ブラック・ブレット -弱者と強者の境界線-   作:緑餅 +上新粉

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55.出立

「はっ、はっ…!」

 

「お兄さんっ、そこを右です」

 

「ああ!」

 

「樹万さん、体育館に向かってください。負傷者の治療はそこで行われています」

 

「了解!」

 

 

 

 走る。走る。歩いてなど到底いられなかった。

 

 目下の緊急を要する件は大方片付いた。であれば、己の足が次に向かう場所など『彼女』の居所以外にあるまい。

 

 俺は夏世とティナの案内を受けながら廃中学校の錆びついた門を駆け抜け、光の漏れる体育館へ飛び込む。

 途端に鼻を衝くのは、ツンと来る強いアルコールの匂い。そして耳を劈く怒号と哀哭の声。

 

 

「生き残ったのは、これぐらいの数しかいないか…!」

 

 

 自衛隊員は元の数が七千ほどあったというが、うち存命できたのが六十二。その三割ほどが四肢欠損や内臓損傷などの重傷を負い、残りの七割も骨折といった決して軽くはないダメージを受けた。

 

 また、例の砲台ガストレアは圧縮水銀を撃ち出すという奇怪な個体らしく、その砲撃に巻き込まれた人々は水銀中毒の諸症状を見せている。

 

 これらの結果から、先の戦闘で負傷した民警らと共に、要救護の自衛隊隊員をこの体育館の中に放り込んでも、辛うじておさまるくらいの数になってしまった。

 

 対して、敵であるガストレア軍団は自衛隊隊員の一部をガストレア化させて取り込み、更なる戦力増強を行っている。

 

 単純な頭数で評価するのなら、既にこちらの敗色は濃厚。このまま次戦に望めば、結果がどうなるかなど考えるまでもないことだ。

 

 ────分かっている。いずれにせよ、俺たちがやることには変わりない。

 

 俺は行き交う人の間を縫い、ティナと夏世に教えて貰った、中でも輪をかけて酷い重傷者のみが収容されている背の低いテントの中へ滑り込む。そして開口一番、その名を叫んだ。

 

 

「飛────ッ!?」

 

「患者の前で騒ぐな樹万くん。さもなくば、口が二つに増えるぞ?」

 

 

 出入口の脇に立っていたドクターからメスを喉元に突きつけられ、硬直する。手術用のものは切れ味が凄まじいので、無理に通ればざっくりと肉が裂けるだろう。

 

 居ること自体は察知していたが、まさかこういう形でお出迎えをされるとは。おかげで、彼女が自分の手を尽くした患者に対しては、ひどく神経質になってしまう性質であることを思い出せた。

 

 そうして落ち着いた俺を見ると、一つ溜息を吐いてから組んでいた腕を解き、血塗れの白衣を翻しながら手術台へと歩を向ける。そして、ストレッチャーの上に片手を置きながらこちらを振り返った。

 

 

「君がここに息せき切って飛び込んでくることは想定の範囲内ではあったが…流石の私も、コアラと化した幼女を二人も装備してくるとは思わなかったよ。ユーカリにでもなったつもりかい?」

 

「フフ、甘いですよドク。…私はフクロウです。コアラでなくとも、そしてユーカリでなくとも、止まり木であれば大抵何であろうと住処にできます」

 

「イルカは基本的に群れで行動する生物です。よって、私が樹万さんにしがみついているこの状態は正常と言えます。いっそ永遠にこのままでいいのでは?」

 

 

 俺は木でもなけりゃイルカでもないぞ、と正面で抱えるティナと背に乗る夏世の二人へ苦言を申し立てる。しかし、両者ともにさらりと笑顔で流して、柔らかくて甘い香りのする身体を押しつけてくる。

 

 いくら危険な単独行動をした挙句、(ガストレアの)血塗れで帰って来たからといって、心配の度合いがあまりにも振り切り過ぎている。蓮太郎との会話が終わった後はトイレにまでついて来るのだから始末に負えない。

 

