モンスターストライク 〜星ノ呼ビ聲〜   作:犬社長

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もはや人類に未来など無い






103話〈END OF WORLD〉

 

 

 

「……ふふふふ。」

 

 

ーーーー笑い声が、終末の空に響く。

 

「ふははははは……!」

 

微かにノイズの混じった声。

 

 

…フォリー・ソレイユ・壊のモノだ。

 

 

 彼は、ソワンとニルヴァーナを従え、洞窟の外に佇んでいる。

 

 見渡す限りの大自然の中、空に浮かび上がった〈星の花〉だけが凄く目立っていた。

 

「…こ、コレは凄い事が起きてるデスね…。」

 

 朝と夜が混じり、天の川と金環日食が共に存在する異様な空を見上げ、ソワンが1人呟く。

 

ニルヴァーナも、呆然としている様だ。

 

「壊獣も沢山いやがる…。確かにこの世の終わりだな。」

 

「その通りだ。ーーーー実に面白い。」

 

フォリー壊が、2人の方を向く。

 

そして真紅の眼光を煌めかせながら、口を開いた。

 

「さて、コレより我々は星の花を目指す。ーーーーとは言え、かなりの混乱が予想されるだろう。私の見立てでは、同じ星紋を持つネオも星の声を聞いた筈。…つまり、彼女も星の花を目指す筈だ。」

「んなるほど。…じゃ、俺らは()()()()わけだ。」

 

ニルヴァーナの相槌に、フォリー壊は頷きを返す。

 

「あぁ。だが、手を取る気など無い。ーーーーどうせ敵対するだろうしな。…だから、彼女達を精々利用しようじゃ無いか。()()()()()()()()()()()()()。」

 

 つまり、星の花の下へ行くにあたって障害となり得る壊獣達を、ネオ達に先に倒させてから、後で安全になった道を自分達が通る……そう言う事だろう。

 

 但し、先にネオが星の花に辿り着いた場合、その時点でフォリー壊達の負けだ。…故に、ネオが星の花の下へ訪れるより先に、フォリー壊達が星の花の下へ行く必要があった。

 

「ちょっとした競争さ。……勝者は1人。敗者は死ぬだけ。実にシンプルだ。」

 

 そう楽しそうに呟いたフォリー壊は、背中から()を広げて浮かび上がる。…その翼は、星のセラムから形作られている様だ。

 

「!?ーーーー翼を手に入れたのデスか!?博士!!」

 

ソワンの声に、フォリー壊は頷いた。

 

「あぁ。ケテルの能力である〈星の(かいな)〉…その応用さ。〈壊星の翼〉とでも名付けようか。」

 

 そう言った彼は、ケテルの様に背中から新しい腕を何本か生み出し、ニルヴァーナとソワンを掴んだ。

 

「…おいフォリー博士?…まさか、このまま俺等を運んでくんじゃあ無えよな…?」

「ん?ーーーーそのつもりだが?」

 

 ニルヴァーナの顔が引き攣る。…落ちたらどうすんだーーーと言おうとした瞬間、フォリー壊が翼を大きく広げた。

 

「安心したまえ。…落ちても直ぐに拾い直すさ。」

 

 そう言う問題じゃねぇ!ーーーーとニルヴァーナは言おうとしたが、言葉が出るより早く、フォリー壊が大地を蹴った。

 

 

ーーーー機械仕掛けの人工神が、いま翼を広げて星の聖所へと飛び立ったのだ。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇ネオside◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー場面は〈アステール〉へ変わる。

 

 

 〈星の花〉の再出現と、壊獣の大量出現及び、それによる世界規模の大混乱ーーーー即ち〈最後の審判〉が始まって直ぐ、ネオ達はスターダスト本部に集まっていた。

 

 世界の空を覆う夥しい数の壊獣達は、次々と狂った様に地上の人々へ牙を剥く。

 

……コレは滅び。この古い世界を終わらせる為の、最後の仕上げだ。

 

しかし、希望は残っている。ーーーーどんな時でも。

 

 

 

「ーーーー遂に始まったんだな。…終わりが。」

 

