陰キャリア充なひとりちゃん 作:粉物を作る時のダマの様な存在
「うへへへへへへへへへ」
「しょうがないか。ほい、デコピン」
「痛!え?!ここどこ…?」
「ごめん。でも、もうすぐ駅に着くからさ。流石に自分の世界に入ったまま駅に入るのは危ないから、起こさせて貰った。」
「あ……ありがと。」
「じゃあ、改札入ろうか。」
「わかった。」
それにしても、優くんに可愛いって言われるなんて夢みたいだ。
お母さん。ありがとう!
それにしても、可愛いなんて……へへへへへへへ
危ない危ない。今、自分の世界に入ったら、デコピンじゃすまい。
最悪、電車でボディをドンだ。
自重しなくては。
でも、今だったらすごい幸せな状態で死ねそう。絶対成仏できる。
普段死んだら悪霊に堕ちそうだしなぁ。
でも、優くんに取り憑くことができるならありかも。
そして、私に線香をあげる優くんを後ろから見守る生活……
今みたいに人生や恋や友達関係で苦しんでる生活よりはよっぽど良いかもしれない。
でも、お母さんとか凄い泣きそう……こんな妄想しててごめんなさい……
あれ?
お母さんといえば……今日の朝のやりとりって……もしかして、お母さんに私が優くん好きなのバレた?
絶対バレてるじゃん!
私が親でも、「幼馴染に不細工に見られたくないから学校行かない!」
なんて言われたら、全て察するよ!
ど…どうしよう……
そんな事を思いながら、私が頭を抱えていたら、電車が来たので、電車に乗り込み、東京へと向かう。
朝6時だからだろうか、人が少なくシートに座ることが出来た。
まぁ、お母さん天然っぽいし、なんとかなるよね…
いや、なんとかする……!なんとかしなければ……!
そんな事を考えていたら、隣に座った優くんが勉強を始めた。
偉すぎる。今日入学式なのに…
うぅ、勉強してて偉いね。って言って、会話でも初めたいけど、勉強の邪魔だと思われるかも……
そもそも「偉いね」って何様のつもりだよって感じもするし……
ダメだ。もう黙ってよう……
とりあえず、私の特技、超高速写真撮影で幼馴染をパシャリ。
勿論無音カメラだ。
優くんの新しい制服姿に未だに慣れない私はこの写真を眺めて耐性を付けなければならない。
私は携帯をスワイプするフリをしながら、優くんの写真を凝視する。
ヤバい、なんか……眠くなってきた。
そういえば、昨日全然眠れなかったなぁ。
でも、優くんに寝顔を見られるのは恥ずかしいし……何としても我慢しないと……
そうだ!
私にとって大事なことをすれば集中力も上がって眠気も無くなるはず!
私にとって友達を作ることは最重要事項!
だから、初対面の人との接し方や話題とかを勉強しよう!
これで眠気も無くなる!
クカー zzzzz
「あれ?ひとり、寝ちゃったか…目にうっすら隈も出来てたし、登校初日だから張り切ってるのかな。」
コテン、、、
「!。肩に頭が乗っかってきた……ど、どうしよう。」
クカーzzzzz
「どうしよう。絶対、起きたら取り乱すよなぁ……ハァ…キニシナイヨウニシヨ。」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「ひとり!起きろって!もう品川だぞ!」
「……しながわ……?…神奈川じゃなくて……?」
「品川だって!」
…………品川!?……え!?
私、寝ちゃった!?
優くんに寝顔見られた!?
恥ずかしい!
恥ずかしい!
しかも、頭が優くんの方に向いてたんだけど!
もしかして、私の頭、優くんの肩に乗せてた!?
「優くん、ゴメ、ゴゴゴゴゴメメ」
「いいから立って!送り返されるぞ!」
「ハ…ハイ!」
私達はなんとか人混みの最後尾に着いて、ホームへと降りた。
「優くん。ごめんなさい。」
「こっちこそごめん。よく考えたら、降りられなくても、次の駅で降りれば良いし、東京だったらどうにでもなったよ。むしろ、寝起きのひとりを無駄に急かして……そっちの方が危険だった。ごめん。」
や……優しすぎる。
優くん私に全然怒んないし、本当に一緒に居て心地が良い。
結婚したい……
だけど、なんか謝り返されると逆に照れる。
「あ…イヤ…私も…ほら、勉強の邪魔とかしちゃったし。」
「気にしないでいいよ。張り切るひとりの気持ちも分かるし。友達、出来たらいいな。」
優くんの中での私、遠足で張り切る子供みたいになってる!
だけど、言えない……
将来的に金を稼ぐためにギターの練習に打ち込んでましたなんて……
「うん。ありがとう。」
でも、元気出た。
頑張ろう!目指せ友達100人!
