京極家を追われた者   作:岩男 一前

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第三話 高校入学

~零side~

 

「零~、そろそろ学校行こ~!入学式遅刻しちゃうよ~?」

 

階段の下から俺の部屋へと姉さんが大声で呼びかけてくる。

 

「分かった~。今降りるから待ってて~!」

 

俺はコンタクトを入れ、制服に着替えて階段を降りる。

 

玄関に行くと、靴を履いた姉さんが立った状態で俺のことを待っていた。

 

「零遅い!早くしないと遅刻しちゃうよ!?入学式早々遅刻なんて、お姉さんは感心しないな~。」

「ごめんごめん。でもまだそんなに遅くないでしょ?」

「ふふっ、そうね。でもそろそろ出ないとギリギリになっちゃうよ?」

「そうだね、姉さん。それじゃあそろそろ行こうか?」

 

靴を履き、つま先をトントンと打ち付ける。

 

「「行ってきます!」」

「はい、行ってらっしゃい。」

 

母さんに見送られながら一高の入学式へと向かった。

 

 

 

 

 

「一高に入れてよかったね!」

 

姉さんがウキウキしながら言ってくる。

 

「姉さんと同じ一科生になれてよかったよ。弟が不出来じゃ姉さんの顔に泥を塗っちゃうからね。」

 

そう、姉さんは一科生だ。それも上位10名に食い込むことが出来るほどの能力を持っている。

 

俺はというと、『写輪眼』という能力を持ってしまったが、どうにか普通魔法もある程度は練習し、それなりに使えるようになっていた。それでも、入試の結果を見ると、一科生100名の内の半分くらいだ。

 

「私のことなんて気にしなくていいのに…。零は零のやりたいことをやればいいんだよ?」

「うん。分かった。俺のやりたいようにするよ。それより姉さん、このカラコン変じゃない?」

 

そう言って俺は緑色のカラコンを指さす。この緑色のおかげで、俺が写輪眼を発動したとしても眼の色が赤くなることはなく、黒色になる。

 

これは父さんが『俺の正体がほかの十師族にバレなように』と特別に作ってくれたものだ。この時代、魔法による目の治療によりコンタクトレンズは特別なものになってしまたというのにも関わらず、父さんはわざわざ用意してくれた。

 

他にも俺のためにいろいろと動いてくれた。俺が京極家に見つかった時の言い訳やらその他戸籍の変更やらetc………。

 

まあ言い訳と言っても『俺は記憶喪失になって何も覚えていない』という単純なものなのだが。

 

「うん、大丈夫だよ。むしろそっちの方が本来の色の時よりも格好良く見えるね!」

 

サムズアップしながら答えてくれる。

 

「姉さんの太鼓判なら大丈夫だね。」

「そ、そんな、私の意見だけで判断されても………。」

 

もじもじとしながら視線をそらす。ああ、今日も姉さんは可愛いな………。

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、姉さんの可愛さにうっとりとしている内に一高についた。

 

「1年生と2、3年生は別々だからここまでだね。それじゃあまた放課後一緒に帰ろ!」

「うん。じゃあまた放課後に。」

「クラスのみんなと仲良くするんだよ?」

「もちろん!」

 

姉さんに手を振りながら講堂へと入った。

 

 

 

 

 

「………やっぱりこうなってるのか。」

 

講堂に入ると、そこには差別の塊が存在していた。事前に姉さんから話は聞いていたが、ここまで酷いとなると流石に胸糞悪いものだ。前半分の席には一科生、後ろ半分の席には二科生

 

「全く、たった3つの項目、それも魔法にしか当てはまらないものが優れていただけで一体どれだけ選ばれた人間なんだろうな。」

 

おそらく二科生にもできるやつはいるだろう。もっと戦える奴らがいるだろう。というより、この一科生の中の何人がまともに戦えるだろうか?

