無職転生-魔術を極める-   作:魔術師見習いa

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魔力災害

 アリシアとエミリーに商業区で旅の準備をしてもらっている間に、私は校長に事情を話して休校の許可を貰い魔術ギルドに向かう。

 魔術ギルドでお金を下ろしたついでに、私の代わりにアリシアかエミリーがお金を下ろしに来させるかもしれないことを伝えておいた。

 魔術ギルドから帰ってすぐに、研究室へ行き召喚術で手紙や物資の召喚時の目印用の魔法陣を描き上げる。

 魔法陣は魔石と魔力結晶を使用して消費魔力量を減らし、周囲の魔力を吸収する程度で長時間活性化出来るようにしておく。

 

 一通りの準備を終えた頃には真夜中になっていたので、寮に戻り仮眠を取るためにベッドに入る。

 あまりゆっくりしている時間はないけど、赤竜山脈は出来るだけ万全な状態で挑みたい。

 赤竜山脈内で休むのは無理でしょうし、赤竜山脈までに体力をどれだけ温存できるかね。

 何があったか分からないから早くブエナ村に行きたいけど、移動に時間が掛かるのはどうしようもない。

 こんなことなら移動用の魔獣か精霊を作っておけば良かった。

 いや、そもそも十歳の誕生日に帰っておけば、慌てて帰らないといけないと悩まなくて済んだんだ。

 お父さん達は大丈夫なのかな?

 いや、お父さんとお母さんは元冒険者らしいし、余程のことが無い限りは大丈夫なはず……

 けど、あれは余程の事よね。

 ルディが居れば少しは安心できるんだけど、ルディはどこにいるか分からないし……

 そもそもフィットア領に居るのかも分からない。

 まさか、ルディがあれをやったなんてことはないわよね。

 いや、流石にそれはないわよね。

 仮眠を取らないといけないのに、目を瞑ると色々と考えて全然寝れない。

 熟睡できる魔術でも作っておけば良かったわ。

 

 ベットに入って目を瞑ったのは良いものの、色々と考えている間に外が薄っすらと明るくなり始めた。

 外が明るくなり始めたのに気付いて寝ることを諦めて起きる。

 すぐに服を着替え、アリシアが用意しておいてくれた朝食のパンを食べていると、アリシアとエミリーが起きて来た。

 

「貴方達は寝ていても良いのよ」

「エルシア様を見送った後に寝させていただきます」

「そう」

「魔法陣には、私達のどちらかが常についていますので、いつでもご連絡ください」

「別に常にはついてなくていいんだけど……」

「私達がお役に立てるのはこのくらいですので、お気になさらず」

 

 なんでこういう時だけ、こんなに忠実なのかしら?

 まあ、今回は助かるからいいか。

 

「分かったわ。貴方達もしっかりと休みなさいよ」

「分かっています」

「なら、いいわ」

 

 パンを食べ終えて水を飲むと、エミリーが荷物を持って近づいて来る。

 エミリーから荷物を受け取り背負う。

 荷物を背負っている途中でアリシアが杖を持って来る。

 アリシアから杖を受け取り、部屋の出口に向かう。

 扉の前で振り返ると、二人は並んで私を見ている。

 いつもと違い、少し心配そうな顔で私の目を見て来る。

 

「「どうか、お気をつけて」」

 

 普段とは少しだけ違う二人の態度に戸惑い、頭を下げる二人をじっと見つめる。

 たまに私に向けて来る呆れた態度や心配とは違う。

 二人とも私のことを本気で心配しているのか。

 赤竜山脈とその先に居るかもしれない何か、私でも無事で帰って来れるか分からない。

 私の力を知っている二人でも予想が出来ないから、本気で心配しているのか。

 

「貴方達、昨日はちゃんと寝た?」

「……いいえ、少し考え事をしていて寝ていません」

「……私もです」

 

 私が家族の心配をして寝れなかったように、この二人も私のことを心配してたのね。

 それが忠誠心からなのか、友情からなのかは分からないけど、今は素直に喜んでおこう。

 

「心配してくれてありがとうね。けど、私は大丈夫だから、二人ともしっかり寝なよ」

「「……はい」」

「じゃあ、行ってくるね」

「「いってらっしゃいませ」」

 

 二人に見送られて寮の自室を出る。

 

「私も少しはお父さん達を信じて休まないとだめよね」

 

 寮の出口に早足で向かいながら声が漏れる。

 頭では分かっているけど、冷静に判断して行動するのは難しいわね。

 取り敢えず、赤竜山脈の手前ではゆっくり休もう。

 

