて情けない。俺はフレッド!」

 

「俺はジョージ!見ての通り、我等が問題児の兄だ。これからよろしくな」

 

「はい、よろしくお願いします。けど、ドラコと仲良くしようしてるように見えたっていうのは間違いで、私の中ではドラコはもうとっくの昔からずっと友達で仲良しです。まぁ、初めて会ったのは1ヶ月前のダイアゴン横町で、最近話したのはホグワーツ特急なので、交流期間はかなり短いですが」

 

「えっ、マジで!?冗談だろ!?」

 

「友達って、マルフォイの奴と!?」

 

「多分冗談じゃなくて、ホントのことだと思うわ。セラス、あんまり純血主義とか、どの寮がいいとか悪いとか、殆ど気にしていないみたいだし」 

 

「はい。もし仮にグリフィンドールの寮が塔の上じゃなく、見渡しが悪い地下にあって、スリザリンの寮が見渡しのいい塔の上とかにあったりとかしたら、多分間違いなく、私スリザリンに行きたいって思ってました。実際組み分け帽子も、最終的に私をスリザリンか、グリフィンドールのどっちに入れるかで迷ってたみたいですしね」

 

「マジかよ……。しかも決定打は”例のあの人”うんぬんじゃなくて、寮からの見渡しか」

 

「ハリーといい、セラスといい、今年の1年は随分とキャラ濃いな」

 

「褒め言葉として受け取っておきます」

 

「セラス。私、あなたと一緒の寮になれてとっても嬉しいわ」

 

「はい、私もです。改めて、今後ともよろしくお願いします」

 

 少し苦笑いしているジョージとフレッドの横を通り、私はそう笑いかけながら、ハーマイオニーの隣の席に座った。

 

 結果として、ドラコをボッチにさせてしまったことに多少の申し訳無さはあるが、私は当初からの希望通り無事、グリフィンドールに入ることが出来た。

 

 入ることが出来た事は普通に嬉しいし、インテグラさんから多少話は聞いてはいるものの、実際に行くのといかないとでは全く違うだろうから寮に対しての期待も多少なりともある。

 

 ………まぁ、ロンの反応や組み分け帽子の話の反応から予想していた通り、他の2寮の事はわからないが、グリフィンドール内でのスリザリンの心証が悪く、今後ドラコのところに行く時に、多少目立ってしまう事は心配ではあるが、もうあんな事件起こした以上嫌でも私は悪目立ちするだろうし、インテグラさんに怒られるのが確定してる以上、その様な事を気にしていては何も出来ないだろうから、あまり気にせずやっていくとしよう。

 

 というか、下手な視線や陰口を言われるよりも正直、銃を振り回しながら怒り狂うインテグラさんとか……突如ドラゴン退治に私を引っ張って連れて行く師匠(マスター)とか……笑顔でわかるまで永遠に勉強を教え続けるウォルターさんとかの方が……100倍怖いですしね………。

 

 ………うん。さっきは悲観的になってたけど、もうこの際、怒られるの確定してるから、トップ10取れて、退学にならない程度には、思いっ切りはっちゃけよう。

 

 でなきゃ色々考えそうだし……インテグラさんの怒号が嫌でも脳裏浮かぶし………頬って置いたらドラコ、へそ曲げて、のの字辺りを泣きながら、部屋の隅で書いたりとかしてそうですし。

 

「はぁー……。どうにかグリフィンドールに入って、どうにか首の皮一枚耐えることが出来たよ………。これでスリザリンに入ろうものなら、ほぼ間違いなく僕、ママに絶縁されてただろうから………」

 

「あっ、ロン。どうも、組み分けお疲れさまです」

 

「ロン、よくやったぞ、偉いぞ。これで一先ず、最悪の報告がママに届くことはない」

 

「だとしても、最悪の1歩手前の報告は届くことになるだろうけどな」

 

「俺達に続く、ウィーズリー家きっての、問題児の誕生だ。こりゃママもびっくらこいて、10回は目回すだろうぜ」

 

「やめてよフレッドにジョージ!怒られるのは僕なんだからさ!!」

 

