ちょっと文字数が多くなってしまいました。
ではどうぞ。
「急所は外してあげるね?その代わりすごく痛いよ?」
そう言ってロロナは持っていた箸などをおもむろに投げ出した。
手首だけを使い軽く投げられたそれらは、そのフォームからは信じられない速度でセリューを襲う。
エアリアルは自分とそして
触れつづけていれば常に、たとえ離したとしても数十秒間その風は維持される。
「っく!?コロ!」
生物型帝具≪ヘカトンケイル≫はセリューの前に出て盾になる。
しかし、弾丸は無数にあり、そして何よりも文字通り風の速度で襲いかかる。
全て処理できるはずはないのだ。
二発ほど右足に被弾する。
「これで身動きができませんよね?どうします?そのワンちゃんは私と相性悪いようですし?」
「どうするか?……そんなこと決まっている、私は悪を滅ぼす!正義は絶対屈しない」
彼女の正義はどこにあるのだろうか?
ロロエの優位によって少し冷静になって来たダイアとケイはそう思わずにはいられなかった。
「あーあ、おねーちゃんは別に悪じゃないのになー。でも火の粉を振り払うのに文句を言う人はいないよね?」
ロロエが一歩踏み出す。
それだけでそこにあるもの全てが風圧によってがたがたと震える。
「吹っ飛びなさい!」
ただ歩き、拳を振るう。
それだけの行動なのに起った現象は桁違い。
セリューを吹き飛ばし、コロを吹き飛ばし、屋根に穴をあけ、そして家の中はぐちゃぐちゃ。
まさに嵐が過ぎ去ったあとだった。
「おい、このガキどもと引き換えだ。さっさと帝具をよこせ」
その声と同時にダイアは背中に大きな衝撃を感じ、前に吹き飛ばされた。
「誰だ!?」
思わず叫んだ。
そこで彼が目にしたのは、セリューと一緒にいた男がケイに拳銃を押しつけているところだった。
「ったく、あの馬鹿が先走りするから、あいつは強いが情緒不安定なところがあるからな……」
「……」
ケイは黙って歯を食いしばっている。
きっとそうしていないと悲鳴をあげてしまうからなのだろう。
16歳の少年には銃を突きつけられて冷静に行動することなど、当たり前のことだが不可能だ。
「おい!ケイを離せ、人質なんて卑怯だろ!」
「そんなことなぞ知らん!こっちはこんな辺境にまでやってきてんだ。……おっと、変なこと考えるなよ。この距離じゃあ銃弾のが早いのは解りきっているだろ」
「……解った。その代わり私が腕からこれを外した時点でケイを開放しなさい」
「ああ、俺としちゃ、帝具さえ手に入れば文句はねぇ」
……俺はどうすればいい、姉ちゃんが親の形見を手放そうとしてんだぞ!それも俺たちのせいで。昨日誓ったばかりじゃないか、強くなるって!
そんな思いとは裏腹に、彼の身体は動こうとしない。
とても大事にしていた腕輪。
昔、何度も何度も付けさせてくれとお願いしたが一度も付けさせてもらえなかった。
それを彼女の腕から外れるのを見ると自然と歯ぎしりが生まれた。
「外したわ。さっさとケイを開放して」
「ああ、約束は守ろ「コロ!」」
「え……!?」
バスン、そんな鈍い音とともに、ロロエの右肩から手首までが消えた。
カランカラン、音を立てて帝具が転がる。
一面に舞う血しぶき、しかしその帝具だけはその特性からか風を纏っており、いつまでもきれいなままだった。
「あ!隊長、こいつら皇帝様の命令を無視した悪ですよ」
血に濡れてゆがんだ笑顔のままセリューは男に話しかける。
一方で訳が分からない。
それはロロエも同じでおびただしい量の血しぶきを出しながらも、ポカンとしている。
「……そうか、それは粛清しないといけないな」
ドン!
今度はケイの胸が赤く染まった。
もともと約束を守る気などさらさらなかったのだろう。
……もうわけがわからない、これは夢だ、これは夢だ、コレハユメダ……
「あ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
そのことによりロロエの止まっていた時間が動き出した。
しかし、血を流し過ぎてしまったのかそのまま倒れる。
……夢にしろ現実にしろ、二人を殺すなんてことは許さない!