 寮を出た後、周りに迷惑が掛からない程度の速度で走り、南からシャリーアを出る。

 シャリーアを出てからは闘気も使い走る。

 全力疾走はせず、出来るだけ長い間走れる速度で走り続ける。

 街では全力で走れない為、街を避けて進む。

 森は避けず、簡単に避けられる木は避け、避けるのが大変な木は魔法で斬り裂いて道を作る。

 目の前に現れた魔物は凍らせて岩砲弾で砕く。

 

 馬を超える速度で街だけを避けて走り、疲れては休憩をして走る。

 夜は近くに街があれば宿で休み、街が無ければ土壁で周囲を囲み結界を張って休む。

 朝は薄っすらと明るくなり始めた頃に移動を開始する。

 かなり急いだが、赤竜山脈まで十日もかかった。

 

 身体能力は高くても体力がないせいで、走っては休んでを繰り返した結果、予想以上に時間が掛かった。

 もう少ししっかりと考えれば、もっと早く着く移動手段もあったかもしれないけど、もう遅い。

 連絡手段を残してきただけで、今は良しとしよう。

 

 今は夕方だけど、今日はゆっくりと休もう。

 起きる時間は、変わらず早かったけど、ゆっくと休んだことで大分体力が回復した。

 何日も走り続けた疲れも大分取れたし、大丈夫でしょう。

 

 重さを操る魔術で体重を十分の一にし、神級の結界を張って闘気を纏い赤竜山脈に入る。

 体重を軽くして闘気を纏ったことで、山をかなり楽に登れる。

 登っている途中、どうやって察知したのか分からないけど、赤竜の群れが襲い掛かって来る。

 

「邪魔」

 

 絶対零度で襲い掛かって来る赤竜の群れをまとめて凍らせる。

 凍った赤竜が地面に落ちて砕けるのを横目に見ながら山を登る。

 赤竜の群れがいつ来てもいいように警戒しながら登るが襲ってくる気配がない。

 上空を見ればかなりの数の赤竜が飛んでいる。

 

 赤竜は賢いって聞いたことがあるけど、本当に賢いのね。

 何匹で襲い掛かっても意味がないってさっきので理解したわけね。

 次は私が魔法を撃てない隙を見て攻めてきそうね。

 まあ、攻めてこないなら急いで山を越えよう。

 

 山を登るのに体重を軽くしたけど、来る途中も体重を軽くして走ればもっと早くこれたんじゃ……

 いや、森の中だと速すぎると木にぶつかるし、使わなくて良かったのかな?

 ……やめよ、過ぎたことを考えても時間は戻らないし、今は先を急ごう。

 

「はあ」

 

 無駄な考え事をしてため息をついた隙に、背後から炎が襲い掛かって来た。

 

「びっくりした」

 

 振り向いて炎の発生源を探すと、高度を落として近づいて来た赤竜が吐いたみたい。

 炎を吐いた赤竜を大火球で塵も残さず蒸発させる。

 何か思いついたら考えるのやめた方がいいわね。

 特に今は余計なことしか思いつかないし……

 まあ、これからは考え事をせずに登れば大丈夫でしょう。

 

 それからも何度か赤竜が襲って来たけど、そのたびに一撃で倒す。

 山頂に着いた頃には、真っ暗で魔術で光源を作らないとまともに周りが見えない。

 魔術で周りを照らして座れる岩を作り、座って休憩する。

 

 いくら魔術で体重を軽くし、闘気で身体能力を上げても、一日中山を登ったせいで足が痛い。

 痛みは治癒魔術で治せるから良いけど、体力は回復しない。

 

 治療魔術を掛けて足の痛みが消えたのを確認して遅めの夕食を食べ始める。

 私が座って食事を始めたのを見てか、数体の赤竜が襲い掛かって来る。

 夕食を食べながら絶対零度を発動させ、襲い掛かって来た赤竜を凍らせる。

 地面に落ちて砕ける赤竜を無視しながら夕食を食べ続ける。

 食べ終えて少し休んだ後、寝ずに山を越えるために歩く。

 三日間食事の時以外は歩き続けて、赤竜山脈を越える。

 

「はあ、疲れた……」

 

 赤竜の群れを相手にすることは問題なかったが、赤竜山脈を寝ずに越えるのは本当に疲れた。

 まだ、昼過ぎくらいだったけど、土壁で周りを囲み結界を張って安全を確保してゆっくりと眠る。

 翌日は薄っすらと明るくなった頃に起きて朝食を食べて移動を開始する。

 赤竜山脈での反省を生かして体重を軽くして走る。

 

