無職転生-魔術を極める-   作:魔術師見習いa

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漸く書き終わった。


天才少年と怪力の神子

 ナナホシが魔法大学に入学してから一年近く経つ。

 無事に召喚魔術の解析は終わり、条件指定した対象の居場所を知る魔術は作れた。

 オルステッドに殺され、生き返らされたルーデウスの居場所をすぐに調べた結果、ネリス公国の辺りにいるみたい。

 お父さんの伝言が伝わっているのなら、中央大陸北部を探しているはずだから、おかしくないわね。

 魔法三大国を一通り探してから私のところに来るなら、もう少しかかるかな?

 まあ、魔法大学の近くに来れば、会いに来るでしょう。

 

 次に、アイシャの居場所を調べたけど、リーリャと一緒にお父さんやノルンと一緒に居るようなので安心した。

 ただ、お母さんの居場所が正確に分からなかった。

 ベガリット大陸辺りに居ることは間違いないのだけど、正確な場所がルーデウス達と違い分からない。

 生きていることは間違いないので、魔力の濃い迷宮内にいるのかな?

 お父さんには、私が分かる範囲の情報をまとめて手紙で送る。

 

 お母さんが迷宮内に居るのであれば、私では助けに行くことは難しい。

 迷宮内の魔物なら簡単に倒せるけど、迷宮内を迷わずに進むことも、トラップを回避することも出来ない。

 正直、お父さんはSランクの冒険者らしいので、お母さんの救出は任せて大丈夫でしょう。

 

 ルーデウスは……まあ、私に会いに来た時に伝えればいいかな。

 

 

 ナナホシは、一年経ったのに何も私に聞きに来ない。

 まあ、全然協力的な態度を見せていないので、当然と言えば当然かな。

 来られてもなんて言えばいいか分からないので、本当に困るけど……

 本当に、何て伝えたらいいのかしら……

 

「エルシア様、少しよろしいでしょうか?」

 

 私がナナホシのことで困っていると、アリシアが話しかけて来た。

 

「どうかした?」

「今、風の帝級魔術で行き詰っているので、エルシア様の魔術を参考にしようかと思ったのですが、何かお悩みですか?」

「まあね。私が推薦したサイレントって子がいたでしょう」

「ええ、学園に色々と口出ししているそうですね。彼女が何か問題を起こしたのですか?」

「問題は起こしてないわよ。ただ、あの子、面倒な運命に囚われているみたいなのよね」

「面倒な運命、ですか……それは、占命魔術で占ったのですか?」

「……いいえ。そもそも私、占命魔術だけは使えないのよ」

「え?」

 

 私の言葉に、アリシアは意外そうに目を見開く。

 魔導神なんて呼ばれているから占命魔術も使えると思っていたのでしょう。

 まあ、私も占命魔術を学びはしたけど、全く使えなかった。

 魔法大学の先生にも聞いてみたけど、詳しい理由については分からなかった。

 未来を占うことにあまり興味も無かったから、使えなくても別に構わないのだけど、時間に干渉する魔術は解明したいから、時間があれば研究をしようと思っていたけど、全然時間が無かったのよね。

 

「エルシア様にも使えない魔術があるのですね」

「魔導神なんて呼ばれていても、所詮は人間よ。占命魔術は使えないし、解毒魔術も得意じゃないわ」

「魔術は全て得意だと思っていたので、意外でした」

 

 まあ、普段使わない魔術だから、アリシア達が知らないのもの当然よね。

 

「話を戻しますが、面倒な運命とは何なのですか?」

「詳細は分からないわ。ただ、かなり面倒な運命に巻き込まれているのは間違いないわ」

「エルシア様は、彼女を助けるつもりなのですか?」

「ええ、弟の命の恩人だからね。ただ、詳しい事情は本人には話せないのよ」

「それは……色々と大変そうですね」

「本当にね」

 

 アリシアは私がかなり面倒なことに巻き込まれているのだと察してくれたみたい。

 

「まあ、今すぐどうにかなるわけじゃないから、ゆっくり考えるわ」

「そうですか」

「それで、私の帝級魔術を参考に見せて欲しいのよね」

「いえ、どのような魔術か教えていただければ十分です。後、どういう工夫をすればいいか教えていただければ、自分で頑張ります」

「そう。私の風の帝級は、風裂と衝撃波が吹き荒れて高速回転する風のドームを作る魔術よ。ドームを風槍竜巻のように撃ちだすことも出来るわ」

「なるほど、風裂、衝撃波、風槍竜巻のですか」

「ええ」

 

 まあ、帝級魔術と言っても聖級以下の応用だしね。

 混合魔術を一つの魔術に出来れば、王級以上の魔術を作ることは難しくないしね。

 