震える体にダイヤは鞭を撃った。
「やはり悪は滅びるんです」
「ああ、そうだな。正義のもとにな」
ニター、と笑った男の顔は悪そのものだった。
ダイアは右手をのばす。
必死に恐怖と闘いながら。
もっと大きな恐怖と闘う力を得るために。
≪三人の誓い≫第3条、第17条
二人を信じて、そして何より己を信じろ。
自分の力を知れ。
三人の誓いの中でも初期に定められた50のうちの2つ。
今、ダイアを動かしているのはこの言葉と、何よりも怒りだ。
自分ではこの二人には勝てないことなど知っている。
しかし、この二人は絶対許せない。
だからこそ彼は手を伸ばす。
そこにある安易な力を求めて。
「疾風迅雷≪エアリアル≫‼」
己の最愛の人の一人、ロロエの宝物をしっかりと握りしめ、自分の出せる最大の声で叫ぶ。
声に呼応したように、周囲の大気がダイアの周りで荒れ狂いだした。
「馬鹿だな、帝具は適合しないと拒絶反応がおこる、勝手に自滅しな」
「ば、馬鹿は……ッグハ!……あなたです。わ、私の弟を甘く見ないでください!」
「うるさい!」
瀕死のロロエの腹に銃弾を浴びせる。
脳髄を狙わないのは、すぐに殺さないためだろう。
しかし同時に風は収束した。
エアリアルがダイヤに適応したことの証明だ。
「……ダイア!そ……の力で…逃げなさい。」
「!?、何言ってんの、姉さん!」
「だ…い、さん…じゅ…なな条」
37条
何があっても生き残りなさい、たとえもし、だれかが死んでも生き続けなさい。
ダイアはこの項目が嫌いだった。
誰かが死ぬなんてことは考えたくなかったのだ。
そして今、ダイヤは解らない。
どうすればいいのか。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
収束したはずの風が一斉に解き放たれる。
そこにいた4人だけでなく近くの家までまとめて吹き飛ばした。
上空近くにまで吹き飛ばされたロロエとケイを回収して、風のようにダイアは山の中へと消えていった。
「姉さん!ケイ!」
必死になって呼び掛ける。
しかしケイのほうからは返事どころか反応すらしていない。
心臓を撃ち抜かれての即死だ。
ロロエのほうに限っては、はぁはぁ、と息をするだけで精一杯のようだ。
「待ってて、姉さん、血を止めるから」
風の膜を展開し、血を止める。
しかし、初めての帝具で慣れていないのかすぐに霧散してしまう。
「だ…い丈夫だ…よ、もう…わ…たしは…もたない…から」
「そんなことない!ケイだって今は寝てるだけですぐ目を覚ますよ。まったくねぼすけだよなあいつ。お、おき…ったら、ぶんなっぐってやる…んだ…大事なと…きにっ…なにしてんっだって」
……なんで俺は泣いてるんだ。誰も死んでないから泣く必要なんてないじゃないか。ああ、これはうれし涙か。そうに違いない。全員助かったから安してんだな、きっと
「だ…がら…「ダイア」」
ロロエは満足に動かないからだにもかかわらず、左手を寝たまんま、傍らに座っているダイアの背中にまわした。
「ケ…イは死ん…だよ。私も、もう死ん…じゃう…んだ」
そのままダイヤを胸に抱き寄せた
「うぞだ。姉ざんは、お姉ぢゃんは死なない!……だって死んだごとないじゃないが!」
「そうだ…ね、でもね、人は…一度しか、い…きることは…でき…ないし、死ぬこ…ともできな…いんだよ」
「いやだ、いやだ、いやぁぁぁぁ」
「ふが…いな…いお姉ちゃん…でご…めんね、二人のこと………大好きだったよ」
そのままロロエはダイアのおでこの唇を添えた。
子供のころよくやってくれたこと。
これをしてほしいがために、この兄弟はよく家の手伝いをしたものだった。
そしてあらんかぎりの力でほほ笑んだ。
しゃべることもままならない彼女が見せた笑顔は、儚くも……いや、儚いからこそ最高に美しいものだった。
「だ…から、生きてね。私のさ…いあい…のおと…うと」
「おねぇぇぇぢゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
これが、彼の行動原理。
帝国を憎み、壊そうとする彼の
と、言うわけで過去編が終了しました。
ぶっちゃけエアリアルの能力を強くしすぎた感があります。
反省はしていませんが……
誤字脱字、感想、その他意見を随時募集中なので気軽にお願いします。