ハリー・ポッターと王立国教騎士団   作:熊田ラナムカ27

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 原作を見返せば、見返すほど分かる、ハーマイオニーの有能さと、ロンのモラルのなさ………。
 
 今回の話はかなりロンに対し、当たりがかなり強くなっていますが、熊個人がロンに対し恨みを持っているというわけではなく、話の都合上どうしても当たりが強くなっているだけなので、どうかそこをご了承の上、寛大なお気持ちで今話を読んでいただけると、とても幸いです。
 
 だが、やっぱりロン。鬼畜赤毛という汚名を、一生返上できると思うな(原作を見返して、つくづく思う)
 
 
 


9 Three headed dog in obvious trap

 

 

 ドラコがホグワーツ退学になるという話が嘘だという事を理解する間にも時間は過ぎ、早くも時間は夕食。

 

 ハリーがいつまで経っても戻らないことにロンはを心配し続けていたのだが、たった今その様子は大逆転。

 

「実は僕、グリフィンドールのシーカーに選ばれた」

 

「えっ!?シーカーだって!?」

 

 口をあんぐりと開けて驚いてはいるものの、何処かその表情は嬉しそうで、何処か羨ましそうな表情をハリーに見せた。

 

 シーカーとは魔法使いの間で大人気のスポーツであるクィディッチの面白さのうち、8割を占めるほどの花形ポジションであり、余程箒の扱いに長けていない限りは到底選ばれはしない。

 

 クィディッチの名手と言われるインテグラさんですら、あと一歩シーカーになるには腕が足りないと言われるほどなのだから、1年でシーカーに抜擢されるハリーの才能はそれほどなのだろう。

 

「代表チームに入れるだけで凄いっていうのに、まさかいきなりシーカーなんて。そもそも、一年生は代表チームには入れない規則なのに……」

 

「マクゴナガル先生がダンブルドアに頼んで規則を曲げたんだ。よっぽどグリフィンドールを勝たせたいみたい」

 

「如何にも厳格さの権化そうなマクゴナガル先生がそこまでするなんて………。………なんというか、色々と意外です」

 

「全くだよ。一年生が代表選手に選ばれるなんて、何年振りなんだろう?少なくとも僕は聞いたことない」  

 

「キャプテンのウッドは百年ぶりだって言ってた」

 

 ウッドって確か、入学式の日の如何にもクィディッチが好きな先輩ですよね。あの人、クィディッチチームのキャプテンだったんだ。

 

「来週から練習が始まるんだって。でも、誰にも言わないでくれよ。ウッドは秘密にしておきたいんだって」

 

「正に秘密兵器ってやつですね。凄い期待されてるじゃないですか」 

 

「ウッドから話を聞いたよ。僕達も選手だ」

 

「二人ともビーターだ。今年のクィディッチカップはいただきだぜ」

 

 私達が話していると、いきなり後ろからロンの双子の兄である、フレッドとジョージがそう言いながら顔を出す。

 

「インテグラとビルが居なくなったまではまだよかったんだが、チャーリーも居なくなってからは一度も優勝できてない。だが、今年は抜群のチームになりそうだ。マクゴナガル推薦だって、ウッドときたら小躍りしてたぜ」

 

「おっと、そろそろ僕たちは行かなきゃ。リー・ジョーダンが学校を出る秘密の抜け道を見つけたんだ」

 

「最初の週に僕たちが見つけちまったやつだと思うけどな。じゃあ、せいぜい期待してるぜ。最年少のシーカー様のご雄姿を」

 

 そうハリーの肩を叩くとジョージとフレッドは行ってしまい、それと入れ替わる形でクラップ、ゴイルを引き連れたドラコが代わるようにやって来た。

 

 流石に先ほどからかい過ぎたせいか、ドラコは私がいると気づくとしきりに辺りを見渡し、何か仕掛けられていないかを確認するが、当然何も仕掛けられてないし、その様子に私は思わずクスっと笑いを溢す。

 

「やぁ、ポッター。辛うじて首の皮一枚つながったようで何より結構だよ。尤も、その首の皮がいつ切れるかについては精々ご察しの通り、って言ったところだろうが」

 