と、思ったら……ある事に気が付いて、私の心がドンドン冷えていく。
まるで……大事な物を忘れた事に気付いた時の様に。
心臓の鼓動が早くなっていく。
いや……大丈夫だ…私。
ドクンドクン
もう1回確認しよう。
ドクン
私は全神経を集中させた。
やっぱりだ……
口の端がカピついている……
「優くん!!!」
「ど、どうした?」
「その…私、も、もしかして、よよよ、ヨダレガ……」
「あー。気づいちゃった?」
終わった……………
拝啓お母さん。私の恋路は終了しました。
ついでに女の子としても終了しました。
なんか、色々な感情がごちゃ混ぜになってきた。
泣きたくなんてないのに、涙が溢れてくる。
「グス……」
「いや、本当に!全然!気にしてないから!ほら!ウェットティッシュ!口元拭きな!」
「う、ゥごべ、グス……ご、ゴメ…グス」
「本当に気にしてないって!そんな泣くようなことじゃないから!ほら!ベロベロバー!」
「わ…わた…し…サイ…あ、グス…グ」
「やばい、渾身のギャグも届いてない。とりあえず…座らせた方がいい…かな?」
最悪!ごめん!恥ずかしい!みっともない!恥ずかしい!見られた!終わった!最低!夜更かしのせいで!恥ずかしい!消えたい!お母さん助けて!押入れに戻りたい!通学するんじゃなかった!ごめん!消えたい!
「っあ、いゃ、駅員さん!痴漢に会った訳では無いんです!監視カメラとか見たら、この子がずっと席に座ってたのわかると思います!その……あの、大好きなおばあちゃんが急死しちゃったらしくて!」
おばあちゃん殺された。
汚い!見られたくない!なんで泣くの!恥ずかしい!最悪!怖い!弁償しなきゃ!嫌われたくない!申し訳ない!止まらない!
「お嬢ちゃん。人はそうやって大人になっていくのさ。辛い時は泣けば良い。人の為に泣けるのは立派な事だ。これからも頑張りなさい。」
いや、おばあちゃん死んでない。
最悪!もう高校生なのに!ごめん!恥ずかしい!辛い!帰りたい!恥ずかしい!嫌いにならないで!
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「落ち着いた?」
「うん。なんとか……本当に気にしてないの?」
「本当だって。」
「でも、下品な女…とか…思ったでしょ…」
「いや、俺も寝落ちしたら、涎で腕が濡れてることもあるし。生理現象なんだから仕方ないって。」
「そう……ブレザー、涎で汚してごめんね。弁償するから。」
「気にして無いって。弁償なんかしなくていいよ。」
「…じゃあ、クリーニングだけでもさせて。涎が着いたままなのは女の子的に辛い……」
「わかった。帰ったら渡すよ。」
「そうして頂けると、本当にありがたいです。」
はぁ。本当に辛い。
もう、自分を卑下する活力も湧いてこない…
子供みたいに泣きじゃくったし。
幸先が悪過ぎる。
何してるんだろ…私…
「なぁ、ひとり。俺は本当に気にしてないよ。」
「わかってるよ。」
わかってる。優くんは私に気を使っているだけだって。
私だったら、同性の女の人でも嫌な気持ちになるし、異性の男子高校生とかに涎を付けられたら、本当に気持ち悪いと感じると思う。
優くんのだったら…可愛いで済ませそうな気もするけど。
「それはわかっている人の顔じゃないって……ほら、ふたりちゃんの世話してる時、めちゃめちゃ涎とか唾とか食べカスとか付いただろ?それを俺が嫌がってたことあったか?」
たしかに優くんは嫌な顔せずに、私以上に妹の世話をしていた。
「たしかに……むしろ、喜んでた?」
「いや待って、癒されてただけだから!喜んでないから!変態にしないで!」
そういえば、看護師さんとか介護の人って、そういう事の世話を頻繁にするから、何も気にならなくなっていくという話は聞いた事がある
つまり、優くんって妹でかなり訓練されてる?
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
良かったー〜。
安心した〜。
ありがとう、ふたり!
優くんにヨダレ耐性を付けといてくれて!
あと、涎とか唾とか食べカスが着くの嫌がっててゴメン!
「よし、そろそろ行くか。」
「うん。そうだね。」
「じゃあ、ここからは相談した通り別行動で。」
「うん。私は五歩くらい後ろを歩くから。」
「わかった。俺の事見失ったらちゃんと連絡すること。」
「わかってるよ…」
これで優くんとの時間も終わりかぁ。
私達は同じ高校に進学することになった時に、中学の頃と同じ様に過ごすと決めた。
それは私達が友達だとバレないようにするという生活だ。
優くんの方は私達が友達だとバレても、何も問題が無いけど、私の方に問題がある。
まず他の女子からの顔を繋いで攻撃。
そして、女子からの牽制攻撃。
最悪、他の過激派女子から攻撃されかねない!
そんな環境、私には耐えられない!
という理由で、私達は品川駅からはお互い不干渉ということに決めた。
優くんと別れて歩き始める。
しかし、私には言わなければいけないことがあった。
「優くんちょっと待って!」
「どうした?」
「涎を垂らしたブレザーにファブリーズだけ、それだけはさせてください………」
もし……後で臭くなったりしたら……死んでしまう!