東方自然癒 ―鍵― 作:二枚目の葉っぱ
期末テストが面倒くさすぎるので初投稿です。
「はい、粗茶だけど」
「お茶をいれたの僕なんだけどね」
「少し黙ってなさい」
人数分のお茶をお盆に乗せて持ってくると、霊夢がそのうちの一つを妖怪の少女へと渡した。
妖怪の少女は受け取ったお茶をすする。
「おいしいです、お茶」
にこりと微笑む笑顔が眩しい。
「それは良かった。で、どうしてあのお願いの為にこの神社に?」
「はい。…あ、そういえばまだ自己紹介していませんでした」
そうして、妖怪の少女は何だか嬉しそうに自らの名を名乗った。
「
「葉…ねぇ? 随分変わった名前」
「じゃあ葉っさんだな、葉っさん」
「その深く腰を落としそうな呼び方はやめて」
「全くだ…」
「いいじゃん、強そうで」
「そういう問題じゃねぇだろ」
あっけらかんと言い放った魔理沙へと突っ込みを入れる。たまにコイツの思考回路はどうなってるんだと思う時がある――いや、幻想郷の住人は大体変人か。
「『瀬笈葉』か、いい名前だね。僕の名前は
「初対面で口説くのはどうかと思うわよ。私は
「恐ろしく速い口説き…私じゃなきゃ見逃しちゃうぜ。
「お前ら、後でシメる」
ほんとにコイツら一度地面に埋めてやりたくなる。
葉は霊夢の名前に聞き覚えがあったのか、オウムのように名前を繰り返した。
「博麗 霊夢、さん…」
「ん?どしたの?」
「あ、いえ…。えっと…異変を解決する巫女さん、ですか?」
「呼び方は霊夢でいいわ。確かに異変を解決してるけど?」
「私は魔理沙でいいぜ。ちなみに、私も異変解決は趣味だ」
「僕は錠でも鍵翔でも構わないよ。僕は霊夢に付いていく位だけど」
異変の解決。
幻想郷において、そこそこの頻度で起こるそれに対し、僕はこの家の事がある時は行かないけれど、特に用がなければ霊夢に付いていって見学させてもらっている。
「え、えっと…。じゃあ、さんづけで…」
(それにしても、魔理沙、さんも…異変解決するんだ…)
「私は葉って呼ばせてもらおうかな。で、どうしてこの神社までお参りに?」
「それが…私の住んでいたあたりの植物が、全部元気がなくなっちゃって」
「植物の元気が、ねぇ…」
「まだ冬には遠いぜ?」
寒くなって枯れたとかなら分からなくも無いが、生憎と今は冬とは程遠い。
「冬だって、植物は元気です。でもなぜか急にみんな元気がなくなっちゃって…」
「元気がないって…枯れていってるとか?」
「枯れていったり、話す気力が無かったり…。とにかく、元気がないって感じなんです…」
「話す、気力…?」
「植物って話すのか?」
初めて聞く言葉に困惑する。魔理沙も首を傾げている。
「はいっ! 向日葵さんなんか、夏は毎日熱唱してますよ!」
「なんか近づきたくなくなるな…」
「それは思っても言わないものじゃないかなぁ…」
やはり幻想郷の一員、という事なのだろうか。
このあどけない純粋無垢そうな少女でさえも、頭のネジが少し外れている様な気がしてくる。
「植物には詳しくないんだけど、病気とかじゃないの?」
「違います。そしたら私だけ無事な理由がありません」
「…って事は、葉は植物の妖怪ってとこか」
「ま、何にせよ行ってみればいいんじゃないか?」
「ここでダラダラ話してても何も分からないしね」
「そうね…。じゃあちょっと紅魔館でも行ってみる?」
『紅魔館』
そう、霊夢が告げた途端、魔理沙から尋常ではない汗が垂れる。
「え゛? ど、どうしてだ?」
「ほら、パチュリーとか結構知恵を貸してくれそうじゃない?」
「あー……。そう、だな……」
「…魔理沙、お前」
「いやぁ…。実はちょっと本を借りてきたばかりで…」
「だったら、ちょうど返しに…」
「葉、魔理沙の言う借りるってのは盗むってことだから」
「おいおい、ちゃんと借りてるぜ? 死ぬまでな」
「人はそれをパクるって言うんだぞ」
「とにかく! 他に行こうぜ!」
強引に話を切る魔理沙。どれだけこの話をされたくないのかは、どれだけ本を盗んでいるかに比例するとかしないとか。
「ダメですよ、借りたものはちゃんと返しておかないと。魔理沙さんに誰も貸してくれなくなっちゃいますよ」
((もう既にそんな感じだけどね))
「そうだ! 私も手伝いますから、一緒に本を返しましょう!」
「いや…家、散らかってるし」
「私、探し物を見つけるのは上手だってほめられました!」
目をキラキラと輝かせ、魔理沙へと詰め寄る葉。
「葉もこう言ってくれてるんだし、返したら? こんな時じゃなきゃ、ほんとに一生何もしないだろ」