「セラスにからかわれて顔真っ青にしてた割には元気だねマルフォイ。何をされるかビクビクしてるってのにわざわざこっちに来るだなんて、大層勇気があるというか何というか。それともそこの小さなお友達のお陰かい?」

 

「あれには笑いをこらえるのにも必死でしたよ、こっちも。からかったこっちもビックリするぐらい、いい反応をしてたので」

 

「少し黙っていようか、セラス。その礼はまた今度たっぷりさせてもらう」

 

「いやー、ごめんなさい、ごめんなさい。つい、面白かったもので」

 

人を散々からかって……全く。………さて、僕がここに来たのは他でもない。あの飛行訓練での玉の取り合い、その決着を着けようと思ったからさ。ご所望なら今夜だっていい。魔法使い同士、正々堂々決闘で決着を着けようと思ってね」

 

 決闘という単語にロンは目を大きく開き、ハリーはというと決闘が何なのか分からずドラコの手前、首を傾げてはいないものの、頭にはてなマークを浮かべた。

 

 魔法使いの決闘は魔法界で行われる1対1での真剣勝負であり、相手を先に武装解除、失神、もしくは先に降参させた方が勝ちの一種のスポーツだ。

 

 昔から争いごとを収める手段としては魔法界で重宝されており、うやむやになったという出来事にけりをつける手段としてはこれ以上ない、うってつけの手段だろう。

  

(けど、ドラコが自分からこういう事を言う辺り、どう考えてもきな臭さ過ぎるんですよね、どう考えても。もしや決闘というのは出まかせで、こっちにも恥をかかせようとしてるんじゃ………)

 

 正々堂々がモットーのグリフィンドールに対し、ドラコがいるスリザリンは狡猾さがモットー。

 

 何よりビビりなドラコが自ら校則を破りに行くとは考えにくいし、正々堂々の反対方向にいるドラコがそんなことをするわけがない。

 

 ハリーとドラコの会話は昨日よりも遥かにピリピリしているし、もしや、互いにライバル心というべきものが芽生えているのかも?

 

「どうしたんだい?もしや、魔法使いの決闘なんて聞いたこともないのかい?」

 

「なわけないだろ。君が正々堂々なんて言うからビックリしただけさ。僕がハリーの介添え人になる。君のは誰だい?」

 

「クラップだ。じゃあ、時間は真夜中。場所はトロフィー室にしよう。あそこはいつも鍵が開いているんでね」

 

「上等さ。精々首を洗って待ってろ!」

 

 頭にはてなマークを浮かべ続けるハリーに代わり、ロンが何故か決闘を承諾。

 

 先生の見回りが来るタイミングを見計らい、ドラコ達は去っていった。

 

「ちょっと、ロン。何で勝手に決闘の承諾をしてるんです?ハリー何も言ってないでしょ」

 

「だって、あの流れなら受けるしかないだろ。あれで断るなら腰抜けもいいとこさ」

 

「腰抜けになるぐらいなら決闘だって、何だって受けるよ。僕は構わない。それよりロン。魔法使いの決闘って?君が僕の介添え人ってどういう事?」

 

「魔法使いの決闘っていうのは、要するに魔法のぶつけ合いさ。介添え人っていうのは、君が死んだら代わりに僕が戦うって意味。なに、心配はない。今の君とマルフォイの決闘なんて、精々火花をぶつけ合う程度さ。死ぬなんてことはまず有り得ない」

 

「もし僕が振っても、何も起こらなかったら?」

 

「杖なんか捨てちゃえ。鼻にパンチを喰らわせろ」

 

「蛮族ですかあなたは。それより、ちょっと、2人とも落ち着いて。まず、この決闘は恐らく2人をからかう為の罠です。ドラコが真正面から勝負を仕掛けるわけがないでしょ!ここで仮に行っても敵の罠にみすみす突っ込むようなものなんですし、私の意見としては、この話は忘れるべきかと」

 

「じゃあ何だい?あの話が本当だったとして、そしたら僕等一生腰抜け呼ばわりだぞ?」

 

