こっちサイドも書いてて楽しい。
アランサイドも書いてて楽しい、書く予定のローランサイドもきっと楽しい。
あれ?全部楽しいぞ?
それじゃあいってきます!
周辺一帯でも、一際高く、険しい山──セリオン山。
長年封印され入ることすら難しかったこの地への通り道である大きな門は、とある事件以降開け放たれ、ギルドによる調査もほぼ完了。
かつて吹雪に隠れその実態を隠していた大山は、もはや『未開の地』ではなくなっている。
しかし、今日この日。
この山で、人知れずにまた一つ……『ナニカ』が起ころうとしていた。
”……なァ、ファブニルよぉ”
ざく、ざく……と、いつまでも吹き続ける吹雪によって、積もりに積もった雪を踏みしめながら、二匹のモンスターが歩みを進めている。
吹雪の音以外が聞こえない静寂の世界をぶち壊してまで口を開いた内一匹──レスケンザは、前を黙々と歩いていた異形のゴア・マガラ──ファブニルにいかにもダルそうな声を投げかける。
対するファブニルも、彼と同じような気怠そうな雰囲気とともに応答する。
──……んだよ
”……俺らさぁ……どんぐらい歩いたよ……”
ファブニルはしばし顔を空に向けて考える。
──……太陽が昇ってきたあたりだな
”じゃあ今太陽どこよ”
──……真上だな
”ウソ吐くんじゃねぇよ!! てめぇどこ見て言ってんだ!? 今吹雪いてて太陽見えねぇだろうがよ! ウソ吐くぐれェなら「すいませんわかりません」って素直に言いやがれ!?”
──そうとも言う
”この野郎……”
そこまで騒いでから、喋る体力が尽きたのか、今度は一転して押し黙る二匹。
明らかに疲れ果てた様子の彼らだが、なぜ彼らはセリオン山を登っているのか?
その訳は、およそ一日前に遡る。
”行きてぇ場所がある、だァ?”
レスケンザがファブニルの目指す目標に同意し、晴れて同志となったその後。
ファブニルが唐突に『行きたい場所』を告げたのは、彼らが近辺からまたもや新鮮な肉を収集し、比較的安全だと言える小さな洞窟の中にて、さて豪華なディナーと洒落込もうか、というその時だった。
──……ああ
ファブニルは、我慢など知らん、とばかりに肉にかぶりついたレスケンザを見て、若干呆れた顔をしながら頷く。彼としては肉を食いながら話すつもりは無かったのだが、レスケンザという上品とはほど遠い輩には無理な話であったと理解し、自らも肉をむさぼりながら話を続ける。
──行きたい場所は『セリオン山』だ。お前にここら一帯の地理を教えてもらってから、ずっと気になってたんだが……強い奴らがうじゃうじゃいるって話を聞いて、ますます行きたくなったよ
”ほ~ん…………ほまへっへいふぁいふぉ────”
──おいやめろ。頬張りながら話すんじゃねぇ。食ってから話せ
”……ン…………ゴクン”
──ちゃんと噛めよ……
”お前って意外と戦闘狂なのな”
──あぁ……うん
若干レスケンザにペースを乱され、少し話すのが面倒くさくなってきたファブニル。とりあえず肉を食おうと口を開けると、まるで計ったかのようなタイミングで、今度はレスケンザが話し始める。
”ま、俺としちゃそこに行くのは別に反対しねぇし、むしろノリ気だけどよ~……あれだ、その、お前の目標とそこに行く意味って、なんか関係あんのか?”
純粋な疑問を投げかけるレスケンザに、ファブニルは、現状あるかどうかも怪しい、鬼火が如く妖しく光る片目を細めて答える。
──お前なぁ……いいか、まず俺は世界を壊したい
”おうよ”
──でも俺には寿命、というか生命力みたいな物が足りてねぇ
”うん”
──で、その問題はイビルジョーみたいに『食べる』ことで解決できる。あと食べる肉は強い奴の肉であればあるほどいい。……ここまでいいか?
