波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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※時間が大幅に飛んでいます
※時間が飛んだ影響で、その間に起こったことを既知の事実かのように語っている部分があります(一人称のため)
※ポケモン関連ですが、半オリキャラ半クロスオーバーみたいなキャラが1人出ます(この話以外には出さないので、キャラの説明の文章を省略するため)


番外10:近くて遠いいつかの未来

今日は久しぶりに雄英に来ていた。

何が目的かはとても簡単で、雄英体育祭を見学するために来たのだ。

私が見に来たのは1年生の会場で、そろそろ決勝トーナメントが行われるところ。

今年は私が1年生だった時と同じで、普通のトーナメントで1対1での試合形式みたいだ。

この会場には忙しくて来れなかった数人を除いたA組の皆も来ていて、皆で一緒に見ていたらしい。

会場に来てすぐに皆がいる位置は分かったから、私もそこに合流するために歩いていく。

 

「皆……」

 

「あ、波動!久しぶりー!忙しそうだったから来れないかなーって思ってたけど、大丈夫だったんだね!」

 

私が声をかけると、三奈ちゃんが明るい笑顔で大きく手を振ってくれた。

前に会ったのは女子7人で集まった時だったと思うから、数か月振りだったはず。

だから、実際結構久しぶりの再会だ。

そして、そんな三奈ちゃんの声を皮切りに皆も私が来たことに気付いて、手を振ったり挨拶したりしてくれる。

そんな声に応えながら、三奈ちゃんに返答していく。

 

「私はなんとか……ただ透ちゃんは日中は無理……夜の同窓会からなら何とか、だって……」

 

「そっかー、でもまぁ、夜は来れるんだもんね!そこで沢山話せばいっか!」

 

「ん……透ちゃんも楽しみにしてたから……皆で沢山話そう……」

 

私がそこまで言うと、三奈ちゃんもにっこりと笑顔で応えてくれた。

……透ちゃん以外で来てないのは、緑谷くんと爆豪くん、轟くん、あとは上鳴くんかな。

4人ともすごく忙しいみたいだし、来れないのも仕方ない。

そう思いつつ、私も女子が固まってるあたりの席に座った。

 

 

 

皆と話しながら試合を見学し続ける。

今の試合は、結構皆釘付けになっている。

理由は簡単。

選手の片方にすごく見覚えがあるからだ。

 

『A組島乃!巨人を作り出しやがったぞ!!こいつもこいつで規格外だなおい!!どうすんだぁ!?』

 

『……まぁ、これを作り出したところで、相性が悪すぎるな』

 

ステージの上に作り出された特大の巨人に対して、実況のマイク先生が大袈裟にリアクションをする。

というか、マイク先生はこの巨人の種が分かってるのに、わざわざこういう言い方してるけど、結果は見えてる。

解説の相澤先生の言う通り、相性が悪すぎる。

 

「ねぇ波動、あの子って」

 

「ん……真幌ちゃん……」

 

「名前聞いてそうかなとは思ってたけど、やっぱりそっか……となると、あれ幻だよね。相澤先生の言う通り、相性悪すぎか」

 

隣に座っている響香ちゃんの質問に端的に答えると、響香ちゃんもこの後どうなるかが分かったらしい。

まぁ、幻の巨人なんて相手が気にするわけもない。

相手もヒーロー科みたいだし、猶更だ。

個性の種なんて、入学してから体育祭までの短い期間でほぼ割れているだろう。

そうなると、真幌ちゃんはカモでしかない。

 

「でも、真幌ちゃんってヒーローに嫌悪感持っとらんかった?最後にはマシになってたからおかしくないとは思うんだけど、ヒーロー科来るなら活真くんかと思とった」

 

「……その辺は別におかしくもないよ……私が雄英に入学したのと……ほぼ同じ目的で雄英のヒーロー科に来たみたいだし……」

 

