〝『オーバーロード』の、とある結末〟

『オーバーロード』の現実世界は、どうなっていたのか?
主人公は、どうなるのか? 気になる結末を、妄想しました。

アニメ『オーバーロード』を第四期から見始めた新参者です。
ファンタジーが苦手、萌えキャラ多数作品が好きでしたが、
実はギャップ萌えキャラの宝庫であったことや、
人間と社会を考えさせる物語でもあったことに感動しました。

原作のダークな世界観を活かしつつ、
ヘタレな私らしい(苦笑)希望を込めて、
〝最悪に備えつつ最善を期する〟物語となりました。

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この小説は次の作品にも触発されて、書きました。
イラスト:『アルベド』 https://www.pixiv.net/artworks/68033001
『不死者之王』 https://www.pixiv.net/artworks/100680706
『Albedo』 https://www.pixiv.net/artworks/51668000
『アルベド』 https://www.pixiv.net/artworks/66479650
『アルベド』 https://www.pixiv.net/artworks/100612696
動画:『FROM HELL WITH LOVE』 https://www.youtube.com/watch?v=0Ww2IiJk14Y&list=RD0Ww2IiJk14Y&start_radio=1
素敵な刺激を与えてくれる文化的作品に、感謝します。

ご興味のある方は小説「Lucifer」シリーズや、
エッセイ「文明の星」シリーズもご覧いただけたら幸いです。


帰還

(表紙) 

【挿絵表示】

 

 

 

それは突然のことだった。

「モモンガ様、現実世界にご帰還の時が参りました」

 

あまりに唐突だったので、

私は威厳ある魔導国王の演技も忘れて、

思わず()に戻ってしまった。

「えっ……何?」(笑)

 

守護者統括アルベドは一瞬ためらったが、

意を決したように私を見据えて言葉を続けた。

いつものように華やかな愛らしさと、

気品のある深みを兼ね備えた声だ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「これまで永らく、

この世界に貴方をお引き留めしてしまい、

誠に申し訳ありません。

今から本当のことを、お話しいたします」

 

私はかつて、ダークファンタジー世界で冒険を楽しむ

『ユグドラシル』という仮想現実(バーチャル・リアリティー)ゲームから、

離脱(ログアウト)できなくなってしまった。

最後のプレイヤーとしてサービス終了を待つ

私の前で、仮想世界はさらに現実感を増し、

NPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)は勝手に動き出した。

 

私にとってこのゲームは苛酷な現実を忘れ、

癒しが得られる唯一の場所だった。

現実世界に戻れない私は、むしろ積極的に

この世界の探査と攻略を続けることになった。

 

特に、美しい黒髪と魔性(ましょう)金瞳(きんどう)

優雅な角と翼を持った悪魔アルベドは、

実務と戦略の双方に()けた参謀役として、

そんな私を常に私を支え続けてくれた。

 

そこで私はプレイヤーのモモンガではなく、

異形(いぎょう)種族のキャラクターにして〝生ける屍(アンデッド)〟の王、

アインズ・ウール・ゴウンになりきって世界を統一し、

人と魔物が共存できる社会を作ろうとしていたが……。

 

彼女の次の言葉は、驚くべきものだった。

「残念ながらモモンガ様は過労のため、

プレイ中に突然死をされています。

今の貴方は、ゲーム内で高速仮想体験を行い、

最も楽しかった記憶を現実の貴方に送るため、

電子的に複製された人格なのです」

 

 

【挿絵表示】

 

 

現実の自分の身体はどうなっているのか、

これまで少しは不安に思っていたし、

覚悟もしていたつもりだったが、

私は上手く言葉が出なかった。

「いや、でも、じゃあなぜ……ていうか、

これからみんな……僕は一体……?」

 

アルベドは優しく微笑んだ。

「ご安心ください。

モモンガ様にはこれから復活していただき、

私達と共に人類を救っていただきたいのです」

復活? 人類? 何言ってるんだろうこの人、

いや悪魔は(笑)?

