そんな無駄話を挟んで第4話です。どうぞ
「あれからもう2年経ったよ、姉さん、ケイ」
ダイアたちの住んでいた町から数キロ離れた山の中。
そこにそれはあった。
2人の墓
「おれ、この2年で強くなったよ。特級危険種だって余裕で倒せるし、あ、そうそう、一度だけだけど超級危険種も倒したんだ。まぁその時は流石に骨折しちゃったけど」
ダイアはこのだれにも見つからないような山奥に、2人の墓を建ててから一度も顔を見せに来ていなかった。
弱いままの姿を彼らに見せたくなかったなのかもしれない。
彼はこの2年間、一人で山にこもって腕を磨いていたのだ。
「姉さんたちは俺が今からやることをきっと必死になって止めたと思う。でもさ、≪三人の誓い≫第6条、己の正義に従え、だろ。あの事件の後考えたんだ。正義って何なのか」
強くなって堂々と顔を見せ、ぽつぽつと今は亡き二人に話しかける。
「正義ってのは結局、信じているものなんだって俺は思ったよ。だからさ」
彼の顔は正しい答えを見つけたというよりも、開き直ってしまったかのような清々しさがあった。
「俺の正義ってのはもう過去にしかないんだと思う」
こぼれるように笑顔になる。
「俺は壊すよ。俺から
顔は笑顔のままだ。
しかし、目には水滴がたまっていた。
「ほら、姉さん。ケイ。俺は今から復讐のために全てを壊すんだよ」
二人の墓を涙で濡らさないように必死で上を向く。
「止めてよ。止めてくれよ、ケイ、お姉ちゃん……」
ダイアの涙は止まらない。
彼は危険種に両親を殺され、帝国の人間に姉と弟を殺された。
しかし、両親にしろ姉、弟にしろ一緒に育ってきた環境は悪くなく、むしろ彼の生活はとても真っ当なものだった。
だからこそ狂気に染まらない。
染まりきることができずに救いを求めてこんな山奥にまで来たのかもしれない。
ひとしきり泣いた後、彼は歩き始めた。
大きな決意を持って、全ての悪を狩るために。
「かたき討ちをするつもりなのか?」
山を抜けようというところで不意に声が聞こえてきた。
「…おっちゃん」
声の方向にいたのはエンジだ。
狩りの途中でダイアのことを見つけたのか、服のいたるところに危険種のものとみられる血痕が付いている。
エンジの風貌は2年前と全く変わってなく、とても懐かしく感じた。
だが、再開を喜ぶような雰囲気ではないことをダイアは理解している。
「そんなことしてロロエとケイが喜ぶとでも思ってるのか!」
……昔、よくこんな感じで叱ってくれた。
血のつながりも無い彼ら兄弟を、真剣に正しい方向柄導いてくれたのはこの男だった。
そして、だからこそこの問いに対してもダイアは真剣に答える。
そんなことわかりきっている。
彼はよどみなく言い切った。
「喜ばないよ……断言できる」
「だったらな……」
エンジの言葉を遮り、ダイアは続けた。
「知ってる?おっちゃん。死んだら感情なんてなくなるんだよ?」
「………………」
俺はそういうことを言ってるんじゃない!エンジは怒鳴ろうとした。
しかし、ダイアの纏っている雰囲気が持つ妙な説得力のせいでそれを行うことなどできなかった。
「だから二人のためにするんじゃないんだ。俺はただ自分のためにこの国をつぶすって言ってるんだよ」
「……お前ひとりに何ができる?」
「できるできないじゃなくて、俺がやりたいからやるんだ」
「ふざけるな!お前まで死ぬことなんてない、考え直せ!どうしても行くって言うなら力ずくで止める、お前の姉と弟の尊厳を保つためにも!」
剣に手をかける。
帝具を持っていないにもかかわらず、帝具所有者のロロエと同格の強さを持つと言われたエンジが……