 そんな背景など知る由もないドクターは、侮蔑の表情を隠しもせずに『両手が後ろに回らない程度にしておけよ』と、失礼な忠告を投げ寄越してから言葉を続ける。

 

 

「さて、最早疑いようもない小児性愛者である樹万くんの行く末はともかく、肝心の飛那ちゃんの容態だが。憚らずにいうなら────ここに運び込まれた時は、まさに『死に体』だったといっていい」

 

「…そう、ですよね。イニシエーターだとしても、あれは厳しい状態だった」

 

 

 そうだ。身体の四分一近くが失われたのだから、そんな結論がでるのも当然と言える。いくらガストレアウイルスの再生機能が備わっているとはいえ、あれほどの傷から生還した例は類を見ない。

 

 だが、それでもドクターなら。『神医』、室戸菫であれば、決定的と言えるほど離れてしまった命も、繋ぎとめてくれると信じたのだ。故に、俺はあの時出会った夏世に飛那を預けた。

 

 そんな一方的な俺の信頼を感じたのか、ドクターは人が悪そうな顔つきで口角を持ち上げる。そして、術時の明瞭な視界確保のためのLEDスタンドの灯火スイッチを押し込み、同時にアコーディオンカーテンを滑らした。

 

 

「全く、失礼も甚だしい。忘れたのかい樹万くん?私はね、天才なんだよ。…これくらいの不可能、可能にできなければ二つ名を帯びる資格など無いというものさ」

 

 

 吐き出される白い光で顕わになったのは、間違えようもない己の相棒の姿。身体の輪郭を見失うほど全身を染め上げていた赤色は全て取り払われ、綺麗だった肌を取り戻している。

 

 ただ――――失われた左手の付け根と左足首には、円形の金属部品のようなモノが嵌め込まれたいた。

 

 

「ドクター、飛那の左手足は?」

 

 

「臓器の修復分でウイルスの活動を終わらせなければ、飛那ちゃんの体内侵食率は絶望的な数値にまで上昇するだろう。残念だが、手足の傷は『これ』で塞ぐしかなかった」

 

 

「……」

 

 

 一命は、とりとめた。飛那は生きている。己の判断は誤りではなかった。

 

 そう思いたかったが、今の彼女の姿と、これまでの彼女の姿を重ねてしまうと、そんな言葉を免罪符とすることは到底できなかった。

 

 油断、慢心。そういったものが取り返しのつかない結末を連れてくることは、骨身にこたえるほど教え込まれたはずだったのに。

 

 そうして強い自責の念に沈み込む俺を引き揚げたのは、肩に置かれたドクターの手だった。

 

 

「完璧を追い求めていた時期は、私にもあった。けれどね、必ずどこかで妥協しなければならないところが出てくるのさ。それがどれほど大切なものであってもね」

 

「じゃあ、こんな有様が『善い終着点だった』と、そう思えとドクターは言いたいんですか?」

 

「そうさ。というかね、この点に関しては君の方が達者だと思うんだが、違うかい?」

 

 

 妥協、諦め。この先を望むのなら、何かを切り捨てなければならないという事実。

 

 俺は、何度もその考えの岐路に立った。総てを選び取って、総てを失くす可能性を含む道を辿るか。幾つかを選び取って、より確実に実を得る道を辿るか。…どちらを多く選んだかと問われれば、後者だ。

 

 理想論者を貫く事など無理な相談だった。誰かを救おうと手を伸ばせば、別の誰かが手中から滑り落ちる。自分の手のひらに収まりきらない数の人間を救おうとしたところで、その先にあるのは、分不相応な願いを持った己に対する報いのみだ。

 

 踏み込んだが最後、その結果を受け容れろと迫ってくるのが現実というもの。そして、同時に人間である限り、完璧な選択というものはできない。

 

 ふぅ、と息を吐く。許容はできないが、納得はできた。

 御託はいい。あとは戦時と同じように、ここからの最善を模索していこう。

 

 

「――――はぁ。ありがとうございます、ドクター。少し、頭が冷えました」

 

「ん、よかったよ。君は、もう私のようになってほしくはないからね」

 

 

