無職転生-魔術を極める-   作:魔術師見習いa

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漸く書き終わった。
投稿が遅くてすみません。
これからも読んでいただけると嬉しいです。


人形作りと奴隷の少女

 ルディの話では、ザノバはあれから魔法陣を学び始めたらしい。

 ルディは魔法陣について詳しくない為、ほぼ独学で頑張っているらしいわ。

 一応、ザノバも無詠唱で作れないか試してみたようだけど、私の予想通り出来なかったそう。

 その後、他のやり方も試したそうだけど、神子の力である怪力の影響で繊細な作業が出来ない為ダメだったそう。

 ルディがどんな人形を作っているか知らないけど、かなり繊細な作業が要求されるのね。

 

 私がザノバとルディについて考えていると、研究室の扉がノックされる。

 

「エルシア様、ルーデウス様がいらっしゃいました」

「ルディが?入っていいわよ」

「失礼します」

 

 エミリーに許可を出すと、扉を開いてルディが部屋に入ってくる。

 エミリーは一礼して扉を閉める。

 

「どうしたの?」

「実は奴隷を買おうと思っているのですが、おすすめのお店を知りませんか?」

 

 ルディが奴隷を買う?

 どうして?

 ………………まさか!?

 

「ルディ。女遊びが好きなのはお父さんに似たんだろうけど、流石に奴隷を買うのは……」

「姉様、勘違いです」

「あら?そうなの?」

「実はですね」

 

 

ルーデウスside

 

 

 姉様に言われた通り、ザノバが無詠唱で人形を作れないと分かった後、粘土を削って作る方法に変えた。

 しかし、ザノバは手先が器用で無かったために、上手く作ることが出来なかった。

 姉様に相談してみたが、良い案は出てこなかった。

 次に俺はフィッツ先輩に相談してみることにした。

 

「という事があったのです」

「人形を作るの?」

 

 フィッツ先輩は、やや理解できてない様子だった。

 図書館の椅子に並んで座りつつ、俺の話を聞いて首を傾げている。

 

「はい、こんな感じです」

 

 俺は土魔術を使い、簡単な人形を作って見せる。

 

「す、すごい……」

 

 フィッツ先輩は俺の手元をまじまじと見つめ、出来上がった人形をしげしげと見ていた。

 そして、自分でも出来るかと指先に魔力を集中させて、グネグネと不定形のスライムのような土塊を作り出す。

 人型に見えなくもないが、人形と言えるほどの出来ではない。

 彼の望む形にはならなかったらしい。

 最終的にフィッツ先輩はため息をついて諦めた。

 

「できないや」

 

 まあ、フィギュアを作るという事は、俺が昔からコツコツと研鑽を積み重ねてきた技術だ。

 姉様のように見ただけで簡単にコピーされたら心が折れる。

 むしろ、姉様なら俺より精巧な人形を作れそうだ。

 流石、魔導神と呼ばれているだけあって、魔術に関しては何でもありだ。

 

「これは普通の人には真似できないよ」

「そうですね。何でもないように簡単に真似する姉様は、普通ではないですよね」

「ま、まあ、世界最高の魔術師だからね……」

 

 フィッツ先輩は苦笑しながら賛同してくれる。

 本当に、十年でどれほどの研鑽を積めば、あれほどの魔力制御が得られるのだろうか。

 おっと、今はザノバのことを相談に来ているのでした。

 

「話を戻しますが、別の方法として土の塊から削り出す方法がいいかと思っていたのですが……」

「手先が不器用だから出来ない、と」

 

 フィッツ先輩は、うーんと唸り、顎に手をやって考える。

 考える時は顎に手を当てるのが、彼の癖であるらしい。

 サングラスのせいか、そのポーズがやけにキマって見える。

 ちなみに照れたり困ったりすると頬とか耳の後ろを掻く。

 その動作が年相応っぽくて、なかなか親近感が湧く。

 