「さて、皆の者おめでとう!ホグワーツの新入生、おめでとう!歓迎会始める前に、二言、三言、言わせていただきたい。では、いきますぞ。そーれわっしょい!こらしょい!どっこいしょ!以上!」

 

「どんな掛け声?言うにしても他に色々あるでしょうに」

 

「あの人……ちょっぴりおかしくない?」

 

「おかしいだって?あの人は天才だ!世界一の魔法使いさ!でも、少しおかしいかな、うん。君、ポテト食べるかい?えっと、君は?」

 

「私は別に大丈夫です。そこまでポテト、好きじゃないですし。代わりにそこのトマトジュース、取ってくれます?」

 

「ああ、わかった。どうぞ」

 

 入学前から問題を起こしたということもあって、パーシーは多少警戒しているものの、何だかんだテーブル隅のトマトジュースが入ったコップを快く、私の前に置いてくれた。

 

 ここだけの話、私や師匠(マスター)と言った吸血鬼は本来血以外の食事を必要とせず、曰く真の吸血鬼(ノスフエラトウ)である師匠(マスター)限っては偶にワインを嗜むものの、味覚に関して言えば、完全に機能してない。

 

 どうも、私達吸血鬼は一度死んだ身であり、本来ならばこの世にいない魂。

 

 普通の人間ならば愛しい太陽も、私達にとっては肌を焼く凶器であり、本来生命の源である水は私達にとって、触れただけで肉体を骨の髄まで溶かし尽くす猛毒。

 

 死者であるが故に、生まれた地の棺桶で眠らなければ、体が弱まる一方であり、魂の通貨である血を飲まなければ、本来魂をこの世に留めておけず、最終的に塵一つこの世に残してはいけず死んでしまう、とても脆い存在だ。

 

 ………長年、私は師匠(マスター)やウォルターさんからは血を飲むように言われ、ヘルシング家に伝わる魔法を度々掛け、棺桶で寝さえすれば、血を摂取せずとも生きれる様にしてくれているインテグラさんからも、遠回しではあるものの、何度も血を飲むように言われてきた。

 

 けど、それでも、私は生まれて11年間、血を飲むのを拒否し、本来必要でない、普通の人間の食事を誰かと共に取り続けている。

 

 何とも言葉には出来ないが………血を飲んだその瞬間、私の根源たる何かが、微かに残った人間としての何かが、終わりを告げる気がして、ならなかったからだ。

 

 そのせいもあって、インテグラさんからは何度も強情者と窘められたし、毎日普通の食事と共に血液パックを運ぶ、ウォルターさんには何度もため息をつかれ呆れられたし、同じ吸血鬼の師匠(マスター)からは『おっかなびっくり』と、何度も目の前で大笑いをされた。

 

 けど、それでも、今この瞬間、同じ年人と一緒に食べるご飯は本当に美味しいし、大人達以外と食べる食事が、こんなに楽しいものだとは、生まれてこれまで知りもしなかった。

 

「まぁ、とにかくですけど、それにしてもここの料理どれも美味しいですね。お肉はどれも程よい焼き加減でジューシですし、ドリンクは程よく冷えて喉越し抜群。ハッカ入りキャンディは何であるのかわからないですけど、これもまぁまぁ美味しいです」

 

「そ、それはよかったね……。………にしても君。見た目はまぁ、普通なのに………随分と、料理食べるんだね。………ステーキ、少なくともそれで10人分食べたんじゃないか?」

 

「お嬢様らしく、丁寧に綺麗には食べてるけどね。………セラス、あなた意外と食べる方だったのね」

 

「どうも、なかなかお腹が一杯にならない質でして、私もあまり意識してないんですけど、気づいたら沢山食べてるんです。ご飯食べなくても元気一杯ですし、仕事の時はご飯食べない時もあるんですけど、食べれる分には沢山食べたいですしね」

 

「そういえば……ホグワーツ特急に持ち込んでていたお菓子………出しても出しても出てくるぐらい、随分と沢山、持ってきてたわね」

 

「車内販売のお菓子を食べ尽くしたら他の人に悪いからって、ウォルターさんが持たしてくれたんです」

 

『いやはや、食べれない身の私としては、何とも羨ましい限りです』

  