「ワリぃな、おっちゃん。おっちゃんじゃ俺は止められねぇ。俺を止めることのできる人間はもういないんだ」
ダイアも右手の
とても愛おしそうに、そしてとても悲しそうに……
「安心しろ、気絶する程度にしてやる」
「じゃあ俺もそれぐらいにするね、……エアリアル!!」
風を纏う。
この帝具を使うのは超級危険種討伐以来、久しぶりだった。
理由は簡単で、帝具に頼り過ぎると当たり前ながら弱体化してしまう。
だからダイアは基本的にピンチにならない限り帝具の使用を控えていたのだ。
「この国腐ってる。だけどな一番大事なのは命だ。……もう一度言う、考え直せダイア!」
「2年間、考え直し続けた結果、こうなったんだ。もうその必要はない!」
「だったら行くぜ、肉体言語でのお話だ!」
一瞬
話に気を取られたとしても、ほんの一瞬の出来事だった。
エンジは持っていた剣をダイアに向けて振り下ろした、ただそれだけだ。
それだけでダイアは吹き飛ばされて木に背中をぶつけるという状況に陥った。
……エアリアルを展開していたためダメージはほとんどなかったが。
「……っく!?な、なん…」
そう、エアリアルを展開させていたのに
普通だったら剣のほうが風圧に負けて弾き飛ばされているはずだ。
「あ?そんなの簡単だろ。風の壁があるっていうならそいつごと斬ってやればいいんだろ?」
言っていることが無茶苦茶だ
かなりの強度を誇るエアリアルの膜を纏った人間を弾き飛ばすなんて芸当はそれこそ、数トンのトラックを弾き飛ばすのと変わらない力が必要なのだ。
この状況を冷静に理解して、ダイアは自分が大きな思い違いをしていることに気付いた。
相手は自分が最強だと思っていた姉さんと同じ強さなのだということを。
「ごめん、俺、おっちゃんのこと甘く見てた……と言うかたぶんうぬぼれてたんだと思う。だから本気で行くよ」
ダイアも剣を抜く。
そこもやはり風が覆い尽くした。
「死なないように頑張ってね」
「まだ成人もしてないような若造には負ねーよ!」
何の変哲もないエンジの剣と
だが、やはりエンジの剣は風圧によってはじけ飛ぶことなどなかった。
「ダイア!こんなの使い古された言葉かもしれないがな……復讐からは何も生まれない!」
剣まで抜いてもやはり説得をあきらめられないエンジはダイアに呼び掛ける。
しかし、もはやダイアの意志を曲げることなど出来やしなかった。
「何も生まれないとしても、今あるものをぶっ壊せるならそれで十分だ。だから俺は行くよ。エアリアル≪解放≫」
その一言を鍵として彼の纏っていた空気は一斉に解放される。
半径10メートル近くの木は全てはじけ飛び、エンジも大きく後ろに後退をしてバランスを崩した。
……こんな勝ち方卑怯かもしれない、でも俺には止まることのできない動機があるんだ。帝具がなかったら本当ぼろ負けだったよ。
そしてそのままダイアは右手に持った剣を振り上げる。
エンジはバランスを崩しながらもしっかりと頭を守った。
「じゃあね、
がら空きになった胴体に
エンジを安全そうな場所に横たえるとダイアは持っていた危険種からの採取物を傍らに置き、静かにたちあがる。
きっとせめてもの償いのつもりなのだろう。
「俺、おっちゃんのことも姉さんとケイの次に好きだったよ」
それは彼がエンジに向けて言った最後の言葉となった。
腐りきった帝国の本拠地、帝都
全ての元凶を狩るために……。
後ろ髪をひかれる思いを打ち消すようにダイアは光らずよく歩いた。
たった一人の≪復讐者≫として
いまだにダイアがコロした人も数0
……すいません、帝都に行ったらちゃんとするんでもう少し多めに見て下さい。
誤字脱字、感想、意見などお待ちしています。