ハリー・ポッターと王立国教騎士団   作:熊田ラナムカ27

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6 What goes around comes around

 

 

 ベランダからの階段を降りて部屋に戻り、棺桶に入って眠りについてから早くも数時間。

 

 棺桶の蓋越しからでも聞こえる禁じられた森に住む怪鳥達の声で目を覚まし、棺桶の蓋を開け、私は上半身を布団から持ち上げる。

 

「………もう、こんな遅い時間。いつもならとっくに……叩き起こされて朝の訓練をしている時間帯なのに………。………久しぶりだなぁ………こんなゆっくりと寝れたのは」

 

 外はギリギリ朝日が登ったくらいのようで、木々や建物に灯火らしき光はなく、外の様子はまだ何処かうす暗い。

 

 起きる時間にしては少し早すぎるかもしれないが、いつものブラック環境の起床時間と比べ、起きるにしては遅過ぎるまでの時間であり、いつものこの時間帯ならばとうに起きて、他のHELLSING職員の大人達に混じって、(嫌々)朝の訓練に勤しんでいる。

 

 そんなことをせず、ゆっくりと睡眠を取れるホグワーツのホワイト環境に感謝しながら、私はまだ寝ているハーマイオニーを起こさないよう静かに棺桶から立ち上がり、いそいそと身支度を整えていく。

 

「ふぁーあ………。………あら?もう朝……?………外はまだ少し暗いみたいだけど………あなたはもう、身支度は終えてるみたいね」

 

 身支度を終え、朝日を遮るように帽子を深く被り、朝食の時間まで日課の杖の手入れをしようかとしていると、ハーマイオニーが私の物音で起きてしまったのか、少し可愛いあくびをし、まだ眠い目を擦りながらこちらに起き上がってきた。

 

「おはようございます、ハーマイオニー。いつもの習慣で早く起きて暇でしたから、杖の手入れでもしようかと思ってたんです。すいません、物音立てて起こしてしまって」

 

「ううん、大丈夫。それに今日はホグワーツ初日。早く起きて予習をしておく分には時間がいくらあっても足りないもの。身支度したらとりあえず『ホグワーツの歴史』………っていう本でも、眺めてようかしら?」

 

「昨日からわかっていたことですが、ハーマイオニーは何というか、本当に真面目ですね。暗記した教科書をもう一度読み返そうだなんて、少なくとも私なら、絶対に考えません」

 

「あら?それはあなたもじゃない?こんなに朝早くから起きて、入学して早々から杖の手入れだなんて」

 

「いえいえ。私のは真面目っていうより、日々ガミガミ言われたことで身についた習慣的なものを無意識的にこなしているだけです。

   

『ただでさえ連続で寝坊しているにも関わらず………それに加え魔法を使う上で重要な杖を手入れし忘れるとは………貴様一体何を考えている?どの杖にも自動で良質な状態を維持する魔法が掛けられてはいるが、貴様が惰眠を喰らっている間にも、常に杖の質は極僅かながらも劣化の一途を辿る。精々仕事で死にたくなければ、いい加減手入れぐらい言われずともやらんか、この愚か者め』

   

………って、インテグラさん、毎朝、毎朝、うるさいんですよ」

 

「実際杖の調子は魔法の成功に深く直結するようだし、あなたの保護者の言い分も間違ってはいないとは思うけどね。あっ、それはそうと、セラスはどの授業が1番楽しみ?どの授業も面白そうなんだけど、セラスはどうなのかなって」

 

「うーん、そうですね。私としてしても、座学を除く、全ての授業が楽しみです。……けど、その中で一番を決めるってなると、やっぱり楽しみなのは『妖精の呪文』か、『闇の魔術に対する防衛術』のうちのどっちかですかね?妖精の魔法の方は普段使いができる魔法が多いからか日々重宝してますし、仕事の関係で戦闘系の魔法は毎日のように使ってますから、授業の方でだいぶ高得点が取れる気がします。何よりそういう職種で使う科目柄なのか、実習がかなり多く、座学があんまりないですしね、座学」

 

