私歓喜で迎える11話です。
どうぞ!!
「なんかよくわからないけど、加勢するわ!」
マインがセリューに銃口を向けながらダイアに言った。
「余計なことをするな!邪魔するならお前から殺すぞ……」
義姉の仇は絶対自分で取る。
そう心に決めているダイアにはこの提案は邪魔なものでしかなかった。
なんかこんなやり取りを前にもした気がしたのだが今のダイアにはさして問題ではない。
「マイン……私はまだ…体が…動かないので」
このままでは戦闘に発展しかけないのでシェーレが仲介に入る。
もしかしたら助けてもらった恩義を感じているのかもしれない。
……実際のところ、コロを見つけた瞬間にダイアがカッとなって蹴り飛ばしただけなので、彼に彼女を助けようという意図はなかった、それどころか彼女が襲われていたということに気付いていたのかさえ怪しいところだ。
「……解ったわ。この女はあんたに任せてあげる。だからさっさと殺しちゃいなさい」
シェーレの言葉にマインが同意し、銃口を下してシェーレのもとに移動した。
決してダイアの眼光にビビったわけではない。
「はいはい、言われないでもそのつもりだよ!!≪エアリアル≫!!!!」
邪魔がされないことに安心したのか、相手の方に向き直り能力解放。
ダイアの身体が風を纏う。
「ん?その帝具見たことがあるぞ……お前は2年前の村の悪か!」
その動作と右手にあるものでセリューは彼があの時の少年だということを思い出したらしい。
2年前。
今ではその言葉を聞くだけでダイアは少しイラついてくるほどに嫌いな単語だ。
「……ああ、そうだよ。お前も殺して俺は2人のかたき討ちをとりあえず一段落させる」
忌々しげに小さく……しかし何よりも力ずよく吐き捨てた。
「も……?お前が隊長を殺したのか。……絶対に断罪してやる!」
恩師を殺した人間が目の前に現れたのだ。
それはセリューも怒りはする。
しかしそれはダイアも同じ……いや、それ以上だった。
「黙れ!お前が殺した姉さんの仇、取らせてもらうぞ、セリュー・ユビキタス!!」
「コロ、≪捕食≫!」
命令されたとおりにコロはダイアに向かって跳躍をした。
それをダイアは真正面から殴りつける。
手はそのままコロの口の中に吸い込まれ、その一瞬後にコロを吹き飛ばした。
そのままコロを追いかけて腰の剣を取りだして斬りかかる。
だがしかし、コロもやられてばかりではない。
狂化されたため身体能力の全てが向上しているので格闘術の様な動きで正拳突きを繰り出すした。
そうして剣と拳は互いにぶつかり合って双方を大きく吹き飛ばす。
その間セリューは何度か銃弾を撃ちだしてはいるが、風の膜に阻まれてダイアには全くと言っていいほど届いていなかった。
「ああ、もうっ、痛ぇな!?なんか強くねーか、あの帝具……」
ダイアの右手には一筋の血が流れていた。
すぐにそこには一層濃い風の膜が形成されて止血が始まる。
コロの刃が風の膜を上回ったという証拠だった。
そのことが彼には信じられなかったのだろう。
「気を付けてください。彼女は奥の手を使用しています!」
そんな声が後ろから聞こえてくる。
シェーレが少し戸惑っているようすのダイアに声をかけたのだ。
「なるほど……確か≪ヘカトンケイル≫の奥の手は狂化だったな」
それならば今の強さにも納得ができる。
そう思ったのかダイアは再び左手を右手の
「だったら俺も本気でやる。≪
ダイアが奥の手を使用しようとした瞬間に、警備隊が押し寄せてきた。
ダイアとしてはこのままセリューを殺してしまいたい。
だが、そんなことをすれば死んでしまうリスクが高くなる。
それは絶対にだめだった。
「ほんと邪魔だな!てめえらから殺すか……」
にらみを利かせて今来た警備隊の方を見た。
あまりの剣幕に少したじろぐ。
「そんなことやらせると思ってるのか!!コロ!」
だがやはり、彼女とコロがいる限りそれの実行も困難だ。
