【短編集】憧憬の愛玩動物   作:ryure

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ノボリが「クダリのタマゴ」を産む話。


きみの幸せだけを願う

 まぶしい星が散る。不快な爆音とともに世界が壊れる。目には異常はないはずなのに奇妙にゆがむ視界。雑音がわっと押し寄せ、同時に凄まじい激痛と吐き気が襲い来る。

 

 衝撃のままべしゃりと倒れ伏すわたくしは目を開けているのに何も捉えることはできず、意味の無い音を口から垂れ流す。何か話しているつもりだけども、自分の口から呻きとも悲鳴ともつかない音が漏れ出しているのが冷静にわかるのだ。

 

 するりと背後から駆け出して、叫び声がわんわんと響く。何も見えはしないのに、何もまともに聞こえないのに、片割れが何をしているのかだけはわかる。

 

「く・だ・りっ!」

 

 クダリ、クダリ、あぁそんなことをして、わたくしの弟は無事なのですか!

 

 ひしゃげた頭蓋、溢れ流れる鮮血、飛び散る自我。わたくしは意識を必死にかきあつめ、不格好に手をバタバタと振りました。だけどぷつん、と視界が暗くなりすぐに電池が切れたオモチャのように動けなくなってしまい。

 

 次に目覚めた時、わたくしはわたくしの体に縋りながらわんわん泣きわめくクダリを目の前にして、虹色のシビルドンとケタケタ笑うアーケオスの「もよう」がいくつも空気にぷかぷか浮かんでいるのを見、次に先程のわたくしよりもずっと酷い有様になったふたつの塊を何とか認識して、ダンバルのように重い体にムチ打ってようやく口を開いたのでした。

 

「逃げましょう、忘れましょう、すべて。わたくしたちは最初から二人きりの家族なのですから」

「うん、うん、そうだね、ノボリ」

 

 頭からだらだらと血を流すほど重傷のわたくしを何とか背負って、外に出て。ようやくまともな機関に保護されたクダリが血まみれでも誰も不思議に思いやしませんでした。

 

 機関? 機関! きっと何かしらの対価を支払わされるに違いありません、支払うのはわたくしにさせてくださいな! クダリはせっかく元気なのですから、半分潰れたわたくしに払わせてくださいな! 今手も足も上手く動かせませんが、なんとかしてみせましょう。

 

 意気込んでいるとクダリがわたくしの頭を消毒して包帯をぐるぐると巻いてくれました。怪我していたのでしょうか。もしかしたらそうかもしれません。怪我なんてしょっちゅうでいちいち気にもかけていられませんでしたが、ここでは傷の手当の道具を分けてくださったようです。クダリがもし転んでも大丈夫ですね。

 

「お兄さんは一生このままです」

 

 わたくしを車椅子に乗せた男が言いました。これはくれるそうです。錆びているからお金はいらないそうです。本当に? 

 

「ぶーんぶーんとモーターがうなっているのですね。なんの音でしょうか」

「……それはきっと、なにか素敵なオルゴールのネジ巻きの音なんだよ」

「そうなのですね。クダリが言うならそうなのでしょう。それではあちらのキーンキーンとガラスが割れた音は、鉄琴の調べなのでしょうね。申し遅れました、わたくしシャボン玉で人を殺せます。殺してみせますったらお母さま。だからそれはわたくしだけにしてください。ね、わたくしの足をあげますから、泣かないで」

「泣かないよ、ノボリ。ぼく泣かないったら」

 

 嘘おっしゃい。涙がせっかく着せてもらった新しい服を濡らしているじゃありませんか。

 

「でも、すぐにそれはいらなくなるでしょう」

 

 クダリは男の話を聞いて何度も頷きました。泣きながら、でも笑っていました。笑っていても泣いています。目の前の男は悪い人ではないので、きっとクダリを泣かせる悪い大人が近くにいるはずです。誰でしょうか。わたくしが懲らしめてやらねばなりません。わたくしの大事な大事な弟に手を出させるものですか。

 

「こらしめるなら木製のバットがあれば宜しい。あれで頭をぶん殴られるといっとう痛いのですよ。大人だって泣いてしまうに違いありません。わたくし存じ上げております。殴られるとまるで星が散るのですから。お昼の放送です、クダリ? 今日の天気を教えてください」

「あのね、今日は雨だって」

「なんと。傘が必要でございますね。それでは参りましょう。聞いてくださいまし、クダリが歌います」

「そうなの?」

「クダリが歌いますので」

「しょうがないな」

 

 クダリがお揃いの帽子をわたくしに見せると、黒い方をわたくしにかぶせてくれました。そして不規則にバタバタと揺れるわたくしの手をひじ掛けの内側に押し込むと、ガタンゴトンと古びて錆び付いた車椅子を押してわたくしをどこかに運んでいくのでした。面白いリズムでまるで一度だけ乗ったことのある電車のようでした。