「うーん、そうだね。参考になるかわからないけど、アスラの王都にも、似たような人がいたよ」

「似たような人、ですか?」

「うん、自分でやりたいけど、能力も技能も無いって人がね」

「その人はどうしていたんですか?」

 

 フィッツ先輩はやや答えにくそうに、耳の後ろをポリポリと掻いた。

 

「えっと、その、奴隷にやらせていたんだ」

「ほう」

 

 フィッツ先輩の話によると、王都のその人物とやらは、知識はあったが技術は無かった。

 なので、奴隷を購入して教え込んで、自分の望むものを作らせていたそうだ。

 

「聞いた話によると、その、ザノバ君はルーデウス君の作る人形が好きで、もっと欲しいから自分でも作りたいって言ってるんだよね?」

「……あれ?そういう話でしたっけ?」

「えっと、ボクにはそう聞こえたよ?」

 

 そうなのだろうか。

 でもまあ、普通のフィギュア好きは、塗装や改造ぐらいはしても、自分で一から作ろうなんて考えないしな。

 俺だって生前は、せいぜい魔改造を楽しんだ程度だ。

 

「ザノバ君は、きっとルーデウス君に専属の人形師になって欲しいんだろうけど、無理だって分かってるから、そういう風に言ってるんじゃないかな?」

「別に無理じゃないと思いますがね」

 

 シーローン王宮にて、ザノバに雇われて毎日フィギュアを作って暮らす。

 最終的には、そういう生活も悪くないだろう。

 王宮勤めなら、給金も安定してるだろうし。

 そういえば、フィッツ先輩はアリエル王女に月どんなもん貰っているのだろうか。

 ……聞くのは失礼な気がするな。

 

「まあ、一度、そういう提案をザノバにもしてみますよ。ありがとうございます」

「うん、どういたしまして」

 

 奴隷を購入して技術を伝授し、作らせる。

 そんな話をザノバにしてみた所、彼はのってきた。

 我が意を得たりと、大喜びで奴隷購入の計画を立て始めた。

 

 

エルシアside

 

 

「なるほど、ザノバの人形を作る奴隷を買いに行くのね」

「はい。そこで姉様におすすめのお店を聞きに来たわけです」

「私が奴隷を買い漁ってるように見えるの?」

 

 本当にそう見えているなら、失礼にもほどがある。

 確かに、アリシアとエミリーは買ったけど、それ以来奴隷何て買っていない。

 まさか、奴隷商の間でアリシアとエミリーを買ったことに関する噂でも流れているのかな?

 

「いえ。そういうイメージはありませんが、シャリーアの生活が長いので、噂とか知らないかなっと」

「なるほど、奴隷商ならリウム商会が良いわよ」

「分かりました。行ってみます」

 

 ルディは一礼して研究室から出て行こうとする。

 背中を向けて扉に向かうルディに声を掛けて呼び止める。

 

「待ちなさい。私も一緒に行くわ」

「!?姉様も一緒にですか?」

「私が一緒じゃあだめなの?」

「ダメではありませんが、予想外だったので」

「まあ、気まぐれだからね」

「……そうですか」

 

 特に深い理由なんてないし、奴隷を必要としているわけでもない。

 本当に気まぐれでついて行くだけ。

 強いて理由を上げるなら、ルディの普段の様子が気になるから、かな?

 いや、時間に干渉する魔術の研究が停滞してるから、息抜きしたいって方が正しいのかしら?

 まあ、なんにしても気まぐれで深い理由はないんだけどね。

 

「もし気になる子が居たら、弟子として買うのもありかな」

「……まあ、常識の範囲で育ててあげてください」

「ん?何当たり前のこと言ってるの?」

「…………いえ、お気になさらず。では、日付が決まりましたら、また伝えに来ます」

「分かったわ」

 

 今度こそルディを見送り、魔術の研究を再開する。

 

 

 ルディ達と合流する場所に行くと、フィッツが緊張した様子でザノバと顔合わせしていた。

 ルディとフィッツ、ザノバの三人がすでに揃っているから、私が最後みたいね。

 