「話に入ってきて、誰ですか?あなた?体を触れないあたり、ほぼ間違いなくゴーストみたいですけど」

 

『申し遅れました。私は私はニコラス・ド・ミムジー・ポーピントン卿といいます。グリフィンドール付きのゴーストです』

 

 そう、名乗ったゴーストは私達にお辞儀をし、ロンが突然口を挟んだ。

 

「僕、君の事知ってる!兄さん達から話は聞いてるよ。『殆ど首無しニック』だ!」

 

「殆ど首無し?どうして殆ど首無しなの?」

 

『ほら、この通り』

 

「……うーわっ。結構グロい。正直、食事中にはやってほしくなかったです」

 

『と、言いながらも、あなた沢山食べているではありませんか。さて、グリフィンドール新入生諸君、今年こそ優勝カップを獲得できるよう頑張ってくださるでしょうな?グリフィンドールが連続で負け続けたことはない。インテグラやビルといった素晴らしい学生達がここを去ってからというもの、スリザリンが2年連続で寮杯を取っているのですぞ!』

 

「インテグラさん、そんなに凄い人だったんですか?」

 

『凄いなんてものではありません。正に、グリフィンドールの星でした。容姿端麗、情に熱く、惜しくも主席の座はビルに譲りましたが、成績は常にトップ。生徒と教師、皆からの信頼は厚く、男女寮問わず、生徒は皆彼女の虜。クィディッチの名手でもあり、同じくチームだったビルやチャーリー達との連携は、文字通り目を瞠るものがありました』

 

「そうなんだ!彼女達3人は最高だった!!試合をすれば瞬く間にビルが点を掻っ攫い!インテグラがブラッジャーを巧みにガード!そしてシーカーのチャーリーが勇猛果敢に突っ込み!ゲームに蹴りをつける!!………はぁー。君達新入生にも見せてあげたかったよ。グリフィンドールのクィディッチ黄金時代」

 

「そ、それは、凄いですね」

 

『ですが、悲しいかな………。その栄光の裏には影があり……彼女の残した呪いも、凄まじいものがありました』

 

「………ああ、そうなんだ。みんな、その呪いを、『アーカードの呪い』って、呼んでる」

 

 ニックさんが何処か悲しげになり、如何にもクィディッチが好きという感じのオリバー・ウッドが少し表情を険しくしながらそう言い、私はというと驚きのあまり、食べていたローストチキンを喉につまらせかけ、ハーマイオニーに背中を擦られた。

 

『………ここ、10年ほどでありますかな?かの有名な吸血鬼、アーカードが時折ホグワーツを襲撃し、ダンブルドアに決闘を挑むのです。幸い生徒や他の教師には興味なく、あくまで目的はダンブルドアなのですが、彼がホグワーツに襲来する度に被害は甚大………。『禁じられた森』の木々は吹き飛び………天文台は壊滅。湖の大イカが干物になりかけ………戦闘の度に響くマクゴナガルの怒号…………。………ここ4年ほどはホグワーツを襲撃していませんが、襲撃の度に何度死んでいるのに死ぬかと思ったことか』

 

(何やってるんですか師匠(マスター)!?損害賠償を訴えられるまでなんでホグワーツなんてものを襲撃しているんですか!?)

 

「アーカードの呪いがある、って言われたのは、4年前決闘の余波で、クィディッチコートの半分が吹き飛んだ頃だったかな?アーカードが仮にもHELLSING機関員ということもあって、責任を取りヘルシング家当主のインテグラが監督生候補から除外。それからというもの、呪文の授業で爆発を起こして保健室に運ばれる生徒が続出、魔法薬学では寮関係なくほぼ全員の評価が真ん中より上はなし。フィルチに捕まる生徒は増え、挙げ句クィディッチコートに違和感を感じるようになった!……その他にも色々起きているんだけど、どれも原因は不明で、生徒はいつも酷い目にあってる。これはもう呪いとしか言いようがない!!」

 

(関係ない!!関係ない!!師匠(マスター)呪いは疎か魔法使えません!!!) 