 三日ほど走って移動したが何もない。

 草原が広がっているだけで何もない。

 すでにフィットア領に入っているはずなのに、何もない。

 

 嫌な予感がした。

 それが何なのか、考えるのが怖くてとにかく真っ直ぐに走る。

 頭のどこかで何となく予想はついていても、受け入れられずに否定して走った。

 

 アスラ王国が整備した石畳の道が途切れていた。

 草原との境界線のように綺麗に途切れている。

 それが嫌な予想に現実味を帯びさせる。

 

 それでも嫌な予想を否定するために走った。

 体力の限界はとうに来ている。

 息苦しくて辛いことも気にせず、必死に町か村を探して街道を走る。

 限界を超えて痛む体を治しもせずに必死に走る。

 かなりの時間を走った気がしたが、町が見つかった。

 私は町中を歩く女性を見つけて駆け寄る。

 

「あの!」

「だ、大丈夫?」

 

 体力の限界を超えて息苦しい中、何とか呼吸を整えて問いかける。

 

「フィットア領、で、何が、ありましたか?」

「!?」

 

 女性は私の問いにかなり気まずそうな顔をして言いよどむ。

 それが、嫌な予想が正しいのだと、言われているようで膝をつく。

 涙が込み上げるのを必死に抑え、体力の限界で吐きそうになるのを堪えて問いかける。

 

「消えたんですか?」

「えぇ……」

 

 言いづらそうな顔で女性は頷いた。

 嫌な予想が肯定されたことで、私の意識が途切れた。

 

 

 目を覚ますと、私が話しかけた女性が家に運んでくれたようで、目を覚ますと女性がベッドの傍に座っていた。

 

「起きたのね」

「すみません……ご迷惑をかけました」

「気にしなくていいわよ。貴女、フィットア領の出身でしょう」

「はい」

 

 女性の言葉を肯定すると、女性は言いにくそうな顔で何があったか説明してくれた。

 あの日、フィットア領で大規模な転移事件が起こり、フィットア領の人々や魔物が世界中に転移したらしい。

 突如として人や魔物が出現したため、転移事件で間違いないそうだ。

 

「つまり、転移しただけなんですよね」

「ええ、詳しい情報を知ってる訳じゃないけど、転移しているだけらしいわ」

「そうですか」

 

 その話が本当なら、お父さんやルディ達は生きている可能性が高い。

 問題はノルンやアイシャ、リーリャね。

 お父さん達と一緒に転移していれば無事だろうけど、一人で転移してたら……

 

「ありがとうございます。これお礼です」

「え?」

 

 私は荷物からアスラ金貨を一枚女性に渡して荷物を背負う。

 女性は驚いて固まっていたが、私が部屋を出ようとすると止められた。

 

「どこ行くの?それにこんな大金」

「取り敢えず、この辺りで情報を集めます。後、お金はお礼なので気にしないでください。お世話になりました」

 

 私は女性にもう一度お礼を言って家を出る。

 町の人に話を聞いて情報を集めてみるけど、家族の情報も有力な情報も何も集まらなかった。

 転移事件が起きて一月も経っていないから、王都に情報が届いているかも分からない。

 仮に届いていたとしても復興の準備などは始まっていないでしょう。

 取り敢えず、宿で部屋を借りて手紙を書く。

 アリシアとエミリー宛の手紙と魔術ギルド、魔法三大国に転移事件の被害者の保護と捜索依頼の手紙を書いて、召喚術でアリシア達に送る。

 魔導神としての立場がどこまで通じるか分からないけど、最悪の場合でも被害者の保護はしてくれるはずだ。

 魔法三大国の東の方にも保護と捜索の依頼を呼び掛けるように頼んだけど、あまり期待出来ない。

 

「最悪、脅せばいいか」

 

 今日はこの町で休むのは確定として、明日からの行動を考えないといけないわね。

 ここに来るまで真っ直ぐ進んで三週間くらい掛かってる。

 私の体力が予想以上に無かったのもあるけど、それを抜きにしても世界を回って人を探すのには時間が掛かり過ぎる。

 移動速度がいくらあっても、どこにいるか分からない人を探すなんて無理。

 人探しの魔術なんてないし、作ろうにも参考になりそうな魔術もないから、一から作り出さないといけない。

 一から作るとなれば何年掛かるか分からない。

 いや、召喚術なら参考になるかもしれない。

 魔獣召喚は、こちらが定めた条件に合う魔獣を世界から探して召喚する。

 魔獣や精霊を召喚する際の条件については研究したことがある。

 召喚術で人を召喚することは出来ないけど、術式の詳細を解明すれば人も召喚出来るようになる。

 人の召喚まで解明できなくても、条件から魔獣を探す方法を解明して場所を特定する魔術は作れるはず。

 ついでに、移動用の精霊を作ればお父さん達を見つけることも出来る。

 

 問題は、何年で研究が終わるか。

 召喚魔術の細部まで解明するとなればかなりの時間が掛かる。

 研究している間に手遅れになる可能性の方が高い。

 自分で世界を探して回るべきなのかな?

