無職転生-魔術を極める-   作:魔術師見習いa

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妹と弟の友達

 魔法都市シャリーアからブエナ村に移動する。

 一人での馬車の旅は初めてだったけど、無事にブエナ村に着いた。

 何も変わらない村を見渡し、見かけた人に挨拶をしながら家を目指す。

 家が見えてくると、お父さんが庭で剣を振っていた。

 お父さんはまだ気づいていないみたいなので、庭に入ってから声を掛ける。

 

「お父さん、ただいま」

「エル!?」

 

 お父さんは私を見て驚いた顔で名前を呼ぶ。

 その声が聞こえたのか、窓からお母さんが顔を出してくる。

 

「あら、エル。おかえりなさい」

「ただいま、お母さん」

 

 お母さんが窓から見えなくなると、お父さんが近づいて来る。

 

「エル、おかえり。急に帰ってくるから驚いたぞ」

「好きな時に帰ってきていいと言っていたじゃないですか」

「帰ってくるのは良いんだがな。連絡してくれたら、お祝いの準備も出来たんだぞ」

「お祝いは明日以降で大丈夫だよ。あんまり長く居られないけど、一週間くらいは居られるから」

 

 まあ、変に連絡して着くのが遅れたら心配かけそうだったしね。

 特に、今回が初めての一人旅だし。

 

「あら、もう少し長くいられないの?」

 

 お母さんの声が聞こえた方に視線を向けると、女の子を抱いて家から出て来ていた。

 お母さんに似た金髪ということは、この子がノルンかな。

 お母さんの後ろからリーリャも女の子を抱いて出て来る。

 リーリャが抱いているのが、アイシャね。

 

「ええ、魔法大学を半年ほど休校して帰って来たので、移動の時間を考えると一週間が限界かな」

「そうなの、残念ね」

「転移魔術は実在しているけど、禁術だから家に帰るために使うのもね」

「流石のエルでも、禁術には手を出さなかったか」

 

 お父さんは私を何だと思っているのだろうか。

 いくら私でも禁術を使って変に敵を増やすつもりはない。

 

「そもそも禁術は資料がほとんど無いから研究も難しいし、仮にできても色んな所を敵に回すことになるのに、するわけないでしょ」

「まあ、してないならいいんだ」

 

 お父さんは笑いながら私の頭を撫でて来る。

 私はお父さんに頭を撫でられながら、ノルンとアイシャに視線を向ける。

 

「ところで、その子達がノルンとアイシャ?」

「ええ、この子がノルンで、こっちがアイシャよ」

 

 私の言葉にお母さんとリーリャが二人が見やすいように近づいて来る。

 アイシャは私のことを不思議そうな目で見て来るが、ノルンは知らない人が怖いのかお母さんに抱き着いて顔が見えない。

 私は二人の頭を優しく撫でながら、アイシャに視線を向けて口を開く。

 

「なるほど、この子が家族崩壊の危機を作った原因ですか」

「うっ!」

 

 お父さんに視線を向けると、焦っていることがよく分かる顔で言い訳を考えていそうだ。

 

「手紙で知った時はびっくりしたよ。まあ、ルディのおかげで崩壊せず、家族が増えたみたいだね」

「はい。ルーデウス様のおかげでこの子も無事に生むことが出来ました」

「そういえば、ルディは?遊びに行ってるの?」

 

 お母さんたちが出て来たのに出てこないので、聞いてみる。

 

「ああ、ルディは十二歳になるまで帰って来ない」

「え?」

 

 どういうことだろうか?

 私と同じようにどこかで魔術か剣術を習っているのだろうか?

 いや、魔術ならラノアに来てるはずだから、剣術の方かな?

 けど、そんな話聞いてないけど。

 

「色々あってな。まあ、詳しい事情は後で説明するが、ちょっと住み込みで家庭教師していてな」

「ルディ、家庭教師も出来るんだ……」

「ああ、わがままで乱暴なお嬢様相手に一年近く家庭教師やってる」

「大変そうな仕事だね」

 

 アリシアとエミリーは聞き分けの良い子で良かった。

 まあ、ルディの事情は後でゆっくりと聞こう。

 

「取り敢えず、荷物を部屋に置いて来るね」

「お昼過ぎてるけど、何か食べた?」

「まだ食べてない」

「じゃあ、すぐに用意するわ」

 