「〜〜っ。わかったぜ…。後悔するなよ?」
「後悔するほどなのね…。まぁいいわ。じゃあ、まずは魔理沙ん家ね」
「ああ」
「だね」
会話を終え、その場に立ち上がり外へと向かう。
これから先何が待つのか、平凡で平穏な日々が過ぎ去りる予感、けれども、とても楽しくなりそうな、そんな予感が僕の胸を叩いていた。
◇
「こんにちは」
魔法の森に入って直ぐ。妖怪と遭遇して葉の第一声がこれだ。何とも気の抜けてしまう。
「…普通に挨拶した奴は初めてだぜ」
「え」
「うーん。結構、葉って扱いづらいわね…」
「ご、ごめんなさい…」
「ふふっ。僕は全然いいと思うけどね…くくっ」
「そんな事よりも取り敢えず、よそ見してると危ないぜ?」
「へ……ぎゃ!?」
のんびりとしていた所へ妖怪たちが襲いかかってきた。
「な、なんで」
「んー、それは下級妖怪同士で何か会話できないわけ?」
「…えっと」
霊夢にそう言われ、対話を試みる葉。
「魔理沙さんが嫌いみたいです…」
「また私かよ?」
「ぶはは! さっすが魔理沙!」
「とりあえず魔理沙のせいってわけね。全く…」
そう言うと霊夢は軽くため息をつき、構えた。瞬間に変わる雰囲気。ああ、そうだ。僕はこの瞬間が好きなんだ。
「ま、いいわ。いつも通りやるわよ」
霊夢が御幣を持つ手に力を込め、魔理沙は箒とミニ八卦炉に手を掛ける。
「葉はこういうの分かる?」
「な、なんとなくなら…?」
「そか、まぁそこの二人もいるし経験と思って気楽にやってみなよ」
霊夢と魔理沙から弾幕が放たれ、戦闘が始まった。
◇
「うーん…。まあ、最初はそんなもんだな」
「み、皆さんは…っ、余裕そう、です…ねっ……」
「慣れっこだからね、こういうの。葉もそのうち慣れるわ」
争い事が日常茶飯事な僕たちにとってはいつも通りでも、慣れない葉にとっては大変なものだったのだろう。酷く呼吸が乱れている。
「こっちはスペルカード準備してなかったけど、お前はどうした?」
「えっと…、そういうの全く必要なかったので…」
「スペルカードが要らないなんて、随分とのんびりしてる所に居たみたいだね」
幻想郷でスペルカードが無いなんてのはまず有り得ない。何処も彼処も妖怪だらけ、人里から離れれば、妖怪に会わない事の方が少ないくらいだ。
「ま、いいか。こういうのは私たちに任せとけ」
「は、はいっ」
「んじゃ、めんどくさい場所にある魔理沙の家に行きましょうか」
「そうだね、めんどくさい場所にある家に行こうか」
「お前らどんだけめんどくさいと思ってんだよ!」
「実際めんどくせぇだろ……」
そもそも魔法の森自体が迷いやすいのに、その奥深くにある魔理沙の家は正直言ってめんどくさい。
わざわざこんな所に来ないと行けなくなるなら、別の場所に行くのに加担した方が良かったかもしれない。
なんて事ない話をしながら、魔理沙の家へと歩を進める。
幻想郷へ来る前の記憶は殆ど残っていないが、少なくとも余り自然が豊かな場所には住んでいなかった。アスファルトとセメント、天に向け高く聳えるビル群、無機質な街並みの中で生活していた。
幻想郷での暮らしは、のんびりとしていてとても楽しい。これは霊夢のすぐ傍で生活しているからそう感じているのかも知れないが、僕にとってはどれもが新鮮で毎日の充実を感じている。
のんびりと思考をしながら歩いていると、二人が急に立ち止まった。
魔理沙の家はすぐそこという場所まで来たのだが、道を妖怪が塞いでいる。
「お、なんだなんだ? やる気か?」
「はふ〜…襲わないで〜…」
「襲うなよ
絶対にだぞ
襲うなよ」
「なに一句詠んでんだよ…」
「というわけでほら、構えて! 葉!」
「何がというわけでなのかは知らんが、来るぞ! 葉!」
「は、はいっ」
全員が武器を構え、戦闘態勢へと入る。
「まずは一発、行っけぇー!!」
魔法の箒に乗って魔理沙が突撃する。
優雅に飛行しながら、星の瞬く煌びやかな弾幕が放たれ、辺りを明るく照らす。
鳥の妖怪はその弾幕のどれをも交わし、悠々自適に飛び回っている。
「げ、全部避けられてるぜ」
「どこ狙ってんのよ。へたくそ」
「はわわわ! こっちに来ないでくださ〜い!」
「ちょお! 葉、回り見て! 危ない危ない!」
飛行する妖怪に迫られ焦ったのか、乱雑に弾幕を展開する葉によって、妖怪と共にその弾幕に巻き込まれてしまった。
「――ちっ! 弾幕避けながらでもこっち狙う余裕があるってか…! 舐めんじゃねぇぞ…! 霊夢!」