「……活真さんのためということですか。まあ、あの時にも活真さんのために、嘘を吐いてまでヒーローを試していましたし、納得ですわね」

 

まあ那歩島での真幌ちゃんの様子を見てたら、ヒーローになりたいなんて思われないよね。

実際真幌ちゃんもそこまでヒーローになりたいって思ってるわけじゃないし。

真幌ちゃんの目的は単純明快。

活真くんが目指すヒーロー科がどういう物かを自分の目で確かめて、活真くんの補助をするとともに、将来的には活真くんのサイドキックになるって感じっぽい。

那歩島で会った時からその片鱗は見え隠れしてたけど、心底弟を心配する姉心からの行動だ。

人のこと言えないけど、真幌ちゃんもだいぶブラコンだな。

とはいえ、そんな感じの目的で雄英のヒーロー科に入れちゃう辺り、すごく優秀なんだろうなぁとは思うけど。

……あれ、そういえば、活真くんと真幌ちゃんって何歳差だったっけ。

エリちゃんが雄英に入りたいって言ってたし、受かれば数年後には雄英生になるはず。

もしかして、エリちゃんと活真くん、クラスメイトになるかもしれない?

それはそれですごいなと思ってしまう。

あ、でもあの2人だと回復系統ってことで個性が若干被りそうだし、クラス分けどうするんだろう。

そんな感じのことを考えながら試合を見ていたら、真幌ちゃんの対戦相手の子にちょっと違和感を覚えた。

 

「……?……あの子……」

 

「どうかしたの?」

 

「ん……ちょっとね……幻云々は置いといて……思考と行動予測の癖が気になった……」

 

「行動予測の癖?」

 

真幌ちゃんと試合をしている金髪の女の子は、明らかに普通じゃない動きをしていた。

真幌ちゃんが動き出しているわけじゃないのに、真幌ちゃんの動きを先読みしたかのような動きをしている。

そして、彼女の思考も普通じゃない。

『揺らいだ』なんていう思考が確かに読み取れた。

つまり、昔の私のような行動予測をしているとしか思えないのだ。

……多分だけど、波動が見えてる。

そう思ってじっくりとその子を観察していると、響香ちゃんが興味深そうに口を開いた。

 

「珍しいね、波動がそこまで興味持つの。まだ指名とかもしたことなかったでしょ」

 

「……ん……指名とかは……私が指導してあげられる子じゃないと……する気なかったし……」

 

百ちゃん、響香ちゃん、三奈ちゃんとかは、もう指名もしたことがあったはず。

男子の方も結構指名していて、そのまま卒業後はサイドキックに、なんてことまでしていたりしたはずだ。

ただ、私は事情が事情だから、興味を惹かれて、かつその子の性格的にも問題なくて、さらに私がちゃんと何かしらを教えてあげられそうな子じゃないと指名するつもりはなかった。

私自身が職場体験やインターンでミルコさんに沢山のことを教えてもらったのもあって、指名をするからには何かしらの助けになってあげられるような子に限定したかったのだ。

ミルコさんみたいにとまでは言わなくても、ちゃんとその子の糧になってあげたいし。

だけど、今まではそんな条件に該当する子がいなかった。

だから指名してこなかったのだ。

 

「それにしても、すごい泥試合ね。真幌ちゃんと対戦相手の子、お互いに打つ手なしって感じでただの殴り合いみたいになっちゃってるわ」

 

「……まぁ……読心した感じだと……2人とも打つ手がないのは事実……攻撃手段の乏しい個性みたいだし……殴り合いは必至……」

 

実際梅雨ちゃんの言う通りで、真幌ちゃんと対戦相手の子は泥沼の殴り合いに発展していた。

まぁ、これは対戦相手の子の予測も拙ければ、真幌ちゃんの幻の使い方も拙い。

どっちもまだまだ未熟だからこうなってる感じだな。

 

