無職転生-魔術を極める-   作:魔術師見習いa

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漸く投稿出来た。


獣族の姫達と新しい家

 転移事件から半年、私はシャリーアに戻って来た。

 最初に魔術ギルドの総帥に転移事件に巻き込まれたフィットア領の住民の捜索と保護の協力に対してお礼を言いに行った。

 総帥に私の家族の名前を伝え、家族が見つかった場合は私の元に案内して欲しいこと、他の住人はフィットア領の難民キャンプへ送るように頼んでおいた。

 

 総帥がS級で幹部クラスでしかない私に対して異様に遠慮がちな振る舞いだったのは気になった。

 神級魔術師とは言え、まだ魔法大学を卒業していない学生なのだから、遠慮しなくて良いと伝えたのに態度は最後まで変わらなかった。

 なんでも、私の提出した研究成果や魔術ギルドや魔法大学への寄付金など、貢献度は他の幹部や総帥と比べ物にならないらしい。

 本来なら私が総帥になるはずだったらしいが、研究時間が減るからと断ったらしい。

 

 そんなことすっかり忘れていたけど……

 

 まあ、魔術ギルドの総帥になってくれと、改めて言われても断ることに変わりはないかな。

 総帥や他の幹部がどんな仕事をしているか知らないけど、面倒そうだし。

 

 

 魔術ギルドや校長へのお礼と復学することを伝え終えて寮の自室に戻る。

 半年ぶりに戻って来た自室は、かなり落ち着く。

 前に家に戻る時も半年ぶりだったけど、ここまで落ち着くことはなかった。

 

 そういえば、もう私の家無くなったのか……

 

 私も今年で六年だし、卒業後の家どうしようかな?

 流石に、卒業後も寮に居座り続けるのは嫌だしなぁ。

 けど、お父さんとノルンが居るミリス神聖国に行くより、こっちで研修していたいのよね。

 魔法大学の近くに新しい家を買った方が良いわよね。

 難民キャンプの設営でお金結構使ったけど、まだ大量にあるし大丈夫でしょう。

 

「アリシア、エミリー」

「どうかしましたか?」

 

 二人を呼ぶとすぐにアリシアが近づいて用件を聞いて来る。

 

「エミリーと一緒に土地管理斡旋所に行って家を買って来てくれない」

「家、ですか?」

「そう。私もそろそろ卒業だし、魔法大学の近くに家を買おうかなって」

「それは構いませんが、なぜ私達に行かせるのですか?」

「家の管理は基本的に貴方達がするんだから、二人で選んだ方が良いでしょう。私は大きくて快適に過ごせるなら問題ないからね。お金は気にしなくていいから、好きに決めていいわよ」

「……分かりました。では、明日二人で行ってきますね」

「うん、よろしくね」

 

 

 

 アリシアとエミリーに家の購入を頼んでから半年が経った。

 何でも二人が土地管理斡旋所に行って、私が出した条件を基に二人が職員と話し合った結果、空き家の購入ではなく新しい家を建てるらしい。

 アリシアとエミリーがたまに様子を見に行って細かいところを建築士と話し合って建てている。

 私は魔法大学の近くに建てていることしか知らない。

 まあ、家のことはあの二人に任せておけば大丈夫でしょう。

 

 それより、今は違う別に問題に巻き込まれている。

 そう、現在進行形で巻き込まれている。

 私を取り囲む三十名近い不良生徒を見てため息が出る。

 

 どうしてこうなっているのかしら……

 確かに、魔法大学に入った頃は不良生徒に絡まれることもあった。

 けど、絡まれていたのは一、二年の頃だし、たまに絡まれるくらいだった。

 こんな風に取り囲まれて襲撃された経験なんてない。

 

「お前が魔導神エルシアかニャ?」

「ええ、そうですが……貴女達は?」

 

 私を取り囲む不良生徒のリーダーらしき二人の内一人が問いかけて来たので、私も問いかける。

 

「あちしはリニア・デドルディア。大森林ドルディアの里の戦士長ギュエスの娘だニャ。そのうち族長にニャる」

「プルセナなの。リニアと大体同じなの」

 

 ドルディアの族長ということは、獣族の姫よね。

 

「獣族の姫様が私に何か用?」

「お前がここで一番強いなの」

「まあ……魔法大学の中では、私が一番強いでしょうね」

「だから、お前を倒して私達がここのボスにニャるニャ」

 

 ボスになるのに私を倒す必要があるのだろうか?