”あ~……なるほど、強い奴の肉を食いたいから、強いやつが集まるセリオン山に行きたい……ってことか”
合点がいったとばかりに手を打ったレスケンザに、ファブニルはまたもや呆れ気味な表情を向ける。
この話をするのは二回目なのだが……今度ばかりは、きちんと理解しておいてほしいものである。ファブニルは「わかったわかったひゃはははは」と笑うレスケンザを見ながら、切実に思った。
ふと、ファブニルは「それに」と言葉を続ける。
──考えてみりゃあ……生まれて初めてできた、『誰にも導かれるでもない、正真正銘自分が行きたい場所』だから……ってのもあるのかもな
”……なるほどな。そりゃ、確かに行きたいわな”
洞窟の外に広がる満天の星空を見上げながらそう呟くファブニルに、レスケンザも深く頷いてみせた。
こうして、彼らの目的地は決定したのであった。
──う゛~……さむっ
”おいおい、大丈夫かよ? 確かにクソ寒いけどよ、言い出しっぺがそれはちょいとダサくねぇか?”
──うるせぇ……寒いもんは寒いんだから仕方ねぇだろ
視点は現在に戻る。
途中、はぐれていたポポの肉を食べ、少し体温を取り戻した二匹は、再び気を紛らわすためにペチャクチャと喋りながら積もりに積もった雪道をザクザクと歩いていく。こんなに吹雪いていては、安直に飛ぶことはできない。変にリスクを伴うマネは避けたいが故である。
ちなみに、けっこう寒そうなファブニルだが、これは彼、というよりもゴア・マガラという種がそもそもあまり寒冷地に赴かないのが主な原因である。
対して、セルレギオスであるレスケンザは、行く数こそ少ないものの、氷海という極寒地帯にも出現するような種のモンスター。あまり寒がらないのも、当然といえば当然だろう。
と、豆知識もほどほどに、今まで散々歩いた二匹は、やっと眼前に現れた『ナニカ』に目を凝らす。そしてそれがどうやら『洞窟』であると認識した彼らは、しめたとばかりに洞窟へと駆け込んでいった。
”あ゛~……助かったァ。にしても、ちょうどよかったな? 良さげな洞窟に入れてよ”
ブルブルと体を震わせ、雪をふるい落とすレスケンザは、広く、そして気温が安定している洞窟を見つけられたことに満足なのか、見るからにご機嫌、といった風にファブニルに声を掛ける。
……が、ファブニルはそこにはいない。
どこに行ったのか、と辺りを見回してみれば、当人は洞窟の入口の反対側の壁に大きくポカリ、と空いた穴の前に立っていた。彼の様子を伺うような素振りに、大体の検討をつけたレスケンザも、ファブニルの隣に立つ。
穴から中を覗いてみると、中にはもう一匹の『お客』が。
(……ジンオウガ亜種か……ま、こんなにいい洞窟なら、そりゃ先客ぐらいいるだろうとは思ったけどよ)
とはいえ、一番乗りを期待していた自分がいなかった、というわけではない。心の中で悪態を吐くレスケンザだったが、今まで沈黙を保っていたファブニルが、唐突に動き始める。
堂々と、ではなく、物陰に隠れながら、物音を立てずに忍び寄るファブニル。まるでナルガクルガだ、と思いながら、レスケンザは空気を読んで傍観に徹する。
地面に座り、リラックスするジンオウガの背後に、ファサリと静かに降り立つファブニル。ジンオウガは気づいていない。
相手の己への未知を悟ったファブニルは、そのまま静かに、しかし素早くジンオウガの背中に近づき────、
──ッ!
”!?!?!? ぐ、げ、ええ……!”
ジンオウガの背中に覆いかぶさり、すかさず左の翼脚を首に巻きつけ、右の翼脚で固くロックする。
突然の奇襲に驚き、なんとか逃れようとするジンオウガだが、全体重を乗せて覆いかぶさり、首を締め上げるファブニルにとっては意味をなさない。
そして、ファブニルは左の翼脚をロックしたまま右の翼脚、その掌を、もがくジンオウガの頭にポン、と乗せて────、
──……フンッ!
”ぎゅえっ”
ゴキリ、という太い骨が折れる音を響かせて、ジンオウガの首があらぬ方向へへし折られる。
ゴア・マガラの翼脚は、あの丈夫な首の骨を持つティガレックスの首を、片方の翼脚のみでへし折ってしまうほどの膂力を持っている。
そんな膂力でもって首を締め上げられてしまえば、いくら『無双の狩人』の亜種であろうとも、死は間違いなかっただろう。
今勝てるかどうか怪しい相手を倒すなら、奇襲を仕掛け、不意を突くこと。
見事にそれを成し遂げて見せたファブニルは、ドサリと崩れ落ちるジンオウガの体を尻目に、レスケンザへと顔を向け、
──……飯、ゲットだぜ
ドヤ顔で、ニヤリと笑ってみせた。
”は? 洞窟じゃない?”