「腰抜けどうこうの前に、みんなのいい迷惑だわ。セラスの言う通り、この話は忘れるべきよ」

 

 ヒートアップしている2人を鎮めていると、近くで夕食を食べていたハーマイオニーが援護射撃とばかりに、ロンに対し反論をした。

 

 私が別の誰かといる時は基本別の場所で黙っているものの、今回は内容が内容だけに、遠くで黙っているわけにはいかなかったらしい

 

「夜、校内をウロウロするのは絶対に駄目。罠にみすみす飛び込んで捕まりでもしたら、グリフィンドールが何点減点されるかわかってる?」

 

「チャラになったとはいえ、特にハリーは今日既に問題を起こしているんです。ここで教師に見つかりでもしたら、一生ホグワーツ内で監視される事になりますよ」 

 

「余計なお世話さ。そもそも見つからなきゃいい話だ」

 

「大体、問題を起こさないでって言われても、問題そのものみたいなセラスに言われても、説得力が全くないさ。今のとこ君が一番教師の注目を集めてるし、隙あらばマクゴナガル先生に監視されてるし」

 

「人が気にしてることをぬけぬけと………!こっちだって好きでこうなった訳じゃありません!」

 

「ロン、行こ。この2人に何言ったって、聞きやしないさ」

 

「賛成だ。マルフォイの口車だけでも十分だっていうのに、校則馬鹿2人の相手なんか、更にご勘弁だ」

 

「ちょっと!2人共!!」

 

 私がそう言っても2人は聞かず、決闘のあれこれを話しながら寮に戻って行ってしまった。

 

「全く信じられない!せっかく人が忠告してあげてるってのに!」

 

「男の子って何でああ何ですかね?変なプライドで喧嘩を買って、変なプライドで忠告を無視して」

 

「どうしましょう………。監督生のパーシーに言って、止めてもらった方がいいのかしら?」

 

「まぁ、忠告は散々しましたし、口ではああ言ってましたけど、流石に本気にしないでしょ。何よりあんな、見え見えの罠。そんなものに引っかかるわけが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………引っかかりましたね。それも、盛大に」

 

「まさか本当に行くだなんて信じられない!こんな事なら、最初からパーシーに報告するべきだったわ!」

 

 時間としては一応、決闘が予定されている夜10時数10分前。

 

 流石に2人もわかってくれるだろうと思っていたのだが、ハーマイオニーがしきりに心配するので、念の為寮の扉が開いていないかの確認しに行くとこの有様。

 

 寮の出入り口である太った婦人(レディ)の肖像画は開いており、周囲にはグリフィンドール生2人がつい先ほど抜け出したと囁きだす数多の肖像画。

 

 抜け出す生徒を止める役割のはずの太った婦人(レディ)は夜のお出かけらしく、幸か不幸か2人を止める者はいなかったらしい。

 

「ハーマイオニーの言ってた通り、大人しく最初から談話室で待ち伏せするべきでしたね。流石にそこまでしては2人も可哀想だとあの馬鹿さ加減も知らず、待ち伏せを却下した私が馬鹿でした……」

 

「忠告したっていうのに行っちゃうなんて。あの2人は自分の事しか考えてないのかしら?」

 

「兎に角にも、決闘をやるっていう10時までには時間がありません。2人を早く探し出して、先生に見つかる前に連れ戻さないと」

  

「セラス正気!?それじゃあ、私達まで校則を破ることになるじゃない!」

 

「破る事になったとしてもです。ここまでの事をしたドラコの事ですから、先生に誰かが抜け出すっていう告げ口をしているかもしれません。その相手がフリットウィック先生ならいざ知らず、フィルチさんやスネイプ先生に告げ口でもしていたら………」

 

「何点減点されるか考えたくもない……。………そうね、仕方ないわ。本当はやりたくないけど、早くあの2人を追うことにしましょ。幸い決闘までにはまだ時間があるし、もしかしたら間に合うかも」

 

「そうと決まれば、早く行きましょう。大きな音さえ立てなければ、直ぐにばれるという事は───」

 

「だ、誰?誰かそこにいるの?」

 

