皆様、大変お待たせしました。どうも、熊です。
先日無事受験が終わり春休みに入ったのですが……突如、これまで編集に使っていたChromebookが壊れ、その修理に時間が掛かり、編集が遅れることとなりました。申し訳ありません。
なるべく投稿頻度を早めるよう努力しますが、今後の私生活の諸々によって編集ペースがこれまで以上に不安定になってしまうかもしれないでしょうが、どうかそこを御理解の上、気長に更新をお待ちいただけると大変ありがたいです。
………えっ?
スマホでも編集できるのに、修理が終わるまでずっとスプラトゥーンをやっていたって?
………それはそれ!これはこ───
彼の記録は、ここで途絶えている。
"グリンゴッツ侵入者さる"、という強烈な新聞の見出しに教師陣達が眉をひそめるものの、私達学生はそのような対岸の火事のような事は、全く気にも止めやしない。
そのような話題以前に、せっかくの飛行訓練がスリザリンとの合同授業という事態によって、全体のテンションが1段も2段も大下がりしていることも大きく関係しているのかもしれないが。
「そらきた。お望み通りだ。スリザリンの目の前で箒に乗って、物笑いの種になるのさ」
そうハリーが冗談を言い、談話室の掲示板に明らかな卑屈な表情を向ける。
「そうなるとは限らないよ。マルフォイだって、クデイッチが上手いっていつも自慢してるけど、きっと口先だけに決まってる」
「それが口先だけなのかは私にもわかりませんが、仮に失敗したとしても始めて何ですから失敗して当然です。笑われるところなんて、一つもないですよ」
「それはセラスが一人だけ飛行訓練免除になってるから、気楽にいれるだけだろ?今回ばっかりは羨ましいよな。肌が弱いって理由で恥かかずにいられて、一人だけのんびり遠くで観戦なんて」
“その分たっぷり箒の歴史についてのレポートをまとめなきゃいけませんし、数日前から取り掛かってはいるものの、期限までに終わるか、だいぶ怪しいですけどね“
などと愚痴りたくはなったが、こればっかりは2人に関係ないですし、実際少し気楽なのは事実なので、ここはぐっと、私は言葉を喉奥に飲み込んだ。
それから、飛行訓練が行われる木曜日までの時間はあっという間に過ぎ、早くも今日は飛行訓練当日。
何だかんだ言いつつも皆、飛行訓練が楽しみなようで大広間はその話題一色。
ドラコは飽きず昔ヘリコプター(本当か確かめるため、ヘリコプターがどんな乗り物なのかを聞いてみたところ、明らかに車の形状の外観を話し始めた為、多分嘘)を躱してみせたことを他のスリザリンの友達に自慢していたし、ハーマイオニーは緊張からか、朝から私が向ける言葉よりも「クィディッチ今昔」の本を読み漁る事に集中しては、時折壊れたラジオのように突如として解説を始めたりしていたし、ネビルは少しでも訓練を上手くやるため、私は期日ギリギリのレポートを完成させるため、ハーマイオニー先生の解説を一語一句を聞き逃さぬよう、必死に耳を傾けていた。
そんな折、毎朝恒例の梟便が今日も忙しくドッとやって来ては、手紙や新聞を生徒のテーブルに投げ込んでいき、そのうち包みの一つがネビルのテーブルに放り込まれる。
「ばあちゃんからだ! 入学祝いに買ってくれた『思い出し玉』を家に忘れてきたんだけど、それを届けてくれたみたい!」
ネビルはそう嬉しそうに包みからビー玉程の大きさの思い出し玉を取り出し、それをみんなに見せた。
「何か忘れてるとこの玉が教えてくれるんだ。こいういう風に赤くなったら──あれれ?」
そう首を傾げながら、ネビルは玉を握る。
「………何か忘れてるってことなんだけど………僕、何忘れてるんだろう?」
………玉は真っ赤に光るばかりでそれ以外の効果は見せず、ネビル何度も首を傾げ、何を忘れてるかを思い出そうとする羽目になった。
