これからはアランサイドと混沌ゴアサイドを交互にやっていきます。
多分。
あ、今回少々人によってはキャラ崩壊を感じさせる描写があるかもしれません。苦手な人はご注意を。
吾輩は休憩中である。雪山の峰にて。
「ふおおお…寒さが骨身に染みて行きますのニャアァァ…ニャーのおヒゲがカッチンコチンに凍りついている気がしますニャ〜…」
──余裕でふよふよ揺れてるから心配しなくていいぞ
「あっ、そうですかニャ」
つい先日、あのアプトノスの群れに別れを告げ、ネコサマを連れ旅に出た。
改めて空を飛んでみると、嫌でもここが自らの親しんだ土地ではなく、私は来訪者でしかないというのを思い知らされる。
…だからというわけではないのだが。
少し、予定よりも遠い距離を飛んだ。どうせならずっと遠いところへ行ってやろう、と考えたのだ。要は海を越える、ということである。
その結果、とんでもないことが発覚した。
「ニャ!? 流石に海は越えれませんのニャ…!」
──は?
このネコ、なんと海は超えられないのだという。
だが、これで諦めて帰って行くならば別に良し、健気に船で着いてきてもまぁ構わない。
しかし、そんなことをしないのが私のアホネコ、アホオトモである。
何と、「仕方ないのニャ」とか言いながら此奴、私の背中に乗ってきやがったのだ。
「ニャニャニャニャニャ!?!? 風圧がスゴイのニャ! でもニャーの耐久力を見誤っては困るのニャ!!」
──貴様! 乗ることは許さんと言ったはずだろう! 降りろ! てか落ちろ!!
「ニャああああ!!! 落ちたら死にますニャ! ニャーを落としたらあの写真ばらまきますニャよ!?」
──貴様それでも私のオトモかあああああああああ!?!?
……
ぎゃーぎゃー騒ぎおって、とか言われたら何も言えない。だが悪いのはネコサマである。それだけはきちんと理解しておいてほしい。皆の中での私の評価を、これ以上落としたくないのだ。
まぁ、そんなこんなで海を越えた我々は、ひとときの安息のために雪が降り積もる寒冷地帯へとやって来た。
元々、我ら天彗龍は気温の変化にめっぽう強い。
そのため、たとえ寒冷地だろうと砂漠だろうと熱帯雨林だろうと、どんなところでも普通に行動ができる。…流石に火山地帯ともなると、暑苦しいのであまり行かないが。
そういえば昔流行ったな溶岩浴…。アレとかなんでやるのか意味わからん。一部の古龍の間で一時期ブームになったが、アレはいまだに何がいいのか理解に苦しむ。あんなの熱いだけではないか。
…話が逸れた。
まぁそういう背景もあり、何の気無しに(背中のネコサマへの嫌がらせではない)寒冷地へ訪れた私。腰を落ち着けられる場所を早速探そうとしたのだが──。
──なんだあやつ
「今アイツあくびしましたニャ」
あった。
いや、あったにはあったのだ。いかにも座り心地の良さそうな、いい感じの峰が。
だが、先客がいた。
──見るのは久々か…鋼龍…
《鋼龍クシャルダオラ》。
私と同じ古龍で、人間達には一番名の知れた古龍の内の一匹と言っていいだろう。
私も三古龍とは交流が多かった。
そんな彼が、峰を独占している。
……。
む?もしや私、別の場所を探しに行くと思われてる?
バカなことを。そんなことをするわけがなかろう。
何度も言うが、私は古龍である。
そして、あのクシャルダオラも古龍である。
私にとって、古龍の種族はご近所さんのような感覚だ。
何なら、他の通常種のモンスターと関わるより古龍と話す方がずっと気安くなれる。
だからこそ。
──どけ!! 私は天彗龍だぞ!!
──なにすんダオラ!!!
…こんな感じに、学校のクラスメートに話しかけるような気軽さでちょっかい(彗星落下)を掛けられるのだ。
というか、貴様この世界でもそのギャグは健在なのだな。
『なにすんダオラ』…うむ、いつ聞いてもいいセンスのギャグだ。自らの族称をギャグに使う大胆さ、言葉遊びとしての完成率…どれをとっても尊敬の念しか出てこない。
と、いうのをそのまま目の前の奴に言ったら、
──ほ、褒めてもなんにも出ないんだからねっ!
とか言いながらどこか嬉しそうに飛び去っていった。
…え?まさかこの世界ではあのギャグはヒットしていないのであるか?
