モンスターストライク 〜星ノ呼ビ聲〜   作:犬社長

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1日2話投稿の1本目です。こっちから読んでネ。






102話〈旧世界終焉序曲〉

 

 

 

 

…………ネオが目覚める頃より、少し前。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーピポポポ……と、微かな電子音が木霊している。

 

…其処は、暗い洞窟の中であった。

 

 大自然が生み出した巨大な鍾乳石が吊り下がる、巨大で広大な地下空洞。

 

 其処に、洞窟の景観には不釣り合いな『黒い卵型の機械』が鎮座している。

 

 機械は無数のコードを周囲に伸ばしていて、そのコードは、周囲に置かれているスーパーコンピュータの様な筐体に繋がっていた。

 

………卵型機械から伸びるコードを糸に見立てれば、無数の糸にくるまった黒い繭の様にも見えよう。

 

そして、その直ぐそばにこれまた人工物らしい物があった。

 

…コンパネ(耐水ラワン合板)と、上にトタン屋根をしいた小屋の様なもの。…どうやら、誰かがここで生活しているらしい。

 

ーーーーまた、洞窟のあちこちには人工の照明が取り付けられており、小屋の側には水耕栽培を行なっているビニールハウスまであった。

 

人の手の入らない秘境に作られた隠れ家。

 

ーーーーまさにそんな感じだ。

 

 

 

そして今、その小屋の主は外に出ている。

 

…どうやら、2人いる様だ。

 

 1人はナースの様な格好をした女性で、もう1人は赤く長い髪にボロボロのマントを羽織った男性だった。

 

 

女性の名は《ソワン》。

男性の名は《ニルヴァーナ》。

 

 

……さて、もうお分かりだろう。この2人は、あの元連邦研究員《ドクトゥール・フォリー》の部下だ。

 

 

 そして、この2人が居る場所こそ、《ドクトゥール・フォリー》が[人工融合装置]の中に入り、〈神化の眠り〉についた洞窟なので在る。(グローリー戦争終結時に彼は神化の眠りにつき、今まで目覚めていない。)

 

 

彼が眠りについたのは、もう1年半前。

 

 

 その間、ソワンはこの洞窟を改造して、居住環境を整えていたのだ。彼の助手として彼を盲信しているソワンは、眠りについているフォリーを、1人で放っておく事など出来なかったのである。

 

 神化完了までどれ程の時間が掛かるか分からなくても、ソワンにとって待つ事は苦痛では無かった。

 

何故ならソワンは信じていたからだ。

 

(ーーーー博士なら、必ず『神』となって目覚めるのだ。)…と。

 

 ただ、ニルヴァーナは待つのが苦手だった様で、この1年半の間にフリーの傭兵としてあちこちを旅していた。新人類とも、旧人類とも戦った様だ。

……トリガーハッピーな彼なら、どんな戦場でも喜んで行ったに違いない。

 

しかし今、彼はここに戻ってきている。

 

理由はただ一つ。

 

間も無く、フォリーが目覚めるからだ。

 

…それがソワンに分かるのは、フォリーがソワンに融合装置を管理する為のデバイスを渡していたからである。

 

 今、ソワンはそのデバイスを通して、〈融合〉が99%まで進んでいると言う事を知っていた。

故に、彼女はニルヴァーナを呼び戻したのだ。

 

 

ーーーーそして、2人は自分達の運命を変えるであろう時を待っていた。

 

 

「…うごかねぇぞ、ソワン?ーーーーお前が急いで戻って来いって言うから、雇い主との契約ドタキャンしてまで来たんだがなぁ??」

 

 ニルヴァーナが、不機嫌そうにソワンに話しかける。…暴れたい所を、我慢して此処に来たのだろう。…欲求不満の様だ。

 

「大丈夫デスよ。」

 

ソワンは首を振る。

 

「もうすぐ博士がーーーーーーーー」

 

ーーーー次の言葉が出るより先に、黒い繭の様な[人工融合装置]が激しく震えた。

 

 プシュープシューと音を立てて、黒い機械が割れ始める。まさに、卵が割れる様に……。

 

割れ目からドバッと流れ出す、緑色に光る液体。

 

 水没したコードの束が、バチバチとショートして煙と火花を上げる。

 

 そして、ズドンッという音と共に、機械の先端が内側から吹き飛ばされた。

 