 ゼウスの呟きが、エージェント達の集まる部屋に響く。

 

 イースター本部にネオ達が訪れた時には、すでに今アステールに滞在中の全戦力が集っていた。

 

…アステールは、かつての獣神祭の時の異変と同じ様に、街のあちこちに壊獣が現れ大パニックに陥っている。

 

 街の至る所で戦いが起きているこの状況を見れば、終焉の時が来た事など一目瞭然だろう。

 

ーーーーしかしゼウス達は、街の防衛の指示を出しつつも、ネオ達の為に戦力を用意してくれていたのだ。

 

「すっごい事になってるねー♪。流石の私も、いつもの様にハッピーハッピー言ってる場合じゃ無くなって来たかも☆」

 

そう言うのはジャック・ザ・リッパーだ。

…口ではそう言っているが、相変わらずハッピーな笑顔は絶えていない。

 

「…コレが終わりとはな。しかも、コレが引き起こされたのは、俺達が戦いを始めたからだなんてよ。」

「……うん。正直言って…私は凄く怖いよ。」

 

 部屋の隅で顔を暗くしているのは、オーステルンの自称天才ハッカー〈カノープス〉と、彼の仕事仲間の〈サテライト〉だ。

……30話ぶりの登場である(メタい)(忘れてたなんて言えない)

 

「ーーーーでも、大丈夫。」

 

此処でネオが口を開く。

 

「…もう私達は間違えない。今度こそ、潰えぬ悲しみの輪から脱却する時なんだ。…一時は悩み苦しんだけれど、その為の覚悟は今は出来ている。」

 

 ネオの声に、かつて彼女の悩みを聞いていたアーサーが、感慨深く頷いた。……彼女のアドバイスも、試練の中で重要な役割を果たしてくれた。ネオは、感謝の意を込めて頷き返しておく。

 

「ーーーーーーー彼等(旧人類)と、そして私達(新人類)が犯した嘗ての過ちを超えて、今こそ皆んなが一つになる時。一緒に世界の滅びを止めよう。」

 

 ネオが発したその力強い言葉は、此処に集まっている全ての人々の心に響いた。

 

 

「……で、具体的にはどうやって〈星の花〉へ向かうつもりだ?」

 

 全員の意思が一致した所で、ポセイドンがネオに疑問を投げかける。

 

…コレに答えたのは、アルセーヌだった。

 

「ーーーー奇巌城(エギーユクルーズ)を使うわ。…現状、星の花は空に浮遊している。近づこうとすれば壊獣の攻撃を受ける事になる訳だけど、そこは今この場にいる〈移動要塞都市〉の力を借りる。…各国の航空戦力を援護に回してもらうわよ?」

 

アルセーヌの声に、ケラウノスが最初に頷いた。

 

「あぁ、いいぞ。好きに使え。」

 

 続いて、今のこの場にいる全ての移動要塞都市の王達が、揃って頷いて同意した。

 

「我がブリタニアも、持てる限りの全ての力を君達に託そう。」

と、アーサー。

 

「レシアル国も右に同じよ。ーーーー私自身は行けないけど、頑張ってね…!」

と、ソロモン。

 

「フィンディアスもだ。…出し惜しみはしない。」

ヌアザが頷く。

 

「我々、トーリーも支援するぜ。世界を頼んだぞ。」

ルーがそう言って親指を立てた。

 

ネオは心の底から感謝している様に、深々と頷く。

 

「ありがとう。…でも、アステールの守護は大丈夫?」

 

 その言葉に答えたのは、ポセイドンとトライデントだった。

 

「心配するな。…アステールの兵が民を守る。防衛兵器もたっぷり有るんだ。ーーーー忘れたか?元々アステールが連邦から手出しされてなかったのは、その豊富な兵力のせいだって事をよ。」

「ーーーー住民達は、〈地下空間シェルター〉*1へ避難誘導してるからね!だから、こっちは全然気にしないで良いよ!!だいじょーぶ!ヘーキヘーキ!!」

 

ーーーーーネオを安心させる様に何度も頷く2人。

 

