モンスターストライク 〜星ノ呼ビ聲〜   作:犬社長

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世界を救え





105話〈SAVE THE WORLD〉

 

 

 

 

 

 

……足が軋む。

 

熱と光が辺りを包む。

 

それでも、それでもと、ネオは進んだ。

 

 目指すべき星の花(目的地)は、北の空に光り輝きながら浮かんでいる。

 

 立ち塞がる壊獣(ノーマン)を倒し、絶級の攻撃を躱しながらネオは走る。

 

『フォォォォォォン………』

 

「また絶級…!」

 

ーーーーネオの前に立ち塞がる新たな影は、絶級〈サマ〉。

 

 身体の中央に浮かぶ黒いシミ状の裂け目から、曼荼羅のような時空の歪みを生み出し、ネオに向けて美しさすら感じる波動を放ってきた。

 

「っ!!」

 

避けるネオ。

 

ーーーーズドンッ!!!

 

 彼女が走っていた位置を抉った波動が、後ろへ抜けていく。

 

 更にネオへ波動を放とうとしたサマだったが、周囲に無数の()使()()()()が降り注いできた所為で、攻撃に失敗したようだ。

 

『ォォォ…?』

「…2人は先へ行って。ーーーーアレは私が食い止める。」

 

ーーーー空から根の表面に降りてきたカノンが、サマを見据えて口を開く。

 

「ーーーーカノン…!助かるよ!!」

 

 ネオはそうとだけ言って、彼女の横を走り去っていった。

 

「頼みますカノンさん!」

 

ニュウも後に続く。

 カノンは上空を蠢くサマを見つめ、そっと口を開いた。

 

「絶級〈サマ〉ーーーー全てを均す者。……戦ったことはないけれど、話なら聞いている。……理不尽の権化たる〈絶級〉…。ーーーーでも、負けるつもりは無い。」

 

 そしてカノンは2人が十分離れたのを確認するや否や、翠の翼を限界まで広げ、理不尽の権化へと立ち向かっていったーーーー

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

『コォォォォォ……!!』

 

 

 

ーーーー空から、()()()()()が降り注ぐ。

 

「ーーーーッッ!!」

 

 ネオの側を飛んでいたニュウは、降り注ぐその閃光に素早く反応した。

 

「シールドモードッッッ!!!」

 

 ガコン!と、背後のネオを守るように展開される巨大な紫色の盾。

 

 次の瞬間、チュドーーンッッと閃光が盾の表面を灼き、大爆発が起きた。

 

「ぐぅっ…!」

「ニュウくん!!」

 

 爆発で盾が弾け飛び、吹き飛ばされるニュウ。ネオは素早く空中に足場を構築して跳び、彼を受け止める。

 

そこに迫る追撃の閃光。

 

「シールド!!」

再構築(リビルド):ウォール!!」

 

 ニュウが2枚目の盾を咄嗟に展開し、更にそれをネオが再構築(リビルド)して、巨大な壁に変化させた。そして、それが迫る閃光を受け止める。

 

 カッ、と閃光が奔り、生み出された壁が砕け散る。ーーーーが、ネオとニュウは無事だった。

 

「今の攻撃は……また絶級か!」

 

 ニュウがそう言いながら、閃光が飛んで来た先を見る。

 

 そこには、光る根の道を通せんぼするかのように、紫色の異形が佇んでいた。

 

「アレは……絶級〈アドゥブタ〉…!!」

 

それを見ていたアビスが、小さく声を漏らす。

 

『クコォォォ……』

 

 アドゥブタは、身体の左右についている無数の手で自身の体を縦に裂く。

 

 アドゥブタの身体の裂け目は異次元と繋がっており、そこからさっきと同じ閃光が放たれてきた。

 

ーーーーそれは驚異的で、壮絶なる破壊の閃光である。

 

 ズドーーーーンッッッ!!!…と、ネオ達の周囲が裂けたように爆発した。

 

「わっ!?」

「っ!」

「くっ!」

「ひゃあ?!」

 

 巻き込まれたネオ、ニュウ、アルスラーン、アミダがそれぞれ体勢を崩す。

 

そこに迫る()()()()()

 

『ーーーーーーーー。』

 

 ほぼ無音の圧がその場を満たし、アドゥブタの真上に新たなる絶級が顕現した。

 

「何アレ…岩?!」

 

 困惑した声を漏らすアミダ。確かに、現れたのは岩としか思えないモノだ。

 

 浮遊する岩は、星のセラム(魂の残滓)を内包しているかのように、常にキラキラと光り輝いている。

 

 岩の下部に有るのは、岩とは独立して浮遊している爪の付いた巨大な手。

 