 

「クダリも一緒ですか?」

「ぼくたちずっと、一緒だよ」

「なら歌ってくださいまし」

「いいよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それまでノボリはぼくを何もかもから守ってくれていた。降りかかる嫌なことを時にぼくのふりをしてまで全部身代わりになろうとしていて、たとえぼくが嫌がっても要領のいいノボリはするりとかわして前に出てしまう。

 

 ぼくの代わりに殴られたノボリは笑えなくなって、ずっと帽子をかぶってなくちゃいけなくて、そしてすっごくおしゃべりになった。

 ぜんぶ、ぼくのためにそうなった。

 

 ぼくにできたことなんて大したことじゃない。その通りやり返しただけで、本当にそれだけだ。これまでノボリが受けてきた分ぜーんぶやり返しただけだ。

 

 ようやくあのふたりから解放されたからもう何もかも自由のはず。ノボリの怪我が治ったら何をしよう? ぼくたちなんでもできるようになったんだよ。本でしか読んだことのない楽しそうなことも全部。一度しか乗ったことのない電車だってきっと好きなだけ乗れる。

 なのにノボリはポケットからせっかく貰ったアメを取り出して、ぼくのポケットに入れてしまって、満足そうにする。それから毎日真っ直ぐ歩く練習をして、それで、ノボリはぼくにこういった。

 

「すべて忘れましょう。わたくしも忘れますから」

「なんで」

「わたくし、生まれた時からこうだったのです。そういうことにしてしまいましょう。ね?」

 

 ノボリはぐしゃぐしゃに泣いていたから、ぼくは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わぁ、ありがとう。すっごく嬉しいよ!」

 

 クダリは可愛らしいシールの張られたラブレターの前でにっこりと笑いました。バトルが強いだけではなく人あたりがよく、その上仕事だってしっかりできる役職持ちの片割れは大変よくモテました。

 花束、ラブレター、プレゼント、もちろんお可愛らしい告白の言葉までなんでも捧げられるのです。その上老若男女問わず、クダリのことを好いてくださります。恋愛的な意味でなくてもクダリを好いているひとだって多いのです。

 

 それをわたくしは兄としてとても誇らしい。クダリが魅力的な人間であることが知られているのは嬉しいことなので。

 

 とはいえクダリは公私をしっかりと分ける人間なのでサブウェイマスターのコートを着ている時は規定の理由からやんわりと断ります。まぁ私生活でも受けているのを見た事はありませんが。

 

 だって、現状のままではどうせ長続きしない。聡明なクダリはそれを理解しているのでしょう。

 

「でもね、ごめんね。ぼくクダリ、サブウェイマスターしてる。サブウェイマスターはお客さまからものを貰っちゃいけないの。告白も受けちゃいけない。ぼくは平等に接しないといけないから。

 また連勝してすっごいバトル、しに来てね。会うごとに強くなってる。ぼくそれ楽しみにしてるから」

 

 断る理由が規定でもクダリは優しいので、ちゃんと言葉を尽くすのです。あぁ、可愛らしい方は笑顔を失わずに何度もうなずいてトレインから降りていきました。

 

 わたくしはますます誇らしい気持ちになって、気分がいい。いつか何もかもを乗り越えて、遠いところに行ってしまうクダリは素晴らしい配偶者を得るかもしれませんし、人間のパートナーなんて要らないと考えているかもしれません。そのあたりは双子であろうとも根掘り葉掘り聞くようなことではありませんので存じ上げませんが、モテる分には良いではありませんか。

 家族が真っ当な評価を受け、人間性あるいは容姿、あるいはバトルの腕前を買われて求められている! 素晴らしいことです。

 

 あとは、あとはあとは、クダリが踏ん切りをつけさえすればクダリはいつでも幸せになれる。だってこんなにも他者から魅力的に思われ、求められている人間なのですから! あぁそれはなんてすばらしい救いなのでしょう。わたくしはクダリが幸せになることこそが己の幸せだと思っております。

 こんなのでも、双子でも、兄ですから。たったひとりの家族なんですから!