私の元いた世界では皆がちょっかいを出された時などに「なにすんダオラ!」と言い合って、それはそれは和気藹々とした時間を提供してくれたものなのだが。
事実、私と友人の隠居シャガルマガラとの間でもこのやりとりを交わしたことは幾度もある。
だが…ここではウケてないのか…。
なんか…そう考えるとかわいそうになってきたな…
場所横取りして、ごめん……。
さて、気分を切り替えて、回想を終わらせよう。
視点を現在に切り替える。
今現在我々がいる場所は、ネコサマによると『ロロスカ地方』と呼ばれる場所らしい。
年中雪が降っており、寒冷な土地ではあるが、付近の森の中は何らかの影響で寒冷地にはいるはずのないモンスターが生息しているらしい。
──? なぜ生態系が狂っているのだ?
「一年前に起こった『凶光化』っていう事件が原因だとか聞いてますニャ。何でも、世界の危機だったとか何とか…」
──ほお…
「…あれ、待ってくださいニャ。…あ、そうだったニャ。凶光化が原因なんじゃなくて、その四年前に起こった『凶気化』事件のせいでしたニャ。ちなみにその時も世界の危機でしたニャ」
──世界の危機起こりすぎではないか?
「ニャーに言わないでくださいニャ」
ううむ。あのレスケンザとかいう若いセルレギオスが、砂漠を
まぁそれはいいか。
とりあえず、このロロスカ地方でしばらく過ごすことにしよう。
…まぁ、しばらくしたら出立せねばならんが。
なぜか? それはつい先ほど、この峰に腰を落ち着けた時に話されたネコサマからの言葉のためだ。
「旦那さん、これからの行き先は決まっているのですかニャ?」
──決まってないが……何だ、オススメの場所があるのですが、といった風だが?
「ニャフフ…そんな旦那さんに、ニャ」
──その笑い方ムカつくからやめろ
「ニャーは、『ラムル地方』をオススメするニャ!!」
──…何だか田舎くさい名前だな
「逆ですニャ。都会も都会、大都会ですニャ! 何たってこの地方には『ルルシオン』っていう活気あふれる街があるんですもんニャ!」
──いやいや…そんなところ私が行ったら狩猟対象になるのが関の山だろうが
「…ちなみに、そこの書士隊の部隊長さんはすんごい別嬪さんだって話ですにゃ…?」
──そういうことは早く言え!! よぅしここを満喫したらそこに行くぞ! ハンターが襲ってきても全員薙ぎ倒してやるわ!! …いや待てよ、貴様なんか誘導しようとしてないか?
「ギクリ」
そうして話を聞いてみたところ、どうやらその街に知り合いのアイルーがいるのだとか。
私とて、オトモのそういうことを無下にするほど冷徹ではない。なので普通に了承した。
そういうわけで、ここを後にしたら次はそこへ向かうことに決まっている。
ちなみに「そういうことは普通に言え」と言ったら「だって普通に言っても無理そうだったから」と返されてしまった。解せん。
…さて、こんな風に楽しく騒いではいるが、実はこんなことしてる場合ではない。
なぜか。それはこの付近にもライダーの村があるそうなのだ。しかも、一回手ひどくモンスターに壊され、今やっとの思いで復興が完了したとのこと。
何がまずいかって?
何度も言うが、私はこの世界では『未知のモンスター』である。
そんな私がモンスターに多少忌避感のあるであろうその村の村人に目撃されでもしたら、すぐさま警戒体制、人間どもは泣いて騒いで私を討伐しようとするであろう。
…まぁ、負けるつもりはないが。むしろ返り討ちにできるだろう。
…が!今ばかりはその行動は本意ではない!!なにしろ、私は今武者修行の旅をしているのであるから!
…わかりやすく言うと、できれば友好的に接して、高名な強者の情報を手に入れたい、ということだ。
そのためには、怖がらせてはいけない。
これが第一関門である。
さて…となれば、だ。
件の村──『クアン村』というらしい──のライダーと通訳と共に接触し、なんとか情報を得る…ということをしなければならない。
あれ?結構難しいのでは?
──うーむ…傷心中のライダーが話し合いに応じてくれるって、我ながら結構馬鹿なアイデアだな…
「旦那さん、旦那さん。よければ、『アユリア』っていうライダーを探してみたらどうですかニャ?」
──ん?