この玉は見ての通り、忘れた事があることを教えてくれる"だけ"の魔法具であり、それ以外の使い道と言ったらキャッチボールの玉にするぐらいしかない。
昔、私が初の給料でなんとなくこれを買おうとしたところ、ウォルターさんとインテグラさんから猛烈な反対とこれについての酷評を散々されたのだから、最早色々とご察しである。
「って、ちょっと。何勝手にネビルのものを取ってるですか、ドラコ?見せて欲しいなら、ちゃんと本人に一言言わなきゃ駄目じゃないですか」
私が昔の事を少し振り返っていると、何処からかドラコがネビルに近付き、手に持っていた思い出し玉をひったくった。
咄嗟に私が気付いたから、手を掴み逃げるのを阻止を出来たものの、私が気づいていなければドラコは何処かにでも雲隠れしていただろう。
ドラコは私と目を合わせると途端、顔にバツを浮かべる。
「何、別に君が出てくる程の対した事をしたわけじゃない。ちょっと、この馬鹿玉を少し見ようとしただけさ」
「馬鹿玉って……。まぁ、言いたいことは何となく察しますが……人の物をちょっと見ようとしたには、明らかに手段が姑息すぎますし、その上何処かに雲隠れしようとは見せてもらう側の態度には到底思えません。一先ず、その思い出し玉を早く返して、一言でいいですからネビルに謝罪を入れてください。それが最低限の礼儀ってものでしょう」
「へんっ。誰が謝罪なんて言うもんか、あの大間抜けに。あんな程度で物を奪われる間抜けさ具合に、僕としては逆に十分なほどたっぷりと謝罪をしてほしいぐらいなんだからさ」
「マルフォイ!言わせておけば───」
「よしなさい。何をしているのです?」
ハリーとロンがドラコの言いようにカッとなって立ち上がった瞬間、話を遮るように何処からともなくマクゴナガル先生が現れ、私とドラコの方に近づいた。
どうも、マクゴナガル先生はこの様な面倒事に対しての嗅覚が、異常なほど発達しているらしい。
「いえ、何も。特に先生に報告するような事はしていません」
「えっと、ほら、あれですよ!あれ!キャッチボール!調度いい大きさの玉があったので、一緒にキャッチボールしてたんです!あっ、よかったら先生も一緒にやります?」
「やりません。朝食席でその様な事をするとは感心しませんよ2人とも。特にミス・ヴィクトリア。今日あなたには提出予定のレポートがあったはず。それに加え今朝、マダム・フーチからはそのレポートが提出されていないと聞いています。……まさか、やるべき事があるのにも関わらず、それをやらず目先の欲に囚われ、たった今遊び惚け他の人の朝食を妨害したなどと、いうわけではありませんよね?」
「な、何ですか、その決めつけ?ほぼそれ、やったって言ってるようなものですよね?流石に信用なさすぎじゃないですか?」
「まぁ、今回は大した騒ぎがないようなので一先ずはこれで終わりにしましょう。ですが、今度下手な騒ぎを起こすようであるのならば、私は迷わずあなたを退学させる事を辞さないつもりな事を、決してお忘れなく。例え、あなたが私の担当するグリフィンドール生だとしてもです。では、皆さん。席に戻り朝食を続けてください。今日の授業も大忙しですから」
「あの、ちょっと?私がやったってことの訂正がまだですよ?忘れてる事がありますよ?ちょっとー?」
私の言う事に全く耳など貸さず、マクゴナガル先生は何処かに行ってしまい、ドラコは私に思い出し玉を押し付けると逃げるように、クラッブ、ゴイルを連れてスルリと逃げた。
その後はいつもよりも気持ち早く、授業がサクサク(クィレル先生の授業は相変わらず苦痛だったが)進んでいき、早くも時間は午後三時半。
他の人達にとっては運が良く、私にとっては運が悪く、校庭は絶好の訓練日よりであり、いつもよりも念入りに服や帽子で肌が隠れているかを確認しながら、スリザリンとグリフィンドールの生徒達が集まっている場所から少し離れた場所に見学の為、私は向かった。