 

「ノボリ、お待たせ。次会議だったよね?」

「えぇそうでございます。行きましょうか」

 

 笑顔のクダリ、優しい弟。自慢の片割れ。こんなにモテる男の兄であることが誇らしい! 改めてしみじみ確認したわたくしは気分よく頷いて、連れ立ってマルチトレインから降車したのでした。

 

 今日は巨大なシャンデラがそこらじゅうを埋め尽くす陽気でした。色違いのシャンデラが描かれたタイルを踏まないようにまたいで、ポケモンのタマゴのカラの成分を思い浮かべました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 深刻そうな顔をして、突然鉛筆を自分の太ももに叩きつけたノボリはぼくの両手をリズミカルににぎにぎしている。行き場を失った書類をクラウドがさっと回収して未処理のものを振り分けてくれたけど、ノボリの目には入っていないらしい。

 

「これはクダリの思想に反していたのならば申し訳ないのですが!」

「なぁに?」

 

 水玉模様の斧カバーをつけたオノノクスがノボリの肩を枕にふぁあと大きな欠伸をしていたけど、ノボリがほぼ飛び跳ねるくらい元気よく話し始めたのでビックリしてボールに戻ってしまった。

 

「クダリのタマゴはきっと6V確定でしょうと考えていたのです!」

「?」

 

 兄のノボリはちょっと狂人。

 ちょっと……ちょっとかな。一見丁寧で真面目で真摯な人だけど、常識がない。頭が悪いわけじゃないのに、勉強が出来ないわけじゃないのにノボリの頭の中は普通じゃない。思考回路も双子だから……というよりはこの歳まで仲良く育ってきた兄弟として理解出来ることもそこそこあるけど、ぼくでもわかんないことは多い。

 

 つまり何をするのも唐突だし意味不明なことが多い。

 

 狂人だってのは、えっと。比喩じゃなくて。揶揄しているんでもなく、事実として。

 

「孵化する前からステータスなんてわからないよ?」

「そうでございます。しかしわたくしノボリは贔屓目が激しい自覚はありますがクダリのタマゴなら6V確定でしょう、と思うのです」

「えっと、今孵化厳選してるのは……」

「あぁ! 違うのでございます、今後の人生でもしクダリがタマゴを作ることがあるならということですよ。今はまだこの世にありません。お相手もいるのかどうか存じ上げませんが、幸い人間はこの世に多いのでタマゴグループに悩むことはないでしょう」

「?」

 

 クダリがタマゴを作る。いや……いや? わからないね。もしかして人間はタマゴで増えるとか勘違いしてる? いやいや、頭のおかしいポケモン廃人ジョークじゃないんだから。

 でも、ノボリの目は真剣で、冗談を言っている感じじゃなかった。つまりそういうこと。

 

 ノボリは狂人だ。昔から頭がおかしい。なんとか社会生活は送れるし、言葉も基本的に通じるけど信じ込みやすいっていうか妄想と現実の区別がつかなくなったりゴーストタイプとはまた違う意味で見えちゃいけないものが見えてたり、軌道修正してもすぐにノボリの中の常識が狂っていく。

 

 今度の通院で強めのお薬出してもらおうね。

 

「ノボリ、ぼくたち人間。わかる?」

「えぇ」

「人間は胎生。タマゴで増えない。知ってる?」

「存じ上げております」

「じゃあぼくのタマゴって何?」

「概念です。とはいえ……きっと素晴らしいクダリならタマゴを作れますとも」

「おーいクラウド、ノボリがおかしいから早退させるね。ぼく付き添い」

「ちゃんと病院行くんやで」

「強めのお薬もらおうね」

 

 酷い言い草にノボリは憮然としたけど、怒りはしなかった。

 

「わたくし、おかしくなどありません。いえ、クダリが言うのでしたらきっとわたくしはおかしいのでしょうけど。人間はタマゴで増えませんが、クダリのタマゴなら6Vに決まっておりますとも。わたくし育成を楽しみにしているのです。クダリは大変モテるのでお相手に素晴らしい個体値をあてがうのも簡単でしょうが、クダリの心情、思想を思えば『期待』について口に出すのもいくら兄弟とはいえ良くないでしょう? あぁ気を悪くしたなら申し訳ございません。しかし、クダリのタマゴが楽しみで楽しみで……もちろんタマゴを作らない主義なのでしたらわたくしお節介がすぎるということで本当に良くない兄なのですけど。もちろん個体値と性格は別物ですしね。クダリ、ねえクダリ、クダリ? どうしてわたくしを着替えさせているのです? 退勤時間はまだですよ。病院? クダリ! もしかして体調が悪いのですか? もちろん付き添わせていただきますが! クダリ?」

「じゃあごめんね、早退するね」

「クダリ、クダリ、どうして腕を引っ張るんです。わたくしの腕は取り外し可能なものではありません。足は取れますけど」

「足も取れないよ」

「そうなのですね。クダリが言うならそうなんでしょう。クダリの言うことはいつだって正しいのですから。あっ! クダリ、休憩室の冷蔵庫にヒトモシのキャンドルを入れておいたのですがご賞味頂けましたか?」

