無職転生-魔術を極める- 作:魔術師見習いa
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私が神子であることは分かった後、手掛かりになりそうなものを調べてみたけど、何もなかった。
魔法大学で調べられる範囲には、手掛かりになりそうなものもない。
やっぱり、祝福や呪い持ちが現れるのを待つ以外に選択肢はないわね。
召喚魔術の研究が終わってから、研究の対象になる魔術が見つからなくて暇……
召喚魔術を解析したことで、空間にも干渉出来るようになったし、次は時間に干渉する魔術の研究でもしようかな?
魔術だと占命魔術のように未来を見るくらいで、時間に干渉するものはないし、簡単には終わらないでしょうから楽しめそう。
「エルシア様」
「ん?どうかした?」
私が次の研究内容について考えていると、アリシアとエミリーが研究室に入って来た。
二人揃ってこの時間に戻って来るなんて珍しいわね。
「ルーデウス・グレイラットという名前の冒険者が、推薦を受けて魔法大学に来ています」
「確か、エルシア様の双子の弟もルーデウス・グレイラットという名前でしたよね」
「ルディが魔法大学に来てるの!?」
私が立ち上がり二人に問いかけると、二人とも苦笑しながらエミリーが答えた。
「おそらくはエルシア様の弟で間違いないかと」
「そう、すぐに行くわよ。案内して」
「かしこまりました」
アリシアとエミリーの案内で修練棟の訓練室に案内された。
何でもルディが、噂通り無詠唱で魔術を扱えるのかの試験をするためらしい。
訓練室に着くと、フィッツとルディが摸擬戦用の魔法陣の上で向かい合っていた。
無詠唱魔術の確認のために、同じ無詠唱魔術師のフィッツと摸擬戦させることにしたのかしら?
「では、はじめ!」
「『乱魔』!!」
号令と同時に、杖を構えたフィッツに対して、ルディが魔力を送り始めた。
ルディの送った魔力が、フィッツの魔術の発動を阻害されているみたいね。
あんな魔術聞いたことがないけど、どこで覚えたのかしら?
ルディが『乱魔』と呼んだ魔術をよく見るために、フィッツの後ろに移動する。
私がフィッツの後ろに移動した直後、ルディの岩砲弾がキュインという音を立てて飛んで来た。
フィッツの顔の横を通り過ぎ、上級の結界を貫いて私の方に飛んで来る。
まあ、ルディの魔術が上級の結界で止められるわけないわよね。
全く、手加減というものを知らないのかしら?
飛んで来た岩砲弾を左掌で受け止めて握りつぶす。
ルディは私が岩砲弾を握りつぶすのを見て目を見開いて驚いている。
フィッツもこちらを見てその場で尻餅をついた。
「姉、さま?」
「久しぶりね、ルディ。それにしても……貴方、手加減ってものを知らないの?」
「……やり過ぎた自覚は少しあります」
フィッツを一瞥してルディに問いかけると、ルディもフィッツの顔を見て目を逸らした。
やる前に分かって欲しかったわ。
「はあ。まあ、いいわ。取り敢えず、用事を済ませなさい。待ってるから」
「分かりました」
私が二人から離れて教頭の近くに戻る。
「エルシア様、大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫ですよ」
私のことを心配して問いかけて来る教頭に左拳を見せながら返す。
闘気を纏っていたからかすり傷も出来ていない。
私の掌を見て教頭と知らない女性が目を見開いて驚いているが、気にせずにルディへ視線を向ける。
「い、今の……どうやってやったの?」
「乱魔という魔術です。知りませんか?」
問いに対するルディの答えにフィッツは首を振って返す。
隣の教頭が私に視線を向け、「知っていますか?」と言いたげな顔をしていたので、フィッツと同じように首を横に振る。
私も同じことをやれと言われれば出来るけど、魔術として使われていることは知らなかった。
ルディはどこで学んできたのかしら?
「ありがとうございます先輩!新入生である僕に花を持たせてくださったんですね!」
「えっ?」
「はあ……」
急に馬鹿みたいなことを言い出したルディに呆れてため息をつく。
よく分からない魔術を使って一方的に叩きのめして置いて、それはどうなのでしょう。
余程の馬鹿でもない限り、実力差は一目瞭然でしょうに……
まさか、今の摸擬戦で実力差が分からないのが、普通なのかしら?
いや、それは無いわね。
ルディは試験に無事合格し、教頭から特別生の説明を受けた。
ルディと一緒に来ていた女性は、お金を一括払いして入学した。
ルディの用事が済んだ後は、私の家に集まりアリシアとエミリーが用意したお茶とお菓子を食べながら話すことになった。
本当はルディの話を聞きたかったのだけれど、知らない女性も一緒について来た。
ルディ曰く、彼女も関係があるらしいけど、ルディの恋人か何かしら?