「ーーーーいや、岩では無い…!アレは絶級〈イデア〉!!ーーーー回帰者イデアだ!!」

 

 アルスラーンがそう叫んだのが聞こえたのか、次の瞬間に岩が砕け散った。

 

 内側より現れたのは、透き通った美しさすら感じる妖精の様な姿。……澄み切った意思を感じさせる綺麗な瞳を持っており、此方に害がある様にはあまり思えない。

 

 しかし、イデアの降臨と同時に辺りに一面に〈星のセラム〉が溢れ出した事から、決して自分達と意思疎通が出来る存在では無いのだと、ネオ達ははっきり理解した。

 

「もー!!上位種ポンポン出て来過ぎ!この星を壊す気?!」

 

 アミダがうんざりした様に声を上げて、インフィニティブレードを構える。ーーーー彼女は、道を塞いでいるアドゥブタと対峙するつもりらしい。

 

一方で、空に佇む絶級イデアには、アビスが挑む。

 

「……出し惜しみはしませんーーーー深淵の力を!!!」

 

 アビスが叫ぶと、彼女の胸に歪んだ十字の光が生まれ、ドッ!と星のセラムが溢れ出す。

 

これこそが、彼女の持つ深淵(セラム)の力だ。

 

 イデアが振り撒いた星のセラムと、アビスから溢れ出した星のセラムが混ざり合って、辺りはまるで宇宙に包まれたかの様。

 

『………。』

 

イデアは、その澄んだ瞳をそっと細めた。

…まるで、アビスの力を測っているかのように。

 

「アビスゲイズ・オーバーフロー!!!」

 

 そんなイデアに、出し惜しみなしの必殺技(ストライクショット)を放つアビス。

 

そして、辺りを深淵の力が包み込むのだったーーーーーーー

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

「ーーーーインフィニティ・ストライクッッ!!!」

「トゥルーカラーズ・シャイニー・ブライトッッッ!!」

 

アミダとキラリの一撃が、アドゥブタを襲う。

 

『コォォォオォォ!!!』

 

身体を閉ざし、無数の手で自らを守るアドゥブタ。

 

 

ーーーーズドドドドッッ!!!!

 

 

…凄まじい爆発と破壊のエネルギーが辺りに渦巻き、辺り一面に爆煙が立ち込めた。

 

 黒い煙の中で、アミダは確かな手応えと共に口を開く。

 

「やった!?」

「あ。アミダちゃん、それフラグーーーー」

 

 キラリが言い切る前に、黒煙の中から()()()()()アドゥブタの姿が現れた。

 

「ーーーー!!無傷は無いでしょ…!」

 

少なからず驚嘆するアミダ。

 

 それが面白いのか、アドゥブタが笑うような声を立てた。

 

『コココココ!』

「…コイツぅ…!愉しんでんじゃん?!」

 

歯噛みするアミダ。

 

戦いは、まだ始まったばかりであるーーーーーーーー

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

仲間達に絶級の対処を任せ、走り続けるネオ達。

 

 現在ネオと行動を共にしているのは、ニュウとハレルヤ、アルスラーンとハクビ達アステール組の3人だけだ。

 

他のメンバーは、それぞれ絶級と戦いを始めている。

 

「ーーーーさっきより、だいぶと星の花に近づいて来た…!!」

 

走りながらネオは北の空を仰ぐ。

 

 北の空に見える〈星の花〉は、もうだいぶと大きく見えており、目的地が近いと言う事を示していた。

 

 今ネオ達が走っている光る根の道も、少しずつ上向きの坂道に変わって来ていた。

 また、世界中の空を覆っている光る根の集まる先が〈星の花〉なので、必然的に根が密集してくる。

 

 現れる壊獣の数も多くなって来ているが、密集し始めた根のお陰で通れるルートが増え、逆に戦闘を回避しやすくなっていた。

 

 しかし、そこでも変わらず〈絶級〉は襲って来る。

 

『キュアァァァァァァァァ!!!』

 

ーーーー金切り声のような咆哮を上げながら、その身体に水のエネルギーを纏って現れるは絶級〈トリシュナ〉。

 

 畝る荒波のエネルギーが、ネオ達を押し流さんと光る根を呑み込みながら迫る。しかしーーーーーーー

 

 

「ーーーー俺に任せて!!」

 

 

 瞬時にハレルヤが割って入り、迫る荒波に向かって手を突き出した。…その手に青い光が宿る。

 

「…同じ水の力ならーーーーコントロールを奪えるはず!!」

 

 そんな彼の思惑通り、荒ぶる波はハレルヤの前で左右に割れて流れていく。

まるで、海を割ったかのようだ。

 

『キュアァァァ…!』

 

