4月……それは新しい出会い、そして新たなる旅立ちの日を迎えることが多くなる暖かな月。期待や不安、可能性を胸に秘め未来に向けての第一歩を踏み出す者が一番多い月でもある。…のはずなのだが、一人そのスタートを盛大にずっこけようとしている蒼い瞳を持つ少年がいた。
「…しまった…!荷物崩したおばあちゃん助けていたらものすごい時間が掛かってしまった…!にしても何であんな朝っぱらからたくさん果物なんか詰めて出かけようとしているんだ……!」
手短に自己紹介する、僕は嘉義蒼輔今日から高校生活をスタートするはずだったのだが、しょっぱだから遅刻の危機に陥るという最悪な状態に陥ってしまった。っえ?嘉義って名前が気になる?それは今話せる余裕はないんだ……。話すと長くなるし、無駄に体力を使うから!とにかく僕は今駅へ走っている。
「くそっ!…今日は登校初日だから早く着こうと思って早く出たのに…!まぁお礼で千円くれたから大目に見るけど!」
ただ愚痴を吐きながら駅へ急ぐ、このペースで走れば遅刻しないで済む!…そう思っていたのだが今日はとことんツキに見放されているようだ…
「キャッ!」
「うわっ!」
なんてことだ……、急ぎすぎて早く走るあまり角で女性とぶつかってしまった。しかもそのはずみで女性のカバンから荷物があふれ出てしまいそれを拾わなくてはならなくなってしまったのだ。
「申し訳ありません!お怪我はありませんか?」
「ケガなんかないわよ!あーもう!私だって急いでたのに!」
女性のほうも急いでいたのだろう、かなり息が上がっていた。もうすぐ間に合うと思った矢先僕とぶつかってしまい、しかも荷物をめちゃくちゃにされたら怒るのも無理はないだろう。とにかく荷物を回収して女性に渡す、今やらなければならないのはそれだけだ。
「このバッグ高かったんだから!傷ついていたら弁償させるところだったんだから運がよかったって思いなさい!」
わざとじゃないにせよその言い方はないのでは?と心で思うも原因を作ってしまったのは僕なのでそれを聞きながら荷物を集める。何とか集め終わり女性にもう一度謝ってもう一度走り出す。もう猶予はない、次の電車に乗れなければ遅刻確定である。
「はぁ…はぁ…、まずい!電車がホームに入っている!」
全力で走ったことで何とか駅にはついたが、ホームに進入している電車に気が付きもう一走りしなくてはならなくなった。しかもこの駅は急行停車駅なので混雑する前にホームにたどり着かなくてはならない。階段の中腹あたりから人が流れるように降りてくる、この波にのまれたらいけない!ここで最後の踏ん張り、最後のダッシュだ!何とか間に合った、僕が乗り込んでわずか1,2秒後に扉が閉まった。
「(はぁ…はぁ…間に合った、朝からもう疲れた……。今日は踏んだり蹴ったりの朝だった……)」
もう朝からへとへとだ、人を助けたり怒らせてしまったりともう学校つくまでは何事もなく過ごしたいと心の中で思うのであった。
その後は穏やかな時間だけが過ぎていた。車輪がジョイントを過ぎた後に出る音、揺れる車内、そしてこの中に差し込んでくる日差し、触れそうで触れない人との間隔の中にいる感じ、満員電車の車内はこれらの感覚を一度に味わえる場所だ。満員電車の中が良いかと言われると良い訳ではないが朝らしい時間を過ごせる場所でもある。
急行だったので十分くらいで乗り換えの渋谷に着いた。その後は代々木まで環状線に乗り、そこでまた乗り換えをしなくてはならない。学校があるのは都心の真ん中辺りなので、まぁまぁ混雑した電車に揺られることになる。
「(何だ?)」
視線を感じたのでその発信元を探る。見た感じはいつもの通りで新聞を読むおじさん、携帯をいじる人と何の変哲もない車内、だけど何か微妙に違和感があった。見つめているとかではない「助けて」というメッセージを込めた視線のように感じた。そしてドアの近くにいる女子高生からの視線であることが分かった。
「(あの人か)」
元を見てみるとそこにいたのは肌や髪が雪のように白い女性だった。まるで白雪姫と言ってもよいくらい白く、そして美しい、おとぎ話に出てきてもおかしくはないそんな女性だった。驚いたのはあんな容姿でまだ高校生であることだった、そんな人が何故SOSを求めているのだろうか?少し様子を見てみる……その理由ははっきりわかった。
「(前の男、やっているな)」
白い女性が助けを求めていた理由はそう、痴漢だった。満員電車で監視カメラの無い車両だったからなのか行為に至れると考えていたのだろう。僕ははっきり見た、男が彼女の下半身を触っている瞬間を。あそこまで触っていれば制服にも指紋はばっちりつくはずだ。
「そこのアンタ、話があるから次降りて下さい」
「はぁ?いきなりなんだよ?」
「今、そこの女子高生の下半身触ってましたよね?ばっちり見ていましたよ」
「何言ってんの?俺が?なら証拠出せよ。」
「良いですよ、その代わり警察署行って彼女の制服から指紋とったり証言聞いたりするんでそのあとで」
「なっ!?たかが体触っただけだろ?それだけでそんなするのかよ!?」
