京極家を追われた者   作:岩男 一前

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ある程度のところまでは、さくさく進ませたいと思います。


第一話 幼き最強

~零side~

 

俺があいつを殺してから1年が経った。

 

俺はこの汚れた街、スラム街で生きてきた。別に大したことはしていない。なにせ雑魚ばかりだからな。

 

「にしても、今日は嫌な天気だな。」

 

朝からしとしと降る雨に不快感を覚えながらも、俺は今日も1日の食料を求めて街に出る。

 

「全く、くそったれた街だぜ。」

 

その日の食料を手に入れるには誰かから奪わなければならない。俺は確かにもともと好戦的な性格だった。そう、『だった』のだ。俺はあいつを殺して以来、あまり戦う気が起きなくなっていた。

 

まあそれもそうだろうな。なにせあいつが俺の一番のライバルであり、親友であり、そして何より良き理解者だったのだから。

 

あの日、俺はあいつを殺した。何かの間違いだったのだろう。そう思いたい。突然俺に刀を向けてきた。そして俺は自分の身を守るために刀を抜き、あいつを殺した。

 

「皮肉なもんだよな………」

 

俺はあいつを殺した。一番のライバルであるあいつを殺した。もうこれ以上力はいらない。そう思った途端に手に入れたのが『万華鏡写輪眼』だった。

 

結局残ったのは虚無感と、不要な力と、4本の刀。そして命。本来ならこの命は残らないはずだった。

 

京極家の、いや、藤原家の掟では同族殺しをしたものは殺される運命にある。だが俺はそうされなかった。いや、できなかった。なぜなら俺が強すぎたから。

 

「いつまで生きればいいんだろう………。」

 

母さんは最後の最後まで俺の味方をしてくれた。

 

俺が万華鏡写輪眼を開眼したと知ると、俺が殺したあいつの眼を俺に移植した。あいつもまた、万華鏡写輪眼の開眼者で、京極家の中でも実力者として名が通っていた。

 

その行動の意味が分からなかった俺は、母さんに聞いた。

 

「あなたの光をなくさないためよ。酷かもしれないけど、あなたには生きてほしい。京極家を追放されることになってしまったけど、それでも生きてほしい。」

 

結局これが母さんと交わした最後の言葉だ。俺は本当は死にたかった。でも母さんが『生きてくれ』と俺に言った。俺の味方をしてくれた。だから今生きている。

 

逆を言えばこれ以外に俺の生きる意味はない。

 

「さて、行きますかね。」

 

今日のこの日が俺の人生の第二の転機だった。

 

 

 

~???side~

 

「ここどこ?」

 

私は家族と一緒にお出かけをしていた……はずだった。

 

いつの間にか家族と離れて薄暗い道に来ている。

 

「お父さん、お母さん、どこ………」

 

私は不安でいっぱいになって、ついに涙が零れ始めてしまった。

 

「うぅっ……グスッ………ふぇ~~~、お父さん、お母さ~~ん!」

 

私は自分の泣き声のせいで、自分に近寄る数人の足音を聞きのがしていた。

 

 

 

~零side~

 

「今日の獲物は………」

 

今日の食い扶持を確保するために、この薄汚れた街をひたすら歩き続ける。その時だった。

 

「きゃああぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

幼い女の子の声が聞こえる。

 

「嫌っ!だ、誰か助けてええぇぇぇぇぇぇ!」

 

俺は声のする方へと走った。

 

女の子は案外近くにいたようで、20秒近く走ったところにいた。

 

そこには、大人3人が1人の少女を取り押さえようとしていた。

 

「お父さん!お母さああぁぁん!」

「このガキッ!うるせえぞ!」

「嫌っ!やめっ!んんんーーーーっ!!!」

 

1人の大人によって口を塞がれ、少女は暴れることしか出来ない。

 

しかしここはスラム街。生き残っている大人というのはホームレスのおっちゃんかここ(スラム街)を荒らして食い扶持を稼いでるような屈強な男たち。

 

今少女をとらえようとしている3人は屈強とまでは行かないまでも、それなりに荒らして稼いでいるみたいだ。

 

そんな男たちに少女の力で敵うはずもなく、されるがままになっていた。

 

「人情も忘れちまった哀れな奴らか………。」

 

かくいう俺も人情に溢れているわけではないが、なくしているわけでもない。

 

「しかたない。めんどくさいけどあの女の子が可哀想だからやるか………。」

 