「ニャーも詳しいことは知らないのですがニャ…ともかく、クアン村で一番腕の立つライダーらしいですニャ。
──うむ…なるほどな…。よし、それで行こう。ところで、そのライダーはどんな奴なのだ?
「……知りませんニャ☆」
──このアホネコめ!!!!!!!!!
まぁしかし、アホネコのおかげで少しはこの馬鹿な試みに希望が見え始めてきた。
これからはこのアユリアというライダーを探すことにしよう。…腕が立つというのが少々不安だが、まぁ最悪戦略的撤退を行えば良い。情報収集で死んでは敵わんからな。『空のハンター』に勝利するまでは死ねん。
…それにしても、腹が減ったな…。
何か餌を獲ってくるか。
──おいネコ、この辺はやはり《ポポ》か?
「ニャ? はいですニャ。この辺の草食竜はポポですニャ。…もしかして旦那さん、ポポ獲りに行くんですかニャ? あのアプトノス達と仲良しこよしだったのに?」
──? 何を言っている? アレはアレ、ソレはソレだろう。ここらにいるポポに思い入れなどないのでな。せいぜい脂が乗っているといいのだが…
「ニャー。気をつけていってらいっしゃいニャ」
──うむ
さて、食料確保と洒落込むのである。
…………。
………。
……。
うむ…
「…アナタは…一体…?!」
……。
うむ。
見つかった。
私、またもややってしまったようである。
いや待て。皆の者。
違うのだ。
だって普通思わないであろう。ポポの群れの中にライダーがいるとか、普通思わないであろう!?
まぁ…アレだ。
ことの発端はこうだ。
・ポポの群れを見つける
↓
・いつものように突っ込む
↓
・何匹か仕留めたので、このまま帰ろうとする
↓
・ふと視線を感じる
↓
・Encounter…!!
いやいや。避けようがない。ないのである。
というか空気がヤバい。思うに、此奴はクアン村のライダーなのであろう。私を見てもすぐ攻撃に移らず、観察に徹しているところを見るにかなりデキるようだ。情報収集にはもってこいだろう。
…というか結構美人だな……うむ…うむ。体のラインも滑らかで、まるで芸術品のようだ。いいな…このライダー結構良い…こういう状況でなければすぐさまナンパしていたのだが。
しかし、あいにくネコサマは今ここにいない。
ホントなら餌を獲りに行くだけであったからな…。こうなるとわかっていれば…。
ええい、悔やんでいても仕方がない。こうなれば隣のベリオロスに話を持ちかけるか!
──…おい、そこなベリオロス
“!? なるほど、古龍か…!”
おおう…随分と騎士っぽい奴だな…やりずらそうだ…
──私は貴様らと争う気はなk…
“古龍となれば、戦うのは悪手! ここは逃げの一手に限る!”
──ちょ、おい
“悪いが古龍! お前に付き合っている暇はないんでな!”
──クッソコイツ話聞かない系騎士か!!
おのれ…マズイ、実にマズイ。
今にもこの一匹と一人はここから逃げようとしている。さっきからじりじり、じりじりと少しずつ後ずさっているのだから間違いない。
しかしそうはさせたくない。させてしまえば先程憂慮した状況が現実になってしまう。
ええい、どうにか、どうにか……!
……。
…クソ!これしかない!そうと決まれば直進あるのみ!!!うおおおおお!!!!
──お嬢さん…貴女のような美しい人を私ははじめて見た…!
「……?」
“ん? …いや、何言ってんだ!?!?”
いやホント、何やってるのだろうな。逆にこっちが聞きたい。
だがしかし、これはれっきとした作戦である。
──もし良ければ、この私と共に夜空のランデブーと洒落込まないかね…?
「え、えーと…?」
“お前…! そういう奴だったか! おい離れろ!!
私はコイツらに村へ帰ってほしくない。
村へ帰られると、もう情報収集ができなくなるからだ。
ならばどうすればいいのか。答えは簡単だ。
人間がよく使う手法である。
例えば、学校で低得点のテストを持って帰ってきてしまった子供が、親に「テストどうだった?」と聞かれないためにずっっっと話を逸らし続ける、アレである。
…まぁこの場合負けフラグは濃厚なのであるが。それはともかくとして。
私はこの方法に賭けた。これでこのペアを食い止めるのだ!