「それじゃあ、彼女の紹介をしてくれる?」
「お願いします、エリナリーゼさん」
「わたくしの名前は、エリナリーゼ・ドラゴンロード。貴女とルーデウスの父、パウロの元パーティメンバーで、ロキシーの友人ですわ」
エリナリーゼさんの言葉に私は目を見開いて、彼女を見る。
ルディの恋人かと思ったら、お父さんとロキシー先生の関係者だった。
「え、えっと……エルシアです。よろしく、お願いします?」
「何故、疑問形ですの?」
「い、いえ……なんて言えばいいのか、よく分からなかったから……」
エリナリーゼさんに対する態度をどうすればいいのか。
本当に誰か教えてくれないかしら?
「意外ですわね」
「意外ですか?」
「もっと調子に乗っていると思っている、とんでも超人だと思っていましたのに、案外普通なんですのね」
「?」
エリナリーゼさんの言っていることがよく分からず、首を傾げてアリシアとエミリーを見る。
二人は納得したような顔で、自分たちが用意したお茶を飲みながら黙っている。
「魔導神エルシアの噂は聞きましたわ。魔法三大国史上最高の天才魔術師、全系統の神級魔術を習得していて、新しい魔術をいくつも生み出した。誰よりも魔力に愛され、息をするように魔力を操る。魔力を導く神エルシア」
「随分と大袈裟な噂ね。私、そんな大した存在じゃないんだけど……」
「つまり、噂は嘘だということですの?」
「えっと……才能で言えば、過去に私以上に優れた人はいただろうし、使えない系統もあるから全系統は嘘ね。新しい魔術は作ったけれど、実用的なものか分からないから何とも言えないわね。息をするように魔力を操れるけど、それなりの訓練をすれば身に着くわよ」
「……貴女、本気で言ってますの?」
「?」
本気も何も事実を言っただけなのだけど。
何か変なことを言ったかな?
ルディに視線を向ければ、エリナリーゼさんと同じように信じられないという顔を向けて来る。
アリシアとエミリーは、ため息をついて呆れたような表情をしている。
「お気になさらず、エルシア様は自分の評価に興味がないだけなので」
「細かいことを気にしていては、身が持ちませんよ」
「従者の私に対する扱いが雑な気がするんだけど……」
「「気のせいです」」
「えぇ……」
やっぱり、この二人、私の扱いがたまに雑になるわよね。
これでも少しは自分の評価を自覚しているつもりなんだけど……
現状、魔法三大国で唯一の神級魔術師で、占命魔術以外は全て扱えるわけだし。
魔道具に必要な魔石や魔力結晶の生成魔術は、かなり実用的な魔術だしね。
魔術だけで見れば、かなり功績は残していると思うけれど……基本的にそれだけだしね。
魔人殺しの三英雄のような人類を救ったような英雄ではない。
多くの人に称えられる英雄とは違い、魔術に関わる者にしか認知されない功績。
それもほとんどが趣味でやっていることだし、調子に乗りようがない。
「えっと、姉様。実は、母様の居場所が分かったんです」
「知ってるわよ」
「「え?」」
気まずい空気を変えるためか、ルディが話題を無理矢理変えたので、話に乗るように返すと、二人とも目を見開く。
そもそもお父さんに手紙を出したのは私だしね。
「どうして知っているんですの?」
「まさか……」
「四年も掛かったけど、指定した対象の居場所を調べる魔術を作ったのよ」
「……無茶苦茶ですわね」
「あれは大変だったわ」
本当に、昔の人はよくあんな魔術を作ったなと思うよ。
扱うのは難しくないけど、詳細な理論を完全に理解するのは、本当に大変だった。
「では、どうして助けに行きませんでしたの?」
「お父さんに任せた方が良いと思ったからよ。呼ばれたら行くけど、私が一人で行っても何も出来ないから」
「何も出来ないということはないでしょう」
「多分、迷子になるから……」
「旅の経験はありませんの?」
「フィットア領とシャリーアの往復ならしたことがあるわよ」
「魔物に関する知識は?」
「まあ……少しは」
「確かに、貴女一人ではベガリット大陸の横断は難しそうですわね」
エリナリーゼさんは助けに行かなかったことに納得してくれたようね。
ルディは特に何も言ってないから、納得しているのかな。
「そういえば、ルディ。貴方が使っていた乱魔はどこで覚えたの?」
「姉様は乱魔を知っているのですか?」
「私もあんな魔術は知らないわよ」
「そうですか。あれは龍神が使っていた魔術を真似しただけです」
「ああ、オルステッドが使っていたのね」
確かに、彼なら使えてもおかしくないわね。
あの時は戦う気が無かったようだけど、彼が殺す気で来ていたらどうなっていたのかしら。
本当に、出来れば戦いたくないわね。
「姉様は、オルステッドを知っているのですか?」
「ええ、知ってるわよ。貴方が殺されかけたことも聞いたわ」
「お、オルステッドが、シャリーアに、いるんですか?」
「居ないから安心しなさい」
青い顔をして震える声で問いかけて来るルディに出来るだけ優しい口調で返す。
殺されかけたわけだし、やっぱり怖いわよね。
「後、今後はオルステッドから襲ってくることは無いはずだから、安心しなさい」
「ほ、本当ですか?」
「ええ、ルディが喧嘩を売らない限りは大丈夫よ」
「そうですか」
ルディも少しは安心したようだし、大丈夫でしょう。
見たところかなり怯えているし、自分から喧嘩を売るようなこともしないでしょう。
「貴女、七大列強相手に交渉したんですの?」
「こう……しょう……?まあ……交渉なのかしら?」
「随分と曖昧な反応ですわね」
「まあ、色々あったから」
交渉と言えば交渉だと思うけど、交渉じゃないと言われたら交渉じゃないようなことやってるしね。
あれは、何と言えばいいのかしら?