その後もそんな感じで皆で色々話しながら体育祭を見学していった。

真幌ちゃんは普通に1回戦負けだった。

殴り合いのフィジカル勝負だったから仕方ないのかもしれない。

あの金髪の子、だいぶ鍛えてるみたいだったし。

 

 

 

体育祭も特にトラブルなく終わって、同窓会になったら爆豪くんも含めてクラス全員集合出来た。

爆豪くんなんてめんどくさそうな反応してたのに、なんだかんだで来てくれるあたりやっぱり優しい。

切島くんあたりが説得したんだろうけど、爆豪くんも丸くなってる気がする。

皆色んな話題で盛り上がってるけど、その中でも至る所であげられてる話題は、今年の体育祭を見て誰かを指名をするかどうかだ。

それはいいんだけど、その前に確認したいことがある。

相澤先生は体育祭の後処理とかが忙しいからここには来れないって言ってたけど、流石にそろそろ電話をかけても大丈夫な頃だろう。

そう思って、トイレのために席を外したついでに相澤先生に電話を掛けた。

先生はすぐに電話に出てくれた。

 

『どうした?同窓会なら事前に連絡した通り行けないぞ』

 

「いえ……そういうことではなく……ちょっと確認したいことがありまして……」

 

『手短にしてくれ。すまんが、体育祭の後処理に加えて、指名の確認作業と処理もあるからあまり時間がなくてな』

 

「真幌ちゃんと決勝トーナメントで試合をしていた子のことで……聞きたいことが……あの子って……もしかしなくても……波動が見えてますよね……?どんな個性か……最低限聞いても大丈夫ですか……?」

 

『……なるほど。個人情報だし、本当に最低限になるが……それでもいいな』

 

「はい……大丈夫です……」

 

先生は少し考え込んでから、話し始めてくれた。

まぁ、本当に最低限の情報でしかないし、見てて推測できるくらいのものに留められている内容ではあるけど。

あの子は波動だけじゃなくて、気とか色々なものが見える感じの個性らしい。

私みたいに感じ取れているわけじゃないし、他に何が出来るってわけでもない。

つまり、漫画とかで出てくる魔眼みたいな感じか。

しかもあの戦い方、明らかに波動だけを意識してたし、多分私が参考にされてるな。

私の戦い方なんて、対ヒミコちゃんや対AFOの動画とか、テレビとかで好きなだけ見れるだろうし。

あの子からは悪意も感じなかったし……波動を用いた戦い方を模索してるっていうなら……

 

「……先生……その子に私から指名を入れさせてもらってもいいですか……?」

 

『……一応俺の方も、いずれお前に相談しようとは思っていた。補足しておくが、波動に関しては雄英入学時のお前の足元にも及ばない練度だぞ。それでも大丈夫か?』

 

「はい……ミルコさんがほとんど戦えない私に色々教えてくれたみたいに……私が教えてあげればいいだけの話なので……」

 

『分かった。こちらで処理しておく。お前なら事前調査もいらないから、こちらとしても助かるくらいだ』

 

先生はあっさり了承してくれた。

まぁ、指名拒否なんて素行がアレな感じのヒーローじゃなきゃしないだろうし、当然のことではある。

その後は会話もそこそこに電話を切った。

先生、すごく忙しそうだったし。

そのままスマホをしまって、同窓会でどんちゃん騒ぎしている皆の所に戻る。

 

「あ、瑠璃ちゃーん!どこに行ってたの?」

 

「ん……ちょっと電話してた…………それにしても透ちゃん……ちょっと飲み過ぎじゃ……」

 

「いいじゃん今日くらい~。いつもはちゃんとしてるんだから」

 

透ちゃんが結構酔っぱらった感じで絡んでくる。

まぁ、本当にいつもはちゃんとしてくれてるから別にいいけど、座った途端肩を組まないで欲しい。ご飯が食べづらい。

だけど振り払うのはかわいそうだし、そのままちびちびおつまみで並べられてるお刺身を食べ始めたら、百ちゃんに声を掛けられた。

 