「……やっぱりこうなるんだな、仕方ねぇ。今日のところは帰るとするか……」
「逃がさんぞ、オーガ隊長の仇だ!」
「お前が仇とか何とか言ってんじゃねーよ!!≪全開放≫」
莫大な風がダイアを中心に巻き起こる。
≪全解放≫……文字通り纏っている風を周囲に放出する≪解放≫の上位版だ。
だがこの技には一つ弱点があって使用すると3分の間纏うことのできる風の量が激減してしまう。
……ちなみにこれは奥の手ではない。
「じゃあな、命日が伸びて幸運だったな、
風の轟音で聞こえないと思ったが自己満足のつもりで彼はセリューに吐き捨てる。
「――――――は―――!?――――――ない――――絶――――――悪――は――――殺―――――――――」
何かを叫んでいたようだが、それもやはり風に打ち消されて聞くことはできなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ、アンタ滅茶苦茶やるわね」
たまたま同じ方向に逃げたらしく、マインはダイアにそう言った。
「悪いな。俺は死ぬわけにはいかないんだ。どんなことをしてもな」
二人との約束だから……
そうは言わなかった。
マインはダイアがあまり言いたくないことだと瞬時に察したのか別の話題を切り出した。
こういうところは流石裏方稼業と言ったところか、鋭い。
「あんたの帝具。とんでもないわね……アカメの村雨レベルで強いんじゃない?」
「そうですね、直接戦わせて見ないと解らない部分もありますが……」
シェーレが話しに入ってきて、物騒なことを言い出す。
まだ体があまり動かないのかここまでの道はマインが肩を貸していた。
「俺はその村雨って帝具のことよく知らないんだけど……」
若干顔をひきつらせながら話に入れない居たたまれなさを彼女たちにアピールする。
「まぁいいわ、私はマイン、んでこっちがシェーレね」
その雰囲気を察してか、それともたまたまか、彼女は急に自己紹介を始める。
いや、この流れで自己紹介と言うのも些か変であるのだが……
「ああ、俺はダイアだ」
名前を聞いた瞬間、シェーレとマインはやはりといった納得顔を作る。
「そうですか。やっぱりあなたがダイアさんなんですね」
「やっぱり?」
「はい、タツミと言う名前をご存知でしょうか?」
ダイアはオーガを殺った時にいたやつがそんな名前だったのを何とか思い出す。
「あいつか……。じゃあお前らがナイトレイドってやつだな」
二人ともうなずく。
だがしかし、そのうち一人はとても不機嫌そうだ。
「面倒くさいけど、ついてきなさい。ボスがあんたにあってみたいって言ってたわ」
本当にめんどくさそうに言う必要はないんじゃないか?
ダイアは心の中で思う。
もちろん口にして、口論のもとを作るような真似もしない。
「………ああ、解った。俺もお願いしたいことがあるしな」
「意外と素直なのね、アンタ」
だがダイアの考えはマインにとって少し気がかりなものになってしまったようだ。
「おいおい、さっき自己紹介はしたはずだぞ」
話を逸らそうと茶目っ気たっぷりにおどけてみる。
「……意外と性格悪いのね、ダイア」
「いえいえ、マインほどではないよ」
今度は本音が情景反射で出てしまったようだ。
「何だとぉ!」
「マイン、そろそろ帰らなければいけない時間ですよ」
見るに見かねたのかシェーレが制止の声をかける。
「解ってるわよ!あとで覚えておきなさいよ」
「はいはい、覚えていたらな」
「だから覚えてなさい!!」
最初は無駄な口論を起こさないために考えていたのにどうしてこうなったのだろうか?
ダイアの疑問は尽きなかった。
初のランキング入りです。
皆さんありがとうございました。
くださる感想もとても励みになります。
まだまだ漫画で言うと2巻ですね。
途中(……というかこれからほとんど)オリジナルを入れるのでどうか最後までお付き合いください。
誤字脱字、感想、意見お待ちしています。