 私とハーマイオニーが話していると、何処からともなく暗闇から声が聞こえ、暗闇から影がこちらに迫って来た。

 

 咄嗟に後ずさりをして後ろを確認するが、寮の扉は何処からか吹き込んだ横風によって既に閉まってしまっており、鍵の役割でもある太った婦人(レディ)がいない以上、寮に戻ることもできない。

 

 大急ぎで物陰に隠れ、腰の杖を抜き前方を目を凝らしてよく見てみると、そこには大人の陰もゴーストも見えず、そこには私達と同じぐらいの大きさの影が座り込んでいた。

  

 しかも、それは明らかに見覚えがある影であり、その影の正体は泣きじゃぐっているネビルだった。

 

「あぁよかった!見つけてくれて!保健室で目を覚まして、寮に行ったまでは良かったんだけど、新しい合言葉を忘れて締め出されちゃったんだ!」

 

「し、静かに!静かに!バレます!バレます!目が覚めたのはよかったですけど、一旦落ち着いて!」

 

「合言葉は『豚の鼻』よ。けど、寮の扉はもう閉まっちゃったし、あいにく太った婦人(レディ)は夜のお出かけよ。暫くは帰ってこないわ」

 

「そんなぁ!せっかくここまで怖いのを我慢して来たっていうのに!」

 

「扉の前で待っていればいずれ入れますよ。じゃあー、私達用があるので、ここら辺でお暇を………」

 

「待って!置いていかないで!」

 

 時間もないのでトロフィー室に行こうとしたところ、ネビルはパニックを起こしてそう叫び、私達は大急ぎでネビルの口をふさがなければいけなくなった。

 

 どうやら運が良く今の叫び声は誰にも聞こえていないらしく、周囲の様子に安堵しながら、私達は一度ネビルを落ち着かせる。

 

「ここに1人でいるのは絶対に嫌だよ。ここに来るまでに『血みどろ男爵』と2回もすれ違ったんだ。もう、あんな怖い思いしたくないよ………」

 

「と、言われましても、私達今からいけない所がありますし、それにつき合わせる訳にはいきません。確かにあのゴーストは見た目こそ怖いですが、別にこちらから何かしない限り、何かをすることもないでしょう」

 

「だとしても怖いんだ……どうしても………。……君達が何処かに行くっていうんだったら、僕も一緒に行く。校則なんかより血みどろ男爵の方が100倍怖いし……何より1人でいるのはもう嫌だ!お願い!絶対に騒がないから一緒にいさせて!」

 

「………だ、そうですけど、どうします?ハーマイオニー」

 

「………どうもこうも、一緒に行くしかないんじゃない?この様子だと……1人でいさせるわけにもいかないし………」

 

「ですよね。じゃあ、3人で、ハリー達を捕まえに行きますか」

 

「はぁー……。これで私を含めて6人が校則違反………。これで見つかったら……私達どうなるんだろう?」

 

「さぁ?考えたくないです………。とにかく……あの2人とドラコ………。後で絶対にみんなの前で謝らせてやる………!」

 

 ため息ばかりのハーマイオニーに、生まれたての小鹿の様に震えるネビル。あの馬鹿3人への決意を新たにした私達は階段を昇り、速やかに移動を開始した。 

 

 フレッドとジョージの話によると、夜は管理人のフィルチさんの猫であるミセス・ノリスが放されており、フィルチと共に学校中を見回っていると聞いていたが、奇跡的にどちらとも会うことはなかった。

 

 今日が満月の日という事も私達の味方をしており、電灯もなく夜は真っ暗な学校の通路を昼間同様、スムーズに移動できたというのは幸運だと言う他ない。

 

 ……尤も、校則を破らなければいけない事態なっていること自体、全くもって幸運ではないので、実質的にはプラマイゼロと言ったところないのかもしれないのだが………。

 

「マルフォイ、遅いな。もう決闘の時間はとっくに過ぎてるのに」

 

「きっと、怖気ずいて逃げたんだよ。散々煽ったくせに。腰抜けはあっちだったって、ことさ」

 