「電話となると、もしかしてお仕事ですか?大丈夫でしたか?」

 

「大丈夫……ちょっと先生に電話してただけ……」

 

「先生に?」

 

「ん……体育祭のことで聞きたいことがあったから……」

 

「あぁ、波動が熱心に見てた子のこと聞いてた感じ?もしかして指名するの?」

 

私の返答に響香ちゃんが納得した感じの反応をしながら確認してきた。

まぁ流石に分かるか。

毎年見に来てるけど、私が興味を惹かれたのってあの子くらいだし。

 

「それも含めて……相澤先生に伝えておいた……指名も受理してくれたよ……」

 

「おー!どの子?どんな子指名したの?瑠璃ちゃんのところに来るとなると、私もよろしくしないといけないし教えてー!」

 

透ちゃん、私が拒否されるなんて微塵も思ってないな。

目を輝かせながら聞いてきてるし。

チームアップしてる透ちゃんからしたら自分にも関係がある話だし、気になるのは当然だから聞かれるだろうなとは思っていた。

 

「透ちゃんさっき動画見てたよね……真幌ちゃんと戦ってた子……」

 

「……あぁ!あの子か!私も真幌ちゃん指名しようと思ってるから、もしかしたら私たちの所に2人で来るかもしれないねぇ!」

 

「真幌ちゃんか……まぁ、透ちゃんなら……真幌ちゃんに幻の使い方色々教えてあげられるよね……」

 

透ちゃんは真幌ちゃんを指名するつもりらしい。

まぁ透ちゃんは光の屈折を利用して幻を出したり出来るし、納得しかない。

となると、真幌ちゃんとも一緒に行動することになる可能性が高いかな。

透ちゃんの知名度と個性の共通性を考慮したら、選ばないなんてことはないだろうし。

 

「皆は誰か……指名したりするの……?」

 

「さっきも話してたんだけど、ウチらは今のところ指名しない感じかな。男子の方が何人か指名しそうな感じの会話してたよ」

 

「なるほど……」

 

……男子の方は思考からして、切島くんと飯田くんが指名を出しそうな感じかな。

女子の方が今回指名を出さないのは別に不思議な事じゃないから、まあそうだよねとしか思わない。

三奈ちゃんなんかは今インターン生の面倒を見てるはずだし、他の皆は有能な子なら見境なく指名をするってわけでもなければ、個性が似通ったりしてるような子もいなかったし。

私と透ちゃんは個性も含めて色々教えてあげられそうな子だから指名してるって感じだし。

私がそんなことを考えながら納得していると、三奈ちゃんが美味しそうに食事を食べ続けていたお茶子ちゃんの方に近づいていった。

 

「波動も戻ってきたことだし、真面目な話はここまでにしてぇ……麗日!」

 

「んぐっ!?けほっ……な、なに?どうしたの急に?」

 

……まぁそうなるか。

お酒も入ったし、真面目な話も話すだけ話したし、お茶子ちゃんが前に会った時につけてなかった指輪つけてるし。

しかも左手の薬指に。

梅雨ちゃんは元々知ってたっぽいけど、こんなの三奈ちゃんと透ちゃんが食いつかないわけがない。

 

「なにじゃないよ!その指輪!それ、緑谷だよね!?進展あったんだよね!?」

 

「さあキリキリ喋ろうかお茶子ちゃん!!私も瑠璃ちゃん戻ってくるまで聞くの我慢してたんだから!!」

 

「そ、それはっ!?そ、その……う、うぅ……」

 