もちろん、ライダーの方に言葉が通じていないのは百も承知だ。ねらいは『自分に懐いている』と誤認させることで、私が村に着いていく可能性を考慮させること。
モンスターへのトラウマが未だ消えぬ村人達。そんなところに自分でも見たことのないモンスターがついてきてしまった!…このライダーへの信頼問題もそうだが、村人達を変に怖がらせたくない、と思うのが普通だろう。
よって、ライダーはこの場から逃げられない。
──その金色の髪はまるで、夜空に輝く天の川のよう…。私なら、貴女を天の川そのものに一番近づけられる
「どうしよう…このままじゃ村に帰れない…」
“〜〜!! お前ホントになんなんだ!? おい引っ付くな! やーめーろー!!
ふむ。
じゃあなんでナンパしてるの?とな。
私にとってこれはナンパではない、ただのポエム発表会なのだが…まぁいい。
これは隣のベリオロス用だ。
想像してみるといい。自分の大切な主人…いや、ライダーだから友人とかそんな感じか?…まぁとにかく、そういう大切な相手に訳もわからぬ相手が言い寄っている。そんな状況、怒りやら困惑やらで冷静さを失うのは必至であろう。
こうすることで、こっちも逃げることはできない。
…さて。
もうそろそろか。
「────ニャーーオオーン!!! 旦那さんがピンチな気配を感じて、呼ばれて飛び出てネコサマですニャ!」
──よぅし! よく来た! 褒めて遣わすぞネコ!!!
“!?”
「…っぷにぷ、…アイルー?」
これを待っていた。
ネコサマは本当にアホネコだが、私への忠義は本物だ。さりげなーく『古龍の威圧』で「help!」と送れば、すぐさま駆けつけてくる。
実際来たし。
私はすぐさまネコサマに手招きならぬ翼脚招きをし、ライダーの前に立たせる。
「旦那さん、通訳いつでもいけますニャ!」
──よし、まずは自分の自己紹介をして、それから通訳を行うことを説明しろ!
“待て、そのアイルーは言葉がわかるのか!? というかマズい! そのアイルーを前に出すな!!
──ええい、ちょっと黙っておれ!
身を乗り出すベリオロスを抑えながら、ネコサマにさっさと始めるように促す。
するとネコサマはコホン、と咳払いをし、自らのチャームポイントその①と自慢していたピンクな肉球を高々と見せつけるバンザイポーズをしながら口を開く。
「お初にお目にかかりますニャ! ニャーの名前はネコサマ! そしてこちらにおわしますはニャーのご主人、アランさまニャ!!」
…よし、とりあえず自己紹介は済ませたようだ。これで警戒心はだいぶ薄れただろう。
あとは、早速通訳を始めさせて情報交換にまで漕ぎ着けられれば…、
「……ぷにぷに」
「ニャ?」
──は?
“あぁ…”
え?いや待て。
ベリオロス貴様、なぜそんな諦念の表情で空を仰ぐ?え?え?なにが始まるのだ?
私が困惑している間にも、状況は進んでいく。
私と同じく困惑するネコサマの前で、ライダーは俯いていた顔をゆらり、と上げたかと思えば。
「──ステキなにくきゅう〜!!♡♡」
「ニャあああああああ!?!?!?!」
突然、ネコサマをひょいと抱き上げ、なでりなでりと愛で始めた。
な……なにを言っているのかわからねーと思うが、私もなにが起こったのかわからねー…。
困惑する私に、いつの間にか近寄ってきていたベリオロスが、そっと耳打ちしてくる。
“…アユリアはな…アイルーの肉球とかその他もろもろを見ると、メロメロな方向で暴走するんだ
──えぇ…何だそれは
“単なる猫好きだ…だからあのアイルーを前に出すな、と言ったんだ
──わかるか!! …ん? 待て。貴様今、あのライダーのことを『アユリア』と呼んだか!?
“? そうだが?”