 一番強い私を倒したからボスという理屈なのだろうか?

 

「よく分からないけど、まあ、遊び相手くらいにはなってあげるわよ」

「むか、気に食わニャい態度ニャ」

「ファックなの」

「お前達、やれニャ」

 

 リニアの合図で私を囲っていた不良生徒達は詠唱を始める。

 無詠唱魔術師相手に詠唱するのはどうなのだろうか?

 まあ、彼らの魔術を気にする必要性はないか。

 

 不良生徒達の詠唱が終わり、大火球や岩砲弾などの中級魔術が三十近い数が私を狙って撃たれる。

 不良とは言え、魔法大学の生徒なだけあってしっかりと発動している。

 魔力の制御や威力も一般的なレベルには達している。

 

 ただ、私を相手にするには魔力の制御が下手過ぎる。

 

 私に向かって飛んでくる魔術に対して、魔力を送り術を解体して魔術を消し去る。

 私を包囲した状態で放たれた三十近い中級魔術は、私に届く前に全てが霧散する。

 全員が何が起きたか分からず、呆然と立ち尽くす。

 

「私に魔術で攻撃するなら、もっと魔力制御を鍛えることね」

「ニャ、ニャにしたニャ!」

「魔術を解体しただけよ」

「!?」

 

 そこまで驚くことではないと思うのだけど……。

 実際に吸魔眼のように魔力を吸い取ったりすれば、魔術を無効化出来る。

 魔力制御と魔術の魔力の流れを理解出来ていれば、完成した魔術を解体して無力化するくらいは簡単に出来る。

 

「それで、もう終わり?」

 

 私が問いかけると、プルセナが口元に手を当てて咆哮する。

 それに合わせて魔力の乗った声が私に向かって迫って来る。

 

 ドルディア族の吠魔術ね。

 

 吠魔術に魔力を送り、声に乗った魔力を霧散させる。

 

「!?」

「吠魔術も魔術に変わりはないのよ。無効化出来ないわけないでしょう」

「!?お前ら、素手でやるニャ!」

 

 リニアが不良生徒に指示を出すと、身体能力の高い獣族を中心に襲い掛かって来る。

 獣族の身体能力なら私を倒せると思っているのだろうか?

 殴り掛かって来た不良生徒の腕を掴み、襲い掛かって来た他の不良に叩きつけて吹き飛ばす。

 人を木の棒のように振り回し、不良生徒をなぎ倒す私に彼らは後ずさる。

 不良が近づいて来なくなったので、振り回していた不良を地面に落とす。

 武器代わりに振り回した不良と吹き飛ばされた不良に治癒魔術を掛けて怪我を治しておく。

 

 今の私の身体能力は闘気を使わなくても獣族より高い。

 剣術の達人でもない不良なんて私の相手にならない。

 

 私を恐れて近づいて来ない不良達を一瞥し、リニアとプルセナに視線を向ける。

 

「貴方達、獣族の姫だからってあんまりヤンチャしてるといつか痛い目に遭うわよ。優等生になれとは言わないけど、ある程度勉強もした方が良いわよ」

 

 不良生徒達にそれだけ伝えて私は寮に戻る。

 彼らに絡まれたから少し帰りが遅くなったけど、大丈夫でしょう。

 

 