 それを聞いたネオは静かに頷いた。…こんな状況だ。本当は彼らだって厳しい筈。しかし、それでも自分の為を思って居てくれていると言う事が、ネオにもはっきりと伝わった。

 

「…で、奇巌城(エギーユクルーズ)に乗るのは誰になる訳かしら?」

 

 そう言うのはポラリスだ。後ろでは、彼女の護衛(しもべ)が心配そうな顔をしている。

 しかし、当のポラリスは全く意に介する事なく、自信ありげな顔でネオを見つめるのだった。

 

「もちろん、私は行くわよ?ーーーー強力な戦力が必要なんでしょ?私がピッタリじゃない!」

 

それに異を唱える事なく頷くネオ。

 

「うん。助かるよ。」

 

「はいはいはいはーい!私もいっくよー☆ーーーー新人類…ううん♪全人類のハッピーワールドの為に、私も一肌脱がないとねっ♪」

 

 ジャックが、先生に当てられたくて堪らない生徒の様に、何度も手を上げては椅子の上で跳ねた。

 

 続いて、フェムト・ハクビ・サクアのアステール組が次々と名乗り出る。

 

「僕も…行ってみようと思う。ーーーーこの力を人の為に使えるのなら、それはきっと今の筈だから…!」

「私も我が王と共に征こう。……この手で明日を掴む為に。」

「サクアも行くよ!…貴方達に比べれば微力だけど、それでもこの街で震えてるよりかは、戦う方が良い!」

 

 その声を聞いたアルスラーンは、感激で打ち震えている様だった。

 

「お前達……!」

「ーーーーでは、わたくしは皆様をお待ちしております。」

 

 アルスラーンの屋敷のメイドであるシャイターンが、そっと腰を曲げた。

 

「わたくしは唯の非力なメイドですから。…ならば、私はせめてメイドとしての本分を果たそうと思います。」

「あぁ。頼んだ。…君は最高のメイドだよ。」

 

 アルスラーンは頷いた。ーーーーー次に、アミダが闘志の滲んだ声を出しながら立ち上がる。

 

「サクアちゃん達も来るんだね…!ーーーーコレは負けらんないよ!」

横で、キラリが両手を握り締めた。

「頑張ろうね…アミダちゃん…!」

 

闘魂を燃やす2人を横目に、ゼウスが口を開く。

 

「なぁ?戦力が要るなら、ウチのケラウノスを貸そうか?」

 

コレには、ネオは首を振った。

 

「ううん。…各要塞都市の副艦長達には、アステールの守護に回って欲しい。壊獣の迎撃なら兵器にも出来るけど、人を助けるのは、同じ人間にしか出来ないから。」

 

その言葉を聞いたクラウソラスが微笑んだ。

 

「…人命救助と士気の維持という訳だね。任せなよ。」

 

「ーーーー街の混乱の鎮圧は、私たちも全力でサポートさせていただきます。私の仲間は、みな優秀なエージェントです。避難誘導や壊獣対応にも、その実力を遺憾なく発揮できるでしょう。」

 

 この集まりに参加していたスターダスト〈ウルトゥル・カデンス支部〉の司令官ベガが、真剣な顔で口を開いた。

ネオは、彼女の顔をしっかりと見つめて頷きを返す。

 

「…うんお願い。あと、私たちのサポートにはサテライトとカノープス、そして『あるびぃ』に任せようと思う。…あるびぃは居るよね?」

 

 次の瞬間、元気溢れる声がなんとカノープスの持っているコンピュータ内から聞こえて来た。

 

『はいはーーい!居ますよぉ〜☆あるびぃ、しっかり話を聞いておりましたー!カノープスさんの高性能PCから、皆さんをアシストしますね!』

 

 彼女こそが、スターダストが誇る自立型AIアルビレオである。

 

「ーーーーおいアルビレオ?!お前、いつの間に俺様のコンピュータ内にっ?!」

 

 当のカノープスすら、あるびぃが自身のPC内に居たことを知らなかったのか、かなり驚いている様だ。

 

