リビングへの扉を開け、壁伝いに手を這わせやっとの思いで照明を点けた。室内を見回すと、テーブルの上に白い封筒が置いてあるのに気が付いた。
封を開け手紙を見ると、それが遺書であると気づくと同時に、目眩で足元が覚束なくなりその場にへたり込んだ。その狂気の遺言に、父親は気が狂いそうな程の深い絶望に苛まされた。
「お父さんへ
今まで迷わくばかりかけてごめんなさい。辛いことばかりの人生につかれてしまいました。さい近お父さんはシゴトで忙しくて会えない日がつづいてたよね。本当はもっとはなしたいことがあったけど、私のためにはたらいてくれて本当にありがとう。これからは私の学ひの分はたらかなくていいからね。
お母さんとは仲良くしてる? 夜おそくにかえってくるお父さんをいつも待ってたよ。早くかえってお母さんを安心させてほしいな。ばんごはん捨てちゃうのもったいないし。
そういえば、お父さん家に帰ってからもよくケータイいじってたよね。多分あれって誰かとメールのやり取りをしてたんだろうけど、浮気はだめだよ。お父さんにはお母さんという大事な人がいるんだから。
あ、私がいなくなったら家がちょっと寂しくなっちゃうかも。私けっこううるさかったから。あと、お父さん家事とかできないよね。一人ぐらししてた時から部屋とかシンクとかいつも散らかってたし。ごはんとかちゃんと作って食べるんだよ。コンビニとかスーパーのおそう菜とか頼りすぎないでね。
あのさお父さん、私がユーカイされてから何してた? シゴト? メモ置いといたのに、見てなかったのかな。思い出のばしょに来てくださいってかいたのに。忘れてしまいましたか?
昔のお父さんは私だけを見てくれていた。どうして他の女のところに毎ばん毎ばん通うのかわかりません。こんなにもあなたに尽くしてきたのに、私はなにかわるいことをしましたか?
あなたは娘を大事にしていましたね。私はあなたに愛されている娘にすらシットするイやな女でした。そんなあなたの大事なむすめはもう死にました。あなたのせいです。
一度だけわたしにチャンスをください。あなたはわたしをみかぎったのかもしれませんが、わたしはあなたをあいしていますから、きっとしあわせになります。こんどはげんきなおとこの子をつくりましょう。あなたにそっくりなかっこいいおとこのこです。
むすめのゆびの血がなくなったので、あしの血でかいてます。かくすうのおおいかんじはかくのがむずかしいですね。そうそう、むすめはシヌまえにあなたのなまえを叫んでいました。でもかなしまないでだいじょうぶ。むすめのはとつめをとっておいたので、ずっといっしょです。それと、むすめとやく束しました。おとうさんとすぐに仲なおりして、みんなでくらしましょうって。
あなたがなかなかこないのでむかえにいきます」
ガチャっと、玄関の扉が開く音がした。