考察とふうなつ。四国の戦いが終わった後の話です。

1 / 1
フォーエバーゆゆゆい

ゆゆゆ2期、3期、古波蔵棗の章のネタバレを含みます





第1話

 

私は沖縄の勇者、古波蔵棗。

 

「海は言っている。全ては終わったと。」

海からのお告げはあったかと聞いてくる民に私はそう答える。

 

四国へと避難希望者達を送り届け、沖縄南城市に戻ってきた直後に敵が来た。

もし戻るのが少しでも遅ければ…と冷や汗をかきながらもその日はなんとか討伐完了。

 

それから数日間は平和だったが突如、海の向こうから炎のような赤いものが迫ってきて視界の全てが一瞬で赤に埋め尽くされた。

 

しかし目を瞑り再び開けた時、風景は何も変わっておらず更に数日間経ったが敵からの侵攻が無く今に至る。

 

 

一体何が--

 

「どなたか、生きている人はいらっしゃいませんか!!!」

この声は…

 

「こちらは捜索班です。

全ては終わりました。もう安全です!!」

初めてなのにとても懐かしい…

 

「私は、私達は、ここだーーーー!!!!」

生を主張するため必死に叫ぶ。

 

直後、岩陰から大きな船が現れた。

本来は観光の用途として使うのであろうその船の側面には[大社]と大きく書かれている。

急いで直したのだろうか。社の字の下に[赦]という字がうっすらと見える。

 

読み方はおそらく…「たいしゃ」だろう。

一週間ほど前に四国の壁際で避難民を受け入れてくれた集団の名前だったはずだ。

 

私たちの存在に気がついたその船をまだ被害の少ない港へと案内する。

 

-----

 

「こんにちはー!四国から来ましたっ。

結城友奈です!!」

赤髪の元気な子が走って降りてきた。

周りも元気にするようなオーラを放っている。

 

「こ、こんにちは」

勢いに驚きつつ挨拶を返す。

 

「こら友奈、走ると危ないでしょう…港への案内ありがとうございま…す」

先程のアナウンスをしていた声は彼女だろう。そちらに視線を移す

 

美しい…まるでマーメイドだ。

黄色の長髪をたなびかせる麗しい女性が現れた。

 

「初めまして…ですよね?犬吠埼風といいます。四国の大社という組織から生存者の捜索と救護のためやってきました。」

 

「あ、ああ…沖縄の勇者。古波蔵棗です。先週はありがとうございました。」

なんとか言葉を返す。長いこと一緒にいたかのような安心感とこの胸の高鳴りはなんだろうか。

 

「孫は元気ですか?」

「救援ということは四国は無事なの!?」

私の後ろにいたおばあやおじい。皆がそれぞれ疑問をぶつける。

救援が来るということは少なくとも四国は安全になったのだろう。

 

それにしても始まりに対して終わりが突然すぎる。

「…あの炎のようなものが助けてくれたのか?」

ポツリとこぼす。

 

「そうではありません」

ハッとする。

犬吠埼さんに見惚れていて船から降りてくる少女に気がつかなかった。

小学生だろうか。栗色の長髪を海風に揺らされる巫女服の子が犬吠埼さんの隣に立っている。可愛らしいという言葉がピッタリ似合う子だ。

 

「はっ…先に自己紹介からですよね。申しわけございません。私は、国土亜耶と申します。

勇者様には最大限の敬意を…」

いきなり土下座を、いや、地面に手をついて挨拶をしてくる国土さん。

驚いた…先の二人とはまた異なるファーストコンタクトをされ固まってしまう。

 

「だからその癖辞めなさいって…驚かせてごめんなさいね」

犬吠埼さんが立ち上がらせながら謝ってくる

 

「い、いや…」

 

「失礼しました。

あなたがたが疑問に思っていることの前に一つ大事なことを把握していただきたいのです」

 

国土さんが続けた次の言葉に私達沖縄の民は言葉を失った。

 

「あなたがたは私達から見ると300年前の人々なのです」

 

 

 

-----

 

私たちを襲ってきた敵は「バーテックス」という名前だそうだ。

バーテックスを送り込んできた主は

[天の神]

人類を根絶しようとするその神が四国以外の全てを赤で塗りつぶした。

私達は熱さを感じなかったが赤は世界の理とやらを塗り替えてしまう灼熱の炎だったらしい。

 

天の神とは異なり人を守ろうとする別の神、

四国を守る神々の集合体

[神樹]