『ついさっきでーす。長官に命令されまして〜。……それにしても、カノープスさんピザ食べ過ぎだと思います。PCの中までピザ臭いですよ?』

「んな訳ねぇだろっ!?臭いはデータ化しねぇっつうの!」

「ま、カノープスは確かにピザ食べ過ぎだね。太った??」

「なっ?!サテライトてめぇ、気にしてる事をっ!!」

 

なんかわちゃわちゃし始めた3人。

 

 若干の微笑ましい気の緩み(シリアスの消失)を感じつつも、ネオはPC画面に映るアルビレオ(あるびぃ)に話しかけた。

 

「あるびぃ。…奇巌城(エギーユクルーズ)のシステムにも干渉できる?あと、移動要塞都市の分離稼働型防衛兵器(シールドン・ビットン)も、一緒に動かしてくれると助かるんだ。都市防衛に必要な分以外は、全部。」

 

……かなりの仕事量に見えるが、あるびぃはニコッと笑う。

 

『もちろん出来ますよぉ〜!あるびぃ、電脳世界ならば幾らでも自分の複製(コピー)が出来ますからね☆マルチタスクもなんのその!』

 

そう、コレこそがアルビレオ最大の特徴。

ーーーーイッターネット内であれば、彼女は同時に複数存在出来るのだ。

 

「なら、任せたよ。」

『お任せ下さ〜い!!ーーーー不肖あるびぃ、頑張ります☆!』

 

 アルビレオは画面の中でネオに向かって敬礼すると、微かなノイズと共に一旦カノープスのPCから姿を消した。

 

 それを見届け、ネオは満足した様に頷くとまた口を開いた。

 

「…いま準備出来る戦力はコレぐらいかな。ーーーーでも、最後に一つ頼みたい事がある。」

 

彼女の顔がポセイドンの方へ向く。

 

「…街の人達が避難してるシェルターには、通信機器があるの?」

 

ポセイドンは頷いた。

 

「あぁ。あるぞ。…籠城も考慮してるシェルターだ。外部との連絡手段は用意してる。」

「なら、それを使いたい。」

 

ポセイドンは首を捻る。

 

「…別に良いが…何でだ?連絡を取りたい人でも居るのか?」

 

その問いに、ネオは自分の胸にそっと手を当てて口を開く。

 

「…コレは『世界を終わらせたくない』という()()()()を、星の花に届けに行くための戦い。ーーーー戦いによって地に満ちた〈滅びの願い〉が、人類の総意であると星の意思に認識された事で〈最後の審判〉は始まった。……私はそれを止めに行くけれど、()()()()()()の力も借りたい。少しでもこの地の上で滅びを拒む人達が居る事が、きっと星の意思を納得させる一助になるかもしれないの。」

 

ポセイドンは顎を摩った。

 

「ふむ…アステールの民に自らの願いを問う訳か。」

「うん。その声は、きっと私たちの力になる。」

 

それを聞いたポセイドンは、強く頷く。

 

「よし来た。ーーーーなら、好きに使え。勿論、俺の願いは一つだ。『世界は終わらせない。』…この願いが、アンタの力に成れば良いぜ?」

 

優しく微笑むネオ。

 

「ありがとう。…取り敢えず、私たちはまず出撃の準備をするね。…後であるびぃに、シェルターとの通信は繋げて貰う。ーーーー人類には余り時間が無い、急がないと。」

 

アルセーヌが立ち上がった。

 

「任せなさい。ーーーー奇巌城(エギーユクルーズ)は、グローリーに停めてあるわ。乗れば〈星の花〉まで一直線よ。」

「ーーーーよっしゃ、俺達もやってやるか!!ケラウノス!航空隊出撃準備だ!!」

「了解だぜ、オジキ。文字通り、一世一代の大勝負と行こうか!」

「ならば我らも行くぞ、クラウソラス。」

「ふふ……言われなくともだよ、おっさん。」

 

 

ーーーーゼウス達含めた各要塞都市の艦長も、一斉に立ち上がる。

 

 

 

そして、全てが慌ただしく動き始めた。

 

 

 

「ーーーーニュウ様。」

 