 お母さん達と家に入り、三年前に使っていた部屋に行く。

 三年間帰ってきてないけど、しっかりと掃除されていて綺麗だった。

 荷物を置いて部屋を一通り確認した後、一階に降りる。

 一階ではお母さんとリーリャが、私のお昼を用意している最中だった。

 ノルンとアイシャは外でお父さんが相手をしているみたい。

 

「エル、もうすぐ出来るからね」

「分かった」

 

 椅子に座って少し待つと、パンと温められたスープをお母さんとリーリャが用意してくれた。

 私はパンとスープの懐かしい味をよく味わって食べる。

 最近、お金の把握をしていないけど、かなりの大金を持っているから、美味しいものならいくらでも食べれるけど、お母さんやリーリャの料理の味が食べていて一番落ち着きそうね。

 まあ、一日中魔術の研究してるから、美味しいものを食べに行ったことなんて無いけどね。

 

「美味しかった」

 

 食器をリーリャに預けて、庭に出る。

 庭でお父さんと遊んでいるノルンとアイシャに近づく。

 

「ノルン、アイシャ。お姉ちゃんだよ~」

 

 視線を合わせ両手を広げて微笑みながら、ゆっくりと近づいたがノルンはお父さんの後ろに隠れてしまった。

 アイシャは近づいてきてくれたので、優しく抱きしめて抱きかかえる。

 

「ノルンには怖がられるわね」

「まあ、その内慣れるさ」

「むしろ、慣れてくれないと私が泣きそう」

 

 妹が生まれたというから帰って来たのに、その妹に怖がられて仲良くなれませんでしたわ、凄く悲しい。

 一週間で仲良くなれるかな……

 アイシャの頭を撫でながらそんなことを考えていると、お父さんが話しかけて来る。

 

「そういえば、ロキシーちゃんは水王級になったそうだが、エルは今何級なんだ?」

「私は神級魔術師になったよ。基本全属性使えるから、属性では呼ばれてないけどね」

「神級って、まじか……」

 

 お父さんがかなり驚いているので、胸を張って威張っておこう。

 

「あら、天才だとは思っていたけど、神級になるなんて……」

 

 お母さんの声に振り返ってみると、お父さんと同じように驚いて顔で固まっている。

 アイシャとノルンは神級魔術師がどう凄いのか分かってないのだろう。

 いや、アイシャは凄いことくらいには、お父さんとお母さんの反応から理解しているみたいね。

 ノルンは分からずにお父さんとお母さんの顔を不安そうに見ているから、理解してないのか。

 この感じだとアイシャは天才なんでしょうね。

 まさか、一年後には無詠唱で魔術を使っているなんてことは無いよね。

 ルディっていう前例があるからありそうで怖い。

 それに対してノルンは普通の子なのかな。

 アイシャと自分を比べて性格が歪まないと良いんだけど……

 

「ん?神級なのに魔法大学で学ぶことがあるのか?」

「魔法大学の先生から学ぶことはないけど、魔術の研究をするなら、魔法大学に居た方がね」

「はあ、エルは本当に魔術の研究が好きだな」

「もっと、頻繫に帰ってきても良いのよ」

「少なくとも二、三年に一回は帰るよ。妹達に忘れられたら嫌だしね」

 

 ノルンに視線を合わせて頭を撫でようと、手を伸ばすが怖がられる。

 妹にこうも怖がられると、本当に泣きたくなる。

 涙目の私をアイシャが慰めようとしてくれる。

 

「一週間で仲良くなれるかな……」

 

 アイシャを撫でながら呟いていると、知らない声が聞こえて来た。

 

「こんにちは……えっと……」

 

 声のした方を振り向くと、緑色の髪をした長耳族の少女が立っていた。

 お母さん達には普通に挨拶しているけど、私のことを見て困っているようね。

 

「こんにちは、貴方がシルフィエット?」

「え?あっ、は、はい。えっと……」

「私はルディの双子のお姉ちゃんよ。エルって呼んでね」

「ルディのお姉ちゃん!」

 

 あれ?ルディ、私のこと話してないのかな?

 

「あの、ルディが今どこにいるか知ってますか?」

「え?ん?ごめんね、私今日帰って来たばかりだから、ルディがどこにいるか知らないの」

「そうですか……」

 

 シルフィエットはしょんぼりした顔で家の中に入っていった。

 リーリャさんに用があるのかな?