四国の勇者達が戦う際には樹海化という現象を神樹が起こしていたらしい。

時を止めてから勇者以外を対象に四国内の世界の理を書き替えて四国内全体を木の根のようなもので覆い、民や町の被害を最小限に抑える防衛装置とのことだ。

 

その神の寿命ギリギリで四国の勇者達が天の神を撤退させた。

神樹は四国内だけでなく外の理をも元に戻して枯れていったという。

 

 

 

神に脅かされることがなくなった新世界。大社内部では四国外の生存者を探して救助すべきではないかという声が上がっていた。

 

神として天の神と神樹は同じような能力なのではないかというのは前々からあった説だそうだ。

つまり世界を灼熱で焼いたのではなく、天の神は世界の理の塗り替えを時止めと同時に行なっていたのではないか。

四国外も樹海化と同じようになっていたのではないか。

 

それならば四国外の人類の生存は絶望的だと思われていたのだが可能性はある。

 

その考えを後押しするように2つの証拠が上がった。

 

・今目の前にいる少女、巫女である国土亜耶が「北と南に生存反応がある」という神託を神樹が枯れる直前に受け取ったということ。

 

・彼女の所属する部隊「防人」の一員である弥勒夕海子という人のご先祖、弥勒蓮華が日記に仕事仲間である赤嶺友奈という少女のことを大量に書いていることが分かった。

その殆どは彼女との日常の内容だった。

彼女の3世代前が古波蔵棗という勇者に護衛されて沖縄からやってきたと耳にタコができるほど聞かされたということも記されていた。

 

沖縄の位置は昔の地図で分かる。

勇者の詳細の位置も力の強い巫女ならば探知できる。

 

以上のことから捜索班が組まれ今に至るという。

 

 

 

「…つまり私達は300年間冷凍されていたようなものなのか…」

久しぶりに受けた授業のような情報量をなんとか理解しつつも実感が湧かない。

 

「四国内部の安定や準備などで一年もお待たせしてしまい申しわけありません」

しょんぼりとした顔で謝罪をしてくる国土さん。心からというのが伝わってくる。

 

「い、いえそんな謝らないでください…一年…?その炎を見てからまだ数日しか経っていないような…?」

謎の罪悪感を感じつつ疑問を呈する

 

「おそらくですが300年も止まっていた時が動き出したのです。

時間の流れが私たちの地域とは異なっているのでしょう。

…一度動き出せば少しずつ時間の流れが正常に戻っていくと思いますよ。」

犬吠埼さんが考察を述べ、

 

「逆ウラシマ効果みたいですね。」

と付け加える。

 

ウラシマコウカ…?また新たなワードが出てきた…

 

「と、取り敢えず全てが終わったんです。のんびりいきましょう先輩」

困惑する私や場を和ませるように少しおちゃらけた雰囲気で続ける彼女。

 

そうだな…ん?

「…先輩と言ったのは?」

 

「私達も勇者なので」

可愛らしくぱちこりとウィンクを決める犬吠埼さん。

なんと…マーメイドは勇者だった。

 

今日は驚きの連続だ。

普通では信じられないことの数々だったが何故か彼女らが嘘をつくような人間ではないと頭では無く心で理解していた。

 

 

----------

 

次の日、私たちは四国の香川にいた。

ゆくゆくは沖縄と四国相互援助を行いたいそうだ。

大社は手厚く保護してくれ、寮の提供だけでなく、携帯や自由に使えるお金も用意してくれていた。

私達はこれから数年間止まっていた学業に加えて四国内の基礎情報を学ぶらしい。

 

300年も未来だ。どれだけ技術が進んでいるのかと思いきやどうやら私たちの時代とそこまで変わっていないようで安心した。

明らかに故郷と違うと感じたのは神樹とうどんへの熱心な信仰くらいだろうか。沖縄と同じく暖かい人が多い。

 

早速授業が行われたのだが、その一部として大社の改名の由来について触れられた。

300年前、四国の人々は天の神に降伏し名前を「大赦」と改めた。

昨年天の神を撤退させたことで晴れて「大社」と名前を戻したという経緯があり、この一文字はとても大きな意味を持つ漢字だそうだ。

 

もし北の方の生存者も発見できればこの授業や寮に合流するとのことで楽しみだ。

 