お茶子ちゃんが真っ赤になって黙り込んでしまった。

うん、そうなったところで確実に根掘り葉掘り聞かれ続けるやつだな。

聞かれたくなければ指輪を外してくればよかったんだろうけど、緑谷くんにもらった指輪を外したくなかったみたいだし仕方ない。

こうなる運命だったんだろう。

梅雨ちゃんもある程度の所までは見守るつもりみたいだし、響香ちゃんと百ちゃんもだいぶ気になってたみたいだし、黙って見ておくか。

……私も少し気になってたし。

プロポーズされたのかな。どんな感じだったのか少し……だいぶ気になる。

そんな感じなのもあって、ぐいぐいとお茶子ちゃんに迫っていく三奈ちゃんと透ちゃんを見守る態勢に入った。

まぁ、この後どこまで飛び火するのか分からないから、全員が全員傍観者じゃいられないんだろうけど、飛び火したらしたで考えよう。うん。

 

 

 

そんな感じの同窓会から少し経って、ついに職場体験を受け入れる日が来た。

あの子も真幌ちゃんも、それぞれの職場体験先として私と透ちゃんを選んでくれていた。

今は2人で私の事務所で待っているところだった。

透ちゃんの事務所もあるにはあるけど、私の事務所の方が雄英に近いし、どうせチームアップしてるから一緒に行動するしってことで、ここで2人まとめて待つことにしたのだ。

そんな感じでしばらく待っていると、2人が近づいてきた。

……なんか真幌ちゃん、機嫌が悪い?

そう思ったところで、ドアが開かれた。

波動で感知してた通り、見覚えがあるアタッシュケースを持った、雄英の制服を着ている少女2人が立っている。

 

「瑠璃さん!!なんで私は指名してくれないんですか!?コルニは指名してるのに!!」

 

「……えぇ……」

 

「あはは。真幌ちゃん、瑠璃ちゃんに懐いてたもんね。そういう反応にもなるかぁ」

 

真幌ちゃん的には、私は誰も指名したことがないの知ってたから、今回も誰にも指名は出さないものだと思ってたっぽい。

それで、自分の指名見て透ちゃんからの指名があるのに気付いて喜んでたら、同じクラスで友達のコルニちゃんに指名が入っててこの感想になった感じか。

……まぁ、それなら納得はできるか。

 

「私と真幌ちゃんじゃ……個性が違い過ぎて教えてあげられることがないでしょ……指名出しても成長させてあげられないよ……」

 

「それは……分かりますよ!?分かりますけど!!インビジブルガールが指名してくれてすごく嬉しかったですけど、瑠璃さんにも指名して欲しかったんですよ!!」

 

「まぁまぁ。私、瑠璃ちゃんとチームアップしてるから、一緒にいられるよ!それに、私なら真幌ちゃんに色々教えてあげられるし!」

 

「あ、いや、その、インビジブルガールが嫌なわけじゃないですよ!?そういうことじゃなくて……」

 

「大丈夫。分かってるから」

 

透ちゃんがそのまま真幌ちゃんを宥めにいってくれた。

実際真幌ちゃんは透ちゃんが嫌なわけじゃないし、自分たちを助けてくれたA組の1人から指名が入っていたことを心底喜んでいたのは本当みたいだし。

それはそれとして、私もコルニちゃんと挨拶した方がいいかな。

さっきから私の方を見て固まっちゃってるし。

まぁ、波動が見えてるせいなんだろうけど……

『なにこの波動の量……!?』とか考えてるし。

 

「よろしくね……コルニちゃん……」

 

「……は、はい!!よろしくお願いします!!指名していただけてすごく嬉しいです!!ありがとうございます!!」

 

「ん……あなた……波動が見えてるみたいだったから……戦い方も……明らかに私を意識してたのが分かったし……指名した……一緒に頑張ろうね……」

 

「はい!!あたしリオルの大ファンなんです!!波動を使った戦い方も、リオルの映像を見て色々勉強してました!!足を引っ張らないように頑張ります!!」

 

……慕ってくれてるのはいいんだけど、この子思った以上に背が高いな。

見上げないといけないのが若干もやっとするけど……

まぁ、今はいいか。

 

「じゃあ……とりあえず別室で簡単な説明してから……パトロールしようか……透ちゃんも……それで大丈夫……?」

 