 

花冠(ブルーム)ねぇ………。そんなちっぽけなプライドなんて散ってしまえばいいのに………。」

 

花冠(ブルーム)雑草(ウィード)なんてものに興味はない。意味があるのは強いか弱いか。誰かを護れるか護れないかだ。自己満足の力なんぞに意味はない。自己満足の力はいずれ己の人生を狂わす………そうかつての俺みたいにな。

 

「おっと、そろそろ時間がヤバいな。」

 

時計を見るともう式まで10分しかなかったため、俺は急いで開いている席を探した。もうほとんどの生徒が座っている状況でわざわざ前半分の席に座るなどという目立ったことはしたくなかったため、後ろ半分の開いている席を探した。別に二科生と一緒に座ったっていいだろう?

 

するとそこには偶然1つだけ席が空いていた。

 

その空いている席に歩み寄り、その席の隣に座っている男子生徒に問いかけた。

 

「ここ、空いてますか?」

「ええ、どうぞ。」

「それでは失礼。」

 

俺はその男子生徒の方を見る。チラッと見ただけだったが、俺は思わず息をのんでしまった。

 

(………こいつ、出来る。)

 

写輪眼で見通さなくても分かる。こいつは結構な場数を踏んでいる。

 

(………雑草(ウィード)の中の逸材…か………)

 

俺は写輪眼を発動させて見る。

 

(こ、これは!?………こいつは面白い。)

 

こいつのことは覚えておこう。いずれは俺ともある程度は張り合えるくらいにはなるだろう。

 

そんなことを考えていると、不意に声をかけられる。

 

「大丈夫か?」

 

声をかけてきたのは俺が観察していた男子生徒だった。

 

「あ、ああ、大丈夫だ。ボーっとしていてすまない。俺は八代 零、よろしくな。『零』って呼んでくれ。」

「俺は司波 達也だ。こちらこそよろしく。俺も『達也』で構わない。」

 

達也と握手を交わす。すると、達也の横に座っていた赤髪の女生徒と、さらにその向こう側にいる今時珍しい眼鏡をかけた女性がこちらを見てくる。

 

「あれ?達也君、新入り?」

「え、でも、その方は一科生ですよね……?」

「おっと、そちらは達也の知り合いかな?俺は八代 零。一科生なんてのは肩書に過ぎないから気にせず仲良くしてもらえればありがたいんだが。」

 

そう言って2人に手を差し出す。2人は驚いた顔をしている。まあそれもそうか。基本今の時点ではほとんどの一科生は調子こいてるような奴らばかりだろうからな。

 

「へぇ~珍しい人もいるんだね。仲良くなれそうだわ。私は千葉 エリカ、『エリカ』って呼んで。」

「わ、私は柴田 美月です。や、八代さん、よろしくお願いします!」

「俺のことは『零』って呼んでくれ。姉が2年生にいるから、一応区別してくれ。」

「「分かったわ(分かりました)」」

 

エリカと美月と握手を交わす。

 

「3人とも、そろそろ式が始まるぞ。」

 

『それでは、これより国立魔法大学付属第一高校入学式を執り行います。』

 

(あれ、そういえば『千葉』って、あの『千葉家』の者か………?)

 

 

 

 

 

 

式は面倒なものだった。途中で『生徒会長が美人だな~』とか、『でも姉さんには負けるな~』とかどうでもいいこと(姉さんの美貌はどうでもよくないが)を考えながら過ごしていた。

 

『続いて新入生答辞 新入生総代、司波 深雪』

 

(ん?司波?もしかして………)

 

 

 

 

 

 

 

式が終わり、それぞれの生徒が自由に行動し始めた。

 

「司波君、これからホームルーム覗いていかない?」

「悪い、妹と待ち合わせているんだ。」

「妹?」

「あの、妹ってもしかして新入生総代の『司波 深雪』さんですか?」

「ああ。」

 

(ん?ってことは双子………)

 

「妹?ってことは双子?」

 

エリカも俺と同じ疑問を抱いていたようだ。

 