しかし、

「300年以上神樹様が守ってくれた四国から外に出るとはどういうことだ。バチが当たるぞ」

ということを周りに強く主張する罰当たり一派というもの達の存在が見られるため、身の安全というのを含めもうしばらくは沖縄から来たということを隠してほしいそうだ。

犬吠埼さん達が来たのも近海の調査という名目でこっそりだったらしい。

 

 

----------

 

四国に来てから4日ほど経った。

 

犬吠埼さんとは毎日連絡か通話をしている。

災厄が起こり四年間ほど通信手段がなくなった身として、遠距離の人とも連絡が取れるということに改めて有り難みを感じる。

 

犬吠埼さんは現在高校一年生。中学二年生の妹と二人暮らし。学生生活を送る傍らでボランティアや大社に協力をしているという。

 

時刻は14時。

「本日はありがとうございます。」

「いえいえ、早速いきましょうか。」

寮まで迎えに来てくれた犬吠埼さんと合流する。

 

大橋近くの勇者や巫女を祀る英霊乃碑に連れて行ってもらった。

昨日の授業でこの場所を知り、いつか行きたいと思った矢先に西暦時代の四国の勇者を一人追加する工事と神事を行うため来週から暫くは入れなくなってしまうらしいと知らされた。

急で申しわけないと思いながらもダメもとで犬吠埼さんに案内をお願いしたところ、快く受け入れてくれた。

 

-----

 

到着して名前を探す。

 

[上里ひなた]

と書かれた碑がスッと視界に入ってきた。

私が避難希望者を四国に送った時、彼女を乗せた船が壁際で迎え入れてくれた。

その時は思考を巡らす余裕もなかったが、国土さんと同様に巫女の力で私が近づいてくるのを察知してくれたのだろう。

 

2週間程前に会った人が300年も前の人だなんていまだに信じ難い…

 

同年代に見える外見だったが何十年も生きてきたかのような異様な落ち着きっぷりとプレッシャーを放っていた。

故郷が心配だったため2、3こと言葉を交わした程度だったが、

 

「ご武運を」

そう言ってくれた彼女の祈りの言葉と真剣な瞳は生涯忘れることがないだろう。

 

 

たくさんの勇者や巫女達の名前を追っていく

[古波蔵棗]

…私の名前があった。きっと避難した人々が私の名前を伝えてくれたのだろう。

 

そしてその近くで目的の人物を見つけた。

[赤嶺友奈]

私の知らない、送り届けた記憶のない赤嶺家のものだ。

 

つい先程までどうしても実感が湧かなかった年月の流れがドッと自分自身に流れ込んできた。

私が送り届けた人々はしっかりと生きてバトンを彼女に繋げたのだ。

 

彼女がいたからこそ私達は300年後の四国の人々に…犬吠埼さんと会うことが出来た。ありがとう。

 

-----

 

「改めて本日は本当にありがとうございます。なんとお礼を言ったらいいか…」

深々と頭を下げる。

 

「そ、その…さ…」

言いにくいことでもあるのか前髪をクルクルと弄る犬吠埼さん、なんだろう、お願いならなんでも聞くつもりだ。

 

「…ふ、風でいいわよ。私もタメ口でいくから棗もそれでお願い」

 

[棗]…彼女からのその呼ばれ方にとてもしっくりきた。まるで何十回も何百回もその口から呼ばれていたような…

 

「…そ、それに今から私の家で食事するのに『犬吠埼』って呼ばれたら私か樹なのかややこしくなっちゃうわ」

照れを誤魔化すためなのか顔を赤らめながら付け加えて理由を述べる犬ぼ…風。

 

「ありがとう、風」

そんな彼女が愛おしく微笑ましい。

 

-----

 

観音寺の観光を軽くしてもらい気づけば夕暮れ時に。

 

風の家についた。

夕飯を作り始める彼女

何か手伝おうとしたが

「お客様なんだからくつろいでいなさい」と言われてしまった。

やることもないので風が料理をテキパキと作っていく様を眺めてみる。

 

妹の樹は部活動が忙しいそうでまだしばらく帰ってこないらしい。風の妹の話は事前に沢山聞いているが溺愛っぷりが伝わってくる。

 

味噌汁を作る段階に入ったが具が驚くほど少ない。

ここまで食糧不足は深刻なのかと海で魚を取ってこようとしたら止められた。どうやら四国では具の少ない味噌汁が普通なのだそうだ。

 

そうこうするうちに妹の樹が帰ってきた。

庇護欲をそそられる小動物的な子だ。

丁度夕飯もできたのですぐご飯になる。

 

「「「いただきます」」」3人で手を合わせて食べ始める。家庭的な料理となるよう意識してくれたのだろう、私にも馴染み深く、懐かしい料理が並ぶ。

とてつもなく量が多いのだが私は大食だと思われているのだろうか…?