──ああ……ここはどうやら遺跡みたいだぜ
唖然とした顔をするレスケンザに、ファブニルはジンオウガ亜種の肉に舌鼓を打ちながら頷いてみせる。
そう……レスケンザが今まで洞窟だと思っていたこの場所は、セリオン山の奥地に佇む、古い遺跡。
その名を──『ザラムの遺跡』。
だが、ここにいる二匹にとって、その名前は知る由もない。
”……まぁ、吹雪凌げりゃなんでもいいだろ。でもせっかくだし、ちょっと見て回るか?”
──だな。昔の人間が何作ったのか……少し興味がある
そう言って、二匹はさらに遺跡の奥へと進んでいく。
遺跡は思った以上に広く、また中には多くのモンスターが生息していた。
ジンオウガ亜種と共生関係を築く大蝕龍虫に始まり、ブラキディオス、イビルジョー、さらにはラージャンまでもがこの遺跡には生息していた。
無論、視界に入るや否や襲い掛かってきたが、先ほどのジンオウガを食べたおかげで全快に近いほどにまで回復したファブニルにとっては、もはや顔のまわりを飛び回るコバエのようなもの。軽く蹴散らし、そのすべてを喰らいながら、二匹はどんどん奥へと進んでいく。
そうして、彼らは辿り着いた。
──……これは
”おいおい、マジか”
『ザラムの遺跡』、最深部。
そこに存在する、一際広く、吹き抜けとなったその空間の名は、『ザラムの祭壇』。
数年前、文字通り『世界を救う戦い』が繰り広げられた場所である。
あれから数年が経ち、戦いの余波によるものか、祭壇の床は至る所が崩落してしまっている。
……もちろん、その名を、そして歴史と変化を、この二匹は知る由もない。しかし、祭壇の中心に据えられたモノを見て、彼らはこの場所の異質さには気が付いた。
”なぁ……あのでっけぇ石、なんだと思う?”
──……お前、俺がこの世界のことに疎いの知ってて聞いてんのか? だとしたら性格悪いぞ
”ん~……なんかあの石見てると落ち着くな……なんでだ?”
──聞けよ。……そうか? 俺はあんまり感じないが……
彼らの話題の中心となっている、祭壇の中央に据えられた巨大な石……。
それは薄緑色の優しい光を放つそれは、レスケンザに謎の安らぎを与えてくる。
それもそのはず。
この石の正体は、各所に点在する『絆原石』──その内の一つ。
ライダーたちが必ず所持している、モンスターと絆を結ぶためのキーアイテム、『絆石』。その絆石の巨大な塊こそが絆原石であり、絆原石には生物の心身に影響を与えるという、強大な力が込められているのである。
周囲に影響を与えやすいということは、その逆もまた然り。
本来、ファブニルのような悪しき存在は近づくことをためらわれるのだが、同じく数年前、『伝説の白竜』によって浄化されたおかげで、今はある程度の耐性が構築されているようだ。今はただ、近づく者に安らぎと異質感を与えるだけのものになっている。
さて、そんな強力な力を持つ石に、これほど近づいたのだから、二匹にはなにかしらのリラックス効果のようなものが表れてもよいのだが……。
”なんともないのかよ? ほら、なんか安心感湧かねぇ?”
──湧かねぇ
レスケンザはともかく、ファブニルには、まったくなんの効果も表れてはいない。
これは、通常ならばありえないことであり、彼という存在の異質さを如実に示している。
それどころか、ファブニルは絆原石とは別のところへ興味を持つ。
──なぁ、この下……行ってみねぇか?
厳かに佇む絆原石から見て、左前方。
すでに崩落し、底が見えないほど深く続く暗闇を覗き込みながら呟いたファブニルに、レスケンザはぎょっとした顔で彼を見る。
”おま、冗談だろ? ここまで上がってきたってのに、こんどは落ちるのかよ!? なんか今まで登ってきたのがアホみたいじゃねぇか……やめようぜ?”