「うん!もちろん!」

 

透ちゃんもスッと了承してくれた。

そのまま別室でヒーローの仕事に関する説明をして、説明が終わったらそのままパトロールに移行する。

まぁ、そもそもこの辺りは私とサイドキックの2人で毎日全域をパトロールしてヴィランは根絶やしにしてるから早々に遭遇しないけど、毎日のルーチンワークだ。

私と透ちゃんがチームアップしてるのは、公安の要請もあってこの範囲を拡大するための連携を図ろうとしてた感じだ。

だけど、職場体験の時に2人でいつものをやり出しちゃうと、学生2人が話についてこれなくなっちゃって学べるものが無くなっちゃうだろうし、透ちゃんと話し合って職場体験の間はもともとしていた作業をすることにしたのだ。

当然、そんななんてことないパトロールは、ヴィランに遭遇することなく終わった。

 

翌日からはパトロールをある程度したら、真幌ちゃんとコルニちゃんの特訓の時間を取るように調整していった。

 

「じゃあ真幌ちゃん、幻の使い方、一例ではあるけど実際にやるから、ちゃんと見ててね!」

 

「コルニちゃんも……波動を意識しながら……私の動きと透ちゃんの波動を見ておいて……」

 

透ちゃんと私は、お互いに自分についている子に声をかける。

そして、そのままの流れで透ちゃんと向き合って、軽く身構えた。

 

「それじゃあ……いっくよー!!!」

 

「ん……いつでもどうぞ……」

 

私の返答と同時に、透ちゃんは太陽光を収束屈折させた熱線レーザーとその幻を織り交ぜながらばらまいてきた。

それを正面から見据えつつ、波動を全く纏っていない幻は完全に無視して、実体があるレーザーだけを避けていく。

しばらくそれを続けて、お互いに満足したところで一時中止した。

 

「はい……コルニちゃん……今の見て気付いたことあった……?」

 

「え、えっと……幻が波動を纏ってないのは、なんとなく分かりましたけど……」

 

「半分正解……だけど……それだけじゃないね……実体を出してる時よりも幻を出してた時の方が……手の波動の揺らぎが小さいのには気付いた……?」

 

「……分からなかったです……」

 

「ん……だよね……そうだと思う……本当に微細な差だから視覚だけに頼ってると難しい……」

 

コルニちゃんの個性が視覚頼りな以上、この微細な差を見極めるのは結構難しい。

さらにいうと、透ちゃんのビームみたいに、使う時に身体を思いっきり動かしてたり、打たれた後は高速で近づいてくるものを、視覚だけで見極めるのはほぼ不可能だろう。

これは透ちゃんに限らず、真幌ちゃんの成長先として透ちゃんが想定している、幻でフェイントを織り交ぜてくるようなタイプは特に。

幻を含めて全部を避けようとすると、不可能なくらいの密度で来ちゃうこともあるし。

だからこそ、揺らぎと感覚から規模や方向、どういう攻撃かの予測をしていくのが結構大事だ。

私は波動の感知が個性で出来ちゃうからもともと出来ちゃってた部分だし、読心でどういう攻撃かまで判断できちゃうから、一見するとコルニちゃんの視覚情報だけじゃ真似できないと思っちゃうかもしれない。

だけど、読心の部分は難しいけど、ある程度近くの波動を感知するのは、普通の人でも不可能じゃない。

凄い熟練度が必要だから、習得するまで途方もない時間がかかるけど。

 

「そういうのを見分けられるようになるために……まずは波動を感じ取ることから始めようか……」

 

「感じ取るって、リオルさんみたいにですか?あたしの個性、見えるだけなんですけど……」

 

「最初はそうかもしれないけど……波動を攻撃に転用したいと思ってるなら……ほぼ必須事項……個性とか関係なく……最低限自分の波動を感じ取ったり……操作したりは……鍛錬を積めばできるようになるものだから……そこまで出来たら……多分近くの人の波動がなんとなくこんな感じかなっていうのは……分かるようになると思う……」