 

『ここ4年………ホグワーツ生徒は皆アーカードの呪いに苦しめられてきました。ですが!今年の新入生こそは!!このアーカードの呪いを打ち破れると信じております!!』

 

「ああ!そうさ!!今年こそはアーカードの呪いを打ち破り!!何としてでもグリフィンドールが優勝!!強いてはクィディッチで優勝できるように頑張ろう!!みんな!!今年こそは呪いを打ち破るぞ!!!」

 

 

「「「おぉー!!!」」」

 

 

「………インテグラさんの話をしてたのに、かなり凄いところまで脱線したわね」

 

「HELLSINGが100年間かけて栄々と作り上げた最強のアンデッドで、”例のあの人”を何度も蹴散らした、って聞いてたけど、まさか呪いまで掛けれる吸血鬼だったなんて………」

 

「ところでロン?そのHELLSINGって?」

 

「魔法界と人間界が別れた時に人間界側について、代々魔法界と人間界の双方を監視してる、関所の番人みたいな組織だよ。魔法界と人間界の国境線に侵入する、魔法生物とか、闇の魔法使いを捕まえたり、魔法界の事を知ろうとするマグル達から魔法界を秘匿してるんだ。何でも、古い魔法契約で魔法界の事には基本不干渉らしいんだけど、パパの話じゃ、もし仮にHELLSINGがいなかったら、”例のあの人”による人間界の被害は、少なくとも7倍は増えていただろう、って話さ。まぁ、基本HELLSINGは魔法生物の相手ばっかしてるらしいから、対闇の魔法使いにおいてなら闇祓いの方に軍配が上がるだろう、っていう、専らの噂らしいけどね」

 

「へぇー。もしいなかったら被害は7倍って、確かにそれは凄いね。………ところで、セラス。ついさっきからずっと、うつ伏せみたいだけど大丈夫?何処か体調悪かったりする?」

 

「いえ………大丈夫です。………なんか、ごめんなさい。なんか、すいません………」

 

「何で急に、謝りだしたのさ」

 

「ただ独り言です………。放っておいてください………。………本当にすません。本当に、色々とすません………。本当に……ごめんなさい………すいません………」

 

 結局、あまりの恥ずかしさと申し訳無さから、私はデザートが出てくるまで謝り続け、師匠(マスター)の呪いを打ち破ろうと、何も知らない新入生をよそに、ニックや上級生達は酒に酔ったかのように、食事の間ずっと大騒ぎを続けた。

 

 インテグラさんがどんな学生生活を送っていたかを知れて、嬉しかったですが………それ以上に師匠(マスター)の知り合いということが恥ずかしいといか…………もう、色々と呆れを通り越して一言言いたいです。

 

 本当に………何をやっているんですか……………師匠(マスター)

 

「エヘン──皆、よく食べ、よく飲んだことじゃろう。アーカードの呪いを打ち破ろうと、息巻いているグリフィンドールの皆は1度静かにして欲しい。また二言、三言、四言、新学期を迎えるに当たり、幾つかお知らせがある。一年生に注意しておくが、構内にある禁じられた森への立ち入りは、文字通り禁じられておる。二つ目は、管理人のフィルチさんから、授業の合間に廊下で呪文を使わんでほしいという注意があった。三つ目に、今学期は二週めにクィディッチの予選がある。寮のチームに参加したい生徒は、マダム・フーチに連絡を。最後じゃが、とても痛い死に方をしたくない者は今年いっぱいは4階右側の廊下には入らんように」

 

「とても痛い死に方?………何にしろロクなものじゃなさそうですね」

 

「冗談にしては笑えないわ」

 

「いや、多分真面目だよ。でも変だな?立ち入り禁止の場所がある時は、必ず理由を説明してくれるのに」

 

「話はこれで終わりじゃ。では、寝る前に皆で校歌を歌おうぞ!」

 

 ダンブルドアが4階の話をした時とは打って変わり、声を張り上げ杖を振り、そこから流れ出た金のリボンが宙に文字を書いた。

 

「みんな自分の好きなメロディーで。さん、し、はい!」

 

 

 

 ホグワーツ ホグワーツ ホグホグ ワツワツ ホグワーツ

 