何ということだろう。
私は思わずその場にへたり込む。
偶然会った相手が、まさかの探していた人物その人だったとは。
「ちなみに俺はヒョウガだ」と呑気に自己紹介をするベリオロスをスルーしながら、私は呆然と目の前の惨状を見る。
「もふもふ…ぷにぷに…はあぁぁ〜たまらないわぁ〜♡」
「ニャニャ…悪い気はしないけど、そろそろ下ろしてくれニャ〜…モフられ過ぎて目が回ってきたニャあ…」
ネコ…何というか、気の毒だな。
私は心中で自らのオトモにエールを送りながら、暴走するライダー改め、アユリアをジト目で観察する。
…一見すれば、年頃の女性らしい体だ──と判断するだろうが、私は違う。
彼女の『隠された強さ』…まるでオーラのようにハッキリとわかる。あの平原で出会ったライダーたちとは、比べ物にならない強さを持っている。
精神面も同じく強そうだ。先程までの、私を前にした時の対応、目線、姿勢。それらを見れば、口が裂けても『弱い』などとは言えない。間違いなく、歴戦の猛者だ。
──……なるほど…これはなかなか……
…つい、瞳孔が開いてしまう。
無論、強者を前にした時の興奮によるものだ。今は戦うことはないにしろ、やってみたらどれほどのものか。
思えば、ライダーとは一回も戦っていない。未知の強さは、私をいったいどこへ連れて行ってくれるのか。
全く…興奮冷めやらぬ。
私はいつの間にか釣り上がっていた口角を無理矢理下げると、興奮をおさめる。
ううむ。いけないいけない。
最近はどうにも好戦的になっていけない。私の中にある「『空のハンター』に勝ちたい」という願望がそうさせるのか?それとも、私の本能によるものか?
おそらくは両方であろう。『空のハンター』によって、私の闘争心が開花され、眠っていた獣が牙をむいているということか。
だが、今ばかりは牙はおさめておこう。
たとえ彼女の肉体に、およそ見た目では判断できない強さが眠っているとしても────
「ニャ…ニャ…お助け…」
「えへへ…えへへへへ…」
……そーいえば、彼女。
…結構いい身体しておるな。
あの時の女ライダーとは大違いだな……。
露出のある装備はもちろん、そこから覗く脚や胸元の肌は、まるできめ細やかな絹のようだ。
特に覗いた生脚は、ネコの肉球よりよっぽど別ベクトルでぷにぷにしていそうで、正直そそる。
伸ばした髪は美しい金髪で、太陽と雪の明かりに反射して、冗談抜きで輝いている。
そして何より、凹凸が実に魅力的で、蟲惑的なまでのナイスバディ……。
これは世の男どもも放ってはおかんだろうな。間違いない。何しろ、私も放ってはおかぬが故に。
うう〜む……舐めまわしたいとはまさにこういうことで────
“おい”
──!! ……な、なんだ
“……この変態め。古龍のクセに”
ぬぅ…此奴!
また古龍差別しおったな!? 古龍だからといって、皆が皆紳士で高潔だと思うなよ!?
あと貴様私の目線に気づいたということは、貴様も同じく見ていたということだからな!? 全く……友人をそんな目で見るのか、貴様は。
“な……!? ち、違う! 俺は断じてアユリアをそんな目で見てはいない!!
──フン、どーだか
そうヒョウガに睨みを利かせてから、私は我に帰るように首を振る。
…まぁ、確かに少しはっちゃけすぎなところはあったかもしれぬな。というか、現在進行形で私のオトモがピンチなのであった。
見れば、だいぶぐったりとしている。これはさっさと助けてやらねば…。
そう考えて、私は未だに目をハートにしてはしゃぐアユリアの側に行き、声を掛ける。
──……おい、アユリア
「かわいいぃぃ……フルフル討伐で荒んだ私の心が癒されていくぅ〜……♡」
──……おい……聞かぬか、女
「天使…天使だわ…しかも見たこと無い柄だし…はぁぁシックなサバトラがたまらないわ〜♡」
──………。
「ぷにぷに〜♡ぷにぷ」
──目を覚ませえええええええええええ!!!!!!!!!!!!
「んぎゅっ!?」
「ニ゛ャ゛」
咆哮と共に、私は暴走するアユリアへ『お手』を見舞った。
…そう、『お手』である。翼脚ハンマーを食らわせる前に必ず繰り出す、あの。
“アユリアあああああああ!?!?!!? ……お前!! 何をやっているんだ!!!!”
──……あっ
“あっ。じゃない!! アユリアになんてことを!!
──いや…すまん。ついやってしまってな……。……まぁ死んではおらんから安心しろ
“できるか!! 骨が折れたりしたらどうする!! アユリアはまだ恋人もいないんだぞ!? 人生これからなんだぞ!!?
──貴様はあの女の親か?
“あぁっ、アユリア……! 大丈夫かー!!?”