校庭には既に箒がドサッと並べられており、飛行訓練を担当しているマダム・フーチが城の方からこちらに駆け寄って来る。
「何をボヤボヤしているんですか! みんな箒の傍に立って! さあ早く!!」
マダム・フーチは如何にもな体育会系の教師ならしく、その圧に押されたのか先ほどまで飽きず、寮の小競り合いをしていた生徒達は急ぎ指示の通り箒の横に立つ。
「右手を箒の上に突き出して! そして、『上がれ』と言う!」
「「「上がれ!」」」
先生が指示をし、一斉に上がれと言ったものの、上手く箒が手の中に収まった生徒は経験者のドラコなどを除き、未経験者で成功したのはハリーと一定数のみ。
本人の才能や経験云ぬも勿論あるでしょうが、全体的に箒の質が悪いらしく、ここまで苦労するか?と少し疑問に思うほど全員が出来るようになるまでには時間が掛かった。
特にネビルの使っている箒は外れも外れの、柄が歪み、ブラシは使えるか使えないか程度なまでにボロボロの大外れ。
ピクリとも動きもせず、動いても何処かに飛んでいこうとするとんでもない代物であり、誰かがあの箒を使って事故を起こしたとしても驚きはしないだろう。
というか………あんな事故を起こしそうな物を放置するなんて………魔法界の危機管理意識はやはり理解できない。
あれで事故が起きて学校が責任を取るなんて馬鹿馬鹿しいですし、あんなのに乗って死んだなんて事になったら、死んでも死にきれず、ゴーストになるのがいいところだ。
何より……その手のプロで口を出すはずの教師がその様子を気にせず、静観しているのもかなりヤバいですし………明日は我が身なのに笑っているだけで、どれだけ危険があるかを感じ取っていない魔法界出身の人も人でかなり意識がガバガバ…………。
ほら。そんな風にドヤって、こっち向いて周りを笑ってばっかいるから、箒の持ち方を注意されることになるんですよ、ドラコ。
いくら慣れてるからって、そんなボロ帚使ってる以上注意はいくらあっても足りないんですし、ヘリコプターを躱したどうこうを言う前に、箒のちゃんとした握り方でも覚えてください。
「うるさい、余計なお世話だ。お前は僕の母親か」
「何ですかマルフォイ?何か質問が?」
「い、いえ何も。どうぞ進めて下さい」
「さあ、私が笛を吹いたら地面を強く蹴ってください。箒はぐらつかないように押さえ、2メートルぐらい浮上して、それから少し前屈みになって直ぐに降りてきてください。笛を吹いたらですよ。さぁ、1、2の―――」
「うわぁあああああ!!」
私がつい先ほどから心配していた通り、突如の悲鳴を合図に事件が発生。
ネビルの箒は大外れの1品だったらしく、本人の過度な緊張も相まって勢いよく浮かんで行ってしまった。
箒未経験者のネビルでは箒の制御は不可能でだろうし、飛び降りるにしてもネビルには無理………いえ、それ以前に飛び降りたら即死な高さまで箒は上昇してしまっており、最早本人がどうこうするのは不可能。
誰かがどうにかして助けるしかない。
「先生!早くネビルに浮遊呪文を!このままだとネビルが落ちて最悪死にます!!」
「ふ、浮遊呪文!?しかし、私はあまり呪文は得意では………」
「得意云ぬを言ってる場合ですか!?やらなきゃ人が死ぬんです!それでもやらないなんて、あなたそれでも教師ですか!?」
私が焦り気味でフーチ先生を詰め寄ると、先生はしきりに腰の杖を握ったまま黙り込んでしまった。
恐らく、マダム・フーチは確かに箒に乗る技術としてはホグワーツトップクラスの教師であり、その実力は自他共に認めるものなのだろう。
だが、いい選手がいい監督になるとは限らないように、凄い箒乗りが凄い魔法使いではあるとは限らない。先生はきっと、その一例だ。
なら、苦手なら苦手でしょうがないとして、何故念の為呪文が得意な教師とペアにするとか、予めクッションを用意するとかの対策をしていないんです!?
