TS転生美少女宇宙人、地球侵略を命じられる   作:スマルト星人

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それぞれの思惑

 一方その頃、クレア星『智礼院』では二人の男が向かい合っていた。

 その男の一人はマルアの上司であり、そしてもう片方の男はマルアを『智礼院』への就職を勧めた学校の教師、いわゆる恩師であった。

 

「それでは、既に彼女はスマルトに?」

「ええ、はい。見た目上では渋々といった感じでしたが、それでもやはり喜びの感情を隠しきれていないようでした」

「彼女は青く水のある文明球星に対して好奇心を抱いていましたからね。探していた場所へと赴く事が出来たのですから、喜ばしいとは思っている事でしょう」

 

 彼女が学生だった頃。

 たった一度だけ教師の彼に行った質問。

 

「水をたっぷりと蓄えた文明球星は見つかっているのですか?」

 

 その質問がまさか巡り巡って自分に返って来るとは、流石の彼女も思っていなかっただろう。

 因果応報と言えば因果応報であり、そして地球人にとってはある意味幸運だとも言える。

 少なくともマルアはスマルトに対して少なからず好意的な感情を抱いているし、もし仮に彼女以外のクレア星人が地球へと訪れた場合、初手から武力行使が行われていた可能性があったのだから。

 

「とはいえ、今回の案件は少々危険ではないのですか? スマルト星人は未だ野蛮で未熟な存在であると聞き及んでいます」

「彼女なら必ず成し遂げる事でしょう。齢18にして『全知』の称号を得、賢者へと至った彼女ならば」

 

 大自然に恵まれているクレア星だが、それでもいくつかの環境問題が発生する事がある。

 それらは突発的に発生し、そして解決する事が大抵困難であるが為に、それら地域は封鎖され『難題』として残る。

 そんな『難題』の一つを彼女はたった17歳にして解決して見せた。

 その功績から彼女には『全知』の称号が与えられ、そしてそのまま『智礼院』の職員、即ち賢者となったのだ。

 

「彼女ならばきっと、我々の想像を超える結果を持ち帰ってきてくれる事でしょう」

「ええ、その事を何より信じています、が。しかし彼等スマルト星人が愚かにも彼女を傷つけた場合」

 

 二人は頷く。

 

「その身をもってして、自らの愚かさを知る事となるでしょう」

 

 

  ■

 

 

 それはとある邸宅での一幕。

 不仲という訳ではないが、しかしその夫婦は長い事その邸宅で顔を合わせる事がなかった。

 夫である彼は非常に多忙であり、その事を知っていた妻はその事に対して不満を抱いた事は今までなかった。

 

「あなた、帰って来たのね……!」

 

 よれよれのスーツを身に纏った老年の夫を妻は迎え入れる。

 夫は一言で言えば、くたびれていた。

 その表情には生気というものが一切感じられず、身体は小さく震えている。

 

「すまない、洋子さん。今回は君に、お別れの挨拶をしに来た」

 

 単刀直入に彼は話し始める。

 

「君も知っているだろうが、クレア星の代表との会合において、私はこの国の代表として彼女と向かい合う事となる。そしてその結果がどうであろうと、私は間違いなく逆賊の汚名を被る事となるだろう」

「そんな、どうして……」

「既に我々は敗北しているんだ。圧倒的な技術力と文明力を有する彼等はきっと我々を隷属せんとするだろうし、私はこの国の人々を守る為に戦う選択を選ぶ訳にはいかない」

 

 はは、と乾いた笑いをする夫。

 

 ……この国が生き残る為に何をしたとしよう。

 戦争を行う訳にはいかない。

 そうした場合、日本どころか世界すべてがクレア星人と敵対関係になる。

 その引き金を引く訳にはいかない。

 それならば、隷属の道を選ぶか。

 それが一番確実な選択だ。

 しかしきっと人々はこの男を『敗北主義者』と呼ぶ事だろう。

 国内外から上がる非難の声が彼に集中する。

 人々の為に戦う道を選ばなかった臆病者、人々の為に戦う事から逃げた逃亡者。

 そして歴史にはそのように名を刻む事となるだろう。

 

 それでも良い、構わない。

 たった一人の命を投げ捨てる事で多数の命が救われるのならば、それが絶対に正しい選択だ。

 だから、これで良い。

 心残りと言えば、遺す事となる妻が心配だという事だが。

 

「既に私がこの国の礎として贄となる未来は決まっている。その時、君は絶対に私の味方になってはいけない。あいつは元よりそんな奴だったと、そう宣言するんだ」

「そんな、そんな事、出来ません!」

「私の事を思っているというのならば、私の為と思って、そうしてくれ。それが私の、唯一の願いだ」

 

 妻が絶句したのは夫の意思が固い事を察したから。

 だから彼女は涙を流し、唇を噛みながらその身体を抱きしめる。

 

 ……クレア星人と地球人との会合は、今からあと――

 

 

  ■

 

 

 兎に角戦争だけは回避しなくてはならない。

 私は前提条件を確認する。

 まず、地球を保護しなくてはならない。

 その為には絶対にこの星へのクレア星からの介入を私が完璧にコントロールしなくてはならないだろう。

 他の連中が来たら片手間に武力介入して終わらせようとする可能性がある。

 それは流石にヤバいので、兎に角すべて私がしなくてはならない。

 

 そんでもって、地球人との関係もコントロールしなくてはならない。

 一応現状私は文明的にも技術的にも進んでいる存在である事をアピールしている。

 彼等に「ざけんな抵抗すんぞ拳で」とかそんな意思を持たれたら最後、戦争になる。

 ぶっちゃけ負けるつもりはないが、しかしその情報が上へと漏れた場合、クレア星のガチ軍隊がやって来る可能性がある。

 そうなったらマジでお終いだ。

 侵略戦争待ったなしである。

 一応植民先で知的生命体を迫害したり奴隷にしたりする事は法で禁止されているけれども。

 だけど研究と称して人間達に何かする可能性は十分ある。

 

 ……地球人を守る為には、私がここで頑張らなくてはならない。

 そのための一歩。

 日本との交渉。

 ここで間違えれば、いろいろと終わる。

 頼むから恙なく終わってくれー。

 

 ああ、胃が痛い……

 

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