東方自然癒 ―鍵― 作:二枚目の葉っぱ
また東方自然癒にハマり直したので初投稿です。
「ふぁぁ……」
大きなあくびをしながら、少女が襖を開け出てくる。
もうそろそろ昼だというのに、いまだに眠そうな様子の少女に、僕は声をかけた。
「やっと起きたか。おはよ、霊夢」
「ん、おはよ…」
返事をして、また大きくあくびをする。
まだ眠たそうだ。
「顔洗って目を覚ましてこい。用意してた飯は食ったんだろ? 口の周りが少し汚れてるから、それも含めて洗ってこい」
「そうするわ…」
そういうと霊夢は、気だるげに、神社の裏へと歩いて行った。
「普段の姿を見てると、幻想郷を守る巫女だなんて信じられないよなぁ…」
そんな霊夢の姿を見ていると、不意に口から零れた。
彼女の名前は博麗霊夢。
生活力は皆無であり、一人では本当に生きていけるのか不安なレベルではあるが、彼女は強い。
僕は、ここへ来て2か月程度の新参者ではあるが、その強さと人柄は何となく理解できた。長くここに居れば居る程、彼女の強さは理解できているだろう。
僕がここへ来てすぐの時、無縁塚と呼ばれる場所にいた。幻想入りする者は、大抵まずそこに飛ばされるのだとか。
無縁塚は、「妖怪」と呼ばれる異形の者たちで溢れ返っている。幻想入りしても、ほとんどはそこで食われるらしい。というか、ほとんど経験したようなものであるため、それに関しては理解している。もし、彼女が居なければ、僕は妖怪の腹の中でその一生を終えただろうから。
今ならどうとでもできるが、そのときは幻想入りしたてで自分の能力もまだ分かっていなかったのだ。逃げる以外の選択肢がなかった。見たことも無い化け物が襲ってくるのだ。そのあまりの恐怖に僕は、無我夢中で逃げた。
しかし、僕はただの人間だ。妖怪の方が足もスタミナも僕より勝る。そうして追いつかれ、食われる寸前に、空から一人の少女が降ってきたのだ。
それが、霊夢だった。
それは、戦闘などと言うべきものではない。蹂躙とでも言うべきものだった。ただただ圧倒的だった。彼女が闘っているのを見るのは、それが最初だったわけだが、それでも彼女の強さはわかった。
けれど、不思議と、彼女のことを「怖い」とは感じなかった。むしろ、僕はそれを綺麗だと、そう思った。どうせ、行く当てもないため、その場で頼み込んで神社に住まわせてもらっているのである。
落ち葉を掃きながら、その時のことを思い出していると、霊夢が戻ってくる。
「…あら、掃除してくれてたの」
「見えてなかったのかよ…」
どんだけ朝――もう昼だが――弱いんだよコイツ。いくら何でも寝ぼけすぎではなかろうか。
そんなこんなで、話しながら掃除をしていると、
「いよーっす。遊びに来たぜ」
少女が箒に乗って飛んでくる。彼女の名前は霧雨魔理沙。魔法使いである。
「帰って」
「おいおい、この神社は参拝客を追い返すのか?」
「参拝客ならお賽銭」
「いくらなんでも現金すぎだろ…」
霊夢に突っ込み、魔理沙の方へと声を掛ける。
「久しぶりだな、魔理沙」
「おう、久しぶりなんだぜ、鍵翔」
「それで、今日は何か用があってきたのか?」
「そうだそうだ、なんか依頼来てないのか?」
「ない」
「なんでお前が答えるんだよ…」
「まぁ、実際来てないしなぁ」
「ちぇー、退屈だぜ」
ぶーぶーと文句を垂れる魔理沙。
「平和でいいことじゃない」
「お、霊夢が珍しくいいこと言った」
「あんた、最近生意気言うようになったわねぇ…」
「おー、こわ」
「けど、なんだかんだ言って長い間妖怪退治してないだろ?」
「そうね。それが?」
「だとしたら、お前も結構……溜まってんだろ?」
魔理沙がニヤリと笑いながら霊夢に問いかける。
「お賽銭と同じく何も溜まってないわよ」
「全く、退屈だぜ」
「そんなに暇なら、鍵翔と一緒に掃除でもしたら? 善行積みなさい」
「参拝客に掃除させる神社なんて初耳だぜ…。お!」
「どうしたの…って」