 それとも研究して見つけ出した方が良いのかな?

 

 取り敢えず、この町で移動用の精霊を作りながら、自力で戻って来た人達の情報を集めよう。

 魔法三大国や魔術ギルドの協力を得られるかも分からないし、アリシア達から情報が来てから動こう。

 場合によっては私が直接交渉に行かないといけないかもしれないしね。

 

 

 私は転移事件に巻き込まれた人の情報を集めながら、移動用の精霊を組み上げて一週間が過ぎた。

 精霊の組み上げは順調に進んだけど、転移に巻き込まれた人の情報にお父さん達の情報はなかった。

 その代わり、アルフォンスという老人が接触して来た。

 

 彼はフィットア領の領主をしていたボレアス・グレイラット家に仕えていた執事の一人らしい。

 グレイラット家ということで、お父さん達のことを知っているのか聞いてみると、知っているようだ。

 というより、ルディが家庭教師をしていたわがままで乱暴なお嬢様がボレアス家のお嬢様らしい。

 私がルディやお父さん達の情報を集めていたから、私がルディの姉なのか確認するために接触して来たみたい。

 アルフォンスさんは、自分の財産を使って難民キャンプの設営をしようとしているようで、その手伝いを私にして欲しいそうだ。

 アルフォンスさんの申し出は私としてもありがたかった。

 私は権力の使い方なんて知らないし、資金の有効運用なんて出来ない。

 ただ、アルフォンスさんに任せれば有効活用してくれそうだ。

 私の魔導神としての立場と、必要な資金も用意できる範囲は用意することを伝え、協力を承諾した。

 

 アルフォンスさんだけでなく、魔法三大国と魔術ギルドの協力も得られた。

 魔法三大国と魔術ギルドも出来るだけ多くの国に呼び掛けてくれるそうで、被害者の保護と捜索も協力してくれるらしい。

 たくさんの協力を得られたおかげで、私も召喚術の研究に集中できるようになった。

 

 

 アルフォンスさんと協力して一か月で、難民キャンプの設営がほとんど終わった。

 転移事件の後、フィットア領の管理をすることになった貴族が保身に走って災害の対応を後回しにしたりと問題があったが、魔導神の名前で脅したこともあり、復興資金は送られてくるようになったそうだ。

 

 そんな中、嬉しい情報が入った。

 お父さんとノルンが見つかった。

 その情報を聞いて私は急いで向かった。

 情報の場所に急いで向かうと、ノルンを抱えたお父さんが居た。

 

「エル!?」

 

 お父さんも私に気づいたようで、驚いた顔で私を見る。

 私はお父さんに何も返さずに駆け寄り、お父さんとノルンに抱き着く。

 お父さんもノルンも驚いてるけど、抱きしめる力を強める。

 

「良かった……無事で、良かった」

「エル……く、苦しい」

「い、いたい……」

「あっ!?ご、ごめん」

 

 嬉しくて力を入れ過ぎたみたい。

 慌てて力を緩めて離れる。

 

「!?エル、泣いてるのか?」

「え?」

 

 お父さんに言われ、目元に手を当てて初めて気づいた。

 なんで?なんで、泣いてるんだろ……

 よく分からないけど、涙が止まらない……

 私が溢れて来る涙を手で拭っていると、お父さんに抱きしめられた。

 

「心配かけたな」

 

 お父さんの言葉で涙が込み上げて来る。

 抑えることも出来ずに、お父さんに抱きしめられながら涙が枯れるまで泣いた。

 

 泣き止んだ後は、恥ずかしくて俯いてお父さん達と宿に戻った。

 宿に戻った後、お父さんに色々と聞かれた。

 

「エルはどうやってここまで来たんだ?」

「シャリーアから空の異変が見えて、アスラ王国で何かあったんじゃないかと思って、急いで来た」

「それにしても早すぎないか?まだ、転移事件から二か月くらいだろう」

「赤竜山脈を突っ切って来たから」

「赤竜山脈ってまじかよ」

 