…先端を吹き飛ばしたのは、内側から発生した衝撃波。その衝撃波はそのまま洞窟の天井を穿ち、分厚い岩盤に穴を開け、地上まで達した。

 

「……うぉ…コイツぁ……。」

 

ニルヴァーナが、微かに呟く。

 

 貫かれた洞窟の天井に開いた穴から、外の光が一筋のスポットライトの様になって、機械の真上に降り注いだ。

 

 そして、その光に照らされる様にして、機械の中から人影が姿を表す。

 

「……博士…!」

 

 ソワンは感激で涙ぐんでいる様だ。ニルヴァーナは、何も言わずに人影を見つめている。若干の恐れすら滲んでいる様だ。

 

 

機械の中から現れた人影。

 

 

ソレは何というか…形容し難い姿であった。

 

 

先ず、体の大部分は機械化している。

 

 そして、胸には十字架の様な光り輝く紋章があり、其処から根を張る様に、真っ赤な血管にしか見えない代物が全身に伸びていた。…壊獣の体のライン模様に似ているかもしれない。

 

 ボディのベースカラーは白だが、全体的に微かに赤み掛かっている。…まるで血に濡れた骨の様だ。

 

 スマートで、シャープな印象を抱かせる顔部分に煌めく眼光は、目が覚める様な真紅。

 

半機械、半生体。

 

ソレは、そんな異形とも見れる姿だった。

 

「おぉ…!博士…!エール・ソレイユのパーツを使ったのデスね!?…美しいデス!!力が漲っているのが、手に取るように分かりマスよ!!」

 

 ソワンが、2回りほど背の高くなった()()()()()()()()()()()()を見上げ、手を叩いて喜ぶ。

 

 そんなソワンに向かって、若干のノイズが混じった声で()()()()()が話しかけた。

 

 

「………その通りだ。ソワンくん。ーーーーーーー実に心地が良いよ…。」

 

 

 聞こえるその声は、確かにドクトゥール・フォリーのモノだった。

 

「………さて、私はどれぐらい眠っていたかな?」

「1年7ヶ月と16日10時間31分59秒デス。」

 

ソワンの声に元フォリーは満足そうに頷いた。

 

「およそ1年半か。……なるほどなるほど。ーーーーまぁ、時間なんて今の私にはどうでも良いか…。」

 

 そう言って、彼は微笑んだーーーー気がした。(彼の頭部には口が無いのだ。)

 

ここでニルヴァーナが話に入る。

 

「……こりゃたまげたな。性格は変わってねぇみたいだが、感じる力は別モノだ。アンタは、いったい何者になっちまったんだよ?」

 

 

元フォリーは、指を一本掲げて見せた。

 

「おぉ、ニルヴァーナくん。君も居たのか。……ならば、感じるだろう?私から流れ出す、覚醒新人類の力を。」

 

彼は続ける。

 

「歪な覚醒者であった〈元天聖ケテル〉の心臓と私は融合し、覚醒新人類の遺伝子と力を取り込んだ。ーーーーその過程で旧人類の肉体は棄てねばならなかったのだが、私は自らの脳や肉体を生体パーツとしてエール・ソレイユのパーツと融合させ、自らに新しい肉体を用意したのだ。覚醒新人類の力に耐えられる肉体をね。」

 

彼は自分の体にそっと触れる。

 

「ーーーーその結果が、この機械の体だ。…エールソレイユの演算コンピュータと生身の脳を一体化させ、覚醒新人類の力をコントロールしている。それだけでは無く、私の心臓をケテルの心臓に置き換えた事で、私そのものが〈覚醒新人類〉となったのだよ。」

 

「……覚醒新人類…。アンタの言う、『神の力』を得た者達か。」

 

ニルヴァーナの合いの手に、元フォリーは頷いた。

 

「あぁ、その通りだ…!ーーーー今の私はもはや、旧人類のドクトゥール・フォリーでは無い…!!肉体を棄て、新人類の力を取り込み、科学の力で神に等しい能力を得たモノ…!!!」

 

彼は両手を掲げる。

 

自らこそが神であると主張する様にーーーーーーーー

 

 

「私の新たな名は〈()()()()()()()()()()()〉!!!古き世界を壊し、新世界の神となるモノだ!!!!」

 

 

 

〈フォリー・ソレイユ・(カイ)〉。

 

