時系列で言うと本編第四話辺りの話です。コラボと言う事で時間や設定の矛盾やキャラ崩壊等がございますが、気にしないで頂ければと思います。
番外編第一話。一針
――横浜探訪。
ああ、実に甘美で甘ったらしく、ベリースイートな響きだろう。
今すぐお茶でも用意して、一緒にして飲み干したいくらいだ。お茶苦いから、飲めないけど。
まあ、そんな訳でボクとポオは、乱歩君と芥川君を探すと言う超個人的な理由から横浜探訪に来ていた。
勿論、ボスであるフランシスには内緒で。
懐かしいモダンな雰囲気と喧騒をくすぐる危険な雰囲気が併せ持つ魔都、横浜。
そんな場所で誰にも言えない極秘デート等、こんなのボクは心を躍らすしか無かった。
「うむ、し……新人君は凄いであるな。こう言う大衆が沸き立つ大都会は我輩、どうしても苦手である」
しかしボクに反してポオはやはり萎縮しているのか、横浜の街角の路地裏の隅っこのさらに陽の当たらない所の猫しか通らなさそうな……。
とにかくとてつもなく暗い暗い空間にて、ペットのアライグマであるカールを抱えながらぎこちない動きで撫で撫でしていた。
それもあってか今のポオはボクより背が高いのに、妙に小さく見えてしまう。
「それじゃあ早速、ボクがポオさんの代わりに色んな人に聞き込みしてあげる」
とりあえずボクは第一にも第二にも、乱歩君と芥川君の居場所を知りたい。なので、ひたすら色んな人に声をかけまくる聞き込み作戦を実行しようと企んでいた。
「ふ、ふふ……。その間ポオさんは、ボクの後ろでカールさんと一緒に小動物の様にうるうるの瞳で見守ってて。うるうるだよ、うるうる。前髪も上げててね」
ボクはあえて小悪魔に似た笑顔で、怯えるポオをおちょくる。
「わ、我輩……一応、君の上司なのだが。何故、部下にうるうるの命を受けなければならぬのだ……」
「あれ……そんなへっぴり腰の上司見た事無いよ。おかしいな」
ボクはあえてわざとらしく、ポオさんの泣き出しそうな瞳を真正面から覗いてみせる。
一方のポオは完全に大都会の雰囲気に呑まれてしまった事で、比喩的に腰が砕け散ってしまっていた。
なので生まれたての小鹿と見間違う程に、彼は足をぷるぷるさせて座り込む様な態勢を取ってしまう。
「小さく見えたのは錯覚じゃなかったんだね。本当の小動物みたいでボクはこっちの方が好きだけど。……まあ、ボクはポオさんの為に必死に頑張って聞き込みするから。あ、本当にうるうるが無理なら、ゆっくり休んでてね」
「いや流石に、人に任せて何もしない訳には行かないであるからな……。うるうるはしておこう」
そして主にボクの懸命な聞き込みにより、芥川と乱歩どころか、ポートマフィアと武装探偵社に関わる重大な情報、言わばトップシークレットを入手してしまった。
とりあえず、ボクはポオさんとその情報を二人だけで共有するべく、横浜の街角の路地裏の隅っこのさらに陽の当たらない所の猫しか通らなさそうな暗い暗い空間に戻る事となった。
「どうやら、ポートマフィアと武装探偵社には……行きつけの甘味処があるんだって」
それは、地元の人々から絶大な人気を誇る老舗店甘味処【みつひな】。
休みの日には観光客も地元の人々と仲良く訪れる程に繁盛しており、お味の方は勿論お墨付き。
しかもどうやら味だけでは無く看板娘の評判も今、巷で密かに話題になっている。
中にはポートマフィア、武装探偵社両方にも、その看板娘目当てに来ている人物が居る程との事。
さらにさらに、なんとこの甘味処。噂によると、幸運を呼ぶ縁起の良い甘味処としても有名らしい。
「……ほほう、其処に乱歩君も通っている可能性があるのだな。それでは【みつひな】の馳走を頂いたら、もしや我輩も超推理に目覚めるのでは? こ、これは行く価値がありそうであるな……!」
「な、なんでそうなるの。……まあ、ボクの芥川君が看板娘とかにお熱だなんてあり得ないけど」
とはいえ芥川が甘いのを求めて甘味処でお茶している等、ギャップの極み。
「ふ、ふふ……。ボクも甘いの好きだし。もうそれ、運命だよ」
ボクは顔どころか、全身と言う全身、いや己の内に居る魂そのものがお熱で火照っていた。
ボクの両耳と頭部から勢いよく、湯気が立ち込めていてもおかしくないくらいだ。
「それでは行くしかないであるな、甘味処みつひなに」
「うん……! それに芥川君や乱歩君に会うべく、幸運にあやからないと」
――なので思い立ったが吉日の言葉通り、ボク達は甘味処みつひなに到着していた。
外装はまさに老舗店と言った渋い雰囲気であり、長年愛されているのも一目見ただけで分かる事だろう。
ちなみにボクとポオは何故か、恋人に会う様な緊張な面持ちでお店の前の行列に並んでいた。
そしてあんこや抹茶と言った心地の良い甘い香りを堪能しながら数十分待った後、ようやくボク等はみつひなの中へ入店する。
「相変わらず、お客さんが多くていい事じゃないか。三宅ちゃん」
「は、はい! こんなにお客様に来ていただけるなんで……しかも、太宰さんまで……! 私、とっても嬉しいです!」
そこには横浜と言う街に相応しい、どこかモダン風らしくも危険な雰囲気を持つ青年がボク等の前に居た。
そして謎の青年と一緒に、一人の可愛らしい少女の姿も――。
「いらっしゃいませ! ようこそ、甘味処みつひなへ!」
太宰さん、出番ありました!