「ごめんなさい。待たせたみたいね」

「いえ、あまり待っていないので大丈夫ですよ、姉様」

「そう。なら良かったわ」

「では、姉様も合流しましたし、行きましょうか」

 

 ルディの号令で、移動する。

 

 商業街にある五つの奴隷市場の一つ『リウム商会 奴隷販売所』に着くと、ザノバとフィッツがそれぞれ感想を口にする。

 

「ふむ、余の祖国のものとはだいぶ違うようであるな」

「外じゃないんだね……」

 

 土と石材を組み合わせた、よく見る建築物よね。

 シーローンでは、こんな感じではないのね。

 フィッツ、シャリーアの気温で外に奴隷を出してたら死ぬわよ。

 

「中に入りましょう」

 

 建物の中では至る所で火が焚かれている。

 八ヶ所ほどあるお立ち台の上で、裸になった奴隷が並べられている。

 昔来た時と変わってないわね。

 

「ふむ、売り場が多いですな。師匠、どうするのですか?」

「僕も買うのは初めてですので、まずは適当に見て回りましょう」

「適当に見るのも良いけど、条件が決まってるなら相談所で聞いてみる方が早いわよ」

「……姉様、買ったことがるのですか?」

「一度だけね」

 

 私の言葉に三人は意外そうな顔をして私を見る。

 三人とも気になるようなので、私は歩きながら話す。

 

「アリシアとエミリーは、ここで買った元奴隷なのよ」

「「!?」」

「そ、そうだったんですか……」

「まあ、買ってすぐに従者として扱ってたから、誰も奴隷だったなんて知らないけどね」

 

 まあ、どこかで噂程度にはなっているかもしれないけどね。

 

「従者として扱っていたというのは?」

「二人には、最初から賃金を払っているからよ。最初は一ヶ月でアスラ金貨一枚だったわね」

「え!?」

「!?」

「しょ、正気ですか?姉様」

「何が?」

 

 三人とも口を開いて信じられないと言いたげな顔をしているけど、どうかしたのかしら?

 信じられないという顔のフィッツが、私に問いかけて来る。

 

「最初でアスラ金貨一枚なら、今は何枚なんですか?」

「今は一万枚よ。というより、これ以上上げなくていいって言われたから、一万以上上げてないんだけどね」

「姉様……もう少し金銭感覚をどうにかした方がいいですよ」

「え?」

「節約しろとは言いませんが、物の価値を知らな過ぎるのは問題ですよ」

「……私の金銭感覚って、そんなに酷い?」

「酷すぎます」

 

 まさかの即答!?

 ルディ以外の二人に視線を向けると、視線を逸らされた。

 え?そんなに酷いの?

 

「…………今度、アリシア達と買い物一緒に行ってみる」

「そうした方が良いでしょうね」

 

 確かに、最近は二人に買い物任せきりで、魔道具の素材くらいをたまに買いに行くくらいだったな。

 

「気を取り直して、適当に見て条件を決めた後、相談所に行きましょう」

「そうですな」

 

 話がまとまり、四人で適当に売り場を見て回る。

 適当に見た感じでは戦士系の奴隷が多く、魔術で人形を作るのに適している人は居ない。

 

「師匠、戦士には用はないでしょう。我々が探すのは魔術の使える手先の器用な種族でしょう」

「手先の器用な種族というと、やっぱり炭鉱族ですかね?」

「そうですな。土魔術の使える炭鉱族が一番でしょう。もっとも、種族にこだわる必要は無いかと思いますが」

「えっと、ルーデウス君が魔術を教えるなら、魔術が使えない幼い子の方が良いと思うよ」

 

 炭鉱族を探していると、フィッツがアドバイスをする。

 確かに、一から魔術を教えるのなら、子供の方が良いかもね。

 

「なぜですか?」

「無詠唱魔術って、小さい頃の方が覚えやすいんだ」

「あ、そうなんですか?」

「うん、十歳くらいになっちゃうと、ほとんど覚えられないと思う」

 