箒にずっと乗っているなら、それがどれだけ危険な事なのかもわかっているでしょう!?
これくらいマグルの小さな子供でも分かる事なはずなのに、なんで魔法界はそこら辺の意識がガバガバ過ぎるんです!?
ガバガバで済ませていい問題じゃないでしょ!これ!?
「や、ヤバい!落ちる!!もうネビル落ちるぞ!!」
「くっそ!本当にネビル助からないぞ!!」
私が頭の中で魔法界に対する最大級の文句と不満を垂れ流している間、あっという間にネビルは既に振り落とされかけてしまっており、もう誰の目から見てもこのままでは死ぬことは火を見るよりも明らかだった。
「ああ、もうっ!面倒事にはかかわりたくはありませんが仕方ありません!!はいっ!そこの人!早くどいて!!ネビルを助けます!もう時間がありませんから早く!!」
「お、お前みたいな蛮族がどうにかできるわけないだろ!グリフィンドールは黙って────」
「人の命が関わっているのにそんなこと言ってる場合ですか!?何もせず私を邪魔をするというのならそこの全員1発ずつ本気で殴りますからね!?いいですか!?本気ですからね!!さぁ!私に殴られたくない人はさっさと早くそこをどいて!!」
私の必死の形相と脅しに怖気ついたのか、そこにいたスリザリン生はギョッと青い顔をするとその場から逃げ出し、そこに走り込んでいた私は腰の杖を抜き、スリザリン生がいた場所に杖先を向ける。
「
呪文を唱えるとゴゴッという音と共に地面が盛り上がり、最終的に階段状の5つの壁が私の走り込む先に形成された。
無事魔法が成功したのを確認した私は更にスピードをつける。
「そいやっぁぁ!!」
我ながら女らしくない掛け声とともに、壁を足場にして跳躍し、調度のタイミングで落下していたネビルを空中でキャッチした。
さて、ここで疑問に思ったかもしれませんが何故、私が壁魔法なんかを使って足場を作ってネビル救出するというまどろっこしい方法を使い、マダム・フーチに言っていた浮遊呪文を何故自らやらなかったのか?
その答えは至って簡単で、同じ魔法を誰か別の人が使うにしても、その魔法の質は使用者の魔法の技量に強く依存しており、人一人を一人で浮かすにはかなりの技量が必要。
故に、バック一つを浮かす程度浮かせられる程度の技量しかない私では、この方法を使うこともできない。
また、人を安全に降ろすだけならクッション呪文という手もあるのだが、その魔法は単純に私が習っていない魔法の一つである為、今この場では使えない。
つまり、今の私は一時的に空を飛ぶ事が出来ても、その浮遊している状態を維持することはできず、安全に着地する方法もない。
よって自然と空にいた私は重力に従い
「いった!たった!たたっ!いったたたった!!アッツ!アッツ!!熱い!!」
ネビルを抱えたまま落下した後、3回程回転して顔面から地面に着地。
その上、落下した衝撃で帽子が軽く脱げて首元に日光が当たってしまい、私は突如走った痛みと熱さを前に思わず声を出して、地面を転げ回る羽目になった。
私は吸血鬼なのでこれぐらいの高さの落下で死ぬこともないし、怪我も負うこともない。
また、吸血鬼があるが故に日光こそはやはり苦手ではあるものの、水と比べ触れた瞬間一瞬で死ぬというほど日光は危険ではなく(5分以上当たったら普通に死ぬので、やはり危険ではあるが)、あくまで一瞬なら軽い火傷程度で済む。