「私が一番楽しみなのは、やっぱり『変身術』で間違いないわ。監督生に授業の内容聞いたんけど、かなり面白そうだったし。それにね。昨日の夜少し魔法の練習をしてたんだけど、そしたらあとちょっとところまでいってね!マッチを上手く銀色出来たの!ほら!」

 

 そうハーマイオニーは、懐から銀色のマッチ棒を取り出し、何処か自信満々で誇らしげに、少し鈍く太陽の光を反射する、銀色のマッチ棒を私に見せつける。

 

「………ウワァー……ホントダ……何処カラ何処ヲ見テモ銀色ダ。………独学でもう、その段階に言ってるんですか?……私、実技の中で唯一変身術だけはあまり得意じゃないですから……ある程度使えるようになるまで結構………時間が掛かったっていうのに…………。……あなた、新手の天才か何かだったりします?」

 

「いやいや、確かに練習はしたけど、天才だなんて、遠く及ばないわ。基礎の理論を覚えるまでなんだかんだで丸1ヶ月は掛かっちゃったし、昨日セラスが寝てからの練習で、上手く行ったのは10回中最後の1回だけ。まだまだ全然練習も勉強も足りないし、天才って呼ばれるにはまだ遠く及ばないわ」

 

(………私の場合、変身の基礎理論は一応暗記したけど、それでも結局暗記するのに丸1年は掛かって………マッチを針にすることが出来るようになったときは、100回ぐらい沢山失敗して、1週間掛けてようやく、マッチを銀色にする段階に行くことが出来たっていうのに………これで天才じゃなかったら逆に何なんですか……一体…………)

 

「セラス?どうしたの?急に変な顔をして」

 

「イエイエ、何デモナイデスヨ。スゴイナーッテ思ッタダケデス。ホントホント、スゴイナーッテ」

 

(何で急に片言?まさか、何処か頭で打ったのかしら?)

 

 私の片言言葉に首を傾げるハーマイオニーを生暖かい目で見つつ、自分には才能なんてものはないなと、改めて再確認した。

 

 それから朝食の準備が出来る時間帯になるまでの数10分間、ハーマイオニーが時折、教科書片手に知った魔法史や魔法の理論といった授業の内容を一生懸命説明し、私がその説明の座学部分を聞き流しつつ、トランクから取り出した道具で軽く杖の手入れをしていると、あっという間に朝食の時間。 

 

 もう少し部屋で復習をしていたいというハーマイオニーと別れ、談話室を出て朝食が用意されているであろう昨夜の大広間に向かう。

 

 既に朝食は大量に準備されていたようで、英国代表的な朝食であるエッグベネディクトやチーズオムレツを始めとした様々な食事が置かれており、どの料理も皿から薄い湯気と匂いを大広間中に振りまいている。

 

「わぁ……昨日に引き続いてどれもこれも美味しそう………。どれも美味しそうで迷いますけど、やっぱりまずは王道の目玉焼きとベーコンのこてこてのイングリッシュ・ブレックファースト?……いや、それもいいけどあのチーズオムレツとエッグベネディクトから食べるのもありだな…………。………いや、まずはペースを抑えてコーンスープとトーストから?いや、けど、やっぱり最初はガッツリ行きたいし…………」

 

「何をテーブルの前で一人でブツブツ呟いている?いい加減席に座って、そこの道を開けたらどうなんだ」

 

 私がテーブルの前で1人、どれを食べるか悩んでいたからだろう、緑のスリザリンのローブを着た集団の先頭こと、ドラコが少しからかった様な口調でそう言いった。

 

 昨日から思っていたし、気にはしないのだが、どうもドラコはとりあえず1度皮肉を言わないと落ち着かない性分らしい。

 

 今の言葉が私に向けられたからこそ良かったものの、もし仮に、少し子供っぽいロン辺りにこの言葉が向けられていたら、彼は間違いなく顔を真赤にし、拳を振り上げていたに違いないだろう。

 

「あっ、これはすいません。それとドラコ、おはようございます。昨日はよく眠れました?自分だけスリザリンだったことに拗ねて、一人寂しくベットで泣きませんでした?」

 

