TS転生美少女宇宙人、地球侵略を命じられる 作:スマルト星人
星間ワープで航宙巡洋艦と宇宙戦艦と共に地球へとひとっ飛びである。
ワープ技術に関してはどうやら小規模のワームホールを生成してそれを通って飛んでいるみたいだが、そこら辺の技術に関しては私はまるで理解できていない。
まあ、自動車だって仕組みを理解していなくたって乗りこなす事は出来る。
それと同じだろう。
兎に角私は自動運転で宇宙戦艦一隻、航宙巡洋艦八隻、合計九隻の宇宙船と共に地球へとやってきた。
おお、懐かしき青い星!
かつて地球にいた頃はまさか宇宙からその姿を見る事になるとは思ってもみなかったけれども、それでも地球の姿は写真やテレビで見るよりもずっと綺麗だった。
いつまでもそうやってかつての故郷を眺めていたい気分ではあったが、しかし私にも仕事がある。
つまり、私はクレア星の使者として地球とコンタクトを取らなくてはならない。
一応上司からの指示は「地球の環境を改善する事」であり、それを最低限クリアすれば帰って来ても良いと言われている。
その手段はこちらに完全に任されているのはとりあえず良かった。
これで無理やり武力行使を強要されたら普通に反旗を翻していた――いや、今生の両親の為にももしかしたらしぶしぶ仕事を遂行していたかもしれない。
ただ、この地球にもかつての私の家族はいる筈だ。
だから私も、彼等の為にこの星を守らなくてはならない。
差し当たって、まずはどことコンタクトを取るべきか。
最初のファーストメッセージは世界全体に同時に行った。
それはやはり「最初」となった国への負担を減らす目的である。
「最初」というのは特別だ。
それだけで他国との軋轢を生む可能性がある。
だから私はあえて「最初」の「一人」を作らず、全体にメッセージを送るという手段を取った。
とはいえそうやり続ける事は不可能であり、いずれはどこかと一対一でコンタクトを取らなくてはならない。
そのいずれが今なのだろう。
さて、どうしようか。
個人的にはかつての故郷、日本を推していきたいが。
だけど日本を優遇すると逆に日本が不利になる可能性がある。
うーむ、難しい。
安易にアメリカとか大国を狙うのもなんだか違う気がするし、いっそルーレットで決めるか?
いやいや、それこそ責任逃れが過ぎるだろう。
うーん……
……やっぱり、ここは悩むけど日本、かな。
もっと環境汚染が進んでいる国はあるけれども、それでもかの国は「自然災害大国」である。
地震、台風、火山の噴火など。
主に地球の活動による災害が多い、か。
それらは頻繁に日本の人々の命を気まぐれに奪い、悲しみを生む。
そして私の仕事内容は「環境改善」。
これの注目すべき点は「環境汚染の解消」ではないという事だ。
つまるところ、この星にとって住みやすいように環境を整えるのも仕事の一つであるとも解釈できる訳だ。
具体的に言うと、耐震技術、耐風技術、耐熱技術など。
あるいは高度な地震予測システムなどを導入してもいいかもしれない。
なんにせよ、最初の目的地は、地球の日本!
という訳で、早速コンタクトを取ってみよう!
日本の皆さん、こんにちはーっ。
■
宇宙人からメッセージが送られてきてから一週間が経過した。
それまでに小さな暴動やイザコザが多少起きていたが、それでもやはり「宇宙人がやって来る」という事に備えて家の中に籠る者が多かった。
……その小さな家で自らの命を守れる筈もない。
そのような思考に蓋をしながら、家族と共に時間を過ごす。
彼等が考えるのは、やはり「誰が最初か」だった。
どの国、どの地域が最初の宇宙人の「餌食」になるのか。
出来る事ならば、自分は、自分の家族は最期になって欲しい。
そのように神に、あるいは宇宙人に対して願いを送っていた。
そして、それから数日した後。
……日本にあるテレビ放送が一週間前と同じようにジャックされ、そして一つの映像が映し出される。
そこには宇宙をバックに一体の人型が映し出された。
それは人間にそっくりだったが、しかしその耳はエルフのそれのように尖っていて、その存在が人間ではない事を如実に伝えていた。
白髪、エメラルドグリーンの瞳。
ぷるっとした桜色の唇が蠢き、言葉を紡ぐ。
「こんにちは、日本の皆々様」
それは――日本語だった。
日本語を話していた。
その事に違和感を覚える者や、あるいは恐怖を覚える者がいた。
宇宙人たるそれが何故日本語を話せているのか。
それは既にこの星の文化文明を調べ尽くしている証左ではないか。
何より、わざわざ日本語で「地球の」ではなく「日本の」と言っている事から、この通信は日本にしか行っていない事を察した者もいた。
それは、つまり――
「我々は、この青き星スマルト――地球から12万4千光年離れた位置にある星、クレアから参りました。そして私の名前は、マルア・レイ。今日この時から、貴方達との交流を担当する者です」
12万4千光年。
それは地球がある天の川銀河の直径よりも若干長い距離であり、おおよそ人間が旅するにはあまりにも莫大な距離だった。
そんな星海を、この者は渡り切った。
そして今、この場で我々に語り掛けているという事実。
それはあまりにも、信じ難いフィクションのような現実だった。
「私、マルアは貴方達に保証します。我々の目的は、地球環境の改善である。これはあくまで貴方達知的生命体が長い時を経て築き上げてきた文化文明を破壊する事ではありません。例えるのならば、地球に蔓延る膿を吐き出させ、荒れた土地を潤わせ、荒れ狂う波風を鎮める。そんな、極めて単純で明解な事を、我々は目的としています」
それは続ける。
「我々はあくまで、平和を望んでいます。武力による交渉は大地を赤く染め上げ、環境を汚します。それは双方にとっても不都合な未来でしょう。それ故、我々はただ一つ、貴方達に求めます」
――我々に対して武力干渉をしない事を、求めます。
しかしその言葉が意味する事は、どう考えたって……
「本格的に我々が降り立つのは、今からちょうど二週間過ぎた後。国会議事堂にて私自らが赴き、今度は貴方達と実際に言葉を交わそうと思います――では」
貴方達に自然の加護がありますように。
……そのような言葉を最後に、完全に通信が途切れる。
再び流れ始めた下らないテレビ番組を見ようとする者は、残念ながら誰一人としていなかった。