「参考になったかしら?」

「エルシア様の風の神級魔術も教えて貰えますか?」

「まあ……教えるのは良いけど、参考にはならないわよ」

「分かっています。風の魔術でどこまで出来るのかを知りたいだけです」

 

 使えないことが分かっているのなら、私の神級を変に真似たりはしないかな。

 

「風の神級は、空気を一、二秒で山より高い位置まで持ち上げて、一瞬で地面に叩きつけるだけよ」

「……それが神級の風魔術なんですか?」

「ええ、私達が気づいてないだけで、かなりの重さの空気が私達の上に乗っているわ。それを持ち上げて叩きつけるだけで、かなりの破壊力があるわ」

「重い空気の塊を叩きつけるわけですか」

「まあ、規模が大きいだけで、簡単に言えばそうね」

 

 持ち上げる範囲によっては暴風発生するし、叩きつけた時の衝撃で街の一つ程度なら簡単に吹き飛ぶでしょうけどね。

 やっていることは、本当に単純なのよね。

 

「ああ、それと空気は圧縮すると温度が上がって、拡散させると温度が下がる性質があるみたいよ」

「そんな性質があったんですね。……とても参考になりました」

「そう、参考になったなら良かったわ」

 

 圧縮や拡散で空気の温度が変わることが、何の参考になったんだろう?

 まあ、何か思いついたなら良いかな。

 

 

 

 アリシアが魔術のことを聞いて来てから数か月経ち、アリシア達も七年になった。

 アリシアとエミリーは、帝級魔術を習得して風帝級魔術師と水帝級魔術師になった。

 アリシアは空気を圧縮して火魔術の応用で、温度を上げた超高温高密度の空気弾を撃ちだす魔術。

 エミリーは絶対零度を習得していた。

 

 そして珍しく魔術ギルドから連絡があった。

 内容は、シーローン王国の怪力の神子ザノバ・シーローンが、祝福の研究に協力する代わりに魔法大学に特別生として入学したため、祝福に興味があるのならあってみたらどうかというものだった。

 祝福や呪いに関しては、魔力付与品と同じということは分かっている。

 けれど、神子の力には興味があるわね。

 特別生として入学しているということだし、会いに行ってみましょう。

 

 

 怪力の神子を探して魔法大学の中を歩いていると、知らない男子生徒に声を掛けられた。

 

「お前が、魔導神エルシアか?」

「ええ、そうだけど、貴女は?」

「クリフ・グリモル。天才魔術師だ」

「そう。それで、私に何か用?」

 

 自分で天才魔術師なんて名乗るなんて凄い自信ね。

 見た感じだとそんなに凄い才能があるとは思えないのだけど……

 ルディがおかしいだけで、これが普通の天才なのかしら?

 

「僕に無詠唱魔術を教えてくれ」

「…………」

 

 本当に天才とは、この程度のものなのかしら?

 ルディが異常だとしても、アリシアやエミリーもすぐに無詠唱魔術を使えるようになっていたし。

 詠唱無しで魔力の流れを再現するように言っただけで、特に何も教えてないけど出来るようになったわよね。

 アリシアとエミリーも天才だったのかしら?

 そもそも、無詠唱魔術ってどうやって教えればいいのかしら?

 

「詠唱しないで魔力の流れを再現すれば、簡単に出来るわよ」

「……それだけか?何か練習方法とかないのか?」

「練習方法って言われても……私は初めから見た魔術は無詠唱で扱えたから、練習方法なんて知らないわよ」

「なっ!?」

 

 クリフは私の言葉に目を見開いて信じられないと言いたげな目で私を見て来る。

 別に、私は魔力が生まれつき見えたから出来ただけで、魔眼が無ければ出来なかったでしょうね。

 本当に信じられないのは、二歳で文字を読み魔術を無詠唱で扱ったルディだ。

 私は二歳から必死に勉強して一年近くかかって漸く本が読めるようになったというのに、特に勉強もせずよく読めるようになったわよね。

 

「まあ、貴方が天才魔術師だというなら、魔力の流れを意識すればすぐに出来るようになるわよ」

 

 

 何か悔しそうな顔をしている彼を放置して私は、怪力の神子に会うために教師に居場所を聞くために職員室に向かった。

 職員室で教師に居場所を聞けば、今はちょうど土魔術の授業を受けているだろうとのことだった。

 なんでも怪力の神子ザノバは、土系統の魔術を熱心に勉強しているらしい。

 熱心に勉強をしているのを邪魔しては悪いので、授業が終わるのを教室の近くで待つことにした。

 

 教師に案内してもらった教室の近くで、教師と話して時間を潰した。

 授業が終わり教室から生徒が出始めると、教師が一人の男子生徒に声を掛けに行った。

 教師が事情を説明したようで、二人で戻って来る。

 