俺は4本の刀の中から、1本だけを抜き、ゆっくりと大人たちに近づく。

 

「あんたら、それぐらいにしとけよ」

 

すると、3人の大人が一斉に俺の方を向く。

 

「あぁん?なんだこのガキ?」

「弱そうなガキだなぁ?王子様気取りかぁ?」

「一丁前に刀なんて持ちやがって。しかも4本も持ってるぜ?こりゃあいいカモじゃねえか!」

 

少女を抑えてた男が手を離す。少女は地面にペタンと尻餅をついた。だが、どうやら腰が抜けてしまったようで立ち上がれていない。

 

「へへへっ、痛い目見てもらうぜ?」

「まったく、黙って見てればよかったものを」

「さ~て、お仕置きの時間ですよ~」

 

3人が手をポキポキ鳴らし、ニヤニヤしながら近づいてくる。

 

俺はわざと無言で答えずにただただ相手をじっと見つめる。

 

「おい、無視してんじゃねえぞガキ!」

「ぶっ殺されてぇのか!」

 

俺の態度が気に食わなかったのか、3人とも怒り出して、俺の方に突進してきた。

 

「………遅い」

 

こんな奴らに写輪眼なんぞを使ってやる必要はない。

 

3人が俺につかみかかろうとした瞬間に横を通り抜け、全員の背中を峰打ちする。

 

ドサッ

 

3人が声もなく倒れる。俺は少女の方へと近づいた。少女に右手を差し出し、そのまま引っ張り上げる。

 

「大丈夫か?」

「あ、ありがとう。君、強いんだね?」

「………まあな。それよりどうしてこんなところにいる?捨てられたのか?」

「ち、違うよ!迷子になっちゃただけ!」

「そうか。」

 

その時、遠くから大きい呼び声が聞こえた。

 

「七夏~、七夏~!」

「どこにいるんだ~!」

 

大人の男性と女性の声だ。

 

「あ、お父さんとお母さんの声だ!お父さん、お母さん、私はここだよ~!!」

 

その声を聞きつけたのか、息を切らしながら先ほどの声の持ち主と思われる2人が来た。

 

「「七夏!」」

「お父さん、お母さん!」

 

どうやら少女の名前は七夏というらしい。少女が両親に抱き着いた。安心からか、涙を流していた。

 

俺はその光景を見て刀を鞘に収めた。

 

「もう何してたのよ!こんなところに来ちゃって!心配したんだからね!?」

「ごめんなさい………。迷子になっちゃった………。」

 

この温もりはもう俺には無いもの。このままここに居続けるのは精神的にキツい。俺は確かに戦闘能力は高いがそれでもまだ11歳だ。誰かに甘えたくなる時もある。

 

このままここにいると、今の俺を保てなくなってしまいそうだ。

 

俺はそのまま踵を返し、自分の住処へと帰ろうとした。

 

「ケガはなかったかい、七夏?」

「うん!あの男の子が悪いおじさんたちから守ってくれたの!」

「なに!?」

 

………この流れは非常にまずい。

 

「ちょっと待ってくれ!」

 

………やっぱりこうなったか………。

 

「この子を助けてくれて本当にありがとう。何かお礼をさせてくれないか?」

「いえ、たまたま通りかかっただけです。ですからお礼はいりません。」

「せめて、せめて食事だけでも一緒に食べないか?」

 

ピクッ

 

食事だと?今日の飯の心配がなくなる?

 

「………分かりました。ご一緒させていただきます。」

「そうかそうか。それじゃあ私についてきてくれ。あ、自己紹介がまだだったな。私は八代 要(やつしろ かなめ)だ。要さんとでも呼んでくれ。」

 

『八代』か…………。この人、十師族だな。

 

十師族には俺の苗字を名乗るわけには行かない。名乗った瞬間にどうなることか分かったものじゃない。

 

「……零です。よろしくお願いします、要さん。」

「よし、それじゃあ行くとするか!おーい、麻美、七夏~!これから零君と一緒にご飯を食べることになったぞ~………」

 

要さんは奥さんと娘さんのところにすぐさま走って行った。

 

 

「家族………か………」

 

母さん、元気かな?元気だといいな。

 

 

 

俺はほんのわずかな時間だけ、自分の母に思いを馳せた後、要さんの後を追った。




京極家はとてつもなく大きいです。

強いて言うなら京極家の中で10以上の家族がいます。という設定です。
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