 そうだったんだ。

 

「年齢が関係しているんですか?」

「うん。ボクの実体験と、師匠と、学校の先生の言葉を総合して判断したことだから間違ってるかもしれないけど……」

 

 フィッツが私に確認するように視線を向けて来る。

 

「悪いけど、私も分からないわ。アリシアとエミリー以外だと、誰にも魔術を教えたこと無いから」

「そ、そうなんだ……」

「まあ、アリシアとエミリーも六歳の頃から無詠唱魔術を使わせてるから、多分間違ってないわよ」

「あ、後、五歳くらいから魔術を使い始めると、魔力総量が爆発的に増えるんだ。ルーデウス君の方法で人形を作るなら、魔力総量は多い方がいいよね」

「生まれつき魔力総量は決まっていると聞いていますが」

「それは間違いね。十歳くらいまでは魔力は増えるけど、十歳を超えるとほとんど増えなくなるのよ」

「そうなのですな」

 

 私の説明にザノバは納得したような顔をする。

 まあ、十歳までしか増えないのなら、勘違いするのも仕方ないわよね。

 

「やっぱり、小さい頃から魔術を使っていた方が良い感じですかね」

「そうじゃない。私もルディも二歳から魔術使ってるし、アリシアとエミリーも六歳から魔術を使ってるもの」

「フィッツ先輩は?」

「ボクも五歳の頃に師匠に教えて貰ったよ」

「なら、五歳くらいの子供の方が良さそうですね」

 

 話し合いの結果何となく条件が決まって来た。

 

「五歳前後で、炭鉱族で、可愛らしい女の子」

「女の子?」

「女ですか?余はどちらでも構いませんが、師匠、目的を間違えてはいませんか?」

「ルーデウス君……」

「あっれぇ?」

 

 まさか、五歳前後の子供にまで手を出そうとしてるのかしら?

 いや、流石にそんなことは無いわよね。

 妹みたいに可愛がりたいという事でしょう。

 ノルンとアイシャ元気にしてるかな?

 

「しかし、五歳となると、教育は期待できませんな。言語が分からない場合もありますぞ。獣神語しか喋れないとなると、魔術を教えるどころの話ではないですからな」

「僕は獣神語もできますので、その場合は僕が教育しますよ」

「なんと、師匠は獣神語も操れたのですか、流石ですな」

「流石、ルディね」

 

 私は人間語以外は読める程度で、話せないのよね。

 そもそもが魔術関連の本を解読していて身に着いただけだし……

 

「条件も決まったことですし、商人の方に聞いてみましょう」

「そうね」

 

 条件が決まり、『相談所』と書かれた場所に移動する。

 受付の男性は、スキンヘッドで口ひげを蓄えた男。

 ルディとフィッツを見て怪訝そうな顔をし、ザノバを見て納得したように頷いた後、最後尾に居た私に気づいて目を限界まで見開いて固まる。

 

「ま……ま、まま魔導神様!?ど、どうして、このようなところに!?」

 

 私を見てかなり慌てている男にため息をついて質問に答える。

 

「弟とその友達の付き添いよ。弟の話を話を聞いてあげて」

「お、弟様」

 

 私がルディを見ながら言うと、男もルディに視線を向けて信じられないという顔をしている。

 ルディは特に気にして無いのか、苦笑しながら話し始めた。

 

 私は男が魔導神と叫んだことで、警備や客だけでなく奴隷にまで視線を向けられている。

 正直、居心地が一気に悪くなったわ。

 

「お、いた、一人いました」

 

 男に視線を向けると、目録の一部をポンと指で叩いた。

 

「炭鉱族、六歳の女児で、親の借金で一族揃って奴隷落ちだそうです。健康状態はちと悪いな。栄養失調か、まぁ食わせりゃすぐ元通りになるでしょう。人間語は喋れねえ、文字も読めません」