 

 

 その誕生こそ、ヒトが化学を以って神になった瞬間である。

 

 

 

 

 

「ーーーーさてさてさて…。目覚めたばかりだが、私にはやるべき事が定まっている。」

 

 そう言うフォリー改め、フォリー・ソレイユ壊。(以下、フォリー壊)

 

ソワンは首をかしげる。

 

「…?何デスか?」

 

 フォリー壊は、自身の胸に刻まれた、真紅の光を放つ十字の紋章に触れた。

 

「覚醒新人類の力を得た時、私にも()()()()()()()()()()()()()()。」

 

そう言って、彼は洞窟の天井…地上を指差す。

 

「どうやら、これからこの地に〈最後の審判〉と言う名の〈神話〉が舞い降りる様だ。そして、世界の滅びが始まる。」

「…んだそのオカルト全開なヤツは。嘘クセェ。」

 

ニルヴァーナが呟いた。

 

「…そう思うのも無理は無いだろう。ーーーーだが、実際にソレは起きる。私は聴いたのだ。この、私の胸に新たに現れた〈星紋〉を通してな。」

 

……〈星紋〉。ーーーーフォリー壊の胸に刻まれた紋章は、ネオの胸にあるモノと実は全く同じであった。

 

「ーーーーなるほど!私にはよく分かりませんデスが、兎に角凄いことが起きるのデスね!」

 

 ソワンは思考を放棄したようだ。…まぁ、フォリーの言う事なら全肯定する彼女なので、そもそも考えてすら無いかもしれないが。

 

「…ま、何かが起きるってのは分かった。ーーーーで?やるべき事ってのは??」

 

 ニルヴァーナの問いかけに、フォリー壊はニヤリと笑った様だ。

 

「君達には理解出来まいが、これは最後の試練でもある。……最後の審判の始まりと同時に、アメノミハシラは星の花へ戻り、そして星の花の元へ辿り着いた覚醒新人類は、自らのーーー正確には全人類のーーーー理想の世界を叶える事が出来る。…そうして、世界は一つ上のレベルへ進むのだ。」

 

ニルヴァーナは腕を組んだ。

 

「………つまり?」

 

フォリー壊は、喜色を隠せぬ声で口を開いた。

 

 

 

「つまり、私も〈星の花〉へ向かうと言う事さ。……()()()()()()()の為に、ね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇ 8月30日 ◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

…星のセラムが、大地に刻まれた渓谷を埋めている。まるで、天の川が地上に降りてきた様だ。

 

 

そんな渓谷の一角で、ニュウは1人歩いていた。

 

 

 頭上を時折、ヘリコプターが飛んでいく。…行方不明のネオを探す為の捜索隊の物だ。

 

 今日も、多くのエージェントがネオ捜索の為に力を貸してくれている。

 

 それに感謝しながら、ニュウは渓谷を歩いていた。…足元には、色とりどりの花が咲き乱れていて、美しい景色である。

 

 ネオさえ見つかれば、もっとこの景色も美しく思えるのかもしれない。……なんて考えていた彼の前に、開けた場所が現れた。

 

 綺麗で大きな川が直ぐそばを流れていて、カラフルな蝶が飛び交っている。

そして、足元にはやはり花が満開だった。

 

更に遠くの空には、〈アメノミハシラ〉が朧げに映り込んでいる。

 

 寝起きでこの景色を見たら、天国かと見間違えてしまうかもしれない。

 

「…………ん?」

 

 流れる清流を何となく眺めていた時、川に何かが流れている事にニュウは気付いた。

 

 近付くと、どうやらそれは空色に輝くキューブのカケラの様でーーーーーーーー

 

「え?」

 

 胸がキュッとなる感覚を覚えたニュウは、思わず駆け寄って地面に跪き、流れに乗ってこっちに向かってきたキューブを拾い上げた。ーーーー拾い上げた瞬間、それはフワッと消える。

 

まるで、セラムキューブ…………

 

 

ふさ………

 

 

ーーーー瞬間、視界が誰かの手で塞がれた。

 

 

 そして暖かな気配と、澄み通った朝の空気の様な声が、耳元から問い掛けてくる。

 

 

「………だ〜れだ。」

 

 

「…!」

 

息が止まった。

 

 この声を…忘れる事など不可能だろう。…少なくとも、自分にとっては。

 

