良心と痛み、愛する気持ちがあるから   作:戦場を翔ける天使

3 / 16
 
 前回までのあらすじ
 痴漢から助けた女子高生である白露冬美がまさか同じ高校であったことと、しかも同じクラスの生徒であるという2つの事実を忘れていた蒼輔。何とか接触しようとしたがうまくいかず、始業式の後に持ち越しになってしまった。そのため、蒼輔は長い始業式が終わるまで待つことに。

 

 


新顔とセカンドコンタクト

 

 

「(……長いな)」

 

 

 始業式とか何かの式の時ってだいたい長く感じる。校長先生の話を聞くだけでなく、いろいろなことをするので退屈しやすい。実際校長先生も5分近く話しているし何故あんな長い時間を話せるのだろうかと不思議に思ってしまうことがよくあるが、時々そういったところを解明したくなる衝動が走ることもある。

 

「では最後に生徒会からお話があります」

「(これで終わりか)」

 校長先生が最後に例をしてステージから降りる。そして生徒会長がステージに上がる

「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。私がこの学校の生徒会長を務める栗原安治と申します。この学校にはとても優しい先輩や先生方が多くいらっしゃり、そして皆様の高校生活を豊にする施設や設備を多くそろえております。皆様の学校生活を楽しく、素敵なものにするべく我々生徒会も全力でサポートさせていただきます。皆様この学校で素敵な思い出と学生生活を育んでいきましょう!御清聴ありがとうございました」

 会長のスピーチが終わり、会場は静まり返った。これで始業式はおしまいである。さて、次は最初の対面となるであろう自己紹介だ。

 

 そういえば栗原って苗字、何かで聞いたことがあるような?……

 

始業式が終わったあとなのだがやっぱり静かだ。2,3年生はある程度の交流はあるから話したりはするのだろうが僕たち新入生となるとまだお互い誰なのか知らないので話す勇気が無いのだろう。そのため話そうにも話せないで時間が過ぎていく。

 

 教室に戻り少し休憩が入る、どうやら2限目にあたる時間に自己紹介をするのだろう。10分間が休み時間なのでその際に誰かに声をかけてみるのも良いかもしれない。それならば、朝の白雪姫に声をかけたいところだが、クラスの男子の視線はやはり彼女のほうに向いていた。

 

「(今はやめておいた方がよさそうだ)」

 

 クラスの男子の殆どが彼女に興味があるようだ。確かに、肌や髪が白くしかも美しい、こんな人がいたら男性はほぼ間違いなく興味をもつだろう。僕もその一人だ。

 

 

「(しかし、いつ声をかけるか?今は難しいから自己紹介の後?、それとも誰も声かけないうちに攻めてみるのが良いか?)」

 

 タイミングを図るが、中々難しいものだ。しかし彼女は朝のことを知っているのでいきなり声をかけても抵抗はそこまで大きくないと考えられる。だがここでは動かずしばらく様子見でいこう、相手の動き次第だ。今は声をかけないことにした。自己紹介した後のどこかで声をかけるのが今は良いだろう

 

 休み時間も終わりいよいよ自己紹介が始まった。みんな特別個性的な自己紹介をすることはなく、極々普通な紹介をしている。個性的な自己紹介って何なのだろうか?そうしている間に自分の番が回ってきたようだ。

 

「皆さん初めまして、私は嘉義蒼輔(よしぎそうすけ)と申します。世田谷から通っていて、料理や自動車、写真を撮ったりと色々なことをやってます。のんびりしていますので気軽に声をかけてください。よろしくお願いします」

 

 結局自分の自己紹介もありふれた感じのものだった。何か難しいな、記憶に残る自己紹介ってどんな工夫をしたらいいのか全く分からないのだ。まぁ紹介も終わったので席に戻ろうとしたのだが、珍しく自己紹介で質問が来た。

 

「あの、すいません。聞きたいことあるんですけど良いですか?」

「はい、良いですよ」

「嘉義って名前の由来ってなんですか?」

 名前の由来?初めてだその質問が来るのは。今まで気にする人がいなかったせいなのかあまり考えたことなかった気がする。嘉義の由来はじいちゃんが生まれるもっと前にあり、自分のためだけではなく他人のために動く正しい心を持って、喜びや良いことのために生きる一族になることを願ってこの名前にしたと聞いた。

「ご先祖様が道徳や正しい心を持って、人のために良いことをして生きることが出来るようにと願って先祖がこの名前を付けたとじいちゃんから聞いています」

「へ―、人のためにも生きてほしいってことですね。いいエピソードですね」

「ありがとうございます。それもあって困っている人とかをそうそう見過ごせなくなったりはしますけど」

 

「そうなんですか。でもあなたも優しい人なんですね。困っている人を放っておかない、僕にはそうそう出来ないですよ」

「いやいや、そのせいでたまにおせっかいで面倒な人って言われますよ」

「そんなことはないと思いますよ、良いことだと思います」

 

「では、ありがとうございました」

 そう言って自分の席に戻った。自分の自己紹介で名前の由来聞かれたのと、なんか笑われたのは初めてだった。今までなかったなと思いつつ次の人の自己紹介を聞く

 

 しばらく聞いていよいよ僕が聞きたかった人の紹介が始まる。他の生徒、いやこのクラス全体が一番気になっている人ではないかというくらいの注目度だ。その注目の的である白雪姫が今みんなの前に立つ。

 

「初めまして皆さん、私は白露冬美(しらつゆふゆみ)と言います。本を読むことや料理をするのが好きです。クラスの皆さんと仲良くなれたらと思っています、これからよろしくお願いします」

 彼女の名前は白露冬美っていうのか、朝に聞くことが出来なかったのでようやく知ることが出来た。それにしてもみんなまだ白露さんに注目している。僕みたいに質問する気なのだろうか?

