成り上がり魔法使いアーサー   作:恒例行事

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デートというには感傷に溢れすぎている

 

「精が出ますね」

 

 唯一の休息日にペーネロープとティータイムを過ごした後、ただのんびりしているだけではもったいないので寮の中庭で魔法を捏ね繰り回しているときの事だった。

 

「フィオナ。珍しいね、ボクに話しかけてくるなんて」

「別に嫌っているわけではありません。ふざけた男だと思っていますが」

「それは嫌いって言うんじゃないかな?」

「人の感情は好悪だけではありませんよ」

 

 クスリと笑ってフィオナはボクの隣に腰掛けた。

 

「今日の用事は済みましたし、貴方さえよければ親睦を深めようかと」

「おお、大歓迎だ。一人で魔法を考えるのは夜でも出来るからね」

「……どうしてその真面目さが言葉に出ないんでしょうか」

 

 失礼だな。

 ボクはいつだって大真面目さ。

 真面目に生きてたら魔法の事だけを考え続ける生命体に成り下がるからそれ以外の事を考えるようにしてるだけで。

 

 まあそもそも昔ほど才能に溢れる人間じゃないし?

 これはボクの持論だけど、才能と努力は期限付きだと思っているからね。

 ボクはもう期限切れだ。

 

「ふふ、軽薄な男が裏で真面目に頑張ってる方がギャップがあってイイだろ?」

「そういう所なんですが……まあ、貴方らしいです」

「別に名前で呼んでくれたって構わないよ。ペーネロープなんて勝手に呼ぶようになったし」

「では、アーサーと」

「それでいい。それで、どんな事が聞きたいんだい?」

 

 フィオナは少しだけ考えるように視線を空に上げてから、十秒ほど黙った後に口を開いた。

 

「……少々デリケートな話題ですが」

「いいぜ、どんと来い」

「少しばかり不躾ですが」

「うん、気にしないよ」

「かなり失礼ですが」

「良いって言ってるじゃないか……逆に気になって来たぞ」

「冗談です」

 

 冗談!?

 

 驚くボクの事は無視して、そのまま視線を空に浮かせたまま続ける。 

 

「ライアン。この名前に覚えはありますか?」

 

 ――――ふむ。

 これはどのパターンだろうか。

 ボクが昔やんちゃしたときにやらかしたのか、それとも純粋にボクの知り合いか。

 ライアン。

 ライアンか……

 生憎名前を教え合うような仲になった人はほぼ居ない、というかここに来るまでゼロだと言っても過言じゃないくらいなので全く身に覚えがない。

 

「ごめん、わからない」

「……そう、ですか。多分、人違いではないと思うんですが」

「フィオナさえよければ教えてくれるかい? もしかしたら思い出せるかもしれない」

 

 ま、十年以上前の魔法を思い出せるのがボクだ。

 可能性はゼロじゃない。

 

「……ライアン・アルメリア。元アルメリア家当主で、貴方と同様に国家代表に選ばれたうちの一人です」

「……………………ああ、わかった。お節介な人だった気がする」

「そうですね。あの人はそういう所がありました」

「アルメリア……ってことは、フィオナの身内だよね?」

「はい。私の兄です」

 

 兄。

 あー、そう言われればそんな感じの人だった気がする。

 だってあの人常にお菓子持ち歩いてたし。

 子供に渡す用だって言いながらボクにもよく渡してくれた。

 おかげで糖分には困らなかった。

 

「ライアン・アルメリアは、帝国で国家対抗戦を終えた後に失踪しました。今も所在が知れません」

 

 う〜〜〜〜〜ん……

 困ったな。

 これ重たい話じゃないか?

 

「そう……なんだ。ボクも似たようなものだったけど」

「私は。兄が一度や二度、圧倒的な力に敗北したとして心が折れる人だとは思えませんでした」

 

 それは確かに、そうだったかも知れない。

 大人の人だった。

 なんというかこう、余裕を持ってる人だった筈だ。

 コテンパンにされたボクを励ましてくれたような気もする。

 

「帝国との戦いで一体、何があったのか……聞いてもいいですか?」

「構わないよ。ボクの主観が混ざるから正確ではないけどね」

「それで大丈夫です」

 

 さて、何から話したものか。

 色々あったんだけど、ボクも全容を覚えているわけではない。

 改めて言われると困るな。

 

「…………うん、一つ一つ思い出して行こうかな。ちょうどいい機会だ」

 

 そっちの方がフィオナにとってもいいだろう。

 無駄で余分な情報が時として心を救う時もある。

 

 今日は長くなりそうだ。

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