 ドクターは小さく笑顔を零すと、もう一度だけ俺の肩を軽く叩いてから白衣を脱ぎ、近場の卓へ乱暴に放る。

 

 そして、テントの支柱に掛けてあった比較的綺麗な方の白衣を手に取ると、腕を通しながら大欠伸をかます。長丁場だったのだろう。

 

 缶コーヒーの一つでも差し入れようかと考えていたところ、いつの間にか飛那の下まで移動していたのか、ティナの信じられないものを見たかのような悲鳴が耳朶を打った。

 

 

「こ、これはッ?!ドク、飛那さんの手足についているものって、バラニウム義肢のコネクションパーツじゃないですか!」

 

「────?!」

 

 

 ティナが口にする冗談としては性質が悪すぎる。俺は泡を食って飛那の眠る手術台に取り付くと、その金属を検める。

 

 それは、紛れもないバラニウムだった。どうにも黒みがかっているなと思っていたが、遠目からだとLEDスタンドの強い白色光が反射し、どうも認識に齟齬ができてしまったようだ。

 

 背後に佇んでいた夏世は、どこか申し訳なさそうな顔で俯く。

 彼女は飛那の手術に立ち会っていたのだから、この事実は知っていた筈だが…恐らくは、言い出せなかったのだろう。無理もない話だ。

 

 そして、ティナの発言を聞いた当のドクターはと言えば、欠伸をする際に散らばった前髪を片手で退けてから向き直り、肩を竦めてみせた。

 

 

「やれやれ、見つかってしまったか。…そうだ。飛那ちゃんの腕と足についているのはね、蓮太郎君の義肢に使用している生体パーツの一種だよ。つまり、バラニウム義肢だ」

 

「それは、つまり────」

 

「必要な措置であったとはいえ、私は、私に科した掟を堂々と破り棄てた。全く、正義とは恐ろしいものだね、樹万くん。こうも容易く人間を盲目的にするのは、コイツを置いて他にはあるまいよ」

 

 

 ドクターの言葉をそのままとれば、飛那は機械化兵士に近い状態になっている、ということになる。あとは、露出しているパーツに蓮太郎と同様の義肢を取り付ければ、恐らく。

 

 いや、しかしだ。呪われた子どもたちを機械化兵士化するのは本来無謀な行いのはず。四賢人の一人であるエイン・ランドですら、『失敗』を何度も繰り返しているのだから。

 

 

「どうして、この方法を?」

 

「ああ。宿主が大きな傷を負ってしまっている場合だと、ウイルスの蘇生機能はより生命維持に直結する部位に集中する。その間であれば、バラニウム義肢と生体との神経接続を成功させる可能性は現実的な域にまで向上する」

 

「…」

 

「そう怖い顔をしないでくれ。現状の持ち合わせだと、飛那ちゃんの手足をどうにかするためには、この方法しかなかったんだ。目覚めた後のことも考えると、やはり四肢はあったほうが精神上いいと思ってね、多少は賭けの要素もあったが踏み切ったのさ」

 

 

 彼女は、機械化兵士を生み出していた過去を本気で悔いている。その信念を曲げたのは、助かる見込みがあったから、そして、患者の意図に沿っているから。その二点に尽きるだろう。

 

 ―――手術を間近で見ていた夏世は言っていた。彼女も等しく、戦場で戦う者であったと。

 

 舞台となる盤上は違えど、やることは互いに変わらない。誰かを救う、その点だけは。

 

 俺は夏世の頭に手を置き、努めて優しく動かす。恐る恐るという形で上げられた視線には、笑顔で返した。

 

 

「大丈夫だ、夏世。ドクターも、お前も間違ってない。これでいいんだ」

 

「ほんとう、に?」

 

「ああ。長年付き合って来た俺が保証する。飛那はきっと、目を覚ました後も変わらず笑ってくれるだろうさ」

 

 

 言いながらティナも同じく空いた片手で頭を撫で、落ち着かせる。彼女はランドから望まない機械化手術を受けているため、こういうことには一際敏感なのだろう。

 