だが、痛いものは確かに痛いし熱いし、ローブもスカートもあちこち汚れ、気分としては最悪だ。
「………まぁ、気分は確かにあまり良くはありませんし、あちこち痛かったりはしますが、ネビルも私も幸い無事生きてはいますし、何はともあれ命あっての物種。ネビルも大きな怪我もしていないですし、結果オーライで良しとしましょう」
しかし、よくよく状況を考えてみると人が死ぬという状況で、事故に遭った当の本人は気絶するのみで怪我をしておらず、無茶をして助けに行った私も服が汚れたぐらいで大した怪我はなし。
帽子が一瞬脱げ首元に軽い火傷をしてはいるものの、これくらいなら一晩寝ればどうにかはなるし、吸血鬼の身からすればこの程度の火傷怪我にも入りはしない。
今回の事態の被害としては、正に幸運と言い他ないだろう(それでも魔法界の危機意識にはかなり文句はあるし、あの箒は即刻処分するべきだとは思うが)
「通しなさい! ほら、道を空けて!」
私が帽子を被り直して火傷部分を抑えていると、こちらに駆けつけてくる生徒を押しのけながらフーチ先生がこちらにやって来た。
気絶しているネビルの様子を確認しに行ったフーチ先生に続き、こちらに来たハーマイオニーの顔には不安と心配の感情で溢れており、改めて自分は無茶をやったのだと、否が応でも考えさせられる。
「セラス大丈夫!?何処も怪我してない!?」
「あっ、ハーマイオニー。心配をおかけしました。落下の衝撃であちこち体は痛いは痛いですが、どうにかこの通り、元気いっぱいです」
「そう、それは良かった。けど、だとしても、なんて無茶をしてるのよ………」
「ははっ、はははっ…………。………その節は大変心配をおかけしました」
「ロングボトムの方は……気絶しているだけで大きな怪我はなさそうですね。ヴィクトリア。あなたは何処か痛いところはありますか?」
「い、いえ。対して何処も。我ながら昔から体が頑丈なのが取り柄でして、これぐらいなら何ともなく、特に問題は───」
「噓でしょ、セラス。あなたが手の押さえてるとこ、軽くではあるけど大きな火傷があるもの」
「ちょっ!ハーマイオニー!!」
「ふむ………確かに擦り傷などは何処も見当たりはしませんが、グレンジャーの言う通り首元に大きな火傷があります。……確か肌が非常に弱く、日光に長時間肌を晒せないと聞いていますが、もしやロングボトムを救出した際にこの火傷を?」
「あー、まぁそ、うです、はい。一瞬ですけど帽子が脱げちゃいまして、多分、その時に、軽く」
怪我などあれば余計に目立つので嫌だったのだが、フーチ先生の言葉と私はの説明によって周囲の生徒がざわざわと話し出し、私は思わず視線を反らし、何処吹く風で口笛を吹く。
「私の不適際でこのような怪我をさせてしまうとは大変申し訳ありません。あなたのその勇気を称え、グリフィンドールに5点を差し上げましょう。他に本当に怪我はないのですね?」
「は、はい。さっきも言った通り、頑丈なのが取り柄ですから」
「私は2人を医務室に連れていきますから、その間誰も動いてはいけません。箒もそのままにしておくように。勝手に箒に乗ったりしたらクィディッチの『ク』の字も言う前にホグワーツから出ていって貰いますからね!」
そう言うとフーチ先生はネビルを抱えて医務室に向かい、私も周囲から逃げるように、駆け足でフーチ先生についていった。