 ネオ達に続いてニュウが部屋から退出しようとした時、彼はシャイターンに呼び止められる。

 

「…?何ですか?」

 

 振り返ったニュウを、シャイターンは真っ直ぐな瞳で見つめてから口を開いた。

 

「……お願いです。どうかネオ様をお守りして下さい。今の貴方様なら、其れが出来るでしょうから。」

「ーーーー!」

 

 その瞳は真剣そのもので、ニュウは嘗て自分が裏切り者だと打ち明けた時、1番ネオの為に怒っていた人物こそが、このシャイターンだったと思い出す。

 

 あまり言葉や態度に出さずとも、シャイターンもまた、ネオを大切に慕い想っているのだという事が、ハッキリとニュウに伝わった。

 

ーーーーだから、ニュウは強く頷く。今度は心の底から。

 

「勿論です。必ずや。」

 

そして、彼はネオ達を追って立ち去っていった。

 

 後に1人残されたシャイターンは、赤々と光る混沌とした空を見上げ、ただ1人跪いて手を組む。

 

 

(……神よ。どうか、皆様に救いをーーーー。)

 

 

その祈りを聞く神は、いま何処や。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー場面は、アステールの民が避難している〈地下空間シェルター〉へ移る。

 

 

 

…かつて、天聖ケテルが部下達と共に作り上げた地下空間は、その存在がイースターによって露見した後、アステールの人々によって有事の際の避難所として改造が施されていた。

 

 広大な空間は、緊急時に軍を指揮できる様に、鉄筋コンクリートでヘリポートや倉庫が増築され、アステールに住う市民達が避難する為のシェルターが、その外側を囲む様に建築されている。

 

その見た目は正に、要塞化した地下空間(ジオフロント)だ。

 

 しかし、ここに避難することに成功している人々は、まだ街全体の半分に過ぎない。

 

まだ沢山の人が、街の混乱に取り残されているのだ。

 

 

「ーーーーおい、聞いたか?アステールから中継があるらしいぞ?」

 

 

 そんな中、シェルターの避難民達の間でそんな話が飛び交う。

 

 シェルターのあちこちにあるスピーカーからは、何処かと通信が繋がっている事を示すノイズが流れていた。

 

スピーカーの前には、何人もの避難民が集まっている。

 

 殆どの人が、自分達の王であるポセイドンからの通信だと思っているらしい。

 

「一体何だ?ポセイドン様からか?」

「いや、スターダストかもーーーー」

「どっちでも良い!誰か街をなんとかしてくれ〜!!」

「ポセイドン様?ーーーー街で家族と離れ離れになったんだ!どうか家族をお助け下さい!!」

「どうにかしてくれポセイドン様〜!」

 

 アステールに迫り来る黙示録に、不安と恐怖を隠せない人々の声が、辺りに木霊する。

 

 

ーーーーその声に応えたのは、スピーカーから響くネオの声だった。

 

 

『ーーーーハロー、ネオです。』

 

 

一部の人々が、弾かれた様に顔を上げる。

 

「ネオ様っ?」

「ネオ様!ネオ様だ!!」

「ネオ様〜!!!」

 

 アステールにそこそこ居るネオ信者達が、彼女の声に気付いたのだ。

 信者でなくとも、ネオを知ってる人は居る。彼らも、聞こえて来たネオの声に耳を傾ける。

 

ーーーーその声は真剣な響きを帯びていて、不思議と耳を傾けてしまう様な、そんな不思議な力が有る気がした。

 

 

『ーーーー今、世界は滅びへ向かっている。』

 

 

ネオの声が、避難民達に響き渡る。

 

『コレは、私たちと旧人類が争い合ったことで生まれてしまった、互いの死を望む思いを、星が聞き届けてしまった事で起きた事。……人類の罪が招いたモノだった。』

 

その声は風に乗る。

 

『だけど、私は信じたい。ーーーー私達は罪を犯したけど、償って生きていく事も出来る筈だって。……私は願っている。世界が終わらない事を。だから、皆んなも願ってみて欲しい。世界はどうなるべきなのか。ーーーー私は皆んなの願いを星へ伝えにいく。この世界を終わらせない為に。まだ、人類を信じても良いんだと星に伝える為に。』

 

ソレを聞いた誰しもが、互いの顔を見合わせた。

 

……世界がどうなりたいか?