 ニュウは思わず答える事を忘れて、自分の目を閉ざした手を自分の手でそっと退ける。

 

その瞬間、頬を涙が伝うのを感じた。

 

そして、彼は真後ろを振り返る。

 

 

「もう…退かしたらダメだよ………ニュウくん。」

 

 

ーーーーーーーそこには、そう言って微笑むネオの顔があった。その微かに潤んだ青い蒼い瞳を見た瞬間、ニュウは途轍もない安堵が押し寄せてきて、彼女に抱きつく様に崩れ落ちてしまった。

 

「ーーーーネオさんっっ!!!」

「わっと…。………ーーーごめん。遅くなった。」

 

 受け止めた彼女の温かい手が、震える自分の頭を撫ぜる。

 

 ニュウはただ花咲き誇る川辺で、彼女の胸に顔を埋めて泣きついていた。肩を震わせて、母親に縋る子供の様に。

 

「…………。」

 

 ネオは何も言わない。…ただ、彼の気持ちが落ち着くまで、彼を受け止めたまま座り込んでいる。手だけが、ゆっくりと彼の頭を撫ぜていた。

 

「……こ、これは……夢じゃないですよね……??僕が…とうとうおかしくなっちゃったんじゃ、無いですよね…?」

「うん。大丈夫。私はここに居るよ。」

 

そう言って頷くネオ。

 

「…僕、僕……貴女が死んだんじゃないかって…それで、ずっと…ずっと怖くて……。」

「うん。」

「もう、諦めてしまおうかって思った時もあって……。」

「うん。」

「でも………でも…。」

 

ーーーーニュウは顔を上げた。彼の視線が、ようやくハッキリとネオを捉える。

 

「……生きてたんですね。…ネオさん…。」

「うん。生きてたよ。………アレぐらいで、私は貴方の元から離れたりしないから。」

「そうですか……うん、そうですよね。」

 

 それを聞いたニュウは何度も頷いてから、ネオから体を離す。……ちょっぴり名残惜しいとネオが思った事は内緒

 

「ーーーーーーーー僕、皆んなに伝えてきます。ネオさんが見つかったって。」

 

ネオは頷いた。

 

「うん、そうして。……ついでに、私からも皆に伝えたい事がある。この3週間の間の事で。」

 

 ネオの言葉の端々に宿っている真剣な意志を感じたのか、ニュウは無言で頷いた。

 

 

 そして、ニュウによってネオ生存確認の一報が、速やかに捜索隊全隊に伝えられるのだったーーーーーーーー

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「ーーーーーーーーネオ!!」

 

 

 

 ネオの捜索隊への合流と同時に、真っ先にネオの元へ飛んできたのは、意外にもアルスラーンであった。

 

 どすっ、と中々に鈍い音を立ててアルスラーンがネオに抱きつく。

 

「ーーーーネオ!!!無事だったんだな!?良かった…!!どれだけキミの事に思いを巡らした事か!!…待ってたんだぞ?!本当に、本当に待ってたんだぞっ……!」

 

 アルスラーンに体を締め付けられて、ネオは若干息苦しそうな顔をしていたが、振り解く事なく彼女の背中を軽く叩いて感謝を告げた。

 

「アルスラーン……。ありがとう。待っててくれて。」

 

 中々離れようとしないアルスラーン。…続いて、横から捜索隊に参加していたアビスとカノン。そして、〈奇巌城(エギーユクルーズ)〉の主人であるアルセーヌがネオに近づいた。

 

「…無事で良かったわ。ネオ。ーーーーしかも元気そうじゃない。」

 

微笑むアルセーヌに、ネオは頷き返す。

 

「アルセーヌも、心配かけさせてゴメン。…奇巌城(エギーユクルーズ)まで使ってくれてたんだね。」

「ま、拠点としてはとっても優秀でしょ?安いものよ♪」

 

そう言ってアルセーヌはウィンクした。

続いて、カノンとアビスがネオに話しかける。

 

「ん。私は信じてた。」

「私もです。……良かった。」

「うん。ーーーー2人とも、ありがとう。」

 

 この3人の会話は短かったが、互いにそれで満足した様だ。

 

 

「うんうん。良かったじゃん♪…ね?ニュウ♪」

 

 

