「で、どうゆうこと?」
「...私は異世界の人間ってこと。」
呆れた声、呆れた視線で彼女が答える。
彼女、「奏こころ」は幻想郷と呼ばれる異世界から来たらしい。
正直いって信じられない、たしかに自分も異世界から来た。
だが、異世界同士が干渉することは有り得ない筈だ。
故に現代日本の秩序が保たれている。
次元を越えるような能力は神にも等しいのだ。
故に信用出来ないのだ。
「じゃあ、どうやって異世界の次元を越えたんだ?」
「幻想郷は強引に異世界に切り離したから結界はけっこうゆるゆるなんだ。
ダイエット成功後に着た昔のズボン並みに。」
「かなりわかりやすい。」
生々しい描写に疲れを覚える。
もう面倒くさいし勝手にしてもらおうか、と一言。
そして家の鍵をとると食料目当てにスーパーに行った。
...筈だった。
ドアを開けた途端、町中から音が失せる。
あるのは殺気、そして狂気。
それはロードランを思わせる死の雰囲気だった。
イメージと共に愛用の装備を纏う。
右手に神聖のクレイモア、左手に草紋の盾、防具は上級騎士だ。
西洋を思わせる騎士の防具は所々の致命傷も含めた傷、そして何度も
打ち直された鉄によって素人にも解る程に熟練された雰囲気を纏っていた。
そして右手に持つクレイモア、それも何度も打ち直された鉄とそれ以上に
神に近い、魔を祓う絶対的な安心感と頼もしい強みがあった。
「...そこか。」
素早く駆け下り、道路にでる。
一番殺気の強い場所だ、ここに何かいるだろう。
腰を落とし、どんな状況にも対応出来るようにし、周囲を見渡す。
右....いない。
左...いない。
後ろ...いない。
「ーーーッ!」
突如襲う殺気、反射的にその場から飛び退く。
視界の端に見えた漆黒の刃、そして感じた事のある
深淵の闇の気配。
それは、いた。
白銀の鎧を闇が包み守るように纏わりつく。
その膨大な狂気は戦いなれている者でないと気絶、下手すると
死に至る。
声にならない叫び、咆哮、悲鳴。
どれとも取れる大きな「音」が強く響いた。
絶対的な力を振り撒くのは、深淵歩きの二名をもつ騎士。
深淵歩き、アルトリウスだ。
「□■■□□■□□□!」
「くるか!?」
盾を構え剣を何時でも振るえるようにする。
再度、「音」が響き、剣がゴゥ!と音を立てて迫ってきた。
単純な力と少しばかりの技量、それが合わさった一撃。
盾越しに振動と少しばかりのダメージを受ける。
が、そのままクレイモアを突き出す。
鎧にぶち当たったそれは鎧を裂き、黒いなにかを噴出させた。
悲鳴の色が強い「音」、続いて闇によって形成された巨大な刃。
「おい、流石にそれはーーーッ!」
盾に最大限の力をいれ、両手で持つ。
ガィン!と盾を削る音と共に左肩から脇腹にかけてを真っ二つに割られた。
致命傷、喉の奥から鉄の味がこみ上げてくる。
口の端から液体が流れていくのを感じつつ強引にクレイモアで縦に斬りつけた。
鎧を簡単に裂き、黒いなにかが大量に溢れる。
「....ッ!」
バランスを保てずに倒れる。
地に這いつくばりながら見上げると、頭を抑えながら悲鳴を上げ、
空に消え去ったアルトリウスだった。
声も出せないまま、それを見届け、意識が闇に落ちる。
わかっていたのは、これは死んだな、という事だけだった。