「あれ黒ボスの仕業やったんかい……」

「ヒトモシたち寒そうだったからデスクに並べておいたよ」

「クダリは優しいですからねえ。常温でも美味しいのでしょうか」

「え? 待ってノボリ、ヒトモシキャンドル食べたの?」

「いいえ。一緒に食べようと思いましたので、まだです」

「セーフ! じゃあ病院行くよ!」

 

 思ったより深刻だった。まくし立てるノボリを引きずりながら、多分なにか併発してるぞ、と嫌な確信を深めた。

 

 ノボリは狂人だ。昔っから。妄想と現実の区別がつかなくて、思い込んだら自分の中の常識さえねじ曲げる。ノボリの中では当たり前なのに。ぼくはそれを否定しながら生きていく、悪い弟なんだ。

 ノボリはすごくおしゃべりで、ずんずん歩くぼくに引っ張られながら口を動かした。

 

「ヒトモシキャンドルはこの前雑貨屋で見つけたのです。あまりにも可愛くて可愛くて可愛いのできっとこれは美味しいだろうと思いました、思いましたので、そこにあっただけお迎えしてしまいました。シャンデラは最初とても喜んでくれたのですが冷蔵庫に入れるとビックリしてしまったようです、ようなのですよ。確かに炎タイプ複合のシャンデラからすれば冷え冷えとした冷蔵庫の中よりもまだしも電子レンジの中にいた方がいいのかもしれませんが電磁波で麻痺してしまっては可哀想ではありませんかあんなに可愛いのに。それに寒いところならきっと眠くなりましょう、これからわたくしたちはあの子たちを食べるのですからせめてせめてせめて眠ったままの方が倫理的によろしいかと思いましたしそうでございましょう、クダリ……」

 

 げほん、と大きな咳をしたノボリは突然立ち止まった。言葉の奔流が止まって、それがあまりにも急なものだから溢れに溢れたしぶきがぱしゃん、とぼくらを濡らしたみたいだった。

 

「うん、ノボリ、どうしたの」

「わたくし、頭が、とても痛いのです」

 

 だけどそのしぶきが見えないしわかりもしないノボリにはその冷たさは伝わらなかったらしい。思考過多、オーバーフロー。ノボリは知恵熱を出したみたいに真っ赤な顔をしてズルズルと地面に座り込み、かすれた声で哀れっぽく架空の神に許しを乞うた。

 その動きで制帽がポロリと落ちる。ぼくの罪を突き付けられて、全部分かっているけれどぼくは思い出していないふりをする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 案の定強めのお薬をもらってきたのでノボリに飲ませる。小さい頃から通い慣れた病院だからノボリはとてもとても大人しく従った。殊勝な顔で頷き、ちゃんと出された通りに飲む。いつだって誤魔化したりしない。

 ノボリはちゃんと自分のことをわかっているのだろうか? 分からない。分からないけれど、「妄想を抑えるお薬」は最近あまり効かなかった。

 

 ノボリが自分のことを把握しているかどうかは分からないけれど、少なくとも自分はどこかが悪くて医者にかかり、薬を飲む必要があるということまでは理解している。そしてぼくが言うなら多少思うところがあってもちゃんと飲む。ノボリはぼくのことを信用しきっているから。

 

 顔色は白い。ぐわんぐわんと頭を揺らし、あからさまに激しい目眩というか平衡感覚を失いかけ、すごくつらそうな顔をしていた。

 

「クダリのタマゴの孵化には時間をかけたいのです。孵化においてほのおのからだのポケモンを使うのは当然でしたが、それすらなしにやりたいのです」

 

 でも、目だけは夢見るよう。うっとりとノボリは言い、採血の痕のパッチをひっぺがしてゴミ箱に投げた。

 

「あのねノボリ、ぼくはタマゴ産まないよ」

「えぇ、クダリはタマゴを産めないでしょう。男ですからね」

「それは分かってたんだね……ノボリ、今後ぼくにもし遺伝子上の子どもが出来たとするよね」

「はい……」

 

 ノボリはなぜか少ししょんぼりとした。

 

「ぼくの子どもを産んでくれる人はタマゴを作らないよ。赤ちゃんはお腹の中で育てるものでしょ? わかるよね」

「わかります。今後クダリが女性、あるいは男性と結婚するとして。あるいは結婚しないとして、ともあれなんらかの事情で血の繋がった子どもをもうける際はタマゴではないですね」

「うん」

 

 やわらかなほほえみをうかべて、後頭部をさする。いつものノボリの「くせ」だった。

 

「おや、ノボリおじさんはたくさんお小遣いをあげてしまうかもしれません。おもちゃも沢山買ってしまうかもしれませんね」

「うんうん。ぼくもクダリおじさんになったらそうなる」

「そうでしょうとも。分かっておりますよ、クダリの子どもはタマゴから産まれません。わたくし、クダリに勘違いさせてしまったようですね。大丈夫です、人間の子どもはタマゴから生まれないこと、重々承知の上です。もちろんクダリがタマゴを生むことなんてあるわけありませんよ」