 

「な、なるほど……」

 

コルニちゃんも一応納得はしてくれたみたいだ。

そうなると、まずは自分の波動を感じる部分から始めてもらわないとダメかな。

操作に取り掛かるのはだいぶ先になるだろう。

とりあえず、私の波動をコルニちゃんの波動に馴染ませて、意識させればいいかな。

個性で波動の動きを見ながらなら、自分の波動を感じるだけならそんなに時間がかからないだろうし。

 

「じゃあそこに座って……私の波動を注入して……あなたの波動に馴染ませる動きをしていくから……波動の動きを見ながらでいい……まずは自分の波動を感じ取るところから始めるよ……」

 

「は、はい!」

 

コルニちゃんが座ったのを確認してから私も隣に座って、コルニちゃんの手に自分の手を重ねる。

そのままゆっくりと波動を注入し始めた。

ここから先は私が何かを言うよりも、自分で気付く必要がある部分だ。

私は透ちゃんの方で手が必要ならお手伝いしたりしながらでいいかな。

ちょうど透ちゃんも、真幌ちゃんに体術と組み合わせた幻の使い方を指導し始めてるし。

うん、パンチに合わせて自分の腕の幻を複数作ってくるのは、普通に厄介だよね。

指導方法も普通に正解だと思う。

この練習がうまくいけば、最終的には幻を自分に完全に重ねて姿を見えないように偽装したりとかも視野に入ってくると思うし、本当に真幌ちゃんと透ちゃんは相性がよさそうだ。

 

 

 

そんな感じで練習を始めて数日経った頃。

パトロールを午前中にやって、午後に鍛錬していたところでその連絡が来た。

 

『リオル、ヴィラン出ましたよ。職場体験中だから一応連絡してます……いつも通り私だけで捕まえてもいいですけど、どうします?』

 

『私で対処するよ……場所ももう思考から分かったし……今から向かうね……』

 

『それなら私は変身したまま見張ってますよ。入れ替わりはいつも通りでいいですね』

 

『ん……大丈夫……ありがと、ミラー……』

 

『はいはい。お礼は後で血を飲ませてくれたらそれでいいですよ~』

 

そこでテレパスは途切れた。

ミラーはもう動き始めてるし、私たちもさっさと向かおう。

 

「透ちゃん……!ヴィラン出たって……!職場体験中だし私たちで対処しよ……!」

 

「おー!ってことは、ミラーちゃんからテレパスがあった感じだね!」

 

「ミラー?」

 

透ちゃんはすぐに理解してくれたけど、真幌ちゃんとコルニちゃんは疑問符が浮かんでいる。

まぁサイドキックの紹介なんて一切してないし、なんだったら一般市民にだって私のサイドキックの存在を説明してないからこういう反応にもなるか。

犯罪の抑止力としての私の存在をもっと広範囲で使いたいっていう公安の要請でもあるし、ミラーがいるだけで範囲を1.5倍くらいに出来るから説明しない方が都合がいいのだ。

どのみち個性は使えてるから説明しちゃってもいいんだけど、いまだに怖がる人がいるのも事実だし。

 

「私の1人だけいるサイドキック……私がヒーロー活動してる時間はパトロールしてくれてるの……その子からヴィランが出たって連絡があったから……急いで移動するよ……」

 

「は、はい!」

 

その後は急いでヴィランがいる所まで移動していった。

真幌ちゃんは透ちゃんと一緒に走って、私は波動の噴出で跳びながら、コルニちゃんはコスチュームにつけていたらしいローラースケートで並走しながらって感じで移動していたから、そんなに時間もかからず現場に到着した。

真幌ちゃんが結構辛そうではあるけど。

そんなことを考えながら、私に変身してるミラーの方に近づいていった。

 

「立てこもり中ですね。人質もいるので、インビジブルガール待ちって言って警察も納得させてます」

 

