翌日、俺は例の事件が起きた現場である渋谷のスクランブル交差点に来ていた。前までは色んなメディアがこぞってここで中継や取材をしており、色んなリポーターや出版社、SNSで写真を上げたりする人達で大勢いた。
「しかし、相変わらず嫌な空気をしているな」
怪人に変身する力を持っているおかげなのか、こういった嫌な空気を感じ取ることが出来る。そろそろこの異変を解決しないとめんどくさい事が起きるな……。
「鬼太郎が来なければ……俺が動くか」
6期はうろ覚えでどんなストーリーなのかほとんど忘れているが、この異変はゲゲゲの鬼太郎6期アニメの1話なのは覚えている。だけど、この世界に転生してわかったが……鬼太郎が待っていたらとんでもない事が起きる事もある。
「目星はついているから後は……」
「あ!おーいハジ兄〜!」
「ん?」
そろそろ動くかと考えていると、後ろからまなちゃんの声が振り向くとまなちゃんが手を大きく振りその隣で髪で片目を隠した少年がいた。あ〜鬼太郎さんじゃないですか〜噂をすればなんとやらで来たじゃねぇか。
「まなちゃん!と……隣にいる子は?」
俺は首を傾げながら鬼太郎の方を見る。初対面なのに知っていたら鬼太郎に怪しまれるからね……それだけは防ぎたい。
「聞いてよハジ兄!この子があの有名なゲゲゲの鬼太郎なんだって!」
「へぇ〜君が。始めまして俺は伏見 ハジメよろしくね」
「初めまして……僕はゲゲゲの鬼太郎。こっちは僕の父さんの」
『目玉おやじじゃ。よろしくのうハジメ君』
「おぉう…………」
鬼太郎が自己紹介をした瞬間、鬼太郎の髪の毛から顔が目玉だけの小人が現れこちらに右手を上げ自己紹介をしてきた。生の野沢雅子ボイスに痺れたけど……それ以上に目玉おやじさんの見た目が凄くてそっちに意識を持っていかれてしまった。
『まぁ、驚くのも分かる。誰だってこの姿を見れば驚くよ』
「アハハ……まぁ、普段見ているのが全てじゃないって俺の親父も言っていたので人間社会の裏では貴方のような人が多そうですね……」
にしてもインパクトが強いな……まなちゃんの話を聞くと、昨日出した手紙を読んだ鬼太郎がやって来て渋谷に出来た樹木……『吸血木』を解決してくれるらしく、異変の現場であるこのスクランブル交差点に来たらしい。とりあえず鬼太郎が事件を解決してくれるなら今回は出なくてもいいな。
「これが吸血木…」
吸血木を唖然とした顔で見上げるまなちゃんの横で、鬼太郎と目玉おやじが事件について話し合っていた。
「ですが父さん。吸血木を操る妖怪は、何百年も前に《カシャ!》封じられたのでは?」
「…………SNSに載せたら呪われるかもよ」
「うっ!辞めてよハジ兄!!」
鬼太郎が話している横でまなちゃんが吸血木の写真を撮っていた為、俺はニヤニヤしながらからかうと顔を真っ青にしながら慌ててしまった。相変わらずからかいやすい子だなまなちゃんは。
「ところでまなちゃん……じゃったかな?そのスマッシュ?便利そうじゃな……」
「スマホだけど…やってみる?」
スマホに興味を示した目玉おやじに苦笑いをして、自身の携帯のホーム画面を目玉おやじに見せる。興味津々なスマホを触る目玉おやじを横目に俺はある事に気づいた。
「確かその吸血木って何百年前に封印されたんでしょ?」
「それがどうしたんです?」
「なんで封印だけに留めたんだ?その場で祓った方が一番いいのに」
「当時の霊媒師たちは霊を祓える妖力は十分にあった。だけど、祓い方を知らなかった……祓えたとしても祓った影響で出てくる被害の事を考えて封印したケースもある」
「なるほどね」
俺の疑問に淡々と答える鬼太郎に俺はそう返す。祓い方を知らず封印するしかなかった、祓っても祓った事で起こる被害を考えて封印……昔の陰陽師や霊媒師達は大変だったんだな。
俺たちがそんな会話をしていると、目玉おやじが何かを見つけたのかボーッとしていた鬼太郎を呼んだ。
「鬼太郎!おそらくこれじゃ!」
目玉おやじの声に釣られて見てみると、YouTubeが開けられておりそこに1本の動画があった。
「あ〜チャラトミじゃん」
「あれ?ハジ兄知ってるの?」
「友人の弟が見ているちょっと人気のYouTuberらしい」
俺も気になって見てみたけど……迷惑行為や心霊スポットでのイタズラ行為などで個人的に好きにはなれないYouTuberだ。やっぱり時代はVTuberだ。うん、そうだそうだ。
「目玉おやじさん、とりあえず再生してみましょう。その画面一回タップしてください、それで動画が再生されますから」
「ふむ、こうかの?」
目玉おやじがチャラトミの動画を撮影するとチャラトミが何やら御札のようなものを勢いよく剥がし、御札が張り付いていた岩を持ち上げそのまま叩きつけ破壊した。
「阿呆……」
再生数欲しさにこんな事するなんて……再生数の為なら何でもする人間が増えてきているが、ここまでするとはな。
「バカモンが!のびあがりの封印を剥がしおったか!」
「のびあがり……?」
「なんですかその……のびあがりって?」
「妖怪だよ。吸血木の種を人間に植え付けるんだ」
「そ、それでみんな木になったの?」
てか、完全にこのチャラトミがのびあがりの封印を解いたせいじゃんかこの異変。そもそもチャラトミが木になったのは自分がやらかした事で自業自得だし助けたくはねぇけど……他の人も木になってるし助けねぇとな。
今、特典持ってるんだから助けてやれよとか器ちいせぇなとか主人公だから助けてやれよとか思っている人もいるだろうけどさ?俺、別に正義の味方じゃないから?今回だって他の人が巻き込まれてなければ自業自得としてこのまま放置しておくところだったぞ?