「その質問はよくされるんだが、双子じゃない。俺が4月生まれで、妹が3月生まれだ。でもよく気付いたな。顔も似てないし、名前ぐらいしか共通点はないと思うが?」

「い、いえ、雰囲気というか、おふたりのオーラは凛とした面差しがよく似ています。」

 

美月のこの言葉についつい驚きの表情を浮かべてしまう。………だがそれは俺だけではなかった。達也も目を見開き、驚きの表情を浮かべていた。

 

(やはりこの眼鏡はそういうことだったのか………)

 

『霊子放射光過敏症』は未だに残っている一種の特殊な眼の症状(?)のようなものである。

 

「オーラの表情が見えるなんて、本当に眼が良いんだね?」

 

達也の意地悪で皮肉を含んだ言葉に美月の表情が曇る。

 

「っ!?」

 

達也の表情が真剣なものになっていく。

 

(ああ、こりゃなにか訳ありだな………。全く、こんなシリアスな雰囲気は面倒くさいっつーの。よし、エアブレイク行っちゃう?)

 

このシリアスな空気を壊そうとした瞬間、遠くから声がかかる。

 

「お兄様!」

 

先ほどまで一科生の束と思われる人の群れが出来ていたところから、絶世の美女が駆け足で近寄ってくる。と言っても、姉さんの方が絶対美人で可愛いけどな!?

 

そして、達也の傍で足を止めた。

 

「お兄様!お待たせ致しました!」

「早かったね、深雪?…ん?」

 

達也が深雪さんの向こう側に上級生と思われる女性と男性を1人ずつ見つけ、顔を歪める。

 

女性の方が前を歩き、男性の方が後ろを護衛するように歩くところを見ると、どうやらこの女性はとてもお偉い方で、男性の方はその側近の位置にいるということが窺える。

 

「こんにちは。また会いましたね?」

 

一般的に見たら(俺から見れば姉さんの方が……以下略)美人の部類に入るだろう女性が達也に対して話しかける。

 

(どうしてこうも周りには美人しかいないんだろうな?)

 

達也は、軽く一礼する。

 

「ところでお兄様、早速デートですか?」

 

ああ、とてつもなく面倒くさいカオスの予感………。

 

 

 

 

 

 

 

結論から言うと、何もなかった。あの後上級生の方々は生徒会メンバー、それも生徒会長と副会長ということが分かった。

 

まあどちらも弱そうだからどうでもいいけど。

 

それで、生徒会の方々は司波兄妹に声をかけて帰る………と思われたのだが、あろうことか俺にまで声をかけた。

 

(まあ確かに姉さんのことがあるから俺に目をつけるのも不思議ではないんだが………なんだかなぁ………。)

 

姉さんは2年生の中条先輩という方と一緒に2年生の生徒会メンバーらしい。

 

結局会長と副会長はそのまま(副会長の方は達也を睨んでいたが)帰って行った。

 

 

さて、どうやって断ろう?

 

 

 

 

 

 

 

「「ただいま~」」

 

あの後、姉さんと合流して一緒に下校した。

 

「あ、そうだ。姉さん、後で相談があるんだけど?」

「あれ、珍しいね?零が相談してくるだなんて。食事の後でいいかな?」

「うん。どこに行けばいい?」

「じゃあ私の部屋でいいよね?」

「分かった。じゃあ俺父さんに呼ばれてるから行くね?」

 

俺は姉さんと別れて、父さんの所へと向かった。

 

「零です。ただいま学校より戻りました。」

「入りなさい。」

「失礼します。」

 

部屋に入ると、父さんがどっしりと待ち構えていた。

 

「お帰り、零。」

「ただいま、父さん。」

 

これが我が家のルールだ。普段は、『家主』としての威厳を保つために厳格な父でいる。そして俺も秩序を乱さないために畏まった態度を取らなければならない。

 

だが父さんの部屋と食卓では違う。そこでは『父』と『息子』として砕けた態度で接するという決まりがある。そして食卓では楽しく食事ができるように、また食卓で一番偉いのはその日の食事という場を作ってくれた母(たまに姉さん)であるという考えのもとで父さんは『威厳のある父』ではなくなる。