 リニア達のことをアリシアとエミリーに話したら、教師に報告して彼女達を退学にしようとしていたので止めておいた。

 彼女達が私を襲った理由は、私が一番強いからと言っていた。

 なら、彼女達をわざわざ退学させる理由はない。

 身を守る力が無い生徒を守るために退学させるのなら分かるけど、そうでないなら注意するだけで十分でしょう。

 退学させない代わりに、彼女達が大きな問題を起こした際は私が対処することを教師達に伝え、教師から彼女達に伝えられたそうだ。

 それからは調子に乗った生徒や不良生徒以外に対しての被害は無くなったらしいので、大丈夫でしょう。

 

 

 もうすぐ七年になる頃に、漸く家が完成したとアリシアとエミリーに聞かされた。

 三人で新居を見に行くため、二人に案内されて新居に向かう。

 魔法大学の近くという希望を出していたから、近いだろうと思っていたけど……

 

「魔法大学の目の前じゃない……」

「ええ、近くが良いと伝えたら、ここになりました」

「そう……まあ、そこはいいわ。ただ……大きすぎない?」

「大きい方が良いと言ってたじゃないですか」

「うん、確かに言ったよ、言ったけどね」

 

 外観からして貴族の豪邸より大きいんだけど……

 

「私達、三人が住むには大きすぎない?私の家族が一緒に住むにしても大きすぎるよね」

「ご安心ください。住居スペース以外にも、魔道具工房、書庫、魔道具保管庫、魔術実験場、魔術訓練室など、色んな部屋がありますので」

「……それは家って言っていいの?」

 

 エミリーの言葉に呆れながらも入り口に近づく。

 遠目からは分からなかったけど、この扉の木材、耐魔レンガと同じように魔力に耐性があるのね。

 いや、魔力だけじゃなくて熱にも耐性があるみたい。

 壁は耐魔レンガで出来ているみたいだけど、熱への耐性はなさそうね。

 

「それでは中に入りましょうか」

「ええ……」

 

 私が、壁や扉の材質について見ていると、アリシアが扉を開く。

 アリシアが開けてくれたので、中に入るとロビーだった。

 ロビーの壁は木製で玄関の扉と同じように熱への耐性がある。

 

「壁に使われている木材は全て熱を通さないように魔術的に加工されている物を使用しています」

「熱を全く通さないわけではないですが、窓や扉を開けない限り、冬場でもほとんど冷えないそうですよ」

「それだけ熱を通さないと、逆に熱がこもって熱そうね」

「はい。普通の家で同じことをすれば、そうなるでしょう」

「普通の家ね……」

 

 それじゃあ、ここが普通の家じゃないってことね。

 私、大きくて快適な普通の家で良かったんだけど……

 そんな私の考えなど知らないとばかりに、エミリーがロビーの奥の壁にある何かに近づいた。

 

「こちらを見てください」

 

 私は言われるがままにエミリーに近づいて、何かを見る。

 

「これは家全体の室温を一定に保つ魔道具です」

「なるほどね。温度の調整も出来るみたいね」

「はい。魔力に関しては大量の魔石で効率化していますが、家もかなり広いので大量の魔力が必要です」

「聖級以上の魔術師が居なければ、まともに動かすことも出来ないでしょう」

「それで、魔力を限界まで込めたらどれくらいもつの?」

「この家なら基本的に二か月くらいです」

 

 なるほど、室温の変化を極力なくすことで、魔力の消費を抑えているわけね。

 それにしても力を入れ過ぎじゃない?

 快適な家が良いとは言ったけど、ここまでする必要ある?