 ハレルヤによって攻撃を受け流されたトリシュナは、ハレルヤに敵意を剥き出しにして向き合う。

 

 骨と皮だけで構成された巨大な魚の怪物のような見た目のトリシュナと向かい合うハレルヤは、トリシュナから放たれる不可視の圧に軽く身震いした。

 

ーーーー恰も、深海の闇そのものと向き合ったかのようだ。

 

「……なんて濃い死の気配……。ーーーーでも!」

 

 彼は輝くクサナギブレードを構え、トリシュナの放つ死の気配と対峙する。

 彼の手の内で煌めきを放つ刃は、かつて分体とはいえ〈星の花〉を破壊した剣ーーーーーーーー

 

「ーーーー勝つさ。俺は必ず。」

 

 ハレルヤはそう真剣な顔で呟くと、深海の闇へ飛び込んでいったーーーーーーーー

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 こうして、其々が様々な〈絶級〉と戦い始める中、ネオは残ったニュウとアルスラーン、そしてアステールの3人組と共に先へ進む。

 

 

 

もう、目指すべき〈星の花〉は目と鼻の先。

 伸びるセラムの根が、まるで彼らを導いているかのようだ。

 

「…このまま走れば、あと少しでーーーー」

 

あと少しで着く。

 

 そう希望をネオが抱いた瞬間、すぐ近くに浮かぶ星の花が、眩く輝いた。

 

「「「?!」」」

 

思わず足を止め、目を閉じるネオ達。

 

 

『ーーーーコレが最後の試練だよ。』

 

 

…閉じた瞼越しにも感じる閃光の最中、そんな言葉が聞こえた気がした。

 

ーーーーそして次に目を開けた時、ネオ達は驚愕に包まれる。

 

「なんだコレ…!!ーーーー()()()!!」

 

ニュウの声が空に消えた。

 ハクビ達やアルスラーンも、声すら発せずに目を見開いている。

 

「……なるほど。コレが最後の試練って事…?」

 

 ネオも、微かに汗を頬に伝わせながら空を見上げた。

 

 

ーーーーそこには()()()()()

 

 

ーーーー『ソレ』は、浮遊大陸の岸壁から上半身だけを具現化させており、此方に向かって両手を広げている。

 

 その大きさは、上半身だけで1000メートル程だろうか。

 

 〈星のセラム〉によって構成されているであろう透き通った身体は、ネオ達の行く路を完全に塞ぎ、一輪の花となっている頭部にはセラムのエネルギーが渦を巻いている。

 

 その見た目は、かつてネオが不思議な空間で出会った〈星の花〉の意思の具現に、瓜二つだった。

 

 瓜二つと言うよりかは、星の花の意思そのものが、最後の試練として立ち塞がっていると言う事だろうか?

 

「まさか最後に立ち塞がるのが、〈星の花〉そのものだなんて…。」

 

 巨人と化して行手を阻む〈星の花の意思〉を見つめ、ネオは顔を歪ませる。

 

 コレほど大きな存在を、どうやって回避して星の花の下へ辿り着けば良いのだろう???

 

 ここに来て挫けそうになるネオ。……しかし、ネオ達にはまだ希望が残されていた。

 

 

 

 

〈超弩級移動要塞都市オーステルン〉

 

 

 

 

「…星瘴気構造体を肉眼で確認。巨人の姿となっている様だ。」

 

ーーーー()()()()()()()()()()に、戦況を監視していた()()()()()()()の声が響く。

 

「…なるほどデカイな。ーーーーやはり、待機しておいて正解だったか。」

 

応えるのはオーステルンの艦長ゼウスだ。

 

 彼はアステール防衛の為、オーステルンの操舵室から指示を飛ばしていたのだが、同時にネオ達の行動を監視もしていた。

 

「あるびぃ。ーーーーネオの位置情報は?」

 

 ゼウスの問いに、オーステルンのシステムにアクセスしているアルビレオの複製(コピー)が答える。

 

『ちょうどドンピシャですね。あの巨人の直ぐ手前です☆』

「よし来た!」

 

 ゼウスは頷くと、素早く手元の機械をいじり始めた。同時に、何処かへ通信も繋げているらしい。

 

「ーーーーオイ、聞いてるか??アーサー、フェルシア。ーーーー俺達の力が必要な時だぞ!」

 

ーーーー応えるはノイズ混じりの2人の女性の声。

 

「…その時なのだな?了解した!」

「分かったわ。再び〈アレ〉を使う時ね。」

 

 そして、オーステルンからそれぞれ離れた場所に鎮座する2つの〈超弩級移動要塞都市〉が動き出すーーーー

 

 

〈超弩級移動要塞都市ブリタニア内部〉

 