「なるほど、親の方はどうなってるんです?」

「親の方は両方とも売れちまってますな」

「取り敢えず、会ってみましょうか」

 

 男の呼び出しで、しばらくした後、一人の商品が顔を出す。

 

「どうも、わたくしリウム商会傘下・ドメーニ商店の支店長フェブリートです」

 

 商人はそう名乗り、私に向かって手を差し伸べる。

 

「はあ、貴方に用があるのは、私じゃなくて弟よ」

「弟?」

「どうも、泥沼のルーデウスです」

「おお、あなたが泥沼でしたか!聞いておりますよ、冬に入る前にはぐれ竜を仕留めたとか。魔導神様の弟だったとは、驚きですな」

「運が良かっただけですよ、相手も弱ってましたしね」

 

 はぐれ竜って、赤竜よね。

 強いって言われてるけど、そんなに強かったイメージはないんだけど……

 まあ、ルディは昔から謙遜することがあったし、今回もそうでしょう。

 

「本日は炭鉱族をお求めという事ですが……?」

「はい、こちらの方々に出資してもらい事業を始めるのです。幼い頃から技術を叩きこめる子を探していましてね」

 

 急にルディが適当なことを言い出した。

 別に買いに来た理由なんて説明しなくても良いでしょうに……

 

「なるほど、そういう事ですか……あまりオススメの商品というわけではないのですが……とにかく見てください。こちらです」

 

 商人の男に従い、私達は市場の裏側から隣の奴隷の倉庫へ移動する。

 男は一つの鉄格子の箱の前で止まる。

 中には、うつろな目をした少女が、体育座りで座っていた。

 

「こいつですね。……おい、出せ」

「うす」

 

 男の部下が鉄格子を開け、中にいる子供を引きずり出す。

 鉄の首輪と足かせをはめられた子供。

 ガリガリに痩せた身体を、申し分程度のボロキレで隠している。

 髪はボサボサの赤橙で、白髪が混じっている。

 顔色も悪い。

 

 彼女は身体を抱くようにして、カタカタと震えている。

 ここは倉庫の奥の方の為か、少し寒いのかな。

 私達を見る目が完全に虚ろだし。

 

 部下の男は、そんなこと気にせずに、少女のボロキレをあっさりと取り払う。

 その姿を見てフィッツが顔をしかめた。

 

「見ての通りです。炭鉱族の子供です。六歳ですので、技能は特にありません。両親共に炭鉱族です。父親は鍛冶師、母親は装飾品を作っていました。手先の器用さについては、遺伝さえしていれば望めると思います。ただ、言語を獣神語しか解しません。我々としても売れると思っていなかったので、健康状態もあまりよくありません。その分は値引き致しましょう」

 

 フィッツが難しい顔をしつつ、少女に近寄り、頬に触れた。

 フィッツが少女に治療魔術を掛けたことで、顔色が幾分かよくなった。

 取り敢えず、寒いだろうし暖めるくらいはしてあげようかな。

 少女の周りの空気を暖めてあげると、震えが止まる。

 

「当然ながら処女です。疫病等の心配はありませんが、見ての通り、少々病弱かもしれません。ご購入の際にはこちらで解毒を掛けさせて頂きますが、あまりオススメの商品とはいえませんね」

 

 正直、多少の問題なら私が魔術で何とか出来るから心配はしてない。

 問題は、彼女の精神状態の方だ。

 アリシアとエミリーは、こんなに酷い状態ではなかったから良かったけど、この子は生きる気力があるのか妖しい程酷い。

 

『こんちには、お嬢さん』

 

 ルディがしゃがみこんで、おそらく獣神語で話しかける。

 何を言っているのか全く分からないが、少女に何か話している。

 

「師匠、どうしました?」

「かなり絶望してますね。希望も何にもなくて死にたい奴の顔です」

「……師匠は、そんな者を見たことがあると」

「昔、何度もね」

 

 魔大陸から帰るのは、かなり大変だったのね。

 何があればそんな顔を何度も見ることになるのかしら?

