アカメが斬る!サイコーーーーー!
「ここか、予想はしてたけどやっぱでかいな」
徒歩で丸2日
ダイアは道中、危険種を狩り食料として歩き続けることによって、帝都に到着した。
出てきたのはどれも2級以下でダイアには退屈すぎた旅だったのだが。
「まずはあの二人だ……」
二人と言うのはもちろん、セリューともう一人いた男だ。
あの二人だけは自分の手で殺さないと気が済まない。
そのためには情報収集。
情報屋を探すための聞き込み。
だからと言ってむやみに情報屋を知らないか?と聞いて回るのも愚策だろう。
そんなこんなで彼はとりあえず、拠点となる宿を探すことにした。
「おう、兄ちゃん!金貸してくれねーか?」
そんな声が聞こえたのは帝都のメインストリートに入る直前の路地だ。
初めて入る帝都の大通りだけに少しわくわくしていたので不快感をあらわにした。
ちなみにダイアが田舎者だからと言って流石に第一声から、こいつらが金を脅し取ろうとしていることは容易に理解できた。
「うるさい黙れ!」
イラついた。
ダイアは大いにイラついた。
金を取ろうとする悪党のことを許せないと思ったのではない。
自分が弱いと思われたことに怒っているわけではない。
ただ単純に
(ついでにわくわく感に水を差されため)
だがそれを只の強がりと取ったらしくチンピラ達はゴキゴキと手の骨を鳴らした。
「あ?こっちは3人いるんだぞちょーし乗ってっと……」
ボコッ!ドガッ!ゴシャーー!
「「「ちょ―しのってすんませんでした!!!!」」」
秒殺……いや、殺してはいないが、
危険種狩りにひとりで行ける者がカモにされるほど、この街のチンピラは強くなかったらしい。
「おう、謝ることはいいことだな。姉さんも言ってたし」
先ほどまでのイラつきは、チンピラどものきれいな顔を犠牲にしてきれいさっぱり消え失せた。
おかげですごくいい笑顔だ。
しかしその変りように顔面がつぶれたトマトみたいになっているチンピラ達はついていけないのか訳のわからない(物理的にも精神的にも)顔をしている。
「…え?あ、は、はい。そ、そっすね。あの、わたくし達はこれで失礼してもよろしいでしょうか?」
まさにかませ犬みたいな登場をしてしまったが、これ以上ここには居たくないのだろう、慣れない敬語を使いチンピラはダイアの様子をうかがった。
「ちょっと待て」
「は、はい。そうっすよね。こんなこととしてこのまま帰るっていうのはやっぱり無礼ってやつですよね……でも俺たち金はないんです、だか」
何を勘違いしたのか、急にチンピラの一人が平謝りする。
「いや、そんなことじゃなくてだな。なんかいい宿を知らないか?値段は気にしなくていい、ついでに言うと情報屋について知っていたら何か教えてくれ」
「……へ?」
予想外の質問だったらしい。
まぁよく考えたらそうだろう。
誰が、カツアゲをしようとした相手に返り討ちにされて、宿屋はどこか?と聞かれるなんてことを想像できようか。
それだったらまだ、返り討ちにされてそのまま殺される方が想像しやすいだろう。
「知らないのか?」
「……し、知ってます。これは噂なんですけど情報屋もやっている宿屋を知ってます!」
なんかよくわからないがこれ以上ぼこられないで済むかもしれないということは理解できたのか、さっきから黙っていたチンピラが急に口を開いた。
しかし、今の情報がほんとうだとしたら面白い。
宿屋の情報だけでなく、あまり期待していなかった情報屋の情報も入り、しかもそれが同じ場所だというのだ。
「≪ユートピア≫っていう宿屋なんですけど、宿泊料金に上乗せすることで情報を教えてくれるらしいんですよ」
「本当か!」
疑い半分、期待半分。
「や、宿屋の方は本当です。ですけど情報屋のほうはさっきも言った通り噂話になっちまいます」
とりあえず言ってみる価値はありそうだ。
行ってみてダメだったら情報屋のほうはまた新しく探せばいい。
「……そうか、ありがとよ!これは少ないが礼だと思ってくれ」
そう言って金の入った小さな袋を中身ごと放ってその場を後にした。
≪3人の誓い≫第46条
恩を受けたら必ず恩で返せ。
一人になった今でも彼は≪3人の誓い≫を熱心に守っていた。