 教えて どうぞ 僕達に 老いても ハゲても 青二才でも 

 

 頭にゃ何とか詰め込める

 

 おもしろいものを詰め込める

 

 今はからっぽ 空気詰め 死んだハエやら がらくた詰め

 

 教えて 価値のあるものを

 

 教えて 忘れてしまったものを

 

 ベストをつくせば あとはお任せ 

  

 

 

 

「………何ですか?この、作曲者のセンスを疑う歌詞?そんでもって、最後の歌詞は、"学べよ脳みそ………腐るまで"?……酷いどころじゃありません」

 

「ああ、音楽とは何にも勝る魔法じゃ!さぁ、諸君、就寝時間。駆け足!」

 

「あの、ちょっと?皆さんあの歌が素晴らしいって言った、ダンブルドアの感性に疑問持った人はいないんですか?誰か!?ツッコミどころしかないんですけど!歌詞も音程も!!」

 

「ここでそんな事気にしてたらやっていけないよ?一年生!談話室に案内するからついてきて!」

 

「えぇぇー………。本当に誰もツッコまないんですか?嘘でしょ?嘘でしょ?」

 

「セラスは色々気にし過ぎなんだよ。蝋燭のことといい、歌詞のことといい。もう眠いし、早くパーシーに着いていこう」

 

「いやいや、気にしなくても気になりますよ、あの歌詞は。あの、本当に気にしてないんですか?誰も?恥ずかしがらなくていいですから!誰かちょっと手を上げて!ちょっと!ちょっと!?」

 

 結局、歌詞とその他諸々にツッコむ人は、誰も出てこなかった(解せない)。

 

 パーシーの後に続いてホグワーツの廊下を歩き、廊下の突き当りにある一つの肖像画の前で立ち止まった。

 

 ピンクの絹のドレスを着たふくよかな女性の肖像画で、魔法界の絵らしく、中の人物の絵は、まるで生きているかのように動いている。

 

「合言葉は?」

 

「カプート ドラコニス」

 

 パーシーがそう唱えると、肖像画がパッと開き、その後ろの壁には丸い穴が見えた。

  

 穴はグリフィンドールの談話室に繋がっており、談話室は心地よい円形の部屋で、フカフカの肘掛け椅子が沢山置いてあった。

 

 パーシーの指示で男子達と別れ、女子寮に続くドアから螺旋階段を登っていき、一番上の1つ手前の階の部屋のドアを開ける。

 

 そこには真紅のビロードのカーテンが掛かっており、4本柱天蓋つきベッドが1つ置いてあった。

 

 どうやら、ハーマイオニーとの2部屋らしい。

  

「あら?ここは2人部屋みたいだけど、何処を探してもベッドが1つしかないわ。学校側のミスかしら?」

 

「いえ、別にミスじゃありません。私が学校側に連絡して、こうしてくれるよう、私が事前に学校に頼んでおいたんです」

 

「じゃあ、まさか、セラス床で寝るつもり?」

 

「いえいえ。私肌が弱いので太陽が肌に当たらないよう、念の為専用のベッドというか、何というかを用意したんです。………確かこの辺に………あった。よっ、こら、せっ、と」

 

 首を傾げてるハーマイオニーをよそに、私はトランクのロックを外し、見た目以上に中がほぼ私の私室である地下室と同じくらいの大きさはあるであろう、トランクの中からいつもの棺桶を取り出した。

 

 出来れば普通のベッドで寝たかったんですけど、血を摂取していない以上、ウォルターさん曰く、せめて毎日棺桶で眠るぐらいの事はしなきゃ駄目、とのこと。

 

「うわぁ!?何その棺桶!?………もしかして、そのトランク、検知拡大不可能呪文が掛けられてるの?」

 

「流石、教科書を全部暗記してるだけのことはありますね。私少しばかり他の人より肌が弱いので、あまり長時間(本当は1秒たりとも駄目だけど)日光に体を晒せないんです。見た目は確かにあれですけど、中は低反発毛布が詰まってて、結構寝心地いいんですよ。あっ、よかったら一緒に寝ます?狭いですけど」

 

「あー………遠慮しておくわ。中暗そうだし、体あちこち痛くなりそうだし」

 