 幸い、それからすぐに納得のいく結論を出せたか、ティナの強張った顔の大部分は解け、つり上がっていた肩もストンと落ちた。

 

 飛那はきっと、俺が戦い続ける限り、共に隣に立って戦うのだと、そう言うのだろう。

 

 なればこそ、彼女から剣を持つ手と、立ち上がる足を奪ってはならない。…そんな確信と呼べる予感が、俺の中にはあった。

 

 ────さぁ、悲嘆と絶望はもう沢山だ。

 飛那が目を覚ますころには、全て終わらせてしまおう。

 

 

「俺も、俺の役割を果たさないとな」

 

「ほう、蓮太郎君が団長を務める民警一派でかね?」

 

「…まぁ、そうですけど」

 

「私がメンバーの一人として加わっていたら、不安で夜も眠れんな」

 

 

 ああ、スマン蓮太郎。実のところ俺も不安だ。

 

 我堂団長のような立ち居振る舞いを求めるのは流石に高望みが過ぎるが、この状況────アルデバランの統率力、銀の槍の威力、この二つによって心を折られかけている民警らを奮起させるには、彼と同等かそれ以上の腕が求められる。

 

 こちらから援護は無理…いや、待て。アイツを上手く使えば、もしかしたら上手く事が運ぶかもしれない。幸い、当人の実力は民警であればよく理解させられている。

 ただ、うまく()()できるかは怪しいところであるが。

 

 

「それも問題としては大きなものだが、なにより遠距離攻撃を仕掛けるガストレア、『プレヤデス』が喫緊の処理すべき問題だろう」

 

「!…識別名が決まったんですか」

 

「ああ。金牛宮の中の中心星団、プレヤデス。JNSCのお歴々は、アルデバランと変わりない脅威と位置づけたらしいよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          ※※※※

 

 

 

 

 

 

 

 ────PM十時。里見蓮太郎と、その麾下であるアジュバントメンバーが拠点とする『センチュリーハイツホテル』近傍にて。

 

 

「プレヤデス、か」

 

 

 薙沢彰磨は、最低限の荷物をつめたウエストバッグを装着しながら頷く。バッグの中には携帯食料や応急治療用具などが詰め込まれており、武器は彼自身の持つ SIG SAUER P226 とサバイバルナイフ一本のみだ。

 

 一方、パートナーである布施翠は戦闘面での要であるため、動きを制限してしまう余計な荷物はつけていない。

 

 そんな彼らの前に並ぶのは、リーダーである里見蓮太郎を始めとするアジュバントの面々だ。一様に厳しい表情を浮かべており、粛々と準備を進める二人にどう言葉をかけるべきか悩んでいるようであった。

 

 ────しかし、ここに例外が一人。

 

 

「アルデバランが頭になっている以上、奴らは集団を形成しているだろう。道中の戦闘は少ないが…気は抜かないようにな」

 

「ああ。分かっている」

 

「あと、重要なのは足場だ。ウイルスの影響を受けた樹木は変質して根を大きくうねらせるからな。その場所で戦闘をしたら足をとられる。常に平坦な道を選ぶよう心掛けてくれ」 

 

「なるほど…」

 

 

 周囲のメンバーと違い、美ヶ月樹万は普段と変わらない雰囲気で彰磨と翠に助言を授けていた。

 

 いずれも目から鱗と言えるものばかりで、蓮太郎からは『まるで実際に歩いてきたみたいだな』という、ある種正鵠を射た発言まで飛び出した。それを聞いた樹万は苦笑いを零すにとどめる。

 

 そうして粗方の教授を受けた彰磨は一度バイザーを外し、前髪を掻き上げてから曇天を見上げ、大きく息を吐いてから目深に被り直した。

 

 

「…行くのか、彰磨兄ぃ」

 

「無論だ。目的を果たし、必ず翠と共に帰還する。必ずだ」

 

 

 蓮太郎の問いかけに間を置かずに答える彰磨。彼の隣に控える翠も、帽子の鍔を抑えながら遠慮がちに、しかしはっきりと頷いて見せた。

 