 彼女達の再会を遠目に見守っていたニュウの肩に、ニュウと同じアンナスル・アッターイル支部から捜索隊に参加していた〈ジャック・ザ・リッパー〉(以下、ジャック)が、ポンと手を置いてそう言った。

 

「…ジャックさん。……ジャックさんも、ありがとうございます。長々と付き合わせてしまって。」

 

 未だ泣き腫らした顔のまま、ニュウはそっと頷く。ジャックはニコッと笑った。

 

「良いよ良いよ〜♪キミの頼みなら、私頑張っちゃうからねっ♪♪ーーーーそうでしょ?ポラリス〜♪」

 

 最後の言葉は、ジャックの隣にいたポラリス(ネオが所属する〈シグナス支部〉のスターダストエージェント。)に向けられたモノだ。

 

…彼女もネオ捜索の為に、シグナス支部が置かれているブリタニアから、遥々ここまでやって来てくれていたのである。

 

「…ひゃ?!突かないでよ!」

「ごめーん♪」

 

 そうポラリスはジャックを嗜めてから、ネオ達の方を向いて軽く息を吐く。

 

「……ふぅ。ーーーーま、コレで一件落着ってトコかしらね。」

 

 

「ーーーーいや、まだだよ。」

 

 

 と、ここで3人の話を聞いていたらしいネオが、ニュウのそばにやって来てそう言った。…スッと、ジャックがニュウの肩に置いた手を離す。

 

 ネオは今この場にいる全員を見渡しながら、話を続けた。

 

「…実はまだ、皆に話さないといけない事がある。ちょっと突拍子もない話になるんだけど、聞いてくれる?」

 

アルセーヌが頷く。

 

「もちろん。…長くなるかしら?」

「結構。」

「…なら、〈奇巌城(エギーユクルーズ)〉の中で聞きましょ。直ぐそばまで飛ばして来たのよ。」

 

アルセーヌの声に、ネオは頷いた。

 

「…分かった。じゃ、そこで話す。出来る限り沢山の人に聞いて欲しいから、ジャックとかポラリスとかも来て。」

「はーーい♪♪」

「…了解よ。」

 

 頷くポラリスとジャック。なんとなく、ネオから発せられる真剣な気配を感じ取っているらしい。

 

「あの〜……我々は?」

 

 他の捜索隊のメンバーを代表して、1人の男のエージェントがネオに質問した。ネオは、一瞬考えてから男のエージェントを手招きする。

 

「…捜索隊全員に聞かせるのは無理だから、貴方が代表で来てもらえる?…話を後で伝えて欲しい。」

 

「り、了解です。」

 

 おっかなびっくりとした様子で、ネオに招かれて歩き出す男。…そんな彼に、他の捜索隊の視線ーーーー主に話の内容に対する好奇の視線だが、若干の羨望が混じっている気もするーーーーが注がれる。

 

ここでアルスラーンが、捜索隊を見渡して声を上げた。

 

「では、他のメンバーは解散だな…。ーーーー諸君!!これまでの協力、感謝する!…現時点を以って、ネオの捜索活動は終了。各自、其々の持ち場へ帰還する事!ーーーーーーー以上!解散!!」

 

 

「「ーーーー了解!!」」

 

 

 アルスラーンの言葉に、一斉に敬礼を返したエージェント達。そして、捜索隊を乗せたヘリコプターやオスプレイが、次々と渓谷から飛び立っていく。

 

 そして、ネオ達はアルセーヌの空飛ぶ拠点ーーーー〈奇巌城(エギーユクルーズ)〉に乗り込むと、話を始めるのだったーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「ーーーー取り敢えずアルセーヌ。…アステールへ向かってくれる?道中で話はするから。」

 

 奇巌城(エギーユクルーズ)の中に乗り込んだネオは、内部の大広間でアルセーヌに素早くそう言った。

 

「良いわよ。…この感じだと、お急ぎよね?」

「うん。ーーーー出来る限り、速くでお願い。」

「了解、任せなさい。此処とアステールは意外と近いわ。…そんなに待たせないわよ。」

 

 そう言ったアルセーヌは、自前のタブレットを取り出すと画面をいじり始めた。… 奇巌城(エギーユクルーズ)の操作の為のデバイスの様だ。

 

 ネオは椅子に座り込むと、他の人々が座ったのを確認してから、話を始める。

 

 

 

ーーーー自分がこの3週間の間、何処に居て、何をしていたのか。

 