 

ふと顔をあげると風と樹が談笑をしている。

仲が良いなと思いながら手を伸ばした味噌汁を一口飲んでホッとした。

 

味も具材も全く違うのに…

 

4年前にもう二度と以前には戻れないかもしれないと覚悟していた日常に戻れた実感がようやく湧いてきた。

 

こんなに安心してゆっくりとご飯を食べるだなんていつぶりだろう。

暖かい家庭

穏やかな空間

 

全てが終わったと頭では理解していてもなお、心のどこかで張り詰めていたものがようやく解けていく

 

「…棗、どうしたの?」

 

気づけば頬をツーッと温かいものが流れ落ちた

 

本当に…全て終わったのだ。

 

「風!」

私は立ち上がり彼女の名を呼ぶ

 

「ど、どうしたのよいきなり立ち上がって」

風は戸惑っているがそのまま思いの丈をぶつける。

 

「風…毎日味噌汁を作ってくれ」

手を握りお願いする。

 

「ふぇっ!?お、お姉ちゃんが私の目の前で告白されている…あわわわわ」

横で見ていた樹が突然のことに慌てている。風の反応は…

 

「樹慌てすぎ!私の手作りご飯をこれからも食べたいってことよね。

まったく…私の女子力の強さにも困っちゃ…あわわわ」

 

「ぷっ…あはは」

思わず吹き出す

 

『なんで笑うのよ!「ですか!」』風も樹も姉妹揃って同じ反応…本当に仲良しだ。

 

 

---------------

 

あれから数ヶ月、夕飯は風の家で取ることになっている。

 

本日も夕飯をいただき一緒に洗い物をする。

樹は明日の勇者部が忙しいとのことで夕飯が終わるとすぐに風がシャワーに向かわせた。

 

洗い物が終わり風がいつも通りお茶を淹れてくれるというので

 

ソファに座りテレビをつけた。バラエティがやっている。日常に戻れたことがたまらなく嬉しい。

 

日本茶を淹れた風がそっと前のテーブルに置いてくれる。

 

「ありがとう風。」

 

彼女も私の横に座った。

(私を見て欲しい)とでも言いたげにテレビを消し、頭を預けてきた。

 

ずっと嗅いでいたくなる彼女の匂いが私の鼻腔をくすぐる。

思いっきり抱きしめたい欲を抑え、なずっと触っていたくなるしなやかな手を握り返す。

 

「樹とも話したんだけど…同棲しない?」

握った手に指を絡ませてくる風。

 

「…いいのか?」

彼女の髪を手櫛でとかす。サラサラと指通りがよく心地よい。

 

「勇者部の皆にもちゃんとあなたのこと紹介したいし。それに…」

 

ガチャン。静かな空間に音が飛び込んできた。

シャワールームの内部、浴槽からドアを開ける音だ。樹が上がったのだろう

 

風がパッと離れる

名残惜しい。

 

誤魔化すように唐突に話題とトーンを変えてきた。

 

「そういえば大社からあんたの生存確認と依頼を受けたんだけど」

「…ああ、携帯があるのを忘れたまま海に飛び込んでしまって壊してしまっていたのを忘れていた」

 

「やっぱりね。そうじゃないかと思っていたわ。」

やれやれとでも言いたげな表情をしながら作文用紙のようなものを渡される。

 

「これは?」

「大赦からあなたが沖縄で勇者として過ごした期間をまとめたものを簡単でいいから教えて欲しいって。」

 

一言目のインパクトが重要よ

勇者部部長の経験を語りながら可愛らしくウィンクを決める。

「書き終わったら私が一回読んで推敲するわね」

ふむ…

風も読むならとより一層気合を入れる

 

ペンを取ると様々な思いが飛来する

両親、ペロ、故郷…

あの四年間は決して無駄ではなかった。

 

よし。描き始めは決まった。

 

 

[古波蔵棗は勇者である]

 

 

 

 

 

 

古波蔵棗「全てが終わったその後に」終




ふうにぼ派だったのですが古波蔵棗の章ラスト見てしまったらふうなついいよね…ってなってしまう…いいですよね…

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。