絶叫しながらアユリアに駆け寄るヒョウガ。
アユリアは二メートルほど遠い場所の、小さな雪山の中に頭から突っ込んでいた。
ちょっとマヌケだな、なんて口にしようものならあの過保護なベリオロスに殺されそうなので、口をつぐんでヒョウガに着いていく。
まぁ、私も咄嗟に手加減をした。ふっとびこそしたが、おそらく怪我一つ負っていないだろう。先程ヒョウガに口を濁したのは、ただのいたずら心である。
……さて、一応容体確認を……
そう考え近寄ろうとした、その時。
“おおっ!?”
──おおうっ!?
唐突、そう本当に唐突に、アユリアが上体を勢いよく起こしたのだ。
衝撃で、アユリアの上に被さっていた雪が打ち上げられて舞い落ちる。
パラパラ、と雪が落ちる中、アユリアは何も言うこと無く、ただゆっくりと立ち上がる。
“あ、アユリア? 大丈夫なのか? どこか痛かったり……”
──おい……言葉がわからないんだから言っても意味はなかろう……
「……ぷに」
──!? またか……。どうすれば直るんだ、アレ
“気が済むまでプニらせるしか……
──何だそれは……。ほれ、また私のオトモが被害に合っ────
……その時。私は世界が止まったように錯覚した。
仕方なかろう。先ほどまでネコの肉球を触っていたアユリアが、今度は私の足を弄り始めたのだから。
この状況には、流石の私も困惑するしかない。隣のヒョウガも、相棒の突然の奇行に呆然とし、そして私を睨んだ。
…いや待て。まさか私のせいで頭がおかしくなったとか思ってないか?失礼な。頭は狙っておらん。
「…アラン、でいいのかな…?」
──え? あ、あぁ…何だ?
「…私が何を言っているのかわかる、っていう前提でお願いするのだけど…。…足を、あげてみてくれない?」
──…こうか…?
やっぱりコイツ頭打ったんじゃなかろうか。
確かに頭は狙ってなかったはずなんだがな…と首を傾げる私をよそに、アユリアは私の足裏を弄る。
…流石にちょっとくすぐったいんだが。
そう思い、足をおろそうとしたその時、突然アユリアが口を開く。
「やっぱり──そうだ」
──……?
「…アラン。アナタの足裏に、新しいタイプのぷにぷにを発見したわ…!」
──……。
…ごめん今なんて?
流石に耳を疑う。
ぷにぷに?私の足裏に、ぷにぷにだと??
そんなバカな、と鼻で笑おうとして、ふと思い当たる。
そうか──『衝撃吸収用肉球』か…!
説明しよう。
我々、天彗龍は生体上、超高度から高速で落下することが多い。
するともちろん、着陸する必要が出てくるわけだが…その際、体が硬いと大怪我をしてしまう。
なので、天彗龍は体を柔軟に、そして関節部分にも特殊な柔軟効果を持っている。
…そして、体中のそういった衝撃吸収部位の内の一つこそが、この肉球なのである。
無論、肉球といっても猫のそれを思い浮かべてもそれは違う。我らの肉球はあくまで『超高度からの落下』への対策。そう柔らかくはできておらず、むしろ柔らかい鱗、といった方が良いぐらいである。
…しかし、私に至っては、だ。
……その肉球が、普通よりも柔らかいのだ。
流石に猫のものに比べれば硬いが、それでも一族で見ればかなり柔らかい方だし、人間目線であれば普通に「柔らかい」という判定になるぐらいだ。
そして、私にとってこれはか・な・りのコンプレックスなのだ。
いやだってそうだろう?天彗龍たる私に、そんなかわいいポイントはいらないのだ。だからこれは、友人の隠居シャガルも知らない秘密だったのだが。
不幸なことに、この肉球の探求者に見つかってしまった。
しかも、気に入られた。もう最悪である。
──ちょ…そこは触るな! ええいやめんかぁ!!
「あっ、嫌だった…? でもお願い、この感動をもうちょっとだけ享受させて…!」
──や、やめっ、ヤメローーー!!!!
奇跡的に噛み合っている会話など耳に入らず。
私は無様に逃げ回る。そして追いかけるアユリア。ヒョウガはただただ狼狽えるだけ。
そして────、
「…に、ニャーの、心配、は……ガクッ」
…一匹の哀れなアイルーが、力尽きたのを見たものはいなかった。
アユリア「にくきゅう界の、夜明けぜよ!!!!!」
※こんな感じですが、今作で出てくる原作に登場済みの戦闘可能な登場人物たちはかなり強い設定になってます。特に『1』のメンバー。