 

そんなの決まってる。

 

「お…俺はーーーー」

 

1人の住民が、おずおずと口を開いた。

 

「ーーーーこのまま世界を終わらせたく無い。皆んな幸せに生きていたい。旧人類だとか、新人類だとか、そんなモノはもう沢山だ…!みんなが等しく生きていられる世界を望んでも良いのなら、俺はそんな世界が良い…!!」

 

ソレを聞いた他の人達も、皆口々に声を上げ始めた。

 

「ーーーー誰も悲しまない世界を!」

「明日も生きていたい!!」

「俺は、差別されることの無い世界を願ってるんだ!」

「星のセラムも、壊獣も居ない世界が、私の願い!!」

 

地鳴りの様に辺りの空気を畝らす、願いの声。

 

ーーーーこの通信は、一方通行だ。…だから、この声がネオに届くことは無い。なのに、彼らはネオが自分達の声を聞いて微笑んだ気がした。

 

 

『ーーーーありがとう。その声はきっと届く。私が届けに行く。』

 

 

ーーーーそして、アステールの人々は見た。

 

 

 アステールの防衛兵器が放つ色とりどりの閃光と、漆黒の壊獣と偽りの星々に埋め尽くされた終焉の空に、無数の戦闘機を引き連れて北へ飛翔する巨大な奇巌城(エギーユクルーズ)の影を。

 

「おぉ…ネオ様だ…!!ーーーーネオ様が、我らの願いを()へ届けに向かわれるッ…!!皆のもの!祈れ!祈るのだ!!」

 

ソレを見たネオ信者達が、次々と手を組み始めた。

 

 その空気に感化されて、信者では無いただの市民達までもが、目を閉じて両手を組む。

 

 

 

 神に祈りを捧げる様に。自らが願う、()()()()()を想って。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

『ーーーー通信終了♪そして、エギーユクルーズ、高度800メートル到達のお知らせです☆ーーーー壊獣が来ます。気を付けて下さい♪』

 

 

 カノープスのPCにアクセスして、アステールと通信を繋いでくれていたアルビレオの声が、通信を終えたネオの耳に響いた。

 

「うん。ありがとうあるびぃ。ーーーーアステールに通信を繋いでくれて。」

『いえいえ〜。』

 

和かに笑って首を振るアルビレオ。

 

 ネオは奇巌城(エギーユクルーズ)の外に立って、光る〈星のセラム〉の根に覆われた、夜と朝の混じる空を見上げる。側には、イースターとスターダストの仲間達が居た。

 

「ーーーー本当は、この通信がもっと世界に届けばよかったんだけれどね。……でもアステールの人々が願ってくれているだけでも、今の私には十分だよ。」

 

 他の街でも、終末の恐怖に怯えている人々がいる筈だ。ーーーーそんな彼等を、ネオは少しでも安心させたかった。

 まだ諦めるのは早いのだーーーーと、そう言ってやりたかった。

 

 それ故に零れた言葉だったのだが、ココでアルビレオが意外な事を口に出す。

 

『お、その点なら大丈夫ですよー?ーーーーカノープスさんのPCから、()()()他の新人類街やスターダスト支部にも、通信を繋いでおきました〜☆』

「…!」

 

ネオは目を丸くした。アルビレオは続ける。

 

『ーーーーですから、多少のタイムラグは有りますけど、きっと今頃世界中の新人類達が、ネオさんの声を聞いた筈です☆コレできっと、願いの力も高まるよ〜♪』

 

 

…そう、アルビレオはカノープスのPCから、世界各地の新人類街やスターダスト支部に、通信を密かに繋いでいたのだ。

 

 新人類街オールトやアンナスル・アッターイル支部、シグナス支部に、ブリタニアやノストラキングダムに至るまで、世界の至る所でネオの声は響いた。

 

そして、その声を聞いた誰しもが祈り願った。

 