「まあ、無いとは思うけど、オルステッドに喧嘩は売らないことね。正直、私も彼とは戦いたくないから」
「分かっていますよ」
「七大列強に喧嘩を売るほど、死にたがりではありませんわ」
「二人もよ」
アリシアとエミリーに視線を向けて言うと、ケーキを食べる手を止めて真剣な顔で私を見る。
「分かっています」
「エルシア様が戦いたくない相手に喧嘩なんて売りませんよ」
「なら、良いわ」
皆、馬鹿じゃないし、余程のことが無い限りは大丈夫でしょう。
ルディがシャリーアに来るまでのことは、またゆっくりと聞けばいいしね。
「そういえば、二人ともどこに住むの?」
「寮に住む予定ですが、適当な宿に泊まる予定です」
「わたくしも同じですわ」
「寮に入るまで、ここに住んでも良いわよ。部屋なら余っているし」
「わたくしは遠慮しますわ」
「僕も遠慮しておきます」
「そう……遠慮しなくてもいいんだけど……」
エリナリーゼさんを見れば、魔力の流れが少しおかしいから呪い子かな。
呪い関係で遠慮している可能性もあるし、無理に引き留めるのも悪いわね。
ルディに関しても何か事情があるのでしょう。
「なら、宿代くらい出すわよ」
「お金に困ってないので、大丈夫ですわ」
「僕も冒険者としてそれなりに稼いでいるので、大丈夫です」
「そう……ならいいけど、困ったことがあればすぐに言うのよ」
「姉様、もう子供じゃないんですから……」
少し過保護だったのか、四人が呆れたような顔で私を見て来る。
そんなに変かな?
「ああ、姉様。精神的な病を治す魔術を知りませんか?」
「あるにはあるわね」
「あるんですか!?」
「ええ、治療魔術のように一度で治せるようなものではないけれど、治すことは出来るわよ」
「どのような魔術ですか?」
「解毒魔術よ」
「ん?解毒魔術で精神的な病を治せるんですか?」
「わたくしも聞いたことがありませんわ」
私の返答にルディは首を傾げてエリナリーゼさんを見る。
エリナリーゼさんも初耳だったようで、首を振って返した。
「原理としては、解毒魔術で精神的な病の逆の症状を引き起こす薬を作るのよ。心が沈んでいる相手には、精神が高揚する効果の解毒魔術掛けれる感じね。これで一時的には治せるわ。後は、魔術が効いているうちに、根本的原因を解決出来れば、完全に治るでしょ」
「なるほど……ちなみに、その治療が出来る方は、どれくらいいるのですか?」
「原理は魔術ギルドに提出してはいるけど、使える人はかなり限られると思うわよ。私なら半年か一年で大体の症状に対応できるわよ」
「い、いえ。あ、あの、冒険者仲間が、人には相談しにくい内容で悩んでいたので、聞いただけですので、お気になさらず」
「そう。まあ、治して欲しいなら連れてきなさい」
「わ、分かりました」
何か言いにくそうだったけど、私に話しにくい内容なのかしら?
まあ、精神的な病の内容や原因なんて初対面の相手には話せないわよね。
その後は、ルディとエリナリーゼさんを含めた五人で夕食を食べ、二人は宿に戻っていった。
エルシアのステータスについて
素の腕力はザノバ以下オルステッド以上、闘気を纏えばザノバ以上。
基本的な身体能力もオルステッド以上だけど、技術がないため十全には扱えない。
物理防御力もザノバより少し低い程度で、闘気を纏えばザノバ以上。
魔術的な防御力は異常に高く、王級以下は闘気を纏わなくても無傷で防げる。
闘気を纏えば、帝級魔術も無傷で受けきれる。
戦闘時は、身体の表面を覆う結界と球状の結界の二つがあるので、神刀ありのオルステッドでも突破が難しい防御力。
魔力量はルーデウスと比べてもかなり多い。
まあ、ステータスだけなら世界最強です。
戦闘技術はクリフよりないかもしれない。
エルシアの最高火力の魔術は、準備中に逃げなければオルステッドも確実に死にます。
まあ、人や魔物相手に使っていい魔術ではないので、使う場面は多分ない。