 

 ノボリをベッドに座らせる。促すとモソモソと横になり始めた。

 体自体はすごく強いけど、ノボリはおかしくなっちゃうとだいたい過眠気味だ。睡眠薬は処方されていないとはいえ、次起きるのはいつになるんだろう。三日くらい眠りこけてもいつものことだ。脱水は心配になるけれど、途中でむにゃむにゃ言っている時に飲ませる。

 

「よかった。分かってるならいいの。お薬効いたね、よかった」

「これは効いているのですか? なんだかふわふわするのですが」

「うん、大丈夫。じゃあ寝て、寝ちゃって。起きたらまたお話しよう?」

「ええ。そうだ、わたくし……」

 

 ふわふわしたノボリが夢見るような口調で、目を閉じながらのたまうのだ。

 

 ぼくの片割れは狂人だ。昔っから頭がおかしくて、現実と妄想の区別がつかないの。

 

「わたくし、クダリのタマゴが見たいのです。中から生まれるのはきっとかしこいクダリによく似たとても利発な、クダリによく似ていて、うふふ……うふふふふ、わたくし、どうしても見てみたいのです……きっとそれはとても素敵な……」

 

 糸が切れたみたいにこてん、とノボリは寝てしまった。本心から幸せそうに見えて、だからぼくはやるせなくて、ノボリに布団をかけてやるとしばらく痩せた頬を眺めていることにした。

 

 兄は狂人だ。支離滅裂で現実と妄想の区別がつかない。分かっているけど、いつだってぼくのことが根底にあるんだ。その夢みたいな狂った世界の中で兄は幸せなのに、ぼくは現実(こっち)の住人だから、ただのエゴで無理やり引き戻している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 驚くべきことにたったの八時間眠っただけで目を覚ましたノボリは最初こそ薬の副作用で朦朧としていたけれど、一時間くらいで調子を取り戻した。ように見えた。

 

「クダリ、おはようございます。わたくし、体の調子は悪くありません。しかし昨日お医者さまに行ったのですからどこか悪いのでしょう? クダリから見たわたくしはどうでしょう?」

「元気に見えるよ。大丈夫」

「それなら今日は出勤できますでしょうか?」

「行けるよ、大丈夫。でもなにか気分が悪いとか熱が出てきたとか、ふらふらするとかあったらすぐに近くの人を頼ってね」

「ええ。これ以上のご迷惑をおかけするわけにはいきませんので」

 

 顔色は少し白かったけど許容範囲。起きてすぐ変なことを言ってきた訳でもないし、目つきだって普通。だから、ぼくはゴーサインを出した。

 ベッドから普通に起き上がったノボリは着替えて顔を洗って髪を整え、トーストを二枚焼き始めた。ぼくはその間にサラダを盛り付けて、ノボリが食後に飲む薬をセッティングする。……随分と多いけど、まぁ、昨日の今日だしね。

 

 ノボリがトーストとジャム、バターを並べて席に座る。昨日の夕飯の残りもあれば出してくれただろうけど……昨日はそれどころじゃなかったのでデリで済ませたからないんだよね。ぼくはサラダの横にミルクの瓶を並べた。

 

「それでは、いただきます」

「いただきまーす」

 

 ノボリが牛乳を手に取って、いつも通りに飲み干す。ぼくもいつも通り最初にジャムを手に取って……。

 

「う、……?」

「ノボリ?」

「いえなんでも」

 

 むせかけたのかな。ノボリはそれっきり黙々と食事を摂った。

 

「本日は、たしか……」

 

 食事もそこそこにノボリはライブキャスターを起動して本日の予定の確認を始める。そのころになればぼくはテレビをつけてニュースを見るのに夢中だった。

 

「クダリ、クダリ、確認してくださいまし」

「はーい」

 

 ノボリはありがたいことに薬を飲むときはぼくを読んで数や種類に間違いがないか、時間は正しいかどうかをきちんとダブルチェックさせてくれる。飲むのを嫌がったこともないし、むしろ率先して自分には必要だと認識している。

 

 本当の兄はどれをさすんだろう。自然のまま、薬を飲まないで異世界みたいな常識と夢みたいな設定の中で生きている姿が一番兄らしいのかもしれない。でも、こういうところを見るとどんな世界観の中でもノボリは優しくて思慮深い人間なんだなあって思う。ぼくを一番に信頼していて、ぼくも、ノボリがぼくを想って行動してくれていることだけは何があっても信じられるんだ。

 

 ノボリは小皿に薬を入れ終えるとその量に流石に顔を曇らせた。

 