 森の中は闇に沈み切っている。それは、モノリス崩壊の際に巻き上がった煙が上空の雲とともに曇天を形成し、月明かりをほぼ完全に遮ってしまったからだ。

 

 幸い、雨は現在に至るまで降っておらず、足場がぬかるんだり、増水した河川に道を遮られるという事態は避けられるだろう。

 

 ───バラニウムを含んだ雨雲が降らす雨は、黒く変色しているのだという。それは世界各地で数件あるモノリス倒壊の際に発生し、人々の恐怖と不安を増長させ、幾度となく混乱を招いた。

 

 そんな黒い雨が無くとも、人間であれば根源的な恐怖を覚える深い暗闇が、この先にはどこまでも広がっている。

 

 

「里見、こちらは頼む。お前ならきっと、団長の任をこなせるだろう」

 

「…ああ、やれるだけやってやるつもりだ。彰磨兄ぃも、気をつけてな」

 

「分かっている」

 

 

 彰磨は蓮太郎と拳を突き合わせ、互いの負う責務に全力を尽くすことを誓う。己の行動が、窮地を打開する術の発見に通じると信じて。

 

 拳を引っ込めた彰磨は、続けてアジュバント全員の顔を見回してから瞑目、白亜のコートを翻しながら踵を返す。

 

 

「────行くぞ」

 

 

 暗闇へ、躊躇いもせずに歩みを進めていく。月明かりのない夜は一歩ごと彼らの姿を呑みこんでいき、瞬く間に黒く塗り潰された。

 

 そして、今まさにその背が完全に闇へ溶け消えようとする寸前、制止を求める声が掛けられる。

 

 

「ストップだ、彰磨!これを持ってけ!」

 

「む――――?っと。これは、バラニウムで作った、十字のペンダント?」

 

「下げて置いてくれ!もしかしたら、役に立つかもしれん!」

 

「意図は掴めないが…了解した!」

 

 

 投げ寄越した美ヶ月樹万に片手を挙げて応えながら、彰磨と翠は今度こそ森の中に消える。

 間もなく、一定の間隔で響いていた足音も、風に揺れる梢が葉を擦らせる音で掻き消された。

 

 そして、それを見計らったかのように飴色のサングラスをかけた大男…片桐玉樹が樹万に向かって問いかけた。

 

 

「なぁ旦那。確かに、ガストレアどもの一部はバラけてるのかもしれねぇが、本陣に踏み込むんだったら百、二百の差し引きもそう変わらんだろ?野郎が強いのは認めるが、一度に相手どれる限度は良くて十かそこらだ。つまりは何がいいてぇかと言うとだな…死ぬだろ」

 

「まぁ、確かにな。ターゲットが外れにいるならいいが、十中八九本丸だし。死ぬな」

 

 

 まさか肯定が返されるとは思ってもみなかったのか、玉樹は絶句して固まってしまう。それはアジュバントのメンバーも同じだったようで、驚愕の表情を浮かべていた。

 

 その衝撃からいち早く立ち直り、至極真っ当な怒りとして発露させたのは、里見蓮太郎だった。

 

 彼は樹万の胸倉を掴み上げ、至近距離でにらみつける。許容値を超えた感情の波を表すかのように奥歯がカチカチと噛み鳴らされていた。

 

 

「ざっけんなよテメェ…!じゃあ何のために彰磨兄ぃを行かせたってんだッ!」

 

「落ち着け蓮太郎。確かにこのままじゃ危険だが、何とかなるって根拠はある」

 

「クソッ!自分一人で知ったような顔してんじゃねぇよ!説明しやがれ!」

 

 

 蓮太郎に胸倉を掴まれたまま、あくまでも飄々とした態度を貫く樹万は、激昂する彼に対し、こう答えた。

 

 

「『嵐』を味方に付ける。危険は承知だが、彰磨ならきっと御眼鏡に適うはずだ」

 




蓮太郎怒ってばっかでストレスがマッハ。
すまんな。オリ主はソロプレイが長いから説明が不足しがちなんだ。

────次回、ヤベェ奴が登場。

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