 

 ルディは少女としばらく見つめ合う。

 そしてまた何か少女に話しかける。

 すると、少女の目が、ゆっくりとルディを捉えた。

 少ししてルディの問いに、少女が何か答えた。

 

「買います」

 

 ルディが持っていたローブを彼女にかぶせて魔術を使おうとしたので、ルディの肩に手を置いて止める。

 

「私がするわ」

「お願いします」

 

 ルディは私に任せると、商人に値段を聞いていた。

 私は少女に解毒魔術と治療魔術を掛ける。

 特に病気は大丈夫そうね。

 栄養失調も治療魔術で不足していた栄養を全て補い、ひび割れていた唇や荒れていた肌も健康な六歳児のように潤う。

 魔術で身体を綺麗にしてやれば、かなり痩せていることを除けば健康な六歳の女の子ね。

 体力は回復してあげられないから、美味しいものでも食べさせてあげましょう。

 

 ルディ達は、先ほどまで明らかに不健康だった少女が、瞬く間に健康な少女になったことで驚いているようだけど、今は気にしない。

 

 

 その後、商業区で少女の服等、必要な物を買い、適当な喫茶店に入った。

 少女は、一心不乱に料理を食べている。

 精神面が心配だったけど、元気にご飯を食べてるし大丈夫そうね。

 

「ところでルーデウス君、この子の名前はなんていうの?」

 

 ルディが少女に獣神語で問いかけると、少女は不思議そうな顔でルディを見る。

 よく分からないけど、上手く伝わってないみたいね。

 

「聖鉄のバザルと美しき雪稜のリリテッラの子と呼ばれていたそうです」

「あ、そうか」

 

 ルディの言葉にフィッツは納得したように頷いた。

 

「炭鉱族は七歳になるまで正式な名前を付けて貰えないんだ」

「正式な名前?」

「うん。炭鉱族は七歳になるまでは名前を貰えなくて、七歳になった時に、好きな物とか憧れている物、得意な物から名前を貰うんだ」

 

 へぇ、炭鉱族にはそんな習慣があるのね。

 

「なるほど、名前が無いと不便ですね」

「親はもういないんだし、ボクらで付けてあげるしかないよ」

 

 ルディが少女に何か聞いているが、少女は首を傾げて返す。

 

「女の子だし、可愛い名前にしてあげよう」

「ザノバ、君の意見を聞こう!」

「うん?余が決めてよろしいのですか?」

「金を出したのは、僕じゃありませんしね」

「では、ジュリアスと」

 

 ザノバは考える素振りも無く静かに返した。

 

「それ、男の名前じゃない?」

「はい、かつて余が力加減を誤って殺してしまった、可哀想な弟の名前です」

 

 まあ、ザノバがそれで良いなら、私が何か言う事じゃないわね。

 

「その子は余の部屋に置くのでしょう?ならば、余の親近感の湧く名前が良いでしょう」

「まあ、こだわりがあるなら僕はそれでいいと思いますけど、せめて女の子だし、ジュリエットくらいにしときましょう」

「余はそれで構いません。ジュリエットにしましょう」

「ジュリエット、ふふっ、良い名前だね」

 

 無事に少女の名前も決まり、今日の用事は終わった。

 私だけ、後日に金銭感覚を学ぶために、アリシアとエミリーの二人と買い物に行くことが決定した。

 二人にそのことを伝えれば、私の金銭感覚がおかしいことが当たり前のように受け止められ、定期的に一緒に商業区を見て回ることになった。

 

 もう少し魔術以外のことも学ぼうかな……




エルシアの金銭感覚が改善されるかもしれない。
下手すると、アスラ王国の王族であるアリエルより酷いですからね。

月に二万枚のアスラ金貨を払っても余るだけお金が十歳の頃からあればそうなるのかな?
アスラ金貨が十万円くらいの価値らしいので、日本で考えれば月の収入が二十億以上になるのか。
まあ、壊れそう。
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