「そうですか。まぁ、会って数時間ですし、同性とはいえ、流石に同じベッドでは寝ませんよね」

 

「そういう問題じゃないんだけど………」

 

「それはそうと、ハーマイオニーはまだこのベランダからホグワーツの外観とか、星空とか、色々とまだ見てないですよね?この上の階のベランダから外に出られるらしいですから、今から一緒にから景色見に行きましょうよ」

 

「うーん、それも遠慮しておくわ。大広間で星空は天井越しとはいえ、見たばかりだし、もう眠いし。それに、明日の準備とか、荷解きとか、まだしてないしね」

 

「ふーん、そうですか。じゃあ、私ちょっと上のベランダ行きますから、一先ずハーマイオニー、今日はもうお休みなさい」

 

「ええ、お休みセラス。これ以上先生に怒られるのは、あなたも困るでしょうから、星空見るのもいいけど大概にするのよ」

 

「わかってますって、それぐらい。それじゃあハーマイオニー、また明日」

 

 そう言いながら私は部屋出て、螺旋階段を更に登っていき、頂上の階層扉からベランダに1歩、足を踏み入れた。

 

 そこから見える星空は、大広間で映し出されていた星の何倍も輝いており、ホグワーツの城の様な外観も相まって、まるで御伽噺の景色のよう。

 

 ホグワーツの少し先にあるホグズミード村の明かりと人影が、ここからちらりと見え、村の住人達が楽しそうにしている様子に、私も何だか自然と温かい気分になる。

 

 インテグラさんが手放しで褒めるのわかる、見事な景色であり、私は思わず人目を気にせず寝っ転がり、空高くに広がる星空を独り占めにする。

 

「はぁー……やっぱり凄いな……この星空………。こんな凄い景色の中じゃ………私なんて……ほんの豆粒程度でしかないんだろうな………。………ハーマイオニーも、一緒に付いてくればよかったのに。こんな綺麗な星空、なかなか見る機会なんてないでしょうに」

 

 誰も返さないであろう1人っきりの空間の中で、私は思わずそう呟くが、当然その声は誰にも届かず、誰にも届かぬ声は、虚空の空に広がり、そのままゆっくりと、なかったものかのように消えていく。

 

「………そういえば、今日は満月。人狼が狼の姿となり、吸血鬼が最も凶暴になる日。………今はまだ、少なくと今、私はホグワーツの生徒教師を師匠(マスター)のように怯えさせることは出来ないし、人間と同じ様な味覚だって、ちゃんとある。………でも、いつか、遠い未来で、私は今日みたいに、誰かと一緒にご飯を食べることは、一体出来るんだろう?」

 

 そう、誰にも届かない言葉をまたしても呟くが、やはり声は届かず、ただ空の虚空に溶けていくばかり。

 

 自分で今、この問の答えを出すことなんて絶対に無理だろうし、今、もしくは遠い未来で、私のこの問に答えてくれる人間がいるかどうかだって、定かではない。

 

 けど、今日始めて色んな人達とご飯を食べて、色んな人達と色んな話をして、色んな人達と、多くの出会いをしてきた。

 

 確かに私はまだまだ未熟で半端者だし、とてもじゃないけど、1人前の吸血鬼とも魔法使いともまだまだ言い難い。

 

 もし、この場所で、私が今日みたいに色んな事と向き合い、色んな事を知っていけたのならば、この問の答えを、もしかしたらいつか、出すことが出来るのかもしれない。

  

「今日何が起きるのかだってわからないし、明日がどんな事が起きるのかだってわからない。なら、私が出来ることは、思いっ切り、一生懸命。自分のやるべきことを、やりたいことを、精一杯、やっていくことだけだ」

 

 そう、誰に対してでもない言葉を呟くと、私はローブに付いた砂埃を軽く払って立ち上がり、もう寝てしまったであろうハーマイオニーの待つ部屋へと、少しずつ、それでも確実に、その足を進めていった。

 

 その行く先が、少しでも楽しい明日に繋がっているようにと、少し、でも確かに、心の奥底で、願いながら。

 

 

 

 

  

 

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