「【勝手に】ダイビート【公式チャンネル】祝・ダイビート活動開始2周年! 謝恩フェス案件、いただいちゃいましたーっ!!」
わああああっっ……!!
基地中庭に勢揃いしたダイビートの戦士たちをドローン撮影、その中心に立つ司会・フェリニのタイトルコールで、市民に向けた特番の生配信がスタートした。
2年間の戦いの歴史を振り返り、少〜しだけオーディオコメンタリー調のマル秘エピソードも織り交ぜて。
設立当初のダイビート基地風景や、実装間近の新兵器、地域密着イベント紹介…。
あっという間にライブ配信はエンディングへ。
「それではシメコメを、我らがリーダー・戦部トキサダ長官から。お願いします!」
「…2年前の今日。
この閂市が初めて、アルダークの襲撃を受けたのを、この放送を観ている皆は覚えているだろうか。
あの日、俺は共に立ち向かう戦士を募った。
今だから言えるが、内心は不安で仕方なかった。
たった3人でデビュー戦に臨んだ、どこの馬の骨とも知れない組織の、素性も知れない俺の呼び掛けなんて、誰に届くものかと、な。
だが、その呼びかけに応え、力を貸してくれた一人ひとりの戦士たちに支えられ、今やダイビートは150人の戦闘スタッフを抱えるまでになることができた。
俺たちの原動力は、街を、地球を、自分たちで護るんだ、という一人ひとりの強い意志だ。
だから、戦いをいつも見守り、応援をくれるこの街のみんなに、感謝している。
祭りやイベントに参加してくれるみんな、本当にありがとう。あの場で守るべき市民と触れ合えることは、戦士たちの何よりのエナジーだ。
今もノロイとの戦いは続いているが、君たちの信頼に応えて、俺達は明日からまた戦う。これからもよろしく。…以上だ。」
…
……
「【〘『マジメかーーーっっ!!』〙】」
「うおっ! なっ…お前たちっ…ぐぶっ…!」
トキサダの後ろに陣取る戦士たちが一斉蜂起し、取り囲んで。
「【〘『せえーーーのっっ!!』〙】」
「うおっ…おわああああーーーーっ!!」
D2エナジーをありったけ込めての胴上げは、
「【〘『わあーーーっしょいっ!!
わあーーーっしょいっ!!』〙】」
フェリニの飛ばすドローンを撃ち落とす勢いで、成層圏に届くほど。
トキサダを逆バンジーで、何度も何度も打ち上げては、代わる代わる受け止めた。
「水臭いっスよ、長官さん! あたしら、この街が好きだから、ダイビートに志願しただけっスよ!」
「あたいはアニキの男気に胸打たれて来たんだ! これからもついて行くぜっ!」
スケートルとマッハ…設立初期からの神騎と戦士を皮切りに、残り短い放送尺で代わる代わる、戦士たちが2年間の思いをマイクに込める。
「おーっ、トキサダ頭領、楽しそう。次はわたしが…」
「あれが楽しそうに見えるんかいっ! 第一、あんたが胴上げ入ったら、頭領が静止衛星になっちゃうわよっ!」
「あ…あははっ、みんな、容赦ないなあ…!」
「いいんじゃないか、みんななりの感謝の気持ちなんだ。若頭領には今日くらいは、存分に受け止めていただこうじゃないか。」
「そうそう。イザとなったら、長官、魔力で空飛べるんだから。落ちやしないわよっ。」
「まあ、落ちたら落ちたで、私が受け止めてあげちゃうけどねー。
そしてそのまま、長官くんをお持ち帰り~っ!」
……
…
生配信としてはグダグダなシメだったが…。
(ダイビート…もうすっかりこの街に定着しちゃったなあ…)
(ホンっト、最初は危なっかしかったのに…)
(何だかんだで、いい連中だよねえ…)
いいねボタンがギュンギュン、カウントアップしていた。
(なお、時を同じくして…
「なーにがダイビート2周年よーっ! あんなエセ正義、あたしは断固、認めなーーいっ!!」
…今やすっかり炎上系配信者として定着した外法天りるかが粘着アンチ投稿を乱発し、Badボタンをガシガシ連打されていたのは蛇足の余談である。)
…
……
「ふう…」
特別配信を終え、スタッフに謝意を述べて自室へ戻り、ひと息つくトキサダ。
(…何とか2年、生き延びた、と言うべきか。
もう2年経ったと言うべきか…)
絶望の未来から、人類の一縷の希望を繋ぐため、この世界に辿り着いてから、2年。
俺がしくじったら、全てが終わる。
誰も応えてくれなかったら、人類はまた破滅する。
…今にも絶望に押し潰されそうな、逃げ出すことさえ許されなかった2年を、無我夢中で駆け抜けた。
悲願はひとまず成就し、アルダークを打倒し、オルタナスタインを打ち払い…
壊滅の危機を幾度も乗り越え…何とか辿り着いた、今日という日。
(…行くか。)
書類ほどの大きさの紙袋を手に、トキサダが向かうのは…この日を迎えた喜びを、いちばん伝えたい相手。
…
……
「アカリ…今、入っていいか?」
「はひゃああっ! ちょ…長官っ!?」
ロックを解除し、トキサダを迎え入れるアカリ。
「ど…どうして、私の部屋に…?」
「ああ。」
がさっ。
「今日、どうしても、これをアカリに渡したかったんだ。」
「これは…? 開けてみても…」
「もちろん。」
…
「あっ…!」
中には、簡単な額縁に納められた、1枚の絵。
公園で、子どもたちと花を植える、笑顔のアカリが描かれていた。
「こ…これ、もしかして長官が描いたんですか?」
「ああ…拙くて、こっ恥ずかしいんだが…。」
(あれ…?)