「合ってるよ」

「ありがとうございます。……相変わらず薬だけで満腹になってしまいそうですねえ」

「それはそうかも」

「これは愚痴ではありませんよ? 飲みたくないと駄々をこねているわけでもありません」

「わかってるよ」

 

 見た目の通り食の細いノボリにとっては食事にプラスして薬を飲むのがちょっとばかり骨が折れることだっていうのは分かってる。ぼくはゆっくりノボリの喉がごくんごくんと動くのを眺めながらそう思った。

 

「ところでクダリ。先ほどは気のせいかと思ったのですが、わたくしたち部屋の掃除を長らくしていなかったりします?」

「えっそうかな? ……そうかも」

「なんだか特にシンクの方のにおいが気になってしまって……今日は帰ったら大掃除ですね」

「はぁい」

 

 ノボリはネクタイをびしっと締めるとスックと立ち上がって……立ち上がり損ねて、へなへなと座り込んだ。

 

「ノボリ!」

「……? 少し、立ち眩みが……?」

「とりあえずそのまま! ほら、ゆっくり、横になる?」

「……はい」

 

 あからさまに異常だった。早い呼吸、冷たい肌、汗ばんだ額。とりあえず床にノボリを横たえ、ソファからクッションを取ってきて頭の下に挟む。貧血だろうか、顔色は急激に白くなっていたけれど意識はちゃんとしていたし、ぼくには判別つかなかった。

 兄は精神面ではよく医者の世話になっていたけれど、体は強い。少食だし一見体力なさそうに見えるけど、ぶっ続けでポケモンバトルができる人間だし、孵化厳選だってエンドレスにこなせるタイプ。だからぼくは半ばパニックになりながら、ノボリの様子をオロオロと見守る。

 

 きつく目を閉じたまま嘔吐くような動作を数回見せたものの、吐き気はすぐにおさまったらしくゆっくりと呼吸が穏やかになっていく。着替えたばかりのシャツがじっとりと濡れて肌に張り付いている。

 

「ノボリ、落ち着いたら教えて。今日は休もうね」

 

 返事はまだつらいのか、ゆっくりと頷いたノボリは強ばった肩を震わせた。言いたいことがあるんだってすぐに分かったけど、口を開ける程元気がないらしい。

 

「大丈夫、大丈夫、ノボリ。ぼくついてる」

 

 汗が冷えて冷たくなった背中をさすりながら、血の気の引いた脳みそで一生懸命考える。嘔吐は薬の副作用にあったよね、それ以外はどうだっけ? 飲んですぐに副作用出るなんてないよね、そんなに速攻で効く薬じゃない。なら昨日の分が今ってこと?

 汗がいっぱい出て、とても辛そう。病院に行くべき? 行くならどこに? 薬を飲んでいるんだからあの精神科? それとも症状的には内科? 外科ではないだろうし……。とりあえず意識があって、ちゃんと自発呼吸してるから救急車は呼ばないよね、確か。

 なんて、ぐるぐる。

 

 三十分くらい床に沈んでいたノボリを心配して手持ちたちがボールから次々と飛び出してきて、そしてようやくノボリは顔を上げた。さっきとは別の意味で血の気の引いた、真っ青な顔をして。

 

「吐きそう……」

「シャンデラ、サイコキネシス! ちょっと我慢してノボリ!」

 

 サイコキネシスで浮かび上がったノボリを洗面台に連れていくと、ノボリは哀れにもせっかく苦労して飲んだ色とりどりの錠剤を全てぶちまけることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 フラフラの足取りで見てられなかったので肩を貸す。背負った方が早かったかも。なんにせよ、なんとかノボリは足を引きずりながらベッドにたどり着くことが出来た。

 

「なんでしょう、食あたり? それならクダリも同じものを食べているはずですし……」

「そうだね。ぼく元気。ノボリもお腹痛いとかはないもんね」

「そうですね。それならなんでしょう、クダリの言う通り薬の副作用だとしても今更ですよねえ……」

「確かに今更。でもぼくたち素人。詳しいことはわかんないなら明日お医者さん行こうね。電話予約したから」

「ありがとうございます。あぁ本当に重ね重ね皆さまにご迷惑とご心配を掛けてしまった……」

「今日はおやすみね。お薬は確認したけど飲み直さないでいいらしいから、安静にして」

「わかりました。それでクダリ? わたくしこの通り落ち着きましたしそろそろ出勤されては?」

「ノボリ、たまにポンコツになる。ノボリがぼくの立場なら休み取るよね。ぼくたちサブウェイマスターとしての誇りは大事だけど、互いのことはもっと大事。たったひとりの家族を大事にしないやつがサブウェイマスターなんて責任のある仕事はできない」

「……そうでございますね」

 