弾幕の隙間をすり抜け、こちらへと迫る妖怪をそのまま霊夢の方向へと受け流す。
「よくやったわ、これでお終い、よっ!」
霊夢へと肉薄する妖怪の懐へと飛び込み、至近距離からいくつもの弾幕を展開する。流石にこれは避けられない。衝撃で吹き飛ばされ、墜落した。
霊夢の弾幕に被弾した妖怪は、ゆっくりと飛行を再開し、こちらを睨みつけた。
「おいおい、ほとんど効いてないみたいだぜ?」
「困ったわねぇ…」
あの至近距離からでさえほとんどダメージを負っている様に見えない。
「ど、どうするんですか?」
「決まってるさ」
魔理沙が一呼吸置き、言った。
「――分が悪いなら逃走だぜ!」
「――そうね、一旦対策立てるべきね」
「――同意だ!」
それぞれ叫んだところで、妖怪から少しばかりの距離を取り、全力疾走でその場を離脱する。
「え、ええぇぇぇ!?」
「それ、逃げるぜ!」
「は、はやっ!!?」
僕たち三人は葉をその場に取り残し、一目散に逃げる。
「……え、えっと」
どこぞのメタリックなスライムもびっくりする速度で逃げ出した三人に意識を取られてしまったが、一応戦闘中。
ゆっくりと振り返ると、妖怪とばっちり目が合う。
……。
「ま、まってください〜〜っ!!」
三人に少し遅れて、葉があの場から離脱した。
「はぁっ! はぁ……っ!」
「ふふ、いい逃げっぷりだね」
やはり、そもそもの体力がほとんど無いのか、少し走っただけで凄く息切れをしている。
とは言え、これだけ逃げられるなら及第点だろう。
「しっかし、めんどくさいやつがいるわねぇ…」
「いつもならスペルカードで蹴散らしてるからな…」
「めんどくさいし、魔理沙の家は寄るのやめよっか?」
「えー、せっかくここまで来たのに?」
「そ、それに……っ! ほ、本をかっ……えさないと……っ」
「喋るのキツイなら無理しなくても大丈夫だよ?」
いつまでも息切れが治らない葉。うーん、やっぱり心配になってきた。この先ちゃんとやっていけるだろうか…。
「ほんとに体力無いんだな。それでも妖怪か?」
「はいはい、そういう言い方しない。あんたのことをここまで気にかけてくれてるってことでしょ」
「しっかしなぁ…。今のとこ打つ手なしだぜ?」
……。
「…はぁ。しょーがない、神社に戻って適当に倒せそうなの持ってくるわ」
「ここでパパッとやるってのは?」
「めんどくさい、だるい。そこまでして倒すとか嫌」
「お前……」
「それで、あんたら三人はどうする? ついてくる?」
「それもなんだかなんだかだぜー」
「わ、私は……ひぃはぁ……っ! ど、どう……」
「僕もどっちでもいいけど…。てか、ほんとに大丈夫? 葉」
どうしようかと迷っていると魔理沙が何かを思い出したように声を上げた。
「そうだ! そういえばこの前アリスの家に泊まったんだよ! そん時、スペルカードとか色々忘れてきた気がする」
「そう。なら魔理沙はそれを取りに行く?」
「ん、そうだな。葉もついてこい。また神社まで往復するの大変だろ?」
「は、はいぃ…」
「鍵翔、あんたはどうする?」
「んー、僕も魔理沙について行こうかな。神社まで戻るのもめんどうだし、魔理沙の負担が大きいかもだし」
「了解。じゃ、そっちはよろしく」
「おう」
それだけ言って、霊夢は颯爽と神社へ向かっていった。
「さて、葉は落ち着いた?」
「ふぅ…。もう大丈夫です」
「んじゃ、アリスん家に行くか。アリスん家はここから少し戻ってから北の方にある。分かりづらいように木で隠れてるんだ」
「分からなくなったらとりあえず北の方にある木に体当たりしてればいつかは着くよ」
「私もいっつも適当に行ってるから詳しい場所は覚えてないぜ!」
友達の家の場所くらい覚えろ、というのは魔理沙には酷なのだろう。コイツ色々と適当すぎんだろ。
「言いたいことは色々あるけど、とりあえず向かおう。あまりにも遅かったら霊夢に怒られそうだし」
「はい」
霊夢はこういう所意外とシビアだ。心が広いのか狭いのかよく分からない。
けれども、まあ、彼女は分かりづらいだけでとても優しい少女だ。なんだかんだ許してくれる――拳の一発や二発は飛んできそうだが――気がする。
僕たちは、話を終え、アリスの家へと歩き出した。
弾幕ごっこってなんなんだ(錯乱)
というわけで、弾幕ごっことか無視します。
いや、ほんとにごめんなさい。私の技量では書けないです…。
戦闘描写は、普通の異世界ファンタジーみたいな感じになると思いますので、予めご容赦ください。