医務室は相変わらず非効率的な動く階段を登って、登った先の3階にあり、途中何度も医務室に行く前に追加で怪我をしそうになりながらも、私達は医務室の扉を開ける。
「マダム・ポンプリー!ここにいらっしゃいますか!?」
「ここに最初からいますよ、フーチ先生!医務室では静かに!」
フーチ先生が大声で名前を呼ぶと、医務室の奥からホグワーツで校医を務めているマダム・ポンプリーが負けず劣らず大きな声を出しながらこちらにやって来た。
抱えられているネビルを見て大体を察したのか、マダム・ポンプリーは即座にネビルのローブを軽く脱がせて怪我無いかを確認し、続いて私の方を見る。
「ロングボトムは気絶しているだけで、外傷は特になし。ヴィクトリアはどうもあちこちローブが汚れているようですが、そちらの方も何処か怪我を?」
「いえ。私は特に怪我してないんですけど………」
「肌に日光が触れてしまったようで、首元に軽い火傷があります。この子事前報告にあった、肌の弱い子でして」
「ああ、なるほど。それでこの火傷ですか。ロングボトムはベットで休ませるとして、この程度の火傷ならば数分で授業に復帰できます。私が2人の様子を見ておきますので、先生は授業に戻ってください」
「そうですか、わかりました。では、ヴィクトリア。治療が終わり次第、無理せずでいいので授業に戻るように。一先ず、私はこれで」
フーチ先生はそう言いつつ頭を下げると、少し急ぎ足で医務室を出ていった。
「ほら、この軟膏を首に塗って。少しスッとしますが、これさえ塗れば痕も残りません。さぁ、早く」
フーチ先生が出て行ったタイミングを見計らい、軟膏を持って来たマダム・ポンプリーはせかしつつも軟膏を手渡し、私は日当たりを気にしつつ帽子を脱いで火傷部分に軟膏を塗った。
塗った直後スッとした感覚とともに、数秒前まであった痛みと熱さは一瞬のうちに引いていき、つい先ほどまであった火膨れはまるで、元からなかったように消えていく。
「よし、これでいいでしょう。次にローブを脱いで、脱臼と骨折についての確認です。目立った怪我がないにしろ、何せ高いところから落ちたのです。あなたが気づてないだけで、あちこち骨が折れてるかもしれませんからね」
いや、本当に大丈夫ですから審査はいらない……と言おうとしたのだが、マダム・ポンプリーは恐るべき速さでローブを脱がして検査を行っていき、私はされるがまま検査が終わるのを待つ事となった。
吸血鬼があの程度の高さで怪我をするわけもないのだが、私が吸血鬼だということを知らないマダム・ポンフリーは肌のあちこちを確認しては首を傾げ、下手に怪我について質問されないようにと、私はぽんやり窓の外の風景を覗き見る。
「……んっ?……何やっているんですか、あの二人。フーチ先生は待っているようにって、ちゃんと全体に伝えているはずですよね?」
外を眺めていたその最中、私の視界にドラコとハリーが突如現れたと思うと互いを追いかけあい、周囲の声も気にせず二人は悠々と箒で空を飛んでいた。
ドラコがネビルの思い出し玉を握ってるあたり、ドラコがちょっかいを出して煽ったのが原因だろうが、ただでさえ目の前で大事故起きかけた上に、先生に乗れば退学と言われているのにも関わらず箒に乗って玉の取り合いなんて………あの二人は本当に馬鹿なんだろうか?それとも魔法界全体の危機意識が、許容出来ないほど低いだけ?
