そんな彼女がなにやら怪しい会話をしているようで……
私はパルデア地方で学業に勤しむ生徒だ。
もちろん学校の名前は言わなくても分かるだろう、果実を冠したあのアカデミー。
年齢も性別も趣味も関係なく、ここには様々な人間が集い、ポケモンやこのパルデア地方について学ぶ。故に、先生が一流なのは元より生徒にだってすごい人がいる。
私? 私は平々凡々な一般人。
すごいというのは同い年の生徒会長のことだ、なんと彼女はチャンピオン!
彼女はポケモン──特にバトルに冠しては天才と言ってもまだ足りない、戦闘も育成も敵うものは学園にいない。なんて言うのが共通認識、捕獲は少し苦手らしいけど。
そんなすごい人なんだけど、分け隔てなく人に接する明るい性格なのでみわなの人気者。天は二物を与えるってやつだ。
けれど、最近そんな生徒会長の様子が変わった。
いや、バトルが強いのも、人気な性格もそのままではある。
しかし、どうも授業中ホゲータみたいに上の空だったり、クワッスのごとく髪型を気にしたり、ニャオハのごとく愛嬌を見せるようになった。
間違いない、恋である。
生徒会長はそりゃもう大層美人で一体全体どうやったらその美しさを身に付けられるのか聞きたい程で──だから、生徒会長『に』恋するのは理解できても、生徒会長『が』恋をするというのは、驚きモモンの木ウソッキーというやつだ。
何としても見てみたい、あの生徒会長をメロメロにしたやつを!
私は相棒のカクレオンをレッツゴーしながら生徒会長の後をつける。
相棒はこの地方では珍しいポケモンで体表の色を変化させて姿を周りに溶け込ますのが得意なポケモン、しかもデカデカ個体、これで私の姿も隠してもらえるので安心というわけだ。
しばらく後をつけているとやはり人気者な生徒会長、色んな人に話しかけられている。うわ、あの人トップじゃん初めて見た。でもよくよく観察すると逸る気持ちが見え隠れするというか、どこか落ち着きがない。
やがて長い階段を下りると──隠れながら下りるのは辛かった──またしても生徒がいる。しかし、話しかけられるのを相手していた今までとは違い生徒会長自ら声をかけにいった! まさかあの子が恋の相手!?
あまりに早い動きだったので私がたどり着く頃にはすでに会話が始まっている。どれどれ、どんな話をしているのか。デートの約束とかそういった決定的な証拠が出ればいいのだが。
顔を赤らめた生徒会長の口から出てきたのは。
「やっぱHが重要だよね」
──は?
「そうですね、Hがないと崩れやすいですし」
待て待て待て、想像よりも進みすぎている。恋とかそういうレベルではない、生徒会長は経験値を得て進化して新たな姿になっていたということか? というか周りに私以外誰もいないからいいもののこんな開けた場所でする話ではない。
いや、何かの聞き間違えかも知れない。逸る私の幻聴という説もある。それなら私欲求不満がヤバすぎる。ともかくもう少し詳しく。
「Bペラペラですし」
「Dもないもんね」
聞き間違いじゃない!
というか
「このコなんだけど──」
生徒会長はスマホロトムを取り出して何かを見せているようだ。
この子──誰か生徒のことだろうか。
「AとCならどっちがいい?」
「僕はAですね」
えっちなやつじゃん!!!
というか生徒会長のお相手も何を平然と答えているんだ! いや、そもそも生徒会長にどんな相談をしているんだその子は! Hが重要だのなんだの!
「わたしはCだと思ったけどな」
「いやこの子なら技がたくさんあるのはAですよ」
「器用さよりもCでガンガン攻めた方がきみ好みじゃない?」
「そうですけど今は間に合っているので」
技!? キスにもそういうテクニックがあるのは知っているけど、どうしてお相手はそれが分かるの!?
というか、かわいい顔してそんなガンガン攻められたいタイプなの!? 間に合っている──生徒会長はガンガン攻めるってこと!?
あまりの情報量に頭がオーバーヒートしそうになる。
「まあCでいくならAVは駄目だもんね」
「そうですね、調整の手間もかかりますし」
え、なにそれ見せないことでよりエロくなる的な──調整!? うわっ、お相手は、つまりそういう方の趣味だったり……?
「Sすごいもんね」
「早く使いたいです」
やっぱり
最早言い逃れできない、この二人はとんでもなくエロエロな関係だ。しかも別の人間を交えて使うタイプ。主導権はどうも生徒会長ではなくこのお相手さんらしい。
私が胸の鼓動でバレないか必死に息を整えていると、何やら静かになってしまった。
見てみると生徒会長はもじもじとして、何か重要なことを伝えようとしているみたいだ。
いや、まさか、こんな外で。
「じゃあ、そろそろヤろっか」
ヤる気だー!!!!!!!
肉食なのは生徒会長もだった。私が築き上げてきたイメージが徐々に崩れていく。
「たまには二人じゃなく四人でやってみたいですけど」
「そういうのがあるの?」
「アローラ地方では盛んみたいですよ、たくさんの観客に囲まれて行うんだとか」
「へぇー! 行ってみたい! こっちだとたくさんの人に囲まれることってあんまりないしね」
え、アローラ地方ってそんなことヤってるんだ……すご。
というか生徒会長は普段から数人程度には見せつけてるってこと? そんなに爛れてたんだ……。
「あとイッシュやカロス地方では三体を代わる代わるローテーションさせたりとか」
「あ、それは知ってる! カロスではレストランで出来るんだよね。ホウエン地方でもひみつきちでみんなやってるらしいよ!」
なんだか私は惨めになってきた、これでも人並みにそういう欲求というか……知識がある方だとは思っていたが二人の話す内容は格が違う。レストラン……ひみつきち……他の地方にはそんなモノがあったなんて。
ちらり、と隣のカクレオンを見る。
この地方では珍しい相棒がいるというだけで、どこか心の中に特別感が、優越感があった。私は外の世界を知っているんだ──なんて。
私はまだ何も知らない子供だった、もっと色んなことを勉強しよう、知識をつけよう。
私は逃げるようにその場を去っていった。
──
「というわけで! 教えてくださいミモりん!」
「寝なさい」
HABCDSにVは公式用語じゃないからネモはこんなこと言わない!
一応答え合わせ
H=HP
A=こうげき
B=ぼうぎょ
C=とくこう
D=とくぼう
S=すばやさ
V=生まれつきのつよさ、が最も優秀であること
四人でやる=バトルロイヤル
三体を代わる代わるローテーション=ローテーションバトル