「誰が泣くか。僕は初めからスリザリンに行きたいと思っていたし、ウィーズリーと同じ寮になるだなんて冗談でも御免だ。何より僕一人ではないし、ちゃんと知り合いもいる」

 

「えっ、あの如何にも皮肉屋で、如何にも周囲に壁を作りそうなドラコに友達!?………友達がいると強がるのもいいですけど、そういうのって長く続けると虚しくなるだけですから、あまりオススメはしませんよ?ボッチならボッチと、はっきり公表した方がまだ印象はマシになりますし、周囲から憐れみの視線を向けられて、内心の虚無感と孤独感を味わうこともありませんしね。出来ることなら、早めにやめることを強くオススメしますが………」

 

「誰がボッチだ!ちゃんと数年分の付き合いは皆とあるつもりだ!それに大体なんだ!?そのやけにリアルな忠告!」

 

「マルフォイ、随分仲良くしているがこの子は誰だ?少なくとも聖28一族ではなさそうだし、ローブからして間違いなくグリフィンドールみたいだけど………」

 

 私がお返しとばかりに、いい感じな反応をしてくれるドラコを軽く面白おかしくからかっていると、後ろにいた男の子の1人が怪訝そうな表情で私を指さした。

 

 どうやら知り合いのドラコに、スリザリンと犬猿の仲であるグリフィンドールの知り合いがいた事がどうも意外というか、甚だ疑問らしく、彼だけではなく他のドラコの友だち?も、同じく怪訝な表情で私を遠巻きに見つめている。

 

「ああ、すまない。話に夢中で紹介が遅れた。彼女はセラス・ヴィクトリア。両親が魔法族かはわからないそうだが、名家の養子の様なものらしくてね。グリフィンドールに入ってしまったことが惜しい限りだが、この歳で多くの魔法生物を相手取っているそうだ」

 

「セラスって、あのセラス・ヴィクトリア?入学前にホグワーツ特急で高難易度の呼び寄せ呪文を使ったと思えば、マルフォイとウィーズリーを気絶させた挙げ句、組み分け帽子を大笑いさせたっていう、あの?」

 

「気絶させた件に関しては反省していると言うか………不名誉というか……私としても忘れて欲しいのですが………まぁ、そうです。その通りです。私があの、セラス・ヴィクトリアです」

 

「何で、自分を気絶させた相手と仲良くしているのよドラコ。反省したなんだって言って、またあなたに暴力振るってくるかもしれないのよ?」

 

「いや、あれは僕も悪かったし……こっちにも非があるんだが………」

 

「いいのよ、そんなぐらいの気にしなくて。こんな聖28一族でもなければ、何処の馬の骨かもわからない上に、グリフィンドールに入って名家を気取っている奴がどうこう言ったところで、こっちは全く痛くも痒くもないんだから、これぐらいの事気にしちゃ駄目よ。あっちに非が全部あるのであって、あなたに全く非があるはずないんだから」 

 

「ちょっと、何ですかその超理論?私の初の仕事着以外の服破かれたんですから、一応ドラコにも非が0.01割ぐらいはあると思うんですけど………」

 

「関係ないわよそんなの!暴力を振るったあなたが100%悪いに決まってるわ!」

 

「あぁ……それは本当に否定できない………」

 

 やや警戒心が特に高そうな男の子こと、セオドール・ノットが私の名前を見事を当てるや否や、他のスリザリンの男子や女子がドラコを守るような形で(またしても、あの2人組はそんな事お構いなしに朝食を食べている)一歩、私から距離を置き、気の強そうな女の子のこと、パンジー・パーキンソンが甲高い声で、声と内容どちらも耳が痛い言葉を私にぶつけてきた。

 

 やけに一体感があるというか、仲間意識が高いところは普通に凄いと思うし、ドラコが本当にボッチでなかった事自体はとてもいい事だと思うのだが、ここまで私というか、グリフィンドールを毛嫌いしているとはかなり予想外。

 

 親の遺恨は子まで続くというが、先祖から続くと初対面の相手にすら余計(ただでさえ私は元々印象悪いから更に)あたりが強くなるらしい。

  

