蒼輔、冬美、鈴奈と3人で遊んだ日のあの後……
「(今日は久しぶりにはしゃいだわ……)」
冬美はあの後、今日蒼輔達と過ごした時間が楽しかったようで満足していた。彼女も中学時代でも楽しんだことはあったが、大抵は男子の目線に不満があったので正直居心地が良くないと思っていたのだった。
「嘉義君……」
冬美はあの時に3人で撮った写真を眺めてそうつぶやいた。
「(嘉義って誰なのかな?冬ちゃん)」
何気なく吐いた一言がまた別の誰かの好奇心を動かしたのだった。
「(穏やかだな……)」
今は昼休み、各々が自由に過ごす。友人や隣人と昼食を食べる者や、校庭なので球技に熱を入れ楽しむ者、図書館で本を読むなど過ごしたいように時間を使っている。因みに僕は飯を食べ始めようとしていたところだ。
「(んっ?)」
気のせいだったのだろうか、廊下の方へ目線を向けたら誰かが隠れるかのように壁に身を隠したように見えた。一瞬だったので男子か女子かどうかまではわからなった。
「嘉義君、どうかしたのかい?」
「あっ、いや光波、何でも無いよ。そっちもどうしたんだ?」
「いや、昼飯を一緒に食べないかと思ってさ」
「そうしようか」
「ふーん、あの子が嘉義って子なんだ」
時間が経つのは早いものでもう金曜日を迎え、僕と白露はいつもの通り図書委員としての業務に取り組んでいた。白露は今、カウンターにて本の貸し出しの手続きを行っている。一方で僕は場所が分からない本達を元の場所に戻していた。一つ付け加えると、水本の図書館は広いために読んだは良いけど戻すのが面倒ということなので自分で戻さないという生徒が一定数いる。そのため図書委員や司書さんがこれらをもとに戻す必要がある。
「(さて終わったしカウンターに……ってまたなのか)」
今日もまた感じた視線、一体何なのだろうか?別にそんな怖い見た目をしているとは思っていないので気にせず声を掛けて良いと思うのだが……
「(奥の方へ隠れてみるか)」
ここから、誰かの視線と僕の小さな戦いの火ぶたか切られた。
「(一体何を目的にこんなことをしようと思ったのだろうか?)」
かれこれ10分くらい格闘しているが、視線の主が全く分からない。気のせいならばこっちが恥ずかしい思いをするだけで済むのだが、違っていたらそれは気持ち悪い。おまけに図書委員の仕事もあるので早く戻らないと白露にまた怒られる。
「(本当に僕への視線だったら少し気持ち悪いかも……)」
トントン
誰かに肩を叩かれたようだ。もしかすると白露が怒ってきてしまったのか、本の位置が分からなくなった生徒が整理のお願いをしに来たのかもしれない。そのため、後ろを向くと……
ぷすっ
「……はっ?」
「っふふ。引っかかった~」
僕の予想を大きく裏切るような答えだった。振り返って見えた人は白露でもなく、本のことで相談に来た人でもない、何故か頬に指を指されていた。何のために悪戯じみたことをしているのかわからないが、それが上手くいって喜んでいる女子生徒がそこにはいたのだ。
「あの……何か用ですか?本の場所が分からないのなら教えますよ?」
「ううん、私本のことで君に尋ねてきたわけじゃないから」
「なら、何をしにここまで?」
「それはね……まぁここよりも静かなところで話すよ」
「は、はぁ……」
一体何を考えているかは分からないが、僕に用があることは分かったのでその女子生徒についていく。
場所はさほど変わらず図書館の中、しかし場所は入り口やカウンターから離れた古書が置いてある場所のソファが並んでいるところに彼女は連れてきた。もう図書委員になって一か月半近く経つがここに来ることはあまりない。それに遠いためここに来る人も多くはない、そのため今は僕と謎の女子生徒の二人だけの空間になっている。
「こんなところに連れてきて、本当に何なのですか?」
「随分引っ張っちゃったからね、今度はちゃんと話すよ。実は私の妹のことでね」
「あなたの妹ですか?何か怒らせるようなことを僕はしましたか?」
「ううん、そうじゃないよ。正直に言えば妹から君の話を聞いて興味を持ったって感じかな」
「そうですか……」
一体誰の姉なのだろうか?交流のある隣人で姉がいると聞いたのは正直いなかったような気がする……しかし、僕の名前を知っているので同じクラスの人間であることは間違いない。
「私の妹はね、昔から下心丸出しの男達に言い寄られることが多くて、あまり男子と仲良くなろうとか思わない子なの。けれど水本に入学して何か今までとは様子が違ってきて、それで聞いたら君のことを知ったんだ」
「妹さん、そんなことがあったんですね。そう考えると、僕は数少ない異性での友人って言って良いかわかりませんが、そういう認識を持ってもらえていたんですね」
「だからね、それには私も驚いたの。君がどんな人なのかってね。正直言えばイケメンで男前って思っちゃっていたけどね」
「特にビジュアルが良いとは思ってませんけどね……正直言えば普通よりちょい上って認識でいます」
「妙に自信ありげに言うね。まぁ悪くなさそうだしね」
これでもう少し男前な顔していたらどんな反応されるか正直気になる、なんか情けなくなってしまうが。そろそろこっちも本題に入りたい。
「結構延びましたけど、あなたは一体誰のお姉さまなのですか?」
「やっぱりわからなかったかー。まぁそうだよね、正直言っちゃうと私と冬ちゃんってほとんど似てないから一緒にいて姉妹ですって言ってもそう思う人いないからさ。もう私の名前も言っちゃうね」
「私はしらつ「嘉義君、お姉ちゃん。こんなところで何をしてるのかしら?」