「ありがと……ミラーは事務所戻ってていいよ……職場体験中、結構歩いてもらっちゃってるし……今日の残りはのんびりしてて……ヴィランもそんなに強くなさそうだし……」

 

「じゃあ先に戻ってます……またあとで、沢山お喋りしようね」

 

「ん……夕食……今日は一緒に食べよっか……」

 

私がその提案をすると、ミラーはひらひらと手を振りながら歩いていった。

私が近づいた時点で気配がほぼ感じられなくなったし、周りの人もすれ違ってるのに気が付いてる様子はない。

本当に意味が分からない技術だ。

まぁそれはそれとして……とりあえずヴィランを捕まえよう。

 

 

 

ヴィランの逮捕はあっさり終わった。

そして、それ以降職場体験が終わるまで、軽犯罪以外のヴィランが出ることはなかった。

相変わらず、私の活動範囲は計画的なヴィランがほとんど出ない。

私は楽でいいんだけど。

とりあえず、そんなこんなで職場体験は終わった。

今は、お別れの挨拶をしてるところだ。

透ちゃんは透ちゃんで、真幌ちゃんと話している。

私も、コルニちゃんに言うべきことは言っておくか。

 

「……鍛錬……頑張ってね……根気強く続ければ……波動を使って戦えるようになるはずだから……」

 

「はい!この1週間、ありがとうございました!」

 

「ん……あとは……これを……」

 

コルニちゃんに、あらかじめ準備しておいたメモを渡す。

この子、基本的にいい子だし、頑張り屋さんだったから、今後も手伝ってあげたくなったのだ。

ミルコさんが、私にしてくれたみたいに。

 

「これは……?」

 

「私のプライベートの連絡先……聞きたいこととか……相談したいことがあれば……気軽に連絡して……」

 

「……!う、嬉しいです!!ありがとうございます!!」

 

理解すると同時に、コルニちゃんが花が咲いたみたいな笑顔を浮かべながら、大袈裟に頭を下げてきた。

……昔の私も、こんな感じだったのかな。

 

「鍛錬中にもアドバイスしたけど、自分の波動を信じることが大事だよ。"波動は我にあり"、忘れないようにね」

 

「はい!!」

 

透ちゃんの方も、多分連絡先を渡してあげてるな。

真幌ちゃんなら私のもあげてもいいんだけど、彼女の師匠は透ちゃんだ。

あんまりでしゃばらない方がいいだろう。

そう思いながら、笑顔で手を振りながら離れていく2人を見守った。

 

 

 

「瑠璃ちゃん、ミルコさんの真似してたでしょ」

 

「……別にいいでしょ……私はそうしてもらって嬉しかったんだから……」

 

「悪くなんてないよ!ミルコさん、理想の師匠みたいな感じだったもんね!真似したくなるのも分かっちゃうよ!」

 

透ちゃんが半分ニヤニヤしてるような感じの笑顔で弄ってくるのが、若干気恥ずかしい。

理由は分かりきってるけど、透ちゃんも真似してたじゃないか。

そんな透ちゃんに口で反撃しながら、これから少し忙しくなりそうだな、なんて考えていた。

私も、ミルコさんがしてくれたみたいに、頑張ろう。

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総合評価:7822/評価:8.93/完結:86話/更新日時:2026年05月05日(火) 21:30 小説情報

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私の名前は雪柳氷雨(ゆきやなぎひさめ)。▼個性は『雪女』。▼この個性、氷や雪を自在に操れて……身体が女性のそれになってしまうという、ちょっと変わったものなんです。▼ええ、そうです元男ですよ。がっかりさせてしまいましたか? ▼……え? むしろいい? そ、そうですか……。▼……まぁでも、そういうことなら。▼私がいっぱしのヒーローになるまでの、波乱に満ちた軌跡を見…


総合評価:20093/評価:8.81/連載:69話/更新日時:2025年05月24日(土) 18:00 小説情報


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