「げっ!?マルフォイ!?何でこんな所に!?ここはグリフィンドールのテーブルだ!君達スリザリンのテーブルはあっちだろう!?」

 

 しばらく言われる言葉を受け流していると、大広間の扉からハリーとロンがこちらにやって来た。

 

「おっと、話し込んでいたら随分時間が経ってしまっていたらしい。ウィーズリーはともかく、君とポッターには話したいことが沢山あったんだが………それはまた今度にするとしよう。朝食の時間がなくなる」

 

「何だと!?僕だって君なんかと話したくない!」

 

「ロン、朝っぱらうるさい。じゃあ、私もそろそろお腹が本格的に空き始めましたし、ドラコをからかうのまたの機会にします。スリザリンのテーブルに行ってもいいのですが、ここまで周りに嫌がられる事をやるほど、私性格ネジ曲がってないですし」

 

「何よ!?マルフォイに暴力振るったくせに!」

 

「ともかく、これ以上の話は別の機会にしよう。本当に朝食の時間がなくなってしまうからね。………しかし、ついさっきといい、今といい………セラスは僕の事を一体何だと思っているんだか……まったく

 

「いい感じに反応示してくれる、ここでは数少ないツッコミ役です。いやー、ほんと、ドラコは毎度、毎度、いい感じな反応をこっちに返してくれますからね。こっちとしても、からかいがいあります」

 

「からかうな。誰がツッコミ役だ。どんな風に僕をイメージしたらそうなった?………そこそこ小声でかなり距離も離れたっていうのに、なんて地獄耳なんだ

 

 "それも全部聞こえてるんですけどね"、などと私が人知れず考えていると、ドラコは自身のスリザリンのテーブルの席に座った。

 

 ドラコを守るようにいた周囲の生徒達もまた(パンジーは最後まで私の事をどうだ、こうだ、と周りに聞こえる声で文句を言っていたが)スリザリンの席に座っていき、どうも納得しきれない表情で自身のテーブルに戻っていく。

 

「セラス……昨日も言ったけど………マルフォイの家は純血主義で、”例のあの人”に仕えてたっている上に、先祖代々スリザリンに入っている様な、根っからの嫌な奴等何だ。周りのマルフォイの取り巻きも含めてね。君も散々周りから何だ、かんだって、言われてたわけだし………これ以上マルフォイと付き合うのは君にとって良くないよ」

 

「じゃあ、私も昨日言いましたが、主義主張とか、過去とか、そういうのはあまり突っ込まない方が良いですし、何で昨日よりも文句の量が増えてるんですか!あのぐらいの真正面からの文句なら十分聞き流せる範疇ですし、そもそも文句の領域に片足が入るどころか、指先の爪すら入っていません。私が嫌って思っていなのに、勝手に私の交友関係を決めないでください」

 

「君のためを思って言ってるんだぞ!?頭を叩くことないじゃないか!?」

 

「自業自得。身から出た錆です」

 

 ロンの言葉を無視して、私はベーコンを頬張る。

 

「確かに、ロンが言い過ぎてるところはあるけど、セラスがマルフォイの周りの人から色々と言われてた事は確かだし、なるべくドラコと離す時は2人きりとか、あまり周りに人がいない時に話した方が良いんじゃないかな?………正直、僕はドラコの列車の中で顔合わせた時からあまり好きにはなれないって、なんとなく思ったし、周りのスリザリンの人達もなんとなく、セラスの事をそう思ってそうだし」

 

 ハリーがそう諭すように言った言葉をベーコンを飲み込みながら頷き、私は心の中で顎に手を置く。

 

 ……確かに、周囲の人間が警戒している中で好き勝手やろうものなら、どちらにも迷惑が掛かるであろう事は火を見るよりも明らかであり、私としてもあまりそれは得策ではない。

 

 少々面倒ではあるが、しばらくの間、噂が落ち着く間だけでも、少しは時間はおいてそれからどうにかしていくのもありかもしれない。

 

 ……ドラコを弄るのやめるつりはないけど。

 

「………まぁ、確かに、それは一理ありますね。ドラコ以外の人達がどんな性格で、仲良くなれそうなのかはまだわからないですし、何よりあっちが警戒してる中、自分から真正面から突撃するのはあまり得策じゃありません。………ハリーの言う通り、次からはちょっと気をつけてみます」