 走り続けてようやくトロフィー室に到着すると、中では呑気にハリーとロンが談笑しながら来るはずもない、ドラコの事を揶揄っていた。

  

 あんなにも分かりやすい罠に引っかかった挙句、呑気に談笑とは……こっちの苦労も相まって、最早殺意すら芽生えてくるような状況である。

 

 つい、手前にいたロンの頭に思いっきりの拳骨をしてしまったが、私は絶対に悪くない。

 

 だって、こんなにも馬鹿な事をしたこの人が悪い。全ての元凶は疑うまでもなくこの人達。そんな馬鹿2人をまとめて殴りたいところをロンだけで我慢しているっていうのも、我ながら凄いと思う。

 

「痛いな!何をするんだセラス!?急に現れたかと思ったら、僕の頭を思いっきり叩くなんて!!」

 

「黙らっしゃいこの大馬鹿!敵の分かりやすい罠に引っかかった挙句、そんな態度でいられたら、こっちで我慢の限界が来ますよ馬鹿!何です!?本当に馬鹿なんですか!?その頭は飾りですか!?」

 

「せ、セラス落ち着いて!声が大きい!」

 

「わ、罠ってどいう事?何で君達がここに?」

 

「どうもこうも、マルフォイは最初から来る気なんてなかったのよ。多分、あなた達をおびき寄せて、先生に捕まえさせるつもり」

 

「じゃあ、あれは全部嘘!?そんなぁ………」 

 

「だから最初から言ってるでしょ、罠だって。明らかに見え見えだったじゃん、どう考えても。何で、ちょっとは考えようとしないんですか?」

 

「グリフィンドールがどうなるか気にならないの?自分達の事ばっか気にして。私達が授業で集めた点数を、あなた達がご破算にするんだわ」

 

「ちっ、悪かったよ。もうしない。今回の事は謝るよ。これでいいだろ?」

 

「何よ!その態度!?こっちが心配してあげてるっていうのに!」

 

「心配してなんて頼んでないだろ!お節介もここまでくると、最早病気だね!」 

 

「何ですって!?」

 

「ちょ、ちょっと。喧嘩はよくないって───」

 

「誰だ?そこにいるのは」

 

 私が思いっきり怒り狂い、ロンとハーマイオニーの口喧嘩もヒートアップしてネビルが止めに入ろうとしたその最中、廊下から低い男の声が聞こえ、私達は喧嘩をしていたことなど忘れ、沢山の鎧が飾ってある長い回廊を這うように逃げた。

 

 声の主は案の定、フィルチさんだったようで、足元をランタンで照らしながら、闇夜でも目が利くミセス・ノリスに私達を探させようとしている。

 

 私達も抜き足差し足で逃げはするが、徐々に徐々に距離が近づいでいき、遂には恐怖でパニックになったネビルが突然悲鳴を上げ、闇雲に走り出した。

 

 そして走り出すも途中でつまずいてロンの腰に抱き着き、2人揃って鎧にぶつかり倒れ込んだ。

 

 やかましい音共に、連鎖してあちこちの鎧が倒れていく。

 

 

 

「逃げろ!」

 

 

 

 ハリーが声を張り上げて走り出し、倒れたロンとネビルを回収すると、遅れた私達4人も続くように、回廊という回廊を全力で疾走した。

 

 何処を走っているのか、何処に向かっているかも誰も分からずのまま私達はひたすらには走り続け、気づけば全員冷たい壁に寄りかかっていた。

 

 途中、「妖精の魔法」の教室を通ったあたり、この場所はトロフィー室からかなり離れているらしく、遠くでフィルチさんの声は聞こえはするが、到底すぐにこちらへ来ることはまずないだろう。

  

「フィルチは、撒いたと思うよ」

 

「それは、何となくわかります。けど、ここは一体どこで、寮は一体どっち?こんな騒ぎ、先生にバレでもしたら私達全員即退学ですよ!………早くどうにか、速やかに寮に戻らないと」

 

「えっと、ここは妖精魔法の教室だから、グリフィンドール塔はあっちかしら」

 

「とにかく速く────」

 