──じゃあお前はここで待ってていいぞ。俺が一人で行ってくる
静止するレスケンザに耳を貸さず、単独で早速降りようとするファブニル。
さすがに単独で行かせるのは良心が咎めたのか、レスケンザの方が折れ、最終的に二匹で行くこととなった。
一斉に飛び降りた二匹は、翼を広げ、勢いを殺しながらゆっくりと降りていく。
だんだんと、下がるにつれ濃くなっていく謎の悪寒に、レスケンザは生唾を飲み込み、ファブニルは口を歪める。
そうして遂に見えた暗闇の底にて、彼らが見たものは──
”……んだ、こりゃあ……”
──コイツは……
──二匹を越す大きさを誇る、見たこともない謎の白い龍だった。
……厳密には、白い龍の亡骸。
既に息絶えてから何年も経過しているからか、体のあちこちが凍り付き、死骸は冷凍保存される形でその形を保っていた。
人間の手によるものか、所々切り取られた後があるが、この大きさではその痕も微細なものとしか思えない。それほど巨大な龍だった。
……レスケンザは純粋に大きさに驚いたものの、ファブニルにとっては『ジエン・モーラン』というもっと大きな古龍を知っていたので、そこまで大きさでは驚かなかった。
二匹が共通して驚いたのは、その龍の姿を一欠片も知らなかったため。未知の発見は、いつだって驚愕を伴うものなのである。
”すげぇな……世界には俺の知らねぇことがたくさんあるとは思ってたけどよ……。まさかこんな感じで未知に触れることができるとはよォ……”
──……ダメだな。死んでから時間が経ってるせいか、まったく回復した感じがしねぇ。こりゃあ無駄足だったか…………ん?
お前また食ったのかよ、と呆れた声を上げるレスケンザをよそに、ファブニルは途端に感じた謎の『違和感』に意識を集中させる。
しきりに辺りを見回すファブニルに、レスケンザも抗議の声を止め、彼の奇行のわけを聞いてくる。
”おい、どうした?”
──……感じるんだ。なにか……なにか、見逃しちゃならねぇものがある
”……危険って意味で、か?”
──ああ……だが、俺の糧になりそうな気がする
”なんじゃそりゃ……ん? なんだこれ……? おい、ファブニル!”
自分を呼ぶ声に、ファブニルはすぐさまレスケンザの側に駆け寄る。
ワケを問おうとした彼に待ったをかけ、レスケンザは視線をあるところに送る。
その視線を追ったファブニルの目に入ったのは、純白の白龍の死骸のうなじ、そこに不自然に表出した邪悪なまでに黒いシミだった。
それだけならばまだいい。だが、重要なのは、そのシミから漏れ出す、あらゆるものを蝕もうとする『凶気』だった。
”お、おい……! このシミ、ぜってぇマズいタイプだぞ!”
──そんなことはわかってる。……だが……コイツは
シミから漏れ出す『凶気』──数年前に猛威を振るった『黒の凶気』に、レスケンザは本能的な危機感を抱き、数歩後ろへ後ずさる。しかし、一方のファブニルは後ずさるどころか、なんとシミへ翼脚をゆっくりと伸ばし始めたではないか。
焦った声を上げるレスケンザを無視して、ファブニルはシミに触れる。
そして、彼はシミだけを白龍の死体からえぐり取って行き……、
『黒の凶気』を垂れ流す黒々とした肉片をしばらく手に取ったまま眺め。
──……ハハ
凶悪な笑みを浮かべてから、一瞬にしてその肉片を口の中に放り込んだ。
”なにやってんだテメェーーッッ!!??”
謎の威圧感に圧されて、今の今まで呆然と立ち尽くすしかできなかったレスケンザだったが、まさか飲み込むとは思いもしていなかったのか、悲鳴にも近い大声を上げてファブニルに掴みかかる。
”吐き出せ! テメェそれは流石に死ぬぞ!!”
──……そうだな……死ぬかもな
”ああ!?”
レスケンザは荒く聞き返す。
彼に揺すられるファブニルの身体は、既に時折痙攣し、明らかに尋常でない状態になってしまっている。
このままでは、彼の命が危ない。
『残虐』の代表格とも言われる《血愛》レスケンザとて、自分が気に入った相手にはとことん入れ込む
もはや有無を言わせぬ、と、力づくででも吐き出させようとした、その瞬間だった。
”────ッ!?”