「えっ?」
ようやく名前を聞けると思ったのに妨害が入ってしまったが、その声は間違いなく白露だった。振り向かなくても大体わかる。しかし、それよりも驚いたのはお姉ちゃんという言葉が聞こえたことだ。
「もしかして、あなた白露のお姉さんですか?」
「正解!そうなんです、私は白露冬美ちゃんの姉、白露楓と言いまーす!」
「嘘!?」
本当に姉妹なのか?と疑ってしまうほど似ていない。妹とは全く違い姉は薄く橙色で少し大きめの瞳、ミドルの茶髪、体つきはスレンダーのようだ。見た感じ妹はクールで品がありそうで、姉は本当に明るく表裏があまりない純粋な女の子という感じだ。
「そう言えば初めて会った頃に姉がいるとは聞いていたけど、まさかあなただったとは。本当に真逆のような存在ですね」
「そうでしょ、これでも血はつながった妹なんだよ」
「驚きますよ本当に」
「立ち話も良いけどそれよりも嘉義君、まだ図書委員の活動時間でしょ?早く戻るわよ」
「そっか、君も冬ちゃんも図書委員だったね。じゃあ終わったらお話しようよ、まだ嘉義くんと話したいからさ」
その後、図書委員の活動時間を終えた僕たちは別のところ……ではなく、先程白露のお姉さんと初めて会ったところに戻り、ソファに座り続きの話をしていた。
「それにしても驚いたよー。まさかあの堅物の女版ともいえる冬ちゃんの気を引くなんてね。どんな手を使ったの?」
「手って言われても……成り行きでこうなっていったわけですから、特別なことは無いですよ。だよね?」
「そうね、でも学校で声を掛けたのは私が先よ。お礼も言いたかったから」
「お礼?冬ちゃん何か嘉義くんにしてもらったの?」
「ふふっ、あの時痴漢から助けてくれて、しかもあの後何かあったら助けるって言ってたもの」
「え、そんな一面があるの嘉義くんって!?」
「あの時は咄嗟に動いたってのもありますしね、でもあれを言ったせいで逃げ道塞いだと思っていますよ」
「やっぱり思ってた以上の男って感じがするよ。だって冬ちゃんや私に近づく子ってみんな下心丸出しなんだもん。そう考えると君はそっちよりも良心が勝ったって感じだよね」
どうやら2人は昔からそんな彼女たちを自分のものにしたいとか、そんな思いを持つちんけな人間たちに悩んでいた。確かに僕もあの件が無くそのまま教室で出会っていたら、間違いなくそちら側の人間だったと思う。仮にそうでなかったとしても図書委員としての関係のままだっただろう。
「だから、初めて会ったときにああ言われただけでも嬉しかった。ありがとう嘉義君」
「私からもお礼を言わなきゃね。ありがとう、冬ちゃんを助けてくれて、しかも一緒にいてくれて」
彼女らは少し微笑みつつも落ち着いたトーンで僕にお礼を言った。お姉さんの方は先ほどとは違い少し真面目な雰囲気を出しているようだった。こうやって見ると二人とも綺麗な人だと改めて思ってしまう。
「い、いえ。元々良心で生きているようなものなのであまり気にしては無いですよ。見返りを強く求めようとするわけでもないしその人のためになったらそれはそれでいいと思っていますから」
「そんな事言って~、でもよかったかな。君みたいな人が仲良くなってくれるのは」
「ありがとうございます。それにしてもお姉さんも白露みたいに整ってますよね。本当に楓の葉のように明るいときもさっきの真面目な時の表情でも綺麗だったので」
「ふぇ!?」
「ごめんなさい、名前が楓なので変わっても絵になる表情を見ると本当にそう思ったのでつい」
「はははっ何を言ってるのかな君は!お姉さんをからかっちゃだめだぞ~」
あの後僕と白露姉妹は少し話していたものの、今日は夜に本邸でまた紅一と2人だけで修練が入っていたので長居はせず別れることにした。前に姉がいるとは聞いたものの全く似つかないほど違っていることにも驚いた。雰囲気だけで見たら従兄弟の姉のように見える程だった。
「(また会ってみたいものだ)」
今日初めて見た感想は、中身は少し特殊な子だなと思う。周りの男子とは違い良心が勝っているといってもいいほど下心が見えない。
「(あんなことを言われたの、久しぶりだったな……)」
私が驚いたのは彼に言われたあの言葉だ。あんな風に言ってくれる人は正直少ない。何故なら同じように綺麗で頑張ってもほとんどが妹の方に流れてしまうのが普通のことだった。だから正直言うと妹が男たちに言い寄られたと聞いても嫌気が指していた。おまけに女友達や私に声を掛けてくれる人も結局は妹が目的の人もいたのだ。だからあの時に言われた言葉が、正直嬉しかった。勿論、あんなことを言われたことが無かったわけではないが、妹に近づくための言葉では無かったのがより嬉しさを増したのだ。
「(こんなことで嬉しくなるなんて、なんか惨めだな……冬ちゃん、羨ましいよ……)」
彼女はこの思いを誰にも打ち明けないまま、一人眠りにつくのだった……
お久しぶりです。以前の投稿からかなり時間が経ってしまいました。今回は冬美の姉白露楓が登場しました。妹とは全く性格も見た目も違う彼女、勿論人生や見てきた景色も全く違っています。ここでですが、紹介をさせていただきます。
16歳 ヒロインの一人で冬美の妹で高校2年生。冬美とは全く異なる見た目をしていて楓の場合、髪は茶髪にわずかにオレンジが混ざった色合いで長さはミドル、瞳は黄色。スタイルは冬美より控えめではあるがスレンダーといえる体つき。クールで上品な冬美とは違い、天真爛漫で明るい女の子。冬美と同様勉強には力を入れている。