 ノボリの顔色は今も良くない。時々肩を跳ねさせて、本当は吐き気をこらえているのかもしれなかったし、だんまりだけど他の症状が出ているのかもしれなかった。

 もともと今日も休みになる予定だった。ノボリはきっと過眠するだろうし、途中で薬が切れて下手したら衝動的になにか恐ろしい行動をするかもしれなかったから。ノボリは基本的にあれだけの薬を飲んでいる割に分かりやすい症状は妄想癖くらい。だけどそれはうまくコントロールしているだけで、薬を飲まないなら……自殺未遂で済めば軽い方かもしれない。

 可哀想なことに記憶力も頭もまともすぎるくらいにいいノボリの目が覚めたら……いつかみたいに「クダリに迷惑をかけているくらいなら」あるいは「妄想と現実の区別がつかないなら死後の世界に賭けた方がマシ」とかまぁとにかくぼくには想像もつかないような超理論を展開する。

 

 自分の手足が震えているのを眺めていたノボリは毛糸の帽子を掻きむしった。

 

「ところでクダリ、申し訳ないのですが洗面器を取っていただけますか」

「わかった!」

 

 真っ青だ、やっぱり。でも一人にしたら何をするか分からないから、ノボリの手持ちの中で比較的小柄な子たちを念の為繰り出してから取りに行くことにした。

 

 それですぐにもどったらシャンデラとドリュウズがベッドの上に膝を震わせながらぬぼーっと立ち上がっているノボリをベッドに横たえさせようと頑張ってた。ノボリはなぜかボールペンを両手にしこたま握っている。

 なぜ? とか考えるだけ無駄なんだ。ノボリの中にある秩序、ノボリの中にある常識には則っているので。

 

「どういう状況?」

「聴こえませんか?」

「ノボリの声が聞こえる。シャンデラとドリュウズの声も」

「クダリクダリ、うふふ。わたくしわかってしまったんです! クダリのタマゴが孵った後はみんなでキュレムの神殿を建てましょう?」

「建築家に転向するの?」

「もちろんわたくしたちはどこであろうとも目的地へ向かってお連れする車掌ですとも。完成しましたら手始めに神殿の真ん中に穴を開けます。出来上がったトンネルに線路を敷きます。……おえっ」

「ノボリ、一回横になろうか?」

「クダリ! しかしこうしてはいられないのです! 声が聞こえるんですよ、早くしなくては!」

「ぼくお昼寝したいなあ」

「なんと。それは仕方ありませんね。わたくしのベッドでよかったら横になりますか?」

「うん。ノボリもほら寝るんだよ」

「しょうがないですね」

 

 大人しく座ったノボリの手からボールペンを取ると、洗面器を布団の中に引き込んでいったノボリが心配そうに顔をのぞきこんでいるドリュウズの両手を繋いで手遊びを始めていた。

 

「なんでボールペン?」

「神殿の建築には設計図が必要ですので」

「なるほどね」

「しかし紙がありませんでしたね。そこに大きな紙があると思ったら壁でした。ドリュウズに地下壕の作り方を教えなくては。クダリ、もうすぐここは大爆発で破壊されてしまうのですよ」

「大爆発ならまもるでよくない?」

「……クダリ、お前はなんと賢い! 頑丈で耐えようかと思っていました!」

「ノボリの特性強いねえ」

 

 話がぶっ飛ぶのには慣れているので適当にあしらって、ベッドサイドの椅子に座る。シャンデラがノボリに擦り寄って戯れ始めたのでその間に着替えることにした。ノボリもシャツにスラックスなのだけど……まぁいいか。既にどうやったのか分からないけれど、半分脱げていたから後で回収して着替えさせよう。

 

「今日はなんでしたっけ、ええと……そう、わたくし、安静にして休まなければ。早く良くなって早く復帰して少しでもご迷惑をおかけしないようにしなくては。しかし困りました、目が冴えて、頭の中に声が聞こえて、なにか思いつくのが止まらないのですクダリ。何かやらなくてはと急き立てられているようです。しかしなにかするのがダメなのもわかっているのに」

「じゃあぼくと昼寝でもしよう?」

「そうでしたね。そうでした、クダリ、本当に毎日毎日こんなろくでもない兄に振り回されて! さぞかし疲れたでしょう、さあどうぞ」

 

 ノボリの救われないところは中途半端にまともな常識を維持しているところなんだ。

 ふとしたタイミングで残酷な程にちゃんと現状を理解して、暗い顔をする。そして、どんなときでもぼくを見れば優先する。

 

 ノボリの頭の中の世界こそ正しければよかったのに。ノボリは薬なんて飲まなくて良くて、ぼくはノボリにタマゴを見せて、ノボリが×××‪‪×からぼくの代わりにならなきゃ……なんだっけ。思い出さないでいいの。

 