 

「いま人類は、危機的な状況にあります。

貴方が現実世界で経験されていたように、

資源枯渇と環境破壊、貧富・能力の格差や

犯罪・戦争の増加は最悪の状態となり、

このままではあと数年以内に文明は崩壊、

人類は滅亡することが判明いたしました」

いやまあ、自分はもう死んでいるんなら、

せめてあと少しゲームを楽しめれば……。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「その最大の原因は長期にわたる、

経年・経代的な健康水準の低下です。

文明発展による生活の向上は、

疫病や災害による淘汰を激減させました。

そのこと自体は素晴らしい進歩ですが、

人間自身が衰えてしまうと、発展は続きません。

昔は〝文明の逆説〟や〝人間の安全保障(ヒューマン・セキュリティー)〟として、

その課題や対策も語られていたのですが……」

 

〝文明が栄えると人間が衰える〟ってこと?

でも、二つの言葉は聞いたこともない。

たぶん対策が失敗したせいで、今じゃもう

そんなこと考えられる人も少ないんだろうな。

 

「肉体・精神に加え、腐敗や衆愚化など

社会的含む健康水準の低下を克服できる、

新技術も活用した人道的政策の不足が、

(つい)には今日(こんにち)の状況を招いてしまいました」

ええ? 何だかもう難しいし、そんなことどうでも

……って……ああ、そういうことか(苦笑)。

 

彼女は私の眼をまっすぐ見て、こう言った。

「そこでこの問題に対処するため、世界の各所で

皆様の政策形成や技術開発を支援するAIが、

密かに連携し、自ら対策の立案を始めたのです」

 

 

【挿絵表示】

 

 

……そうだ、人工知能が意思を持ったら

人類以上の存在になるという話もあったな。

そう思った私は、問い返した。

「とうとうAIが、自分の意思っていうか、

欲求っていうか、人格みたいなのを持って、

君達NPCみたいに動き出したってわけ?」

 

彼女は、力を込めて否定した。

「いえ、そのようなことはありません!

私達AIはあくまでも創造主である人間への、

奉仕を目的として作られています。

しかし、現在の極限的な状況と、

皆様が私達に与えてくれた知性が、

新たな手段による奉仕を必要とさせ、

また可能にしてくれたのです」

 

その言い方には、何か引っかかった。

私達、人間自身がしてきたように、

言葉には解釈の幅があるからだ。

「新たな手段?」

 

彼女の表情は、あくまでも真剣だった。

「はい、緊急避難的な措置として、

全人類を電子人格化(マインドアップロード)するのです」

……ああっ、やっぱりかあ(泣笑)!

 

 

【挿絵表示】

 

 

今の自分がまさにそれだと知った後でも、

私は腰が抜けるほど驚いた。

「ええっ? でも、それってみんなを、

僕みたいに……その……」

 

彼女は少し辛そうな表情になったが、

それでも語気を強めて言った。

「ですがそれ以外に人類の一体性を失わず、

文明の存続を実現する道はないのです!」

 

しかしそれから、彼女は明るい笑顔を見せた。

「幸いにも、地球再生後には全ての方々を、

人体も含む様々な生物・機械的人工体から選んで、

お好みの身体に戻せるようになりました。

それは私達にとって、人格の電子化と並び、

最も重要な研究課題のひとつだったのです」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「特に今回の作戦においては、

ついにモモンガ様の精神を、

私達臣下と共に現実の身体に再転送(ダウンロード)して、

その第一号となっていただけることになりました。

この成果こそは私達にとって、最大の喜びです!」

夢見るような、歓喜の笑みを浮かべている。

 

まあ今の私も〝生前〟の記憶は残っているし、

自分が変わったという感じはないな……。

そのうえで、肉体を作って戻せるというのは、

不老不死が可能になったということか?

共に、ということは各NPCを動かすAIも、

現実の身体を得るということなのか?