 

「今日零をここに呼んだのは他でもない、今後のお前の携帯用武器についてだ。」

 

そう、俺の4本の刀は全部長刀で、学校に携帯するのはあまりにも長すぎて、物騒だということで全部父さんに管理されている状況だ。事情がある場合や緊急事態には使用許可が下りるが、基本的には

 

「一応専用の拳銃型CADはあるんだけど………?」

 

そう、刀の代わりということで一応CADを渡されてはいる。だが正直言って戦いにくい。元々の俺のスタイルは近接~中距離タイプで、距離を取られたら一気に近づいて再び接近戦へと持っていくタイプだ。

 

あくまで魔法はサポートでしか使わない。そのため今は事が起こった時は総合格闘技、つまり超接近戦でどうにか済ますつもりだ。

 

「しかしそれでは戦いにくいだろう………ということで、俺と麻美から入学祝だ。」

 

そう言って父さんが細長い木箱を2つ取り出してくる。

 

開けてみるとそこには2本の小太刀が入っていた。

 

「白虎と黒龍だ。長さはそこまでないが、それでも今よりかは戦闘がしやすくなるだろうと思ってな。」

 

2本の小太刀を手に持つ。刀身の色が黒と白で、手にすごく馴染む。

 

「ありがとう、父さん。大事に使わせてもらうよ。」

「その刃はよっぽどのことがない限り零れないとは思うが……。」

「うん。それでも一応魔法は使っておくよ。」

「それなら安心だな。」

 

父さんが『ハハハ』と豪快に笑う。

 

「それじゃあ父さん、そろそろ部屋に戻るよ。今日はありがとう。最高のお祝いだよ。」

「母さんにもお礼は言えよ?『黒龍』のデザインは俺だが『白虎』のデザインは麻美だからな?」

「うん。分かった。じゃあまた夕食で。」

「ああ。高校生、楽しめよ?」

 

父さんの部屋を出る。

 

 

 

改めて2本の刀を鞘から出して眺める。

 

(綺麗な刀だ。……父さん、母さん、俺はこの刀に誓うよ。この身になにが起ころうとも絶対に姉さんだけは護る。…いや、この家族だけは絶対に護り抜く。)

 

小太刀を鞘に収め、自分の部屋へと戻った。

 

 

 




零の4本の長刀についての説明

ストーリーの中で説明できそうにないので後書きにて説明させていただきます。

・鬼斬刀(おにきりのかたな)

京極家に代々受け継がれていた刀。かつて鬼を斬る時に活躍したことからこの名前が付いた。しかしその刀身が130cmと長すぎて零以外に扱えるものがいなかったため、零が貰い受けた。

・子護刀(しごのかたな)

これも京極家に代々受け継がれていた刀。もともとは『死後刀』と呼ばれ、『死後の魂を斬る』といった伝統的風習を目的として作られた刀。零の母親がこの刀を使って生まれたばかりの零を襲おうとした熊を一刀両断したことから『子護刀』と名が変わった。そのため母親が所持していたのだが、零が家を追放されるときに持たせた。刀身は90cmと4本の中では一番短いが、一応長刀の部類に入る。

・蒼氷(そうひ)

刀身が蒼く、その名の通り切った者を『骨の髄から凍らせる』という能力を持つ。(ただし零が魔力を刀に込めた時のみ。)この刀は特殊な刀で、折れたり刃こぼれすることがない。刀身は100cm。

・緋炎(ひえん)

刀身が緋く、その名の通り切った者を『骨の髄まで焼き尽くす』という能力を持つ。(これも蒼氷同様で、零が魔力を込めた時のみ。)また、折れたり刃こぼれすることもない。刀身は100cm



鬼斬刀と子護刀が、蒼氷と緋炎が対をなしています。

白虎と黒龍に関しては、『とてつもなく硬い』というぐらいの認識で構いません。
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