『おーや?真夜中に出歩いている1年生がいるぞ?』

 

 今度は何!?、と思わず言いそうになりながら中を見ると、そこにはこの学校に住むポルターガイストであるピーブスがこちらを見ながらケタケタ笑っていた。

 

 ピーブスはここに多く住まうゴーストとは根っこも種族も全く違っており、一言で言うなら混沌の権化。分かりやすく言うなら厄介者。

 

 この学校に住む生徒に嫌がらせに近いいたずらを会うたびに行っており、私も過去に水を掛けられそうになり、危うく入学半年も経たず、溶けて死ぬ羽目になるところだった。

 

 そんな彼がまたとない嫌がらせのチャンスを見逃すわけもなく、最悪の状況下でそんなものと出会った私達の背に、冷たい汗が何滴も流れていく。

 

「黙れ、ピーブズ、お願いだから。じゃないと僕等、退学になっちゃう」

 

『真夜中にフラフラしてるのかい?一年ちゃん。悪い子、悪い子、捕まるぞ』

 

「黙っててくれたら捕まらずに済むよ。お願いだ、ピーブス」

 

「い、今なら黙っていてくれたら、クレヨンとチョークを差し上げます!あと、ついでにありったけの羊筆紙もセットで付いてきます!このチャンスは今だけ!どうか、これでどうにか!!」

  

『うーん、それも気になるが、それじゃあ君達の為にならない。フィルチに言おう、言わなくちゃ。それが君達の為になる事だからね』

 

「黙れピーブズ!さっさとどいてくれよ!」

 

「ロ、ロン!?そんな相手を怒らせるような言い方したら!」

 

 ピーブズの様子に嫌気がさしたのか、愚かにもピーブズに対して怒鳴ってしまい、目を意地悪く光らせながら、ピーブズは息を大きく吸い込んだ

 

 

 

『生徒がベッドから逃げ出した!妖精の呪文の教室の廊下にいるぞ!!』

 

 

 

 ピーブスは大声で叫び、私達は大急ぎで逃げ出した。

 

 しかし、廊下の突き当りに来たまではよかったものの、目の前の部屋のドアには鍵がかかってしまっており、袋小路を前に私達は逃げ場をなくしてしまう。

  

「もうダメだ!おしまいだ!一巻の終わりだ!」

 

「黙らっしゃいロン!めっためったら叫んで、これ以上を状況を悪くしないで下さい!」

 

「だって、どうしようもないだろ!?目の前には鍵のかかったドア!後ろには追いかけてくるフィルチ!右左も逃げ場はなし!これでどうすればいいていうのさ!?」

 

「何度も言いますけど、あなたの頭は飾りですか!?私達は魔法使いでしょ!出口がないっていうのなら、出口を作ればいい話です!ハーマイオニー、開錠呪文は!?」

 

「勿論使えるわ、どいて。アロホモラ(鍵よ開け)!」

 

 ロンの絶望感漂う声を抑えつけてる間に、先頭にいたハーマイオニーが開錠呪文を使用。

 

 鍵はカチッと開き、ドアがパッと開いた。

 

 迫るフィルチさんの足音から逃げるように、私たち6人はなだれ込むように部屋に入り、ドアをもう一度施錠。

  

 フィルチさんは私達が開錠呪文なんて使えると思っていないだろうし、そもそもこの扉の鍵が開いたなんて思いもしないはず。

 

 兎にも角にも危機は脱し、一先ずこれで一安心。

 

 かと思えば、私の吸血鬼としての第六感が悲鳴を上げ、その直後この部屋から動物特有の独特な匂いがする事に気が付いた。

 

 恐る恐る顔を上げると、目の前には本来イギリス、というかホグワーツにいるはずのない三頭犬がこちらを睨みつけており、その鋭利な爪をまず誰に向けるかについて思案していた。

 

 長年の経験によって、咄嗟に私が壁魔法で5枚の壁を作り出したその直後、ガラガラとした音と共に、それらの壁は突進によって一瞬で崩壊。

  

 恐怖で正気を失っていた他の5人はようやくその音で正気を取り戻し、扉を開け、全員が出て行ったその直後に即、その扉をもう一度施錠。

 