 

ブリタニアの全てを司るメインコントロールルーム。

そこに、艦長であるアーサーの姿があった。

 

彼女は一本の剣をその手に持っている。

 

「……さぁ、始めよう。」

 

 彼女はそう呟くと、自分の足下にある小さな穴に剣を突き刺す。

…カチリ、と何かが嵌まる音がして、コントロールルームに次々と光が宿り始めた。

 

 そしてアーサーは剣の柄を握ったまま、厳かな声で呟く。

 

「……対壊獣殲滅特殊兵装〈聖杯システム〉…起動。」

「了解!ーーーー聖杯システム、起動!」

「特殊動力炉、稼働開始!!」

「ーーーー星瘴気エネルギー充填開始!!」

「タービン全開!コネクトスタート!」

 

 コントロールルームに居るオペレーター達が、慌ただしく動き始める。

 

 次に、巨大な飛竜(ワイバーン)のような形をしている〈ブリタニア〉そのものに変化が起きた。

 

 大きく広げられた〈翼部分〉が、チリチリと赤い光を宿し始める。……周囲の空間から星のセラムをかき集め、それをエネルギーに変換しているのだ。

 

 そして、生まれたエネルギーは翼を伝って竜の喉に当たる部分へ流れていく。

 

ーーーー周囲の空気が、歪み始めた。

 

「星瘴気エネルギー充填率90%!!システムオールグリーン!」

 

 オペレーターの声を聞いたアーサーは、小さく頷いてから声を張り上げた。

 

「了解した。ーーーーーーーー〈飛龍ノ息吹〉発射用意!!」

 

「〈飛龍ノ息吹〉発射用意!!」

 

オペレーター達が、アーサーの命令を復唱する。

 

 そして、ブリタニアの〈脚部〉がズガン、と音を立てて巨大なアンカーを下ろし、自らを固定した。

……コレだけで、全長何キロメートル重さ何千トンもの移動要塞都市が、アンカーを下ろして自らを固定しなければいけない程の凄まじい『何か』が始まるのは明白である。

 

 こうして『準備』を終えたアーサーは、無線に向かって話しかけた。

 

 

()()()()()()()()。タイミングを合わせる。ーーーー()()()()()殿()。聞こえているか?」

 

 

 そんな彼女の声に、無線の向こうから妖艶な声が答えた。

 

 

「ふふふ…。勿論よ。」

 

ーーーーそして、場面はもう一つの移動要塞へ移る。

 

 

 

〈超弩級移動要塞都市グローリー操舵室〉

 

 

 

 

()()()()()は、車椅子のままグローリーの操舵室に座していた。

 彼女の車椅子を押しているのは、緑色のカノンシリーズこと『カノンⅡ』。隣に立っているのは、助手のジョルノロキアである。

 

 カノンがネオ達と共に星の花へ向かった為、元グローリーの大司教であったフェルシアに、全ての権限が戻って来ていた。

 

ーーーーそして今、フェルシアは操舵室で部下達に命令を下している。

 

「…さぁ、始めるわよ。〈アナテマの扉(アナテマゲート)システム〉準備開始。」

「ーーーー了解!セラムエネルギーの充電を開始!!」

「第壱から第参動力炉点火!」

「コネクトスタート!!」

 

彼女の鶴の一声で動き出す操舵室。

 

 起動したのは、グローリーの持つ〈対壊獣用特殊兵装・アナテマの扉(アナテマゲート)〉である。

 

 かつてグローリー戦争にて、一度は破壊されたアナテマの扉(アナテマゲート)ではあるが、その後にカノンの手によって再建されていたのだ。

 

 ガコン……と重々しい音と共に動き出す、白い孔雀の羽の様なアナテマの扉(アナテマゲート)。ーーーーゆっくりと閉じ始めたその羽の内側に、緑色の光が宿り始める。

 

「ーーーー〈アナテマの扉(アナテマゲート)システム〉準備完了!!〈アナテマの雫〉チャージ率85%!!」

「目標への誤差修正±0.005!!…±0.002…±0.001…ゼロ!!」

「ターゲットロックオン!」

「目標、射程内です!!!」

 

テキパキと動く操縦士達。

 それを横目で見ながら、フェルシアはオーステルンに通信を繋いだ。

 

 

『聞こえてるかしら?ゼウス?…こっちは準場完了よ。』

 

 

 北の空に浮かぶ巨人へ狙いを定めたアナテマの扉(アナテマゲート)に、翠の極光が満ちるーーーーーーー

 

 

 

「ーーーーへへっ。最高だぜ。」

 

 

場面はオーステルンの操舵室に戻る。

 

 

 ゼウスは操舵室のモニターに写っている〈