「…………なんだったんだ?」
チンピラ達は当初の目的だった金が手に入った喜びよりも、さっきまで目の前にいた男への理解が追い付かず、まるで狐につままれたような気持ちで3分近く立ち尽くしていた。
宿屋≪ユートピア≫
木造2階建てで部屋数は6
しかしあまり儲かっていないのか、その半分が空室だった。
「とりあえず10泊ほど取りたいんだけど大丈夫?」
「はい、開いていますよ。朝食と夕食のほうはどうなさいますか?」
受け答えしてくれたのは40代ぐらいになるであろう男性だった。
「お願します」
ダイアは一般男性と比べて料理は得意な方だ。
……と、言うのも自らの姉が壊滅的な料理音痴であった為、そうならざるを得なかった部分もあることにはあるだろうが。
まぁなんにせよ、台所も無いだろうし、何よりも情報を集め、行動するために時間を使わなければいけないためこの申し出はとてもありがたいものだった。
そうして、宿泊の手続きをすましたところで、ダイアは一番聞きたかったことを聞くために周囲の様子をうかがった。
向かい合い、少し話してみてわかったのだがこの男が只の宿屋のオーナーであるとは思えないのだ。
なんというか、エンジの似たようなにおいをダイアはこの男から感じ取っていた。
そうして目線がない事を確認するとダイアは思い切って聞いてみた。
「情報屋、片目がつぶれていて『隊長』と呼ばれる身分の奴を知っているか?」
とりあえず、男のほうに的を絞る。
セリューのほうは帝具を持っているのでいきなり勝負を挑むにしては相手が悪い。
戦いの回数なら負けていない自信はあってもダイアの場合は危険種が相手の場合がほとんどだ。
これでは同じ帝具使いでも対人戦闘に優れている軍人と闘うのは大きな危険が伴うだろう。
それならば、まだ帝具を持っていなさそうだった男のほうを狙った方がいい。
だがまぁ、急に質問を投げつけてしまったのだが、これでこの男が情報屋でなかったらいい笑い物である。
そんなダイアの心中とは裏腹にこの男はなんのよどみも無く言い放った。
「それはきっとオーガ様のことです」
「オーガ?」
本当に情報屋であったことに安堵したが顔に出さないように気をつけながらそのまま質問を重ねた。
そうすると情報屋はより詳しく弟の仇についての情報を離してくれた。
いわく、かなりの剣の使い手で≪鬼のオーガ≫と呼ばれ恐れられている。
いわく、無実の人を犯罪人に仕立て上げ処刑を繰り返している。
そして最後に、姉の仇であるセリューの師でもあるらしかった。
「そいつはいつもどこにいるんだ?」
オーガを狩るためのプランを練るために詳しい情報を聞き出す。
「部下の多くと一緒に詰め所にいますね。休日は酒飲みによく街に出るようですが……」
と、なると勤務日に奇襲をかけることは無理だということか。
狙うとしたら休日だな。
ダイアはそう考えて、新たな質問をぶつける。
「最後に次の休日がいつかだけ教えてくれ」
そうすると情報屋は初めてノートの様なものをペラペラと開いて情報を探した。
流石にここまで細かいことまで完全暗記することは難しいのだろう。
「ええと、今日から数えて15日後ですね。昨日、休日だったばかりですね」
タイミングが悪かったようだ。
だがしかし、今日だけで拠点となる宿屋と頼りになる情報屋を発見できたのだから大快挙だろう。
「わかった、ありがとう」
「それで、ご宿泊代金のほうですが……」
先の情報にどれほどの価値があったかはわからない。
しかし危険種の素材を売って稼いだ金にはまだまだ相当な余裕があった。
足りなくて馬鹿にされるぐらいだったら多い方がいいだろう。
そう考えてちょっと多い金額を指定した。
「ああ、宿泊料6倍でいいか?」
一瞬この男が目を見開いたのを彼は見逃さなかった。
……ヤバい、相当破格の値段を提供してしまったようだ。
「ご利用ありがとうございます」
だがしかし、自分の中ではそれほどの価値があったのだと言い聞かせて納得することにした。
約2週間後、2年間止まっていた彼の時間がやっと動き出す。
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