「お初にお目にかかります、シーローン王国第三王子、ザノバ・シーローンと申します。以後、お見知り置きを、魔導神殿」

「それでは、エルシア様。私はこの辺りで失礼します」

 

 ザノバが挨拶したのを見て、教師は私に一礼して職員室に戻っていった。

 私は、教師からザノバに視線を移す。

 

「魔導神殿、本日はどのようなご用件で?」

「貴方の怪力の神子としての力を見せて欲しいのよ。色々と試したいこともあるから、研究棟まで付いてきてくれるかしら?」

「はい、問題ございません」

「では、行きましょうか」

 

 ザノバの許可を貰ったので、研究棟の以前まで私が使っていた研究室に移動する。

 研究室についてすぐに、土魔術で彼の身長と同じくらいの岩を作り彼に渡す。

 

「その岩、重い?」

「いえ、このくらいなら問題ありません」

「そう。少しずつ重くするから、限界が来たら言ってね」

「分かりました」

 

 ザノバが持つ岩に手を当てて魔術で少しずつ重くしていく。

 彼の限界で止められた岩を魔術の結界で張った床に降ろしてもらった。

 彼と違い神子として怪力があるわけではないけど、私も力には自信がある。

 魔力の出力を上げるために、魔術で肉体を作り替えたことでかなりの力が付いた私と神子としての力、どちらが強いのかしら?

 

「重い……」

「!?怪力の神子と同じくらいの力があるとは、驚きました」

「いえ、私も力には自信があったんだけど、流石は神子ね」

 

 ほんの少し持ち上げるのが精一杯だった。

 闘気を纏えば軽く持ち上げられるだろうけど、素の力では無理ね。

 素の力は彼の方が強いけど、闘気を纏えば私の方が強そうね。

 

「神子としての力は、他に何かありますか?」

「強いて言うなら、体が頑丈なくらいですね。魔術や熱に対しては弱いですが、物理的な攻撃はほとんど効きません」

「なるほど」

 

 怪力の神子の力は、強化が偏った強力な闘気という感じみたいね。

 彼の体内に内包された大量の魔力が、闘気と似た役割を果たしているのでしょう。

 

 ん?彼とは少し質が違うけれど、私にも彼と似たように何かの性質を持った魔力が流れてる?

 魔力量が多すぎで気づかなかったけれど、私も神子ということなのかしら?

 ……いけないわね。

 用事が済んだのだから、彼を先に帰さないとだめよね。

 

「ありがとう。助かったわ」

「お役に立てたようで何よりです」

「また何か手伝ってもらうことがあれば、声を掛けるわね」

「分かりました。では、私はこれで」

「ええ、お疲れ様」

 

 研究室から出ていく彼を見送って私は、自分の身体に流れる魔力に意識を向ける。

 今まで当たり前のように扱っていたせいで、身体の中を流れる魔力に意識を集中させたこと無かったな。

 ……三種類かな?

 普段魔術や闘気に使っている思い通りに操れる魔力、それと操ることの出来ない魔力が二種類。

 恐らく、操れない魔力の一つは性質的に、私の肉体を強靭にしている魔力よね。

 覚えのある性質だから、間違いないでしょう。

 

 ただ、もう一種類の魔力は全く覚えがないし、性質からどんな効果があるのかも分からない。

 もしかして、私も何らかの神子という事なのかしら?

 けれど、それらしい力に心当たりが全くない。

 そもそも身体の中の魔力に意識を集中させて漸く気づけたわけだし、目立った力はなさそうね。

 どんな力か調べたいところだけど、性質から予測が出来ない以上、何か手掛かりが見つかるまでは調べられないわね。

 

 オルステッドのように他人に恐れられるような能力ではないし……オルステッド?

 そういえば、私はオルステッドの呪いが効かなかったわね。

 呪いや祝福の影響を受け付けない能力とかなのかしら?

 ザノバは物理的な影響だから調べられないわよね。

 ……オルステッドのように、他者に影響を与える呪いや祝福持ちが現れるのを待つしかないわね。




エルシアの風の神級魔術ついて。

まず、大気についてはナナホシが普通に生活しているので、地球とあまり変わらないということにしてあります。
空気の重さは、一平方メートルの上にある空気の重さは約十トンだそうです。

直径一キロの円を範囲とした場合、約八百万トンの空気を大体一キロメートルくらいの高さに持ち上げて、秒速ニ十キロメートルくらいの速度で地面に叩きつける魔法です。

ざっくりとネットで計算したら、ツァーリ・ボンバの三、四倍のエネルギーがあるみたいです。

やっぱり、エルシア化け物だ。
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