(な、なんだ? コイツの身体の震えが……治まった?)
唐突な症状の消失に、レスケンザは思わずファブニルを掴んでいた翼爪から力を抜いてしまう。
その隙にレスケンザから距離を置いたファブニルは、途端に身体に『黒の凶気』を纏い始める。
……いや、纏わりつかれている、と言った方が正しいか。
『黒の凶気』は、新しい宿主の到来に歓喜し、主導権を握ろうとする。
(……頭の中がぐちゃぐちゃだ)
ファブニルは、乗っ取られ始めた精神を使い、ただジッと思考する。
(『怒り』……『恐怖』……。そういう感情が俺の心の中に無理やり入り込もうとしてきやがる……そこまで俺を操りたいってか?)
ファブニルは嘲笑う。
『黒の凶気』の軽さに。こんなものに操られていた奴らの無様さに。
そして何より────
『黒の凶気』そのものに対して。
(そんなに支配したがってるとこ悪いが……立場が逆だ、『黒の凶気』)
(俺はずっと支配されてきた……今度、支配するのは────俺だ!)
──俺に、従え!!
瞬間、『黒の凶気』の意思が消え失せる。
まるで火が強風に煽られ、かき消えるかのように。
そして、後に残ったのは────、
『凶気』を完全に取り込み、さらに凶悪にパワーアップした『狂竜ウイルス』の黒煙の中に静かに佇む────『悪魔』の姿だった。
一部始終を目撃していたレスケンザは、あまりのことに身体を震わせる。
……勿論、恐怖などではなく。
その感情は────興奮だった。
”……ああ、チクショウ。やっぱ最高だぜ、テメェはよォ!! これでもっとでっかいことができるようになったなァ!! やったぜヒャッホウ!!”
飛び跳ねるほど大はしゃぎするレスケンザを、ファブニルは親しみを込めた眼で一瞥すると、どこか晴れ晴れとしたかのような、浪々とした声で口を開く。
──なあ、レスケンザ
”ん? どうした?”
──早速で悪いんだがよ……次の目的地、決まったぜ
レスケンザは驚く。
まさか、もう次の行き先を決めていたとは。
だが、今の彼のテンションは最高潮。あまりの興奮に目をギラつかせ、口角を大きく歪めて見せる。
”へっ、こうなったらどこへでもついてってやるよ! ……んで? どこ行くんだ次は!? 早速
──焦んなよ、行くのはこの大陸の中じゃねぇ……外だ
ファブニルの言葉に、一気に虚を突かれた顔になったレスケンザを鼻で笑いながら、ファブニルも同じように口角を歪めて見せる。
口角を歪めるたびに、ビキビキと鱗が擦れる音がするのが、余計不気味さを水増しさせている。
──『黒の凶気』の遺言ってやつだ。なんでも、この大陸じゃない所にある『禁足地』……そこになんでか『黒の凶気』が強く反応してな? 行ってみる価値はあると思うんだが……どうだ?
”悪かねぇ。……いいぜ、そんじゃあひとっ飛びするかァ!!”
──まぁ、ひとまず身体を休めたい。まずは下山して、準備でも整えるとしよう。……出発は今度の夜明け。そしたらこの大陸とは、とりあえずお別れだな
……そう、お別れ。
ファブニルは、悠々と山を下りながら、ひとりほくそ笑む。
ああ、おかしくて仕方がない。楽しくて仕方がない。
なぜか?
次、この大陸に来ることがあるとするならば……
それがこの大陸、滅亡の日なのだから。
それまでしばしの、お別れだ。
ファブニルとレスケンザは、もうすっかり吹雪が止んだ山道を下っていく。
道中には、二匹に殺されたモンスターたちの死体から流れ出た血が、白い雪を真っ赤に染めていて。
そんなレッドカーペットを歩く二匹は……まるで『魔王』のようだった。
”ゲホッ、ゲホッ……。なんだァ、風邪でも引いたか、俺? おいおい、マジかチクショウ。風邪で俺だけお留守番とか御免だぞ? はぁ、今日は大人しく休まねぇとなァ……。ゲッホ、ゲホ……”
あれ?
そういや……俺の涎って、こんなに黒かったっけ……?
次のファブニルサイド予告
海を渡る準備をする話。まる。
次回は恐らくアランサイドとなります。
ご期待ください。