ーーーーそして、コレから何が起きて、自分は何がしたいのか。

 

 

 

 夢の中で星の花から聞いた事を、ネオは一言一句違わず今この場にいる全員に伝えたのだ。

 

 

 しかし、この話をネオ以外の人間が理解するのは困難を極めた。

 

 

 まず、ほぼ全員が天聖ダアトとビナーの所で驚き、〈星の花〉の正体の話で『?』と首を傾げ、続く〈最後の審判〉と滅亡を回避する為の方法の所では、ネオ以外全員が宇宙猫(わけわかんない)状態となっていたのだ。

 

 

「えっと……大丈夫?話……付いて来てる…?」

 

 

 思わずネオがそう言ってしまったぐらいには、全員の目が点になってになっている。

 

 考えるのが苦手はジャックに至っては、ハサミで1人遊びを始めている様だ。

 

 

「えっと……。取り敢えず、なんか世界がヤバいって認識でオッケーですか……???」

「うん。そんな感じだね。」

 

ニュウの絞り出した声に、ネオはそっと頷いた。

 

「…最後の審判……ですか。」

 

アビスが、若干の畏怖が混ざった口調で独り囁いた。

隣で、アルスラーンが小さく呟く。

 

「ーーーーコレから始まる事は、さしずめ『神話』の新たなる序章と言った所な訳だ。今の世界は終わり、新しい世界が始まる。……よもや、壊獣の活発化はその先駆けだったのか…?」

 

「ーーーーで、それを止めないと大変って事だよね。」

 

続いてカノンがそう言った。

 

「うん。…ただ、止める為には一度〈審判〉が始まらないといけない。〈審判〉の開始と同時に、アメノミハシラは崩壊して〈星の花〉に戻る。…〈審判〉の始まりは滅びの始まりだから、私達は世界が滅び切ってしまうより先に〈星の花〉の元へ行って、滅びの進行止める必要がある…。」

 

「だから急ぐのね。」

 

アルセーヌが納得した様に頷いた。

 

「そう。…そして、〈星の花〉に近い場所に有るアステールで、皆んなの協力を得て〈星の花〉へ行く。……コレには皆んなの力が必要なの。」

「……中々大変なミッションね。」

 

ポラリスが腕を組んだ。

 

「ーーーーとは言え、今のアステールにはスターダストの勢力が多く集まっているわ。……いわば、既に役者は揃っている状態よ。」

 

アルセーヌがそう呟く。

 

「…ならば、話は一つって事ですね。……ネオさんの話をアステールのゼウスさんとか他の皆んなに伝えて、滅びを止める為に〈星の花〉の元ーーーーつまり、()()()()()()()()()ーーーーそう言う事ですか。」

 

ニュウの声に、ネオは強く頷いた。

 

 

「うん。その通り。……だから、力を貸して欲しい。この世界の為に。」

 

 

 その声に、今この場に居るメンバー全員が、互いの顔をチラッと見合わせた後、強く頷いたのだった。

 

 

ーーーーーー彼女らを乗せた奇巌城(エギーユクルーズ)は、青空の下を〈アステール〉目掛けて急ぐ。

 

 

 

………そして、遂にネオは〈アステール〉へと辿り着いたのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー星屑の街〈アステール〉。

 

 

 

此処は常にネオ達の運命を変えて来た。

 

 

 

ネオがイースターに出会ったのも、この街。

 

 遡れば、カノンが新人類を深く知るきっかけとなったのも、この街。

 

バサラがコクウと決別したのも、この街。

 

ニュウが連邦と袂を分かったのも、この街。

 

 

全ては此処から始まった。

 

 

そして、全ては此処で終わる。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーアステールに辿り着いたネオが、ゼウスを始めとしたアステールの人々に、温かく迎え入れられた直後

 

 

 

 

 

 

 

星暦XXX2年 8月 30日 15時 26分 30秒

 

 

 

 

 

 

 

旧世界は終焉の刻を迎えた。

 

 

 

 

 

 







ドクトゥール・フォリー遂に復活!

大丈夫。ちゃんと忘れてないよアンタの事。

ネオニュウの再会は案外アッサリだったかな?…ま、これからが大変ですからね。

今回は1日2話投稿です。続く〈〜歓喜の歌〜〉もお読み下さい。→
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