見返りを求めず誰かの為に助けるのは仮面ライダーの仕事だ、俺は怪人……自分の欲望で動くただの怪物だよ。
「ここからは僕たちがやる。君たちは帰れ」
「待ってよ!私が手紙出したんだよ!?ついてってもいいでしょ!?」
「ちょっ!?まなちゃん!」
この子小さい頃から面倒を見ていてわかっていたけどホント行動力あるよな!!''あの山での一件''があったのによく首を突っ込めるね!?
「まなちゃん危ないよ!もし何かあったら君もあの木みたいになるんだよ!?」
「それでも行きたいの!!」
も〜この子は!!こうなる前に動かなかった俺も悪いけどさぁ!俺が頭を抱えている中、鬼太郎は厳しさを増した目でまなちゃんを見据えている。
「…危険な目に遭うぞ」
「だから?」
「一度は忠告したからな…」
「さ・れ・ま・し・た!」
はぁ〜これは止めても無駄だな……安全なのは主人公君が居ることだ。主人公の鬼太郎がいれば何とかなるだろう。
「はぁ……ごめんね鬼太郎君。まなよろしくね」
「…………貴方も苦労しますね」
「まぁ、慣れたよ」
「どういうことハジ兄!?」
鬼太郎は俺の方を見るとお辞儀をし、そのまま歩き始めた。まなちゃんも俺の方を見つめた後鬼太郎の後を追っていた。
「……そんじゃ、頑張れよ主人公君」
俺はこれでのびあがりの一件が解決したかのように感じていたが……それを崩れ落ちることになるとは俺は気づいていなかった。
ーまなsideー
『にしてもまなちゃん、何故着いて来ようとしたのじゃ?鬼太郎が言うように危険な目に遭うんじゃぞ?何故、危険を犯してまで着いてこようとしたんじゃ?』
ゲゲゲの鬼太郎の後をついて行く私に目玉のおやじさんは私にそういい話しかけてきた。やっぱりまだ慣れないな〜。
「えっと……ど、どんな妖怪なのか気になったし鬼太郎の力になれればいいかなって思って!それに……もしかするとあの白い怪人さんにまた会えるかもしれないし」
『む?最後なんか言ったか?』
「あ、いやなんでもないよ!」
『そうか?じゃが本当に気をつけるんじゃぞ?危なくなったらすぐに逃げるんじゃぞ?君が亡くなったら悲しむ人も居るんじゃからの?』
「は、はい……」
ハジ兄も私が居なくなったら悲しむかな……って!なんで私ハジ兄の事を考えてるの!?ハジ兄はただの幼なじみのお兄ちゃんなんだよ!優しいし、かっこいいし……あ、この前クローバーに言った時スタイルのいい人に言い寄られてたなぁ……ちょっと顔を赤くしてデレていたのが気に食わなかったけど。
『ま、まなちゃん……どうしたんだじゃ?慌ててたと思ったら落ち込んで、急に怒り始めたのじゃが……」
「だ、大丈夫です!!」
私は驚いている目玉のおやじさんにそういいそっぽを向く。あの時以来の妖怪……どうなるんだろう……。
「(また白い怪人に会えたら……助けてくれてありがとうってお礼を言わなきゃな)」
私はそう考えながら鬼太郎の後を静かに追っていく。