もう、何が何だか、今日は訳がわからない事があまりにも多過ぎる………。
「検査は終わりです。それにしても怪我一つもないだなんて、よっぽど上手く落下したのですね。ロングボトムは私が見ておくので、あなたは早く授業にお戻りなさい」
「どうも、ありがとうございます、マダム・ポンフリー。では、私はこれで」
検査が終わり、マダム・ポンフリーに軽く会釈をすると、少し早足気味で保健室を出て階段を下っていき、あの2人を先生に見つかる前に回収しようと、私は大急ぎでついさっきの運動場にとんぼ返りをした。
あのまま放置したら延々に煽り合いと危険行動は終わらないだろうし、何よりあんな光景マクゴナガル先生にでも見つかったら、冗談抜きで、退学だって十分ありえる。
ハーマイオニーは二人を止めれないだろうし、他の人達は騒ぐばかりで止めるどころか、寧ろ二人を更に煽り立てるだけ。私が行かなければどうもこうも、収集が着かない事態になりかねない。
斯くして、大急ぎで階段を降り終えたその刹那、運動場から件のマクゴナガル先生がハリーを連れてこちらに向かって来ており、最悪の展開では!?、と私の背中に一筋の冷たい汗が流れる。
「おや、ミス•ヴィクトリア。ロングボトムを庇い、保健室に行っていると聞いていたのですが、もう怪我の方は大丈夫なのですか?」
「あっ、はい。首元の火傷も綺麗さっぱり無くなりましたし、この通り頑丈なので何処も怪我をしていません。どうも、ご心配おかけしました」
「友を思いやるのは大変結構ですが、それで大怪我をしては元も子もありません。今回は対した怪我ではなくて良かったですが、今後このような事はよく考えた上で、行うように」
「はい、すいません。ところで、そこのハリーは………何か………してしまったのでしょうか?一応、今回は事はハリーにとっても………ドラコにとっても初犯ですし………処罰はともかく……退学はどうか……なしにしては………」
「退学?何の話です?ヴィクトリア。彼のようなせっかくの逸材を、みすみす退学になどするわけがないでしょう」
「えっ、逸材?せっかくの?それってどういう?」
「それについてはあなたも直ぐに、ポッター自らの口から聞くことになるでしょう。では、私とポッターはこれで。貴方も怪我に気を付け、速やかに授業へお戻りを」
「は、はぁ。わかりました。じゃあハリー、私はこれで」
「うん、セラス。また後で」
私の予想と打って変わり、終始上機嫌だったマクゴナガル先生はハリーを連れて、動く階段をスタスタと登っていった。
マクゴナガル先生の発言と上機嫌な様子に首を傾げつつも、城の門を出て校庭にいたフーチ先生に軽く戻った事の挨拶をし、私は授業に戻った。
既に行われていた授業は先程の事故もあってか、かなり慎重に行われており、慣れていない人は3、5メートル、慣れている人は10数メートルの浮遊といった形で、大まかなグループ分けされている。
「セラス、もう大丈夫なのかい?君も災難だよな。あんな間抜けの巻き添え喰らって、首元に火傷だなんて」
人が少ない場所に移動していると、何処からともなくドラコが現れたと思うと、そう耳元で囁いてきた。
真面目に授業をやりなさい、とでも言おうと思ったが、日常的に箒を乗り回しているドラコからしたら、この程度の授業などつまらなくて欠伸が出るほど退屈なのだろう。
「事故の件はいいんですよ。怪我はどこもしてませんし、火傷の痕ももう残ってませんし。というか、そんなことよりドラコ!私がいない間に何を勝手に箒を乗り回したかと思えば、ネビルの玉を巡って、ハリーと取合いを一緒にしているんです?勝手に飛んだら退学だって言われているのにそれをやるだなんて……あなたは一体馬鹿なんですか、馬鹿。流石にどうかしてますよ」
「チッ、見られてたのか。対した事じゃないさ、あの程度。僕は事実を言っただけだっていうのに、あのポッターが勝手に逆上して、勝手にマクゴナガルに連れていかれただけだろ?対した事じゃ───って、急にそんな頭を叩くことないだろ!?」
「あなたというか……魔法界というか……本当に危機意識が欠けているんですね。よくよく思い出してくださいよ、フーチ先生の言葉。先生は、勝手に箒に乗ったりしたらクィディッチの『ク』の字も言う前にホグワーツから出ていって貰う、って全体に言ったんですよ?この命令を対した理由なく一個人が破れば当然罰が発生しますし、今回に関しては言葉通りのホグワーツ退学の罰が、あなたを待っているんです」