 

 

ーーーーこの世界を終わらせたくは無いと。

 

 

 

「………そっか。皆んなが、祈ってるんだね。」

 

ネオはそっと呟く。その隣に、ニュウが立った。

彼の手には、既に〈銃〉が展開されている。

 

 その明るい紫の輝きが、ネオの目に映った。同じぐらい強く輝く、彼の紫水晶(アメジスト)の様な瞳も。

 

「行きましょう。ネオさん。皆んな、願ってるんだ。」

 

彼は彼女の隣に立つ。

 

 バサラが、右手に〈真・斬魔刀ヴァラク〉を展開しながらその横に並んだ。

 

「……この一戦で全てが定まる。ーーーーもし、俺達に明日が来る事が赦されたのならば、久しぶりにのんびり流離ってみるとするかぁ。」

 

 ハレルヤが、微笑みながら〈クサナギブレード〉を展開した。

 

「バサラさん。流離うの好きだよね。…でも、確かに明日も俺達が生きていられたのなら、もう此れ迄みたいな戦いなんて起きない。……この世の全ての人間が、大災害前の自由な世界を取り戻せる。夢の様だけど、勝ち取るべき価値があるものだ。」

 

 真剣な顔でクサナギブレードを構える彼の隣で、アミダとキラリが互いの武器を具現化させる。

 

「〈最後の審判〉は、いわばこの星の全てにとっての『絶望』!ーーーーーー絶望なら、キル(斬る)しないとねっ!!」

「私絶対負けないよ、アミダちゃん!」

「もっちろん!!」

 

「ーーーー神が定めた滅びに争う者達。……ふふっ。詩的ね。」

 

 アルセーヌが、北の空に浮遊する星の花を見つめて、優雅に笑う。

 

「さぁ、神への叛逆の狼煙をあげましょうか。」

 

「……相変わらず、勿体ぶっている様だな。アルセーヌ。」

 

 アルスラーンがスレイブエッジを肩に担ぎながら、アルセーヌの隣でため息を吐いた。

 

「怪盗とは、そういう生き物よ。」

「ふ……そうか。」

 

 そんな彼女の答えになっていない返事に、アルスラーンは軽く微笑んで剣を床に突き立てた。

そして、ネオの方を見て口を開く。

 

「泣いても笑っても、我らの運命はあの地で決まる。ーーーーま、最善を尽くすさ。」

「そうだね。」

 

頷いたネオ。

 

「ん。私、もっと知りたい事がある。ゼツボウで終わる世界なんて、私は嫌。ーーーー私の帰りを待つ人も、アステールに居てくれるんだから。」

 

 カノンが、翠の翼と白い銃を具現化させて、ネオの隣に歩み寄った。

 

ーーーー彼女の友達の少年は無事なのか……きっと、不安もある筈だ。それでも、カノンはここに立っている。

 

自分が帰るべき場所で、必ず待ってくれていると信じて。

 

(………そしてお母様も、ね。)

 

「20年前から始まった、全ての悲しみと苦しみに決着がつく時。……深淵に呑まれるか、深淵を消し去れるか。私たちに全てが懸かっている…!」

 

 カノンの隣では、アビスが強い意志を秘めた眼差しで、星の花を見つめていた。

 

 〈星の花〉と〈星のセラム〉が引き起こしたあらゆる災禍と、人々の悲しき争い。

 それによって大切な1人の友を失い、星のセラムの力をその身に強く宿しているアビスは、今この場に居る誰よりも強い願いを心に秘めていた。

 

(ーーーーもう、〈星のセラム〉によって奪われる命が無くなる様に…!争いが、もう生まれない様に…!)