 

「では、順番に部屋を見ていきましょう」

「ええ……」

 

 基本的に使うだろうリビングなどの大部屋には快適に過ごすための家具が揃えられていた。

 どれも高級な物だということは一目見れば分かる。

 この際、家具が高級なことはどうでもいい、問題は……

 

「これらの家具全てに魔術で防汚が施されていて、泥を叩きつけても拭き取れば綺麗になります」

「……そう」

 

 この家に入ってから魔術的な処理を施されてない物を見ていない。

 今のところ目に入る物全てに何らかの魔術的処理が施されている。

 

「では、次に行きましょう」

「……」

 

 二人に案内された部屋に入る。

 そこは大きな籠がいくつか置かれ、収納スペースが多少ある部屋。

 おかしなものと言えば、見慣れない二つの魔道具があるだけだ。

 

「あの魔導具は?」

「あれは、基本的に私達が使う魔道具ですね」

「片方が洗濯用の魔道具で、汚れを落として水で流す魔道具です」

「もう片方は、洗った物を乾かす魔道具です。生地を傷めず、急速に乾かすことが出来るので、かなり便利ですよ」

「そう……まあ、貴方達が便利なら、良いわ」

 

 この二つは二人が必要な物なものみたいだし、気にすることではないわよね。

 ただ、さっきから違和感があるんだけど……何かしら?

 何か、忘れているような……気のせい?

 

「それでは次に行きましょう」

 

 アリシアはそのまま部屋の中に入り、扉を開ける。

 中を覗いてみると、お風呂場の様だ。

 かなり広いことは良いが、五、六人が余裕で入れる浴槽に魔法陣が描かれている。

 それにどこかで見たことがある気ような……

 

「浴槽の魔法陣は、水を媒介して疲労や怪我を癒す治療魔術のものです」

「水を媒介に、治療…………あっ、私が開発した魔術」

「はい。エルシア様が開発された魔術を基に魔術ギルドの魔道具製作者が作成したものです」

「まさか……」

「ええ、この家に使われている技術は、エルシア様がこれまでに魔術ギルドに提供した研究成果を基にして作られているものです」

 

 なるほど、何か気になると思えば、私が開発した魔術の応用だったからか。

 言われてみれば、作ったような覚えがある。

 そもそも魔力の流れによる作用を研究する過程で、使える使えない関係なく大量の魔術を開発したせいで何を開発したかなんて覚えてないわよ。

 

「そもそもなんで、この家はこんなに魔道具があるわけ?」

 

 私の問いに二人は顔を見合わせて頷いた後、説明を始める。

 

「土地管理斡旋所にエルシア様が家を購入することを伝えに行った時、責任者の方が出てきまして」

「魔法大学の近くで、大きくて快適な家という条件を伝えた結果」

「魔法三大国と魔術ギルドの力で最高の家が建てられたわけです」

「え?ごめん、よく分からない。なんで魔法三大国と魔術ギルドが出て来るの?家を買いに行ったんだよね?」

 

 家を買いに行ったら、魔法三大国と魔術ギルドが最高の家を用意するってなんで?

 私、変な条件だしてないよね?なんで、最高の家になるの?おかしくない?

 

「魔法三大国と魔術ギルドに対して、それだけの貢献をしたということです」

「エルシア様の為ならと、全面的な協力してくださいましたよ」

「お金に関しても、今までの寄付や研究成果によって得られた利益のお返しにと全額負担してくださいました」

「…………」

 

 おかしい、そんなに貢献をした覚えがない。

 確かに、使えるかも分からない魔術のスクロール用の魔法陣や理論を大量に提供した。

 魔石生成みたいな有用な研究成果もあったかもしれないけど、こんな家を贈るほどとは思えない……

 

「エルシア様が気づいていないだけで、エルシア様の貢献はかなり大きいですよ」

「この家にある魔道具に使われているものや、それ以外にも使われる場所が限られていても有用な魔術を数多く開発して来られたのですから」

「それぞれ魔法三大国で有効活用出来る場所、職業に魔道具や魔力付与品として提供されています」

「エルシア様は魔術の事しか考えてないから気づけないんですよ」

 

 魔術の事しか考えてないのは……否定できないけど…………

 

「だからって、ここまでする?」

「確かに、ここまで凄い家になるとは、私達も思っていませんでした」

「まあ、魔導神の名に恥じない凄い家を貰えたのですから、喜びましょう」

「私は、普通に大きくて快適な家が欲しかったの!」

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