 取り敢えず、私も分からないことを聞いておいた方がいいかな。

 

「彼女にルディのこと教えてないの?」

「ええ、シルフィちゃんがルディに依存しちゃってね。ルディもシルフィちゃんに依存し始めたから、引き離すことになったのよ」

「なるほど」

 

 お母さんが家の方を気にしながら事情を簡単に教えてくれる。

 

「今の感じだと、明日以降、お前にルディの居場所を聞いて来るかもしれないから、ルディの居場所は教えないがいいか?」

「良いよ。あっ、ルディやあの子に私が神級になったことは言わないでね。ルディは直接会った時に驚かせたいから」

「シルフィちゃんは?」

「私より先にあの子が再会したら、私の事言われそうだから」

「まあ、エルが言うなって言うなら言わねえよ」

「ええ、秘密にしておくわ」

 

 まあ、シルフィエットに関してはあまり関わらないでおこう。

 お父さん達の考えもあるだろうし、私が余計なことをしても良くならないでしょう。

 それよりも私は、アイシャを下ろしてノルンとアイシャの前で魔術を使う。

 アイシャはともかく、ノルンに少しでも気に入られるために頑張らなければ。

 まずは、手から手に虹の橋を掛けて見せる。

 

「ほら、ノルン、アイシャ、見て見て」

 

 アイシャは分かりやすく喜んでくれる。

 ノルンも気になるようでじっとこちらを見ている。

 興味は引けたようなので、虹の橋を掛けたまま手のひらから七色の光の球を出して周りに漂わせる。

 

「おお、すごいな」

「きれいね」

 

 お父さんとお母さんも見惚れるくらいには綺麗な光景みたい。

 七色の光は雪のようにゆっくりと落ちて来る。

 地面に落ちた光の球は、光の花を咲かせて庭に七色の花畑を作る。

 ノルンもアイシャも七色の光の花に見惚れているみたいね。

 二人が気を取られている間に、手の中で花の形をした四色の色と透明な部分が綺麗に混じった魔石を作る。

 それをアイシャとノルンに渡してやる。

 ノルンには怖がられるかと思ったが、怯えることなく受け取ってくれた。

 そのままの勢いでノルンとアイシャを抱きかかえる。

 

「よし、ノルンも抱けた」

「妹の気を引くためにここまでするか、普通」

「エル、これどれくらいで消えるの」

 

 お父さんは呆れているようだけど、お母さんは庭を彩っている光の花を見ながら聞いて来る。

 

「あんまり魔力を込めてないから、数分で消えるよ」

「そう。こんなに綺麗なのに勿体ないわね」

「魔力で作ってるから仕方ないよ」

「その花も時間で消えるのか」

 

 お父さんは、ノルンとアイシャが持つ魔石の花を指差して聞いて来る。

 二人とも気に入っているようで、色んな角度から見ている。

 

「いや、こっちは魔石だから消えないよ」

「何!?魔石だと!?」

「こんな綺麗な魔石もあるのね」

 

 お父さんとお母さんも二人が持つ魔石を見つめる。

 

「この魔石は私が今作った奴だよ」

「魔石を作るって……いや、考えるのはやめよう。神級のやることに驚いてたら体が持たねえ」

 

 そんなに驚くことでもないと思うけどね。

 魔石だって魔力であることに変わりはないんだから、魔石になる条件を特定して再現するだけだし。

 

「まあ、これが魔石だってバレたら盗もうとする人も現れると思うから気を付けてね」

「ああ、家の外には持ち出さないようにしておく」

 

 この村だと盗めるような人はいないと思うけどね。

 さて、私は夜まで妹二人と遊んでいよう。

 

 

 二人に魔術を見せて遊んでいると、夜になりお母さんに呼ばれた。

 二人を抱きかかえて家の中に入ると、御馳走が用意されていた。

 あまり用意する時間も無かったから、明日だと思ってたけど急いで準備してくれたみたい。

 お母さん達にお礼を言って美味しく食べながら、魔法大学でのことを話した。

 アリシアとエミリーのことや、ラノアのことを話した。

 食事が終わり、寝る時間になったので、私は自分の部屋で魔力を使い切って寝る。

 次の日も同じように妹達と遊んでいると、シルフィエットが話しかけて来た。

 

「あの……」

「ん?ああ、ルディのことは知らないわよ」

「そうですか。……えっと、エルさんも無詠唱で魔術使えるんですよね」

「ええ、使えるけど」

「その……私に魔術教えてください」

 

 どうしようかな。

 魔術を教えることに関しては、別に問題はないのだけど……

 妹と遊びたいんだよねぇ。

 まあ、少しくらいなら良いか。

 

「教えるのは良いけど、私一週間でラノア魔法大学に戻るから、あんまり時間ないよ」

「知ってる。昨日、リーリャさんに聞いたから」

「なるほど、少し待ってね。妹達をお母さんに任せて来るから」

「分かった」

 