 

「大丈夫だよ、アビスーーーーきっと叶う。」

 

 アビスの思いを聞いたかの様に、ネオが彼女に話しかけた。

 

彼女は、ネオに向かって頷く。

 

 

 そして、ネオはその手に浮かび上がっていたセラムキューブを解き放った。

 

 ネオのキューブを構成している小さなキューブ達が、まるでネオに付き従うかの様に彼女の周りを周りだす。

 

 

ーーーー後ろには、手を組祈る人々。

 

 

ーーーー横には、仲間達。

 

 

ーーーー前には、無数の壊獣の群れ。

 

 

ーーーーその奥には、腕を広げる様に枝葉を広げた〈星の花〉

 

 

それは、壁画の再来であった。

 

 

「……全武装顕現(オールウェポン・マニフェステイション)。」

 

 ネオの周囲を回るセラムキューブ達一つ一つが、それぞれ別々の武器に変化する。

 

 ネオは、自らの中に流れ込む彼方からの力を感じながら、空に浮かぶ星の花と、世界を閉ざさんと立ち塞がる壊獣達を睨み、声を高々と上げた。

 

 

 

 

 

「リバース・モード、ON。仲間の…人類の未来は、私が拓く!」

 

 

 

 

 

 

 

*1
嘗てケテルの地下世界が有った場所。地下世界が崩落し、地上と繋がってからポセイドン達の手によって、有事の際の避難用シェルターが作られていた。






そして、最終決戦へ……



ーーーーって事で103話でした。

ネオのSSボイス要素を、此処で回収するって言うね()やっとだよ。


さて、こっからは来たる新春限定の話へ移ろうと思います。(長くなるので注意‼︎)


いやぁ、マサムネ!!

強い(確信)

何なんすかね、アレ。
《使命》のショットスキルが弱点露出な時点で『強ッッ』とか思ってたところに、何なん?《約束》の方の『ショット中無敵』って??は?

配信見ながらリアルに咳き込んだわ。しばらく、何の説明も頭に入って来なかった。思考が止まってた、マジ。

友情のスピニングブレイド?だっけ、アレは一瞬リフレクションリングが脳裏をよぎった(皆んな言ってた。仕方ないね。)

あと、マサムネのアニメのチャット欄で、『ママムネ』って言われてたの草ですよ。

……何故人々はこうもママを求めるのだ……???

そんでそんで、一個ただの雑学披露がしたいだけなんだけど、作中で『妖怪刀折り(イワクラ)』が作ってた兵器あるじゃん?

『受胎(たぶん)怨霊統合体・フガク』…多分、漢字で書いたら『富嶽』なんだけど、これ元ネタなんだろーーーーって思って、わたくし調べました。

富嶽とは、まず富士山の異名なんです。(富嶽三十六景ってあるじゃん?)だから、富士山が出てきたんですね。

で、もう一個。多分こっちが本命。

ーーーー富嶽とは、太平洋戦争中にアメリカ本土を爆撃する為、日本が計画していた爆撃機だったんですって奥さん!!(Wikipediaより)

あらヤダァ〜!絶対意識してるじゃーん??

そもそも、マサムネの舞台は『異国の属国となったとある国』。疑いようもなく、モデルは日本。
此処でいう異国とは、アメリカの事でしょう。

つまり、作中で起動したアレは『アメリカ絶対ぶっ殺すマン』だったのだ。ナンダッテー()

……そんなシロモノが、確実に天皇家を意識している『ミカド』を原動力とするとはね………。

てか、不満があるとすれば、マサムネの公式サイト(あとディクショナリー)を見ないと分からない世界観もあるって事。

サイト見ればわかるからって感じで、尺の限られたアニメでは端折られたんでしょうが、アニメだけでは、ただ単にイワクラがクーデター起こしてミカドがヤバい…ぐらいしか分かんないっす(行間を読めない男)

マサムネが本家じゃなくて『分家』の出だって事も、(だから、イワクラがマサムネの父を『贋作』って言ったのかな?本家じゃないって意味で。)その16代目だってことも、ミカドにクーデターの罪が擦り付けられてる事も、イワクラがタカ派のミツルギ党って党に所属してる事も、そもそもミカドは和平交渉に向かう筈だったって事すらアニメじゃノータッチですよ。


…ま、サイト見たらわかるから仕方ないね!(思考放棄)
(それに、ディクショナリーはいつでも見れるしね)

ーーーーはい、長くなったんで、此処までにしときます。

では、また来年。良いお年を〜〜〜!!!

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