 

「うん。その方がいい。これからは、そうした方が良いよ」

 

「はい、気をつけてみます」

 

「おい!何でハリーの意見はちゃんと聞いて、僕の意見は無視するのさ!?」

 

「そりゃあ、発言の8割………いや、9割?………いいや、9.9割が文句のロンに対してハリーは私の事咎めようとかしていませんし、あとは、まぁ、ぶっちゃけ好感度の差です。私の中のホグワーツ内好感度ランキング、現在ぶっちぎりでロンが最下位ですから」

 

「何でだよ!?最下位って、まさかマルフォイより下!?何でマルフォイより順位が低いんだ!?」

 

「セラスどうしたの?何でこんな朝から騒がしいのよ。あなたまた何かした?」

 

「あっ、現在ドラコと1位と2位を、超接戦で争っているハーマイオニー」

 

「何の1位と2位?というより、何の話?」

 

「いえいえ。大したことじゃないのでお気にせず」 

 

 またしても頭にハテナマークを浮かべる事となったハーマイオニーを連れて朝食を取り、時刻は早くも最初の授業の時間。

 

 華々しい、ホグワーツ最初の授業はまさかの、私が楽しみにしていた授業の1つである『妖精の呪文』。

 

 担当する先生は非常に小柄で、ゴブリンの血を引いているらしい、フィリウス・フリットウィック先生で、身長差を少しでも無くそうと、机の上に本を積み重ねて立っているのが少し可愛い。

 

「さて、新入生のみなさん! 私が妖精の呪文を教えるフィリウス・フリットウィックです!この授業の内容は主に、君達が3年生に習いだす呪文学の入門!魔法を実践で行っていきます!ただし、アーカードの呪いだなんだといって、および腰で杖に魔力を込めすぎると怪我の元なってしまうため、そこだけは注意をお願いしますね。それとセラス・ヴィクトリア!誤っても実習の際に杖をだれかに向け、まして魔法を使うなどということはないようにお願いします。わかっていますね?」

 

「は、はい!前までもありませんでしたが今後もないように気をつけます!それと!この前のことはすいません!!」

 

「よろしい。では、まず、今回の皆さんに教える呪文は─────」

 

「うぅ………。楽しみにしてた授業の初っ端でまさか……こんな事を公衆の面前で言われるなんて…………。………私、大人しくしてる以外ないじゃないですか」

 

「それが一番なのよセラス。元々、入学取り消しになってないだけ奇跡なんだし、これ以上下手な騒ぎを起こしたらあなたは間違いなく退学。大人しくしているのが一番よ」

 

「それはわかっているんです………言われずとも大人しています…………。………ですけど……周囲の視線が痛いというか……ハーマイオニー達ある程度親しい人達以外から地味に…距離を置かれているというか………針の筵というか………色々と悲しい要素しかなくて」

 

「………それはもう、仕方のないことだから、どうしようもないわよ。今後は真面目に授業を受けたり、授業で沢山得点を取ったりとか色々して、少しずつでも印象を良くしていくしか………どうすることも出来ないわよ」

 

「ですよね………それもわかってました………周りの雰囲気からして………。我ながらやったこと………全部自分に返ってきてるな…………。…………今の私じゃあロンのこと………自業自得だなんて………言う資格ないかも」

 

「セラス・ヴィクトリア。何か話していたようですが、この部分に質問でも?」

 

「いえ、何でもないです。どうぞ、授業を続けてください」

 

 何だか、色々と悲しいことはあったものの、フリットウィック先生の教え方がかなりわかりやすかったのと、今回習った魔法が基礎中の基礎という事もあり、初めての呪文ということで周囲が出来るかどうか戸惑う中、私とハーマイオニーはスムーズに杖を振って呪文を唱え、見事どちらも1発で成功。

 

 2人も1発で魔法を成功させる生徒が出るとは思っていなかったのか、はたまた如何にもTHE問題児の私が問題を起こさず魔法を成功させた事に驚いたのかはわからなかったが、驚きつつもフリットウィック先生はどちらの魔法も素晴らしかったと称賛を送り、私達は無事得点を獲得することが出来た。