「まさか、僕がそれで退学するとでも?僕は聖28一族のマルフォイ家の人間だし、あんなものは所詮脅しさ。そんなこと、常識的に考えてあるわけがないだろう」
ドラコの明らかに反省していない様子に呆れつつ、私は思わずため息をついた。
自業自得でもしない限り、人は全く学ばないと聞いたことはありますが、ここまで学ばないとは思いませんでした。
良薬口に苦し手ですし、私もやりたくないんですが……もうここでやらないと、この先同じ事が起きる可能性が十分にある。
やりたくはありませんが、仕方ないですね。仕方ない。私は、やりたくないですが、ドラコの為ですし?仕方ないです。うん、仕方ないですね。
「あれ、おかしいですね?ハリーはついさっきマクゴナガル先生と一緒に退学の準備をするって、泣きながら言ってましたよ」
「へぇー……退学。………なかなか見れないポッターの泣き顔、せっかくなら見てみたかったな」
「なんで他人事いられるんです?ハリーが退学ってことは、今回の事件の首謀者もそれ相応の罰を受けることになるんです。全体のルールを勝手に破ったんですし、当然といえば当然ですよね」
「……へぇー、罰を。………ちなみにどんな?」
「そりゃあ、まぁ、退学じゃないですか?退学。ハリーがそんぐらいの罰を受けるんですし、当然といえば当然ですよね。あと前にこういう事があった時、その時の生徒は杖を折られた上で、どっかで無理矢理働かされることになったらしいですね。………だから、まぁ………はい。そういうことです、はい」
全く反省していなかったドラコに対し、私は思いっきりの
一応フーチ先生の言葉は頭に入っていたらしく、言葉を思い出すとともに、ドラコの顔はどんどん青くなっていく。
私というと、そっぽを向いて、笑うのを全力で我慢するのに必死だ。
「おい、冗談だろ。どうせお前のことだ、からかっているだけに決まってる。特に最後の杖を折られた?……へんっ、馬鹿馬鹿しい。そんなこと父上から聞いた事もない」
「いやぁ、それが私はここ出身の上司からその話を聞いてまして、規則を犯したら最悪そうなるぞーって、口酸っぱく忠告されてたんです。だから、規則を侵さないよう気を付けてましたし、周りの人も規則を侵さないようにって、気を配ってたんです。……だからこそ、残念です。こんな形で、ドラコがホグワーツからいなくなるなんて!」
「……嘘だろ、セラス。頼むから、冗談だと言ってくれ。……セラス、何故ついさっきからそっぽを向いている。何故震えている!?」
「じゃあ私、ハーマイオニーのとこ行ってきます。あなたと過ごしたホグワーツ生活、本当にそこそこ楽しかったです。心配せずとも、クリスマスカードはちゃんと書きますからね!」
「おい!僕が退学前提で話を進めるな!ちょっと待て!おい!頼むから嘘だと言ってくれ!!」
「何を騒いでいるのです!?ミスター•マルフォイ!今は授業の時間です!!」
自業自得とはよく言ったものだと思いつつ、私は大笑いを死物狂いで抑えつけながら、何やらポカンとしているハーマイオニーのところに向かって行った。
まぁ……今回でわかった事は全部で3つ。
危険意識の大切さ、反省する事の大切さ、そしてもう1つ。
………ドラコをからかって遊ぶのは………やはり楽しい、ということである。
オリジナル魔法解説
•パーリエース•エートス
杖を向けた先に数メートルの壁を形成し、相手の攻撃を防ぐ他、足場の生成を行う魔法。
この魔法を使う際に、必ず付近に壁を生やす土台が必要になってしまう点や、覚えたとしても連射できず、普通の魔法使いならば2、3枚程度壁を生成しただけで体力切れになってしまうコストパフォーマンスの点。
そして、敵の攻撃防ぐ圧倒的上位互換の魔法、プロテゴの存在によって、今では知る者が限られるほど、かなりマイナーな魔法となっている。
ただし長所として、難易度としては浮遊呪文と同程度の難易度である点が上げることができ、この会得難易度の低さから、セラスは日頃この魔法を多様しており、今ではHELLSING内でも右に出る者がいないほどの、圧倒的壁魔法の使い手となっている。(なお、この魔法を多用し過ぎた結果、セラスは『盾の魔法を覚えずとも、これを使い続ければ十分では?』という思考のループから抜け出せずにおり、現在セラスはプロテゴを覚えることができないでいる)