ぼっち・ざ・ソリスト!   作:マイケルみつお

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メンバーの主人公への呼び名は......

後藤ひとり→ヒモさん
伊知地虹夏→ヒモ君
山田リョウ→ヒモ
喜多郁代→ヒモ先輩

『ぼっちちゃん』も中々だけどマジで悪口にしか聞こえねぇ......


3話 おかわり!

 「あ! ヒモ君だ! どうしたの?」

 

例の評価の分かれるライブの後、正式にひとりは『結束バンド』に加入する事になったがヒモは断った。仮にバンドを組むとしてもよく知った仲のメンバーだけで組みたいと考えたからである。

 

「(みんないい人なんだろうけど流石に会ったばかりの人間に仲も何もないしね)」

 

だからこそどうしてバンドに関係のないヒモがこのライブハウスに訪れたのかが虹夏には分からなかった。

 

「お、待ってたよ晶羅君。虹夏、彼は私が呼んだんだ。さ、早く早く」

 

「そんなに急がなくても大丈夫ですから」

 

虹夏の疑問に対して星歌が答えた。ヒモは持っていた鞄から重箱を取り出した。

 

「お姉ちゃん、何それ?」

 

「いい匂い」

 

虹夏の疑問に答えるように星歌は漆の箸を取り出し重箱を開いた。重箱の正体は......豪華絢爛な弁当であった。

 

「晶羅君の祖父母は箱根で温泉旅館を営んでいる。晶羅君自身も幼い頃からその手伝いをしていたそうだ。うん、やっぱり美味い。明海の時の差し入れぶりだがやはり美味いな」

 

「(後ろからこっそり)」

 

「やらんぞ!」

 

後ろから弁当箱に手を伸ばすリョウの暴挙を星歌は許さなかった。

 

「(むむ、隙がない)」

 

「(す、凄い覇気......)」

 

「(お姉ちゃんちょっと怖い......)」

 

その所作にひとりと虹夏は震えていた。

 

「この前のライブの時にサングラスとキーボードを借りたでしょ? その時の対価で作ってきたんだよ」

 

「(......本当はそれくらいタダなんだけどな。単純に食べたかった口実つくりなんだが......)」

 

一体どちらがヒモなのか......。星歌は何の休憩も取らず一心不乱に飯を食い続け......

 

「ご馳走様。今回も美味かったぞ。機会があればまた頼む」

 

あっという間に完食した。

 

──────

 「ただいまー姉ちゃん」

 

「あ、おかえりヒモ」

 

下北沢駅から京王井の頭線で数駅移動し自宅に到着した。ヒモを出迎えてくれたのは姉の明海。大学生である。

 

「父さんと母さんは今日も?」

 

「うん。今日もどこか彷徨ってるんじゃない?」

 

「本当に大丈夫かよあの人達......」

 

ヒモと明海の両親は所謂売れないバンドマンである。若くして明海とヒモを儲けたためまだ三十代と若く、またいい加減な人間なので定職につく事もなくどこで何をしているのかも分からない状態だ。

 

家計は父方の祖父母に支えてもらっている。尚、温泉旅館を経営していて週末にヒモが手伝いに行くのは母方の祖父母である。

 

「今日、店長に作った弁当の仕込みがまだ残っているからその残りと軽く何か作ってから夕食にしようか」

 

明海から返ってきた肯定の返事を受けて、エプロンを身につけたヒモは台所に向かった。

 

 

 

 

「よし、できた」

 

仕込みは既に出来上がっていたため短時間で完成した。

 

「(ちょっと作りすぎちゃったかな......)」

 

ヒモと明海の二人で食べるにはちょっと多い量になってしまった。

 

「(ま、いいか。残ったら明日また食べればいいしね)」

 

あまり深く考えないようにした。

 

「ん?」

 

皿に盛り付けようとしたその時、インターホンが鳴った。

 

「(父さんか母さんかな? ちょうど良かった)」

 

「ドア開けてくるよ姉ちゃん」

 

数ヶ月ぶりに再開する両親。ちゃらんぽらんで頼りない両親でも血の繋がった両親。あまり言葉にはしないが会えるのは嬉しかった。

 

「おかえり父さ──」

 

ドアを開けるがそこに立っていたのは父でも母でもなく......