 

 そして、そんな妖精の呪文の授業が早くも終わり、ホグワーツの動く非合理的に満ちた階段を登った先の教室で行われた次の授業は、ハーマイオニーが私を片言にした科目こと『変身術』。

 

 実技の中であまり得意ではないものの、板書が少ないであろう科目ということで楽しみにしていたのだが、そこの件の授業の担当の先生は、暫定ホグワーツで一番怒せたら駄目な人こと、マクゴナガル先生。

 

 フリットウィック先生よりも厳しい視線で私に向けており、私は思わずその厳しい視線から目を反らし、城の外の森を眺め現実逃避を決め込む。

 

「変身術はホグワーツで学ぶ中でも最も複雑で危険なものの一つです。いい加減な態度で私の授業を受ける生徒には出て行ってもらいますし、二度とクラスに入れるつもりはありません。初めからの警告をしておきます。誤っても人に杖を向けたり、人に魔法を使ったり、人に暴力を振るったりしないように、深くお願いしますよ、皆さん」

 

(皆さんっていうか……私に対してしか言ってませんよね……どう考えても………。フリットウィック先生みたく名指しで言っていない分……寧ろこっちの方が色々と刺さるな………)

 

「さて、今から皆さんがホグワーツを卒業するに当たっての、目指すべき最終地点をお見せします。魔法に関する研鑽と知識を高め、これぐらいのことができるようになる事を期待しています」 

 

 そう言うと、マクゴナガル先生は教卓に向かって杖を振り、次の瞬間、教卓は大きな豚に変わった。

 

 そしてマクゴナガル先生がもう一度杖を降ると、何回か鼻を鳴らしていた豚は元の教卓に戻り、教室が拍手で包まれた。

 

 その後はハーマイオニーがしていた予習の通り、変身術の基礎理論についての軽い講義が行われ、一人ひとつ配られたマッチ棒を針に変える練習が始まった。

 

 全員に針が配った後のマクゴナガル先生は、私がよからぬことをしていないかをやはり警戒し、重点的に私とハーマイオニーの席の周辺を巡回した。

 

 時折私に向かって飛んでくる視線の圧を含め、何処か居心地の悪さを私は自業自得とはいえ、感じる羽目となる。

 

「……あの、すいません。一応マッチ棒を針に変えたんですけど、評価としてはどのぐらいですかね?得点とか貰えたりしません?」

 

「ふむ………確かに、見ての通りこのマッチ棒は銀色ですし、先端部分もよく尖っています。形状も実に真っ直ぐで、曲がっている様子もありませんし、今回の実技の評価としては満点。得点を渡すに値します」

 

「よしっ、得点ゲット。ありがとうございます」 

 

「ですが、何故?あなたはつい先程の講義の際、内容をノートに書き写していなかったのです?変身術において理論は全ての要であり、とても重要なものだと説明したのですが………それなのにも関わらず何故ノートが真っ白なのです?まさか、寝ていた訳ではありませんよね?」

  

「(ギクッ)…………こ、これは、ですね。もう暗記してる内容だから、今更別に書いて覚えたりしなくていいかな、と考えた上での帰結の末でして、決して座学がつまらなかったから、というわけでは────」

 

「グリフィンドールに5点。………本来ならば10点を付けるつもりだったのですが、その様ないい加減な態度で授業に臨まれては困りますし、その様な生徒が私の授業を受ける資格はありません。今すぐこの教室から出てもらい、2度とクラスに入れない事にしても構わないのですが………」

 

「は、はい!書きます!書きます!今すぐノートに書き写します!寝てしまってすいません!すいません!!」 

 

 ………巡り巡っての行いは全て自分に返ってくるもの。

 

 悪い事をすれば警戒されますし、真面目に物事に取り組むなければ痛い目に遭う。

 

 今後はより気を引き締めて汚名返上をし、少しでもイメージを良くしていかなければならないと思わせる程には、実に悪い意味で濃密な初日だった。

 

 

 

  

 




 
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