 お父さんの顔が引きつっているが、気にせずにこっちに来てからの一か月のことを話した。

 アルフォンスさんのこと、難民キャンプの設営のこと、魔法三大国や魔術ギルドの協力が得られたことを話した。

 難民キャンプのことを褒められたり、赤竜山脈を突破するという無茶を怒られたり、たくさん話した。

 ノルンは長旅で疲れていたのか、すぐに寝てしまったので、二人でゆっくりと話した。

 ノルンはお父さんと一緒に飛ばされたことで無事だったけど、お母さん達とはバラバラに飛ばされてどこにいるか分からないそうだ。

 

 今までのことを話した後、これからのことも話し合った。

 お父さんは、集まって来た人を集めて難民と化した人々を救いながらお母さん達を探すそうだ。

 アスラ王国はアルフォンスさんが対処してくれるみたいだから、お父さんはミリス神聖国で難民を探すそうと考えているらしい。

 私も召喚術の応用による探索、もしくは召喚をするために研究しようと考えていることを伝えた。

 中央大陸の北部なら私の立場を使えば、ある程度融通が利くことがこの一か月で分かった。

 中央大陸北部の情報を集めながら、召喚術の研究をする方がお母さん達を見つけられる可能性が高い。

 それに私魔術が出来ても旅に慣れていないから、魔大陸やベガリット大陸を探すのは無理だと思う。

 ゆっくりと話し合ってこれからの予定を決め、最後にノルンをどうするかという話になった。

 

「ノルンはエルと一緒に居た方が良いんじゃないか?」

「私は、お父さんと一緒の方が良いと思うよ」

「どうしてだ?俺と一緒にミリスに行くより、エルと一緒の方が安全だろう?」

「確かに、私と一緒の方が安全だろうけど……何が起きたか分からない状況で、お父さんとも離れ離れになって、一度しか会ったことの無い姉と知らない土地で暮らすのは、不安なんじゃない」

「ん……確かにな」

 

 それに、お父さんも心配だ。

 ミリス大陸でもお母さん達が見つからなければ、一人で無理して魔大陸やベガリット大陸を探しに行きかねない。

 ノルンが一緒なら、お父さんも無理はしないだろうし。

 

「だから、お父さんがノルンと一緒に居てあげて」

「まあ、仕方ないか」

 

 お父さんも納得してくれたので、ノルンはお父さんと一緒にミリス神聖国に行くことになった。

 話がまとまり、その日はゆっくりと眠った。

 

 それから一ヶ月、お父さんが「フィットア領捜索団」を組織している間、ノルンの遊び相手になる。

 難民キャンプの設営は、私がやることはほとんどなくなっていたので、アルフォンスさんに任せきりでノルンの遊び相手と精霊の組み上げ以外することが無かった。

 「フィットア領捜索団」を結成したお父さんは、難民キャンプにメモを残してミリス神聖国へ向かう日が来た。

 

「ノルン」

「なに?おねえちゃん」

 

 私はお父さん達が旅立つ前に、ノルンに声を掛ける。

 お父さんに内容を聞かれないように、ノルンを抱きしめて話す。

 

「私は一緒に行けないから、お父さんのことよろしくね」

「?うん」

「後、お姉ちゃんが、お守りあげるね」

「お守り?」

「そう。ノルンが危ない時に守ってくれる、お守り」

 

 ノルンに花形の魔石の飾りがついた首飾りをつける。

 不思議そうな顔で首飾りについている花を見えるノルンの頭を撫でながら説明する。

 

「肌身離さずつけておくのよ。後、服の中に入れて見えないようにしておくのよ」

「みられたらだめなの?」

「悪い人に見られたら取られちゃうかもしれないからね。常につけておくのよ」

「わかった」

「ノルンは良い子ね。じゃあ、お父さんのことよろしくね」

「うん」

 

 元気よく返事をするノルンの頭を微笑みながら撫でる。

 ノルンにお守りを渡した後、お父さんとノルンを見送る。

 その後、私も馬車で三か月かけてシャリーアに戻る。




エルの魔術に関して少し説明。

エルは基本的に術の生成から発動までのプロセスを1から3秒程度で行っています。
神級の魔術でも使い慣れたものは1秒くらいで発動でき、慣れてないものは3秒を超えることもあります。
基本的には術の生成に時間が掛かっているだけで、魔力を注ぐのは一瞬です。

基本的に魔術の構成は、術の生成、魔力を注いで威力を決定、魔力を注いで射出速度の決定、発射だそうです。
詠唱では、威力などの設定に時間の制限があるけど、無詠唱は無いため、時間を掛ければ高い威力が出せるそうです。

そして1秒に込められる魔力は訓練次第で増えるそうで、エルが上げた魔力出力はこれのことです。

まあ、魔術師としてのエルは化け物ということで間違いないでしょう。
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