 

「あの、何かあるのでしょうか?」

「あの、白露さんってどうしてそんなに白いんですか?」

「えっ?」

 

 そこで聞くのか、確かに気になることではあるがみんなが注目している中でその質問とは勇気あるこの人。

 

「ごめんなさい、その質問は私も理由がわからないので答えられません」

「そうですか」

 

 あっけなく終わってしまった感じだ。他にも質問があるかと思ったが、それ以外は特に無く同じ質問を考えていたのだろう。自分の時にも思ったが何故終わった後ではなく直後に質問なんてするのだろうか?よくわからない。

 

 その後も自己紹介淡々と進んでいきこの時間はこれだけで終わってしまった。流石に1クラスで35人近くいるのだからこのくらいかかっても不思議ではない。休み時間になりそれぞれが気になった人に声をかけに動きだす。今のおかげで白露さんの名前を知ることが出来たため、声をかけやすくなったと思う。そんなことを考えていたら隣から声をかけられた。さっき自由に声かけてとは言ったがもう来たかと思ってしまった。

 

「ねぇねぇ、君が嘉義くんであってるよね?」

 

 一瞬白露さんかと期待してしまったが声が元気そうな感じだったのですぐに違うとわかった。どうやらこの人は

 

「何ですか、えっと赤沢さん?」

「そうそう!赤沢鈴奈であってるよ!」

 

 声をかけてきたのはさんだった。僕の右隣りの席にいて結構可愛い部類に入るくらいの女の子で、雰囲気も明るく和やかな感じだ。そんな人が何故?

 

「嘉義って名前珍しいね、滅多に聞かないよ。いや初めて聞いたかもー」

「まぁその通りだね。嘉義ってほとんど聞かないし、前に調べたけど台湾の地名の方が先に出たもん」

 

「えっ、じゃあ嘉義くんって台湾人?」

「なわけ、先祖様に外国人はいないし」

 

 名前だけでそこまで興味持たれるの?今までスルーされててこんなことなかったから何て返せばいいのか……。それでも赤沢さんからの質問は続く。

 

「嘉義くん紹介の時さ、いろんな事をしてるって言ってたけどどんな事やっているの?」

「さっきも言った通り料理もやっているしおもちゃ、自動車好きだし、写真撮りに出かけるしそんなもんだよ」

 

「そうじゃなくてー!さっき言ったことまんまじゃなくて他にも知りたいの!」

「えっと、他だと甘いもの食べに行ったりすることかな」

「えー意外!見た感じそういうの興味なさそうだもん!そういえば料理するって言ってたじゃん、スイーツとか作れるの?」

「まぁ、ある程度なら」

 

「えーすごい!今度何か教えて!ねっ?」

「わかったよ。これからよろしくで良いのかな?」

「うん!ウチもよろしくね!」

 

 そういって赤沢さんは別の人に声をかけていた。こんな明るい子と仲良くできるきっかけを作れたのは良いことかもしれない。どうなるかは僕の接し方次第だが、彼女も僕をどう感じたかは分からないし仲良くできるなら良い方向へ持っていきたい。

 

 赤沢さんと話していたことで白露さんと話す機会もまたしても失ってしまった。結構休み時間でも白露さんに多くの人が声をかけていたみたいでもうすぐにクラスの人気者になるのでは?というくらい周りには人だかりができていた。その中にはさっき話した赤沢さんも含まれていて、その周辺はものすごくにぎやかだった。あまりそういったことを気にする性格ではないはずなのだが、それが少し羨ましく感じてしまった。

 

 

 

「嘉義君。朝の電車ぶりね」

 

 そんなときだった。少し気分が落ちてしまい、ボーっとしている自分に聞き覚えのある声が聞こえ、振り向くとそこには

 

「同じクラスだったのね、嘉義君。電車の中の件本当にありがとう。いつまで待っても声をかけてこないからこっちから来たわ」

 

 そこにいたのはさっきまでクラスメイトに囲まれていたはずの白露さんが僕の前に立っていたのだ。しかも囲まれていた時よりも柔らかそうな表情で

 

「(し、白露さん?!声をかけるのを待っていたの?)」

 





 今回は始業式。先程の出会いからすぐに再開した2人。そして新しく出会った人。今回はその教室で出会った隣の席のクラスメート、赤沢鈴奈を紹介します。

 赤沢鈴奈(せきざわすずな)
 蒼輔のクラスメートで茶髪のマッシュショートヘアで赤い瞳をしている。意外にも勉強はできるほうで友達に教えられるくらいなので結構真面目に勉強するタイプの子でもある。見た目はバカっぽいが。体つきはよく、成長してるなって言われるようなスタイル。運動も申し分ないほど出来、特に短距離走は体力テストでも上位に入るほどの実力。

 今回登場した新キャラは見た目はバカっぽいけど意外とちゃんとしている子です。この作品、結構真面目な人が多いのでこういったキャラも良いと思いこの設定にしました。

 初回に付けるべきでしたが、すっかり忘れてしまったので本作の舞台となる水本高等学校についても説明していきます。

 都立水本高等学校
 都内にある都立高校で進学に力を入れている。名前の由来は水道橋と本郷の間くらいにあるため、そこから文字をいただきその名前になったとか。トップ校ほどの難関校ではないのにも関わらず、難関大学への進学実績を多く持つ実力校。都立校であるのに、設備は並の私立よりも揃っていてい実験器具や設備も最新のものを置いている。そのためか公立高校で最もコスパが良い学校とも言われている。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。