 誰も声を発せず、恐怖に突き動かされるままに走り続け、気づけば8階の太った婦人(レディ)の肖像画にたどり着いていた。

 

『まぁ、あなた達。こんなに夜遅く、今までどこに行っていたの?』 

 

 夜のお出かけから戻っていた太った婦人(レディ)は汗だくで、息も絶え絶えで、ガウンも肩からズレ落ちそうな私達に、そう驚いた声を掛けた。

 

「何でもないよ、太った婦人(レディ)。豚の鼻、豚の鼻」

 

 息も絶え絶えのハリーはそう言葉を返し、合言葉を聞いた太った婦人(レディ)は扉を開放。

 

 やっとの思いで全員が談話室の肘掛椅子にへたりこみ、くちがきけるようになるまでに数分かかった。

 

「あんな怪物を学校の中に閉じ込めておくなんて、先生達は何を考えているんだ。世の中に運動不足の犬がいるとしたら、正にあの犬だね」

 

「どんなジョークですか、それ?それよりもっと気になることがあるでしょ」

 

「一体何がさ?あの怪物以外、あの部屋に気にするものなんてなかっただろう」

 

「あなた達何処に目をつけてるの?あの犬が何の上に立っていたか、見なかったの?」

 

「何って、そりゃあ床の上じゃない?僕、足なんか見てなかった。頭を3つ見るだけで精一杯だったよ」

 

 疲れが引くとともに、不機嫌さも戻って来たのか、ハーマイオニーはロンとハリーを睨みつける。

 

「違う、床じゃない。仕掛け扉の上に立っていたのよ。あの犬はきっと、何かを守っているに違いないわ」

 

「三頭犬は昔から、魔法使いが自身の宝を守る為に飼い慣らされているんです。三頭犬がいたってことは、つまりあそこには何か重要なものがあるっていう、証明にもなるんです」

 

「重要なもの?そんなの一体何さ?」

 

「さぁ?そこまでは分かりませんが」

 

「あなた達、さぞかしご満足でしょうね。セラスがいなかったら私達みんな、殺されていたかも。もっと悪く言えば、退学ね。では、皆さん、お差支えなければ、休ませていただくわ。セラス、あなたもそんな奴らと一緒にいないで、早く寝なさいね」

  

 終始機嫌が悪いハーマイオニーはそう言うと部屋に戻っていき、残されたロンとハリーはポカンと口を開けて彼女を見送ることとなった。

 

「お差支えなんてあるわけないよな。あれじゃ、まるで僕達があいつを引っ張り込んだみたいに聞こえるじゃんか」

 

「みたいじゃなくて、引っ張り込んだんです。あなた達2人が出歩いたせいで、自分まで破りたくもない校則を破らざるを得なくなった上に、死にかけたんですから怒るのも当然です」

 

「君達が勝手に来たんじゃないか!」

 

「何度も忠告を無視したあなた達が罠に飛び込んだからです!………もう、怒る気も失せました。とにかく、今後グリフィンドールの為にも、あなた達2人は自分勝手な行動を決してとらないこと!ドラコのからかいは受け流す事!そして人の話はちゃんと聞くようにして下さい!さもなくば、あの三頭犬があなた達を殺しに行く前に、私があなた達2人に全力の制裁を加えますからね!いいですね!!」

 

 震え続けるネビルをよそに、そう大声で2人に警告すると、棒立ちになった2人を置いて私は部屋に戻り、半開きになった棺桶の蓋を開けて中に入り、その蓋を完全に閉めた。

 

「っはぁー……。今日は何かもう……色々と疲れました…………」

 

 ドラコの思い出し玉ひったくりに始まり、ネビルの箒の事故に、ドラコの見え見えの罠。フィルチさんとの追いかけっこに、本来いるはずのない三頭犬からの逃亡。

 

 あまりの事件の多さと、魔法界の理不尽に対して一息大きなため息をつき、それら全てを忘れようと深く目を閉じ、疲れのまま、夢の世界へと旅立っていった。

 

 

 

 

 

 

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