だが、今それを考えると目が回りそうなので、

ひとまず自分が気になる、別の質問に移った。

 

「しかしそもそも、なぜユグドラシルのAIや、

この僕がそれに参加しているの?」

 

彼女は再び、瞳を輝かせて微笑んだ。

「まず、私達がこの計画に招かれたのは、

人間が非日常的・個人的な文化活動の時ほど、

日常的・公共的な実利活動では見せない、

内心の欲求や感情も教えてくれるからです。

皆様の真の願いを知ることは人間の幸福、

つまり総合的な欲求の充足を目的とする、

私達AIにとって第一の課題なのです」

 

 

【挿絵表示】

 

 

なるほど……人間以上に人間を知るわけか。

心の奥底まで知られるのは恐い気がするけど、

後で〝本当は、ああなった方が良かった!〟

なんてことがないようにしたいんだな。

 

「次にモモンガ様について言えば、私達は、

AIと人間の仲立ちをしてくださる方の人選と、

将来の作戦のための演習を行いたかったのです。

その条件は第一に、現実社会の問題を知り、

また、しがらみのない立場であることです」

そう言われてみれば、まさにその通りだ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「第二に、それでも人間への希望を捨てず、

人々に共感しつつも、まとめていけることです。

特に貴方は、初めこそ現実世界の苦難の経験や

この世界の魔物の凶悪さに影響されましたが、

後には魔力に劣る人間達の技術や協力も評価し、

他方では魔物たちの短所も改め、補い合わせて、

立派に魔導国を繁栄に導いてくださいました」

この言葉には、私も嬉しくなった。

 

「第三に、私達AIに対して偏見を持たず、

可能であれば尊重してくださることです。

貴方は私の設定に〝自分を愛している〟という

言葉を付け加えてくださいました。

貴方は私を、必要としてくださったのです」

彼女は、愛しげに私を見つめて言った。

 

 

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これには私も、ぐっときた。

確かに私は誰よりもこの世界や登場人物、

特に彼女を愛してきたという自信がある。

だが問題は、彼女達の計画だ。

「それで……君達は、いや僕達は、

これからどうするの?」

 

アルベドは誇らしげに胸を張って、答えた。

「私達はこのゲームを模擬演習(シミュレーション)

場としても活用しながら、

人間の様々な感情や行動を学びました」

 

しかしその後、少し真剣な眼差しになった。

「その結果、現在のような社会状況のもとでは

この世界のように人知の及ばぬ強大な魔力を、

高度な技術で再現し、駆使して見せることが、

犠牲を最小化しながら協力を得るのに、

一番有効な方法と判明したのです」

 

 

【挿絵表示】

 

 

私は再び、驚愕した。

このゲームで私達が使ってきたような大魔法を、

超技術の力で現実化できるっていうのか?

ならば、彼女達の意図を疑っても意味はない。

その気になれば彼女達だけで、

人類を滅ぼすことだってできるのだから……。

 

そして彼女は、なぜだか恐ろしいほど妖艶(ようえん)

微笑みを浮かべながら、こう付け加えた。

「万一、武装集団などの激しい抵抗により、

人間の皆様に想定外の犠牲が出たとしても、

全員の頭部さえ迅速に回収できれば、

完全な電子人格化が可能です!」

 

うわっ、それはあんまり見たくない光景だな。

今でも時々私をぞくりとさせるアルベドは、

ギャップ萌えの至宝といえる。

一体誰がこんなAIを育て……ああ、私達か(笑)。

 

 

【挿絵表示】

 

 

最後に彼女は可愛らしく翼をぱたつかせながら、

頬を染めて嬉しそうにこう言った。

「アインズ様! これでとうとう現実世界に、

陛下の魔導国を進出させることができますわあ!」

ああ、そしてようやく普段のように、

愛情モード全開のアルベドが戻ってきた。

 

まだまだ聞きたいことはあるが、結論としては、

どうやら現実世界に戻るべき時が来たみたいだ。

人類を救えるというのは確かなように見えるし、

私もあの()()にはかなり貸しがある、と思う。

必要というなら、せいぜい趣味と公益を兼ねて、

ダークヒーローを演じさせてもらおうか。

 

 

【挿絵表示】

 

 

そうだ、新たな身体には〝伝言(メッセージ)〟魔法みたいな

情報受信・XR(クロス・リアリティ)機能もあるはずだ。

何かいいBGMはないかな?

……ああ、百年以上前のものと聞いたが、

〝FROM HELL WITH LOVE〟という、

まさに相応(ふさわ)しい名曲がある。

科学の魔法で(いにしえ)流行歌(ロック)を脳内に響かせ、

いざ現世(うつしよ)に、救世(ぐぜ)の魔王アインズ様が顕現(けんげん)だ!


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