 

「さっきぶり、ヒモ。ご飯食べに来た」

 

数時間前に会った山田リョウが立っていた。

 

──────

 「......え? 山田さんだよね? なんでここに」

 

「ご飯食べにきた。今日の店長のお弁当凄く美味しそうだったから」

 

「え、いや何で?」

 

「(美味しそうだったから何のアポもなしに食べに来るってどんな思考回路してるんだ......)」

 

自分の両親含めバンドマンには変な奴が多いなと自らの経験的に考えるヒモ。

 

「(いや、この人が特別変なだけか。変人って呼ばれて喜ぶような人だし)」

 

「とりあえず帰って──」

「ヒモ? どうしたの?お父さんとお母さんじゃないの? って誰? その子? めっちゃ可愛いじゃん!」

 

 

 

 

ヒモは反対したが明海はあっさりとリョウを家にあげてしまった。

 

「ベース持ってるしバンドやってるの? あ、もしかしてこの前ヒモが店長の妹ちゃんのライブを手伝ったって時のバンドの子? ヒモとはどんな関係?」

 

「いや、知らないのに家にあげないでよ姉ちゃん......」

 

「ふっ......ふふっ......お姉さんにもヒモって呼ばれてる......ふふっ」

 

「山田さんも笑ってないで!」

 

「(うーん......()()()()っか。そういう関係じゃないのかな?)」

 

 

 

 

「今日はたまたま多く作りすぎたからいいけど、もうアポ無しで来るなよ? 来るならまず連絡して。......っていうかどうやって家の場所知ったの?」

 

「店長が教えてくれた」

 

「ガバガバセキュリティ!」

 

リョウの分のおかずと白飯をよそいで机に置く。

 

「うむ、ご苦労」

 

「......」

 

半目でリョウを睨むヒモ。

 

「ん。やっぱり美味しい。昼に店長の弁当見た時から食べたかった」

 

最初は「こいつかなり図々しいな」と思っていたが(それは今でも)、しかしこうして美味しそうに食べるリョウを見てヒモは若干リョウに対しての感情が穏やかになっていくのを感じた。

 

やはり自分が作ったものを美味しいと言って食べてくれるのは嬉しい。明海に毎日作ってはいるが、長い間作り続けたためか日常と化した料理に対して毎回美味しいと言ってくれなくなった。そしてそれを差し置いてもこの山田リョウという女、とても美味しそうに食べてくれる。

 

「美味しかったヒモ。おかわりちょうだい」

 

「マジで遠慮しないなお前。どっちがヒモだよ」

 

文句を言いつつもヒモも明海も既に満腹。リョウのおかわりをつぎにヒモは皿を受け取り台所に向かった。

 

 

 

 

「ご馳走様でした。ヒモ、美味しかった」

 

「お粗末さまでした。皿、片づけるから頂戴」

 

「うん」

 

リョウはおかわりを複数回繰り返した。大体五人前を作っていたが全てなくなっていた。

 

「(結構大食いなんだな)」

 

リョウは三人前以上の量を平らげたのであった。

 

「別に大食いキャラとかじゃない。ヒモのご飯、凄く美味しかったから。あと昨日から草しか食べてなかった」

 

「草?!」

 

「(そういえば伊知地さんが何か言っていたような......)」

 

目の前の変人なら食べるものがなくて草を食べても全然不思議ではないとヒモは結論づけた。

 

──────

 「それで? バンドの方は順調なの?」

 

食後のコーヒーを人数分入れてから(明海は自室に戻った)リビングで寛いでいた。

 

「順調、かな? 練習はしてるよ。後、ライブをするにせよ何にせよお金が必要。ぼっちもSTARRYでバイトを始めた」

 

「後藤さんも? 裏方とか?」

 

「受付。ドリンクの受け渡しとか」

 

「......絶対適性間違ってるよね? 本人相当悩んでいるんじゃないの? ずっと地下に引きこもっていたセミは無理をして外に出たら七日しか生きられないんだよ? 後藤さんを殺す気?」

 

ひとりがギターヒーローである事にヒモは気づいていなかったがひとりのギターに彼は魅せられた。ギターヒーローではなく後藤ひとりの最初のファンになったのがヒモである。

 

「あとボーカルは? いつまでもインストバンドって訳にはいかないでしょ?」

 

「ボーカルは私がやればいい。会場の全ての人を魅了する」

 

「......()()はまず最低限自分一人で周りに合わせられるようになってからな」

 

「......山田?」

 

「アポ無しで飯を食いにきておかわりまでねだるような図々しい奴にさん付けなんて不要だろ」

 

ヒモとリョウの関係がちょっとだけ深まった。




星歌さんの声優。最初日笠さんかと思って調べたら内田さんでビックリした思い出。
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