「さっきの余裕っぷりはどうしたのですか?無実ならそんな動揺する必要ないですよね?それに今聞きましたね、皆さん?」
「何言って……、あっ!」
この男今自ら犯行を認めるようなことを言った。まったく簡単に自供してくれたからあとは駅で警察に突き出せば終わりだと思ったが……
「くそっ!」
「「!?」」
何と腹いせにか被害者である彼女を襲おうとしたのだ。これには反応が追い付かず
「お前のような奴がいるから男は手を出したくなるんだ!高校生のくせにエロい体しやがって!」
「嫌!やめて……!」
もう勘弁できない!彼女は恐怖のあまり怯えてしまっている。素直に認めれば黙ってようと思っていたが、この男は一度牢屋に入れてやったほうがためになるな!見てられなくなったので止めに入る
「やめろ!」
「おぅおぅ、高校生のくせにヒーロー気取りか?」
静止のために2人の間に割って入るも胸倉をつかまれてしまう。だそんな程度で引き下がるわけなどない
「何だよその目、随分と余裕じゃないか?」
「怖さは無いですね。むしろそのくらい?って感情のほうが強いですよ」
「言ってくれるじゃねぇか」
「あ、危ない!」
その男は僕の胸倉をつかんだまま殴りかかった。しかし男は油断していたのだろう、蒼輔の胸倉をつかんだままのせいで反撃の隙を与えていたのだ。
「ではこっちの番だ!」
「!?」
僕は掴みかかった左手を拘束して、さらに動けないように締め上げた。
「あああああ痛い痛い!勘弁してください!自首しますから離してください!」
「謝る相手は俺じゃないだろ!あなたが謝罪しなければならない相手はそこの女性だ!」
「わかりました!だからこれを解いてください!」
今拘束されている状態から逃げようとする男をこっちも体重と力をかけて抑えていると女性のほうから
「あっ、あの……!私はもう大丈夫ですよ。その方ももう反省しているみたいですし」
「本当に限界です!もうこれ解いてください!」
流石に男も観念したのだろうか、先ほどまでの強気の姿勢はもうなかった。彼女ももう良いというので少しは手加減しよう、もう駅に着くし。しかしそこで油断してしまった……
「うわっ!」
一瞬の隙だった。男は扉が開いた瞬間、僕の手を振り払い逃走した。追いかけようとも思ったが振り払われた際にその勢いで倒れてしまった。これではもう追い付けない、残念だがここまでのようだ。
「くそっ逃がしたか、もう追えないか」
悔しがる自分に先ほどの女性が声をかけてきた
「あの、先ほどはありがとうございました」
「いえ、感謝されるようなことをしたわけではないので大丈夫ですよ」
「そんな!あなたが気付いてくれなければ私はもっと怖い思いをしてましたよ」
「僕もあなたがその視線を発してくれなければ助けることもできませんでした。ってあれ?」
今までとっ捕まえることで頭がいっぱいだったから気が付かなかったが、この制服どこかで…あっ…
「あの、もしかして水本高校の方ですか?」
「はい!その制服ってことはあなたもじゃないですか?」
「実は僕もそうです。まさか同じ学校の人だなんて、さっきのことで頭がいっぱいになっていてすぐに気が付かなかったですよ。じゃあ学校まで一緒に行きませんか?」
「本当ですか?そうさせてもらいます。エスコートよろしくお願いしますね。」
まさか同じ高校だったなんて。どうして今まで気が付かなかったのだろうか?何かに夢中になるとこんなこともあるのかと思わされる。こんなわけで僕は彼女と学校まで一緒に行くことになった。
「あなたみたいな美しい人と同じ高校とは驚きましたよ。なんでか嬉しい気分になります」
「私も同じです。あなたみたいな勇敢な人が同い年にいるだなんて。正直かっこよかったですよ」
「ありがとうございます。昔から困っている人をそう簡単に見捨てるなって教わってきたものでこれが役にたつと嬉しいです」
こんな感じで互いをほめあい、学校へ向けて歩いている。この学校に入って最初に話した人がこんな綺麗な人とは今日はやっぱり運が良い日だ。
「やっぱり怖かったですか?」
本当は明るい話をしていたかった。しかし彼女の様子を見ていると明るくふるまっているようにも見えるが、さっきのことがあったせいなのか少し暗い感じが残っていた。
「はい、親やいろんな人がああいったことには気を付けてって言いますけど、もし自分がその対象になったら怖いですよ……。いざ声を上げたくても誰も助けてくれなかったら猶更……」
彼女はそう言うと少し震え声になっていることに気が付いた。無理はないだろう、だって見ず知らずの男に体を触られたのだから。だから彼女のために一言かける。
「もし助けや手を借りたいときはいつでも言って、力になるから」
「本当ですか?本当に何かあったら頼って大丈夫なんですか?」
「あぁ」
僕は真剣な目で彼女にこう言った。勿論弱っているところに付けこもうとか下心があって言っているわけではない、本当に力になろうと考えているからこそ言ったのだ。