 家の中に入り、ノルンとアイシャをお母さん達に任せて家を出る。

 

「じゃあ、行こっか」

「うん」

 

 村の中を歩きながらシルフィエットに問いかける。

 

「シルフィエットは魔術が使えるの?」

「無詠唱魔術をルディに教えて貰った」

「普段はどんな練習をしてるの?」

「えっと、毎日魔術を使って、感覚を研ぎ澄ませてる」

「私には新しい魔術を教えて欲しいの?」

「ううん、魔術の練習方法とかを教えて」

 

 私が居なくなった後でも練習できるようにってことかな。

 確かに、新しい魔術を一週間で習っても限界があるものね。

 

「分かったわ。練習できそうな場所に行きましょうか」

「じゃあ、私が練習してるところに案内するね」

「お願い」

 

 シルフィエットの案内で丘の上の木の下に移動した。

 さて、どういう練習を教えようかな。

 やっぱり、私が居なくても練習できる基本を教えた方が良いわね。

 

「得意系統ある?」

「風と水が得意かな」

「じゃあ、その二つで制御の練習をしましょうか」

「制御の練習ってどういうことするの?」

「こんな感じの事」

 

 私は水魔術で丘に氷の花畑を作り出す。

 一つ一つの花の形を少しずつ変え、本物の花畑が凍っているのではっと思うほどの完成度で作り出した。

 シルフィエットは驚いた顔をして氷の花畑に近づいてまじかで見ている。

 

「すごい……」

「水ならこんな感じで氷で何か作るのが良い練習になるわ。風なら、こんな感じ」

 

 落ちている木の葉を一枚を風で浮かせ、一定の高さに保つ。

 

「浮かすものは何でも良いけど、最初は軽いもので慣れた方が良いわよ」

「こんなことも出来るんだ」

「ええ、土は水と同じように彫像、火なら温度を調節して絵を描いたり」

「絵?」

「そう。焼けぐあいを調節して絵を描くの、こんな感じね」

 

 風で浮かせていた木の葉を手に取り、焼いて花の絵を描く。

 

「黒い部分と茶色い部分、薄茶色、元の色で絵にするんだけど、火加減がかなり難しいわよ」

「エルは何でも出来るんだね」

「何でもは出来ないよ。まあ、なんにせよ、細かい制御が出来るようになれば、魔術は格段に上達するわ」

「えっと、私は風と水を練習すればいいの?」

「どっちでもいいわよ。制御に慣れたらもっと難しい制御の練習をする。これの繰り返しで無詠唱は確実に上達するから、さっそくやってみて」

「は、はい」

 

 シルフィエットは風の練習から始めた。

 木の葉を風で浮かせようとするが、浮き上がって落ちて来る。

 まあ、木の葉を一定の高さで安定させるのは難しいからね。

 

「最初は自分が決めた高さに持ち上げることね。そこから少しずつ安定させていけばいいわ」

 

 シルフィエットは何度何度も木の葉を巻き上げ、高さは安定し始めた。

 それでも同じ高さで留めることはまだ無理そうね。

 

「安定のさせかたとかは何も教えないから、自分で工夫しなさい。無詠唱は自分で思いついたことを実行できる制御能力がないと、詠唱するより速いだけよ」

「工夫……」

「そう。細かい調整が出来る無詠唱で、何の工夫もしないのは勿体ないわ」

「……頑張ってみる」

 

 シルフィエットは氷の花畑を見て返事をした後、練習を再開する。

 私も見ているだけだと暇なので、ノルンとアイシャに喜んで貰う魔術を考えて試す。

 魔術で何らかの現象を起こすのは得意なのだけど、形がある物として残すことはあまり出来ないのよね。

 氷も光も込めた魔力が尽きれば消える。

 土で作った彫像は消えないけど、魔石で作った物ほど綺麗なものは作れない。

 しかし、魔石で色々作り過ぎると、狙われる可能性が増すのでだめ。

 子供を喜ばせるのって大変だなぁ。

 

 

 そんなこんなであっという間に一週間が過ぎた。

 ノルンやアイシャには初日にあげた魔石の花以外何も作ってあげられなかったけど、仲良くなれたので良しとしよう。

 シルフィの練習は三回くらいしか見ていないけど、少しずつ上達しているようなので大丈夫でしょう。

 楽しい一週間だったけど、シャリーアに戻るために旅立った。

 移動に三か月もかかるのは面倒だなぁ。

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