アカリが気づいたのは、絵の構図。
確かに地域交流イベントで子どもと花を植えたことがあるが、あのときはエスカルビーに変身しての参加だったはず。
しかしこの絵で描かれているのは、普段着のアカリ。
そして、あおり気味の構図で描かれたアカリの後ろに描かれた、一本の樹。
「この樹は…もしかして…」
「わかるか…? 俺たちが初めて会った、あの公園の、あの樹…のつもりだ。どうしても一緒に描きたくて、無理のある構図になってしまったけど…。」
少年を救おうとしてアカリが落ち、トキサダに抱きとめられた、あの樹。
「じゃあ…今日、この絵を私にくださるのは…」
「ダイビート始動2周年の今日は、俺とアカリが出会って2周年の記念日だからな。」
「長官…!」
それは、アカリが超昂戦士を志した、すべての始まりの日。
世界を救った戦士となった今でも…いや、そんな今だからこそ忘れられない、かけがえのない記念日。
「う…ううっ…」
うつむき、肩を震わせるアカリに、狼狽えながらトキサダが語りかける。
「あ…アカリ…?
…大切な日の贈り物が、こんな粗末な絵で、本当にすまない…。」
「違うんです…この絵から伝わる長官の想いが、嬉しくて…!」
きっとこの絵は、トキサダが夢見る未来の一瞬を切り取ったフォトグラフ。
破滅を回避した平和な世界で、始まりの樹に見守られながら、平凡な一人の女性に戻ったアカリが、次の未来を目指す子どもたちに慈愛の笑顔を注ぐ瞬間。
『アカリ…この2年間、本当にありがとう。
これからも、一緒に戦ってほしい。
そして、いつか必ず、こんな世界を一緒に造ろう。』
…線の一本一本にそんな誓いを込めて、色鉛筆を走らせたのだろう。
「ありがとう、ございます…!
私にとって、2年前のあの日は…。
私がこの世に生まれた意味を見つけた…長官がその意味を下さった、第二の誕生日です…。」
あの日、勇気を出して、よかった。
超昂戦士に志願して、本当によかった。
たくさんつまづいたけど。
痛い思いもたくさんして、何度も泣いたけど。
でも、それ以上にたくさんの、笑顔と出会えた。
たくさんの人たちを護れた。
それでも、もっと護りたい人ができた。
そして、長官と送る、そのために頑張る日々が、愛おしい。
「長官が…、長官も、この日を大切にしてくださっているんだって…、
ありがとうございます…最高のプレゼントですっ!」
潤む瞳もそのままに、アカリも包みを差し出す。
「私からも、誕生日のプレゼントです。」
「アカリの誕生日なのに、アカリが贈る側なのかい?」
「長官…オトナの誕生日は、生まれた感謝を大切な人に伝える日なんですよ?」
イタズラっぽくはにかむアカリ。
「ホントは、私が長官のお部屋に行って、これを渡すつもりだったから…長官の方がこっちに来ちゃって、心底びっくりしたんですよ。」
「ははっ…先制攻撃だったわけか。」
「もう…! とにかく、開けてみてください。」
言われるままにトキサダが包みを開けると。
「また、冬が来ますね。風邪、引かないでくださいね。」
手編みのマフラーと、毛糸の靴下…なのだが、
「靴下…まだ片方だけなんです…すみません。」
学業に任務にと忙しいアカリの精一杯を感じたトキサダは、一つひらめく。
「来月の夜、ベッドサイドに吊るしておくよ。きっと、可愛いサンタさんが、もう片方をプレゼントしてくれそうだ。」
…それは…!
(イヴの夜、一緒に過ごしても…
OKってことですか!?)
ぎゅっ…!
「はい! きっと…きっとサンタさんが、長官に素敵な夜をお届けしますっ!」
お読みいただきありがとうございました。作者の環藍河です。
本日16時からの2周年フェス直前に投稿しておりますが、皆さま蝶鉱石の準備はいかがでしょうか?
実際の2周年にあたる11月25日合わせで書くべきだったかも…ですが、フェス期間終了後の投稿だと、逆にタイミング悪いのかしら、と思い、急遽本日の投稿と相成りました。
ところで…「ガチャは描けば引ける」とは絵師様がたの合い言葉ですが、「書いても」引けますかねえ?
(僕の場合は正月ルビーを引ければ御の字ですが…。)
結果は次回の投稿で。
それでは皆さま、原作を楽しみましょう!