「ありがとうございます。初めて会ったばかりなのにここまで尽くそうとするなんて、あなたは何でそんなことが?」
「さっきも言ったでしょう。今までそう生きてきたし、困ってる人をそう簡単には放っておかない主義だって。それに……」
「それに?」
「あなたみたいな美しい人を放っておいたらきまりが悪いし、自分が許せないっていうか。あなただけを特別扱いするわけではないですけど、同じ学校の人だから余計放っておけないっていうか……」
今僕は何を言っているのだろうか?さっきは下心ないって言ったのに美しいとかクラス同じだとかいかにもあなたを狙っている感出ているし、何やってるのだろう僕は?そんなことを考えていたら彼女の様子が……
「…………」
あれ、何でかわからないけどこの子顔赤くなっている。しまった、さっき本人の前で美しいなどとか言ってしまったからか……
「と、とにかくよろしくお願いします!じゃあ!」
「あっちょっと!まだ名前……!」
あー、顔赤くして走っていってしまった……。相談にのるって言ったのに肝心の名前をお互い言わないでこの時間が終わってしまった。最悪、学校を探して聞くしかなさそうだ。
朝から面倒事ばかりあってもうへとへとだが、なんとか遅刻せずに学校に着くことができた。10分前、まぁまぁな時間である。ここ水本高等学校は公立校でありながら施設は充実していて屋内プール、トレーニング施設、理系向けの機材も数多くある学校だ。しかも上位校でもあるため結構進学や勉強に力を入れる学校でもある。トップ校ほど厳しい学校ではないにせよ、同じランクの公立、私立の中でも人気でハードな学校だ。今日から僕はこの高校での学生生活を過ごすことになる
。
「(クラスはE組だったな。5階だからこのフロアであっているはずなのだが)」
ここ、意外と広くて僕たちの教室がある本館は6階建てだ。3階から5階が教室になる。結構生徒数も多いため1学年の人数も3百人近くいるため、廊下も人で混んでいた。
「(あっ、ここか)」
混んでいる廊下を歩いてようやく見つけた自分の教室。入学式で一回来ているはずなのだが、土日を挟んだ2日間で忘れてしまっていた。教室に入ったら何か見覚えのある姿をみた。蒼輔は驚いたであろう、何故ならそこには……
「(あれ?!朝電車であった白い女性だ……!まさか同じ学校でクラスまで一緒だなんて……。って入学式の時もこのクラスにいたな、2日前のこと忘れてしまったのか)」
自分自身も呆れるしかなかった。一度見ていたはずのクラスメイトのことを忘れてしまっていたのだから。もし彼はこのことを覚えていたら先程の時間で仲を深められることができたのではと呆れと同時に悔しさが残ってしまった。それにしても白い女性は座って本を読んでいるだけでも絵になるような姿だった。もしカメラがあればその姿を1枚撮りたいくらいの美しさがそこにあった。
「(まぁでも、クラスが一緒なわけだしこの間に彼女と仲を深めていこう)」
そう思っていたのだが、ホームルームが始まるまで動くこともできずただ自分の席で過ごすだけであった。やはりあの時間のうちに自己紹介と仲良くなりませんか?は結構ハードルが高い。そんなわけないと思っていた自分がいたが結局同じ分類だったようだ
ホームルームが始まったのだが、入学式の時の先生とは違う人が来た。一体どうしたのだろうか?
「本日E組の担任である杉原先生は体調不良でお休みなので今日は代理の私がホームルームを仕切らせていただきます」
何だ、今日は欠勤しているだけか。学校が始まってすぐに担任の先生が変わることなんてあるのかなんて考えたがそうではないため安心した。そのまま代理の先生は今日の予定を淡々と生徒に伝えていた。
「次は始業式になりますので体育館に向かいます」
どうやら次の1時限目にあたるこの時間は始業式になるようだ。さっき予定を話していたのでわざわざ言わなくていいよと思うがと、そんなことを考えながら自分の席を離れ移動するために廊下に向かった。
早く彼女に会いたいという感情を抱きながら
読んでいただきありがとうございます。初回なので今日出てきたキャラクターの紹介をさせていただきます。
本作の主人公で名前の通り、蒼のような緑と青を混ぜたような眼を持っている。ルックスは普通なのだが、身長はあり運動は出来る。過去の悲劇や出来事によって周りの人間よりも良心や倫理観を重視しており、それに伴った行動をすることが多い。しかし、感情の起伏が急に変化するとそれを投げ出してしまう欠点もあるが私欲のための行動になることは少ない。父の影響もあり自動車が好きで理系を目指している。
本作の主要キャラクターで、蒼輔のクラスメート。まるで雪のように白い長髪と体、その美しい容姿から男子の大半を虜にしてしまい、ラブコールを受けたことがない年が無い。とても大人しくクールではあるが、テンションが上がると結構明るくなるため意外なギャップがある。勉強や料理はしっかり出来、本を読むのが好きなので図書館にいることが多い。
その話で新しく登場したキャラクターはこのような形で紹介していきます。