霊夢たちの会話を聞きながら掃除を続けていると、何か来たようだ。
釣られて私もそちらへ顔を向ける。
「あ、あの」
一人の少女が立っていた。
見た感じ、人間ではないようだ。そうなると、妖怪になるのだが、見覚えがない。ここを訪ねてくる妖怪はある程度決まっているが、その中の誰とも合致しない。
霊夢も、同じことを思っているようで、少し、訝しげな表情を浮かべた。
そんなことを考えていると、少女がまた口を開く。
「博麗神社って、ここであって…ますか?」
「ええ、そうだけど」
「やった! やっと着いたー!」
今にも飛び跳ねそうな勢いで喜んでいる少女を見ると、なんだか毒気を抜かれたような思いになった。
「えっと…、お参りしてもいいですか?」
「お参りー? こんな巫女さんのとこなんざやめ「もっちろん! ささ、こっちこっち」痛ってぇな!」
魔理沙の発言を遮るどころか、物理的にも押し退けてその妖怪の元へと急ぐ霊夢。
「全く、酷いもんだぜ」
「目が完全に金になってるもんなぁ…」
妖怪の少女を賽銭箱の下へと誘導する事に成功し、はしゃいでいる霊夢を追いかける。
「……」
「ん? どうしたの?」
「いや、その…見てるんですか?」
「あ、そうよね。ごめんごめん」
妖怪の少女に指摘され、くるりと反対側を向く霊夢。しかし、少女が賽銭箱に向き直すのと同時に霊夢もまた振り返る。
(しっかり見るなよ…)
(ほんと、こういうとこだよなぁ…)
口には出さないが――出すと恐らく霊夢にしばかれるため――きっと魔理沙と似たような事を考えている。そんな気がしてならない。
「えっと、ご縁がありますようにって入れるんだよね…」
「ちっ…」
(舌打ち…)
「気のせい…かな?」
「気のせいなら良かったんだが」
「えっと…それっ」
お金を賽銭箱へと投げ込み、手を合わせ、目を閉じる。
「幻想郷の全ての植物が、元気でありますように……」
「それっぽっちの割に随分大きな願い事……」
うわ、やっぱりこの巫女最低かもしれない。
「えっ、あっ、や、やっぱりちょっと少なかったですか…?」
「え、あ、つい本音が」
珍しく霊夢も少し焦っている様子だ。いや、まあ、そうだろうなとは思うが。
「そ、そうね。もうちょっとあげた方が神様もやる気出るかも……」
「お前、さいってーだな」
「流石にそれは擁護出来ない、かなぁ……」
いくらなんでも、こればかりは酷いと思う。
「……。しょうがないよね。みんなの元気のためだもん……」
妖怪の少女が何かを口にしたと思うと、パサリ…と音がする。それは、誰が見ようとどこから見ようと正真正銘、札であった。
「え、あ、え? そんなに!?」
「おいおいやめとけって。そんな金、妖怪がそう簡単に集められるもんじゃ無いだろ」
「割とマジでやめといた方がいいと思うけど…」
霊夢は予想より大きい金を出されて焦っている。というか僕も正直焦っている。魔理沙も止めているが、少しだけ驚きと焦りが見て取れる。
「えいっ」
そんな軽い感じで札が賽銭箱へと飛び込んだ。
「これで、神様はお願いを聞いてくれるでしょうか…?」
「え、えーー、あーー……」
「お前のせいだぞー。どうする?」
「……霊夢、わかってるよな?」
「……。よ、よし! キャッ…お参りしてくれたんだし、私が少しお話聞いてあげようかな!」
それを聞いた妖怪の少女は嬉しそうに笑う。
「ほんとですか!」
「まあ仕事のうちだから。さ、上がって。お茶でも出すから」
「おう」
「あんたは呼んでないわよ」
圧が凄いんだよな、こういう時の霊夢。
「まあ、そうつれないこと言うなって。ちょうど退屈してたとこだし」
「そうだぞ霊夢。せっかく久々にここに来たんだしゆっくりして行きなよ」
「はぁ……邪魔だけはしないでよ?」
「ははー。巫女様の仰せの通りにー」
そう言って、僕達4人は神社の中に入っていく。
――これは、植物妖怪の少女と一人の青年のお話である。
どこまで原作を持ってきていいのか分からない
危なそうなら書き換えます