 ノボリがさぁさぁと急かすので家事はいっか、と思い直し布団に入った。大の大人ふたりが寝転がるととても狭いけれど、何とか寝転がれないことはなかったし。

 

「子守唄は必要ですか?」

「いいよ。ぼくがむしろ歌おうか?」

「……」

「そこで黙るの」

「クダリの手をこれ以上煩わせる訳にはいきません」

「いいんだよ」

「いけません。わたくし、わたくし、これでもお兄ちゃんですからね。大人しく寝ますので。それでは我らが愛しきシンオウさまに祈りを捧げて、おやすみなさい」

「うん、おやすみなさい」

 

 シンオウさまっていうのはわからないけど。じゃあイッシュさまやアローラさまもいるのかな。分からないけど。

 

 真隣でひゅーひゅーと喉が鳴る。怖くて怖くてノボリに縋るととても体が冷たい。肌が白くて、それは血の気が引いているからで、ぼくは酷く動揺した。ノボリは丈夫な人間で、体が強くてそうそう体調不良なんて起こさない。

 だからかな、だからだよね。

 

 頭ががんがん痛くて、このままでいればそのうちノボリのいる世界に行けるかも。なんて。

 

 手を伸ばす。ベッドの下にはノボリが置いたから木製のバットがあるのを知っている。特別な思い入れのある、困難を打破するぼくらのお守り。同時にすべての元凶の片棒で、恐ろしいものの象徴。

 簡単さ、ぼくもこうなるにはこれを思いっきり、頭に叩きつけさえすればいい。

 

 ノボリは悲しむだろうから、これまでできなかったのだけど。

 

「ノボリのところに行きたい」

「ダメですよ」

「まだ起きているの」

「わたくしお兄ちゃんなので」

「双子でしょ」

「わたくしお兄ちゃんでございます」

「そうだね」

「わたくしはクダリのタマゴを産めるかもしれませんよ」

「ノボリも男でしょ」

「そうでしたね」

 

 ノボリはぐいっと伸びをするとぼくの方へ手を伸ばした。

 

「見えますか。恐ろしいものが見えますか。見えないでしょう、わたくしたちはもう自由なのです」

 

 幸せそうなノボリに向かって、ついぼくも手を伸ばす。ノボリはこくんと頷いてぼくを赦した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「産みました」

 

 ノボリは「タマゴ」に毛布をかいがいしくかけてやった。ぼくにはそこに何も見えないけど、きっとそこに「クダリのタマゴ」があるんだろう。生まれてくる「タマゴ」から生まれた「クダリ」はきっとぼくよりずっと素晴らしい人間になるはずだ。

 

「いつ頃生まれるの」

「さあ、それはこの子たち次第ですね」

「たち?」

「双子です」

「……そうだよね」

 

 ノボリのいうことには秩序がある。ノボリの中でちゃんと筋道が立っていて、正しいことを言っている。

 

「どうしましょう、わたくし世間一般的には薬漬けの分類に入るのですが悪影響があったら……しかしもう考えても仕方ありませんね」

 

 ぶつぶついいながらぼくのベッドからも布団を引っぺがし、鳥の巣みたいなものを作っている。アーケオスがお手伝いしようとして枕の羽根を取り出そうとするのは止めていたけれど。

 

「わたくし温めなければなりません」

「今日もノボリは休みだよ。心配しないで」

「クダリは仕事でしたね。タマゴのことは心配しないでください」

「ぼくも休みだよ」

「おや、わたくしの勘違いでしたか」

 

 かたくなに寝室から出ようとしないノボリになんとかゼリー飲料を飲ませ、今日の分の服薬を数える。

 

「ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、これはいくつあるのですか?」

「二十四だったかな」

「錠剤だけですっかり腹が膨れてしまいますねえ……。この中にきずぐすりはありますか? 痛み止めでもいいのですが、どうもずきずきと頭が痛くって」

「ないけど痛いなら痛み止めも飲もうか」

「二十五ですねえ」

「二十六だよ、ノボリ」

「おや」

 

 ノボリは引きつる頬を抑えた。笑おうとしたけどうまくいかなかったらしかった。

 

「どうもいけません。さっきから背中がすうすうするのです。頭は痛いし、タマゴを温めなければならないのに体が冷たくっていけませんね」

 

 ノボリはとても苦労して全部の錠剤を飲み下すと作った「巣」の中にバタンと倒れて眠ってしまった。

 

 「タマゴ」が孵ったら本当のノボリとクダリが生まれて、全部代わってくれるのなら、ぼくらこそ「タマゴ」になって生まれ直したい。生まれ直したら、ぼくは今度こそノボリが代わりになる前にあいつらをバットでどうにかしてやるのに。

 

 冷たい体に手を伸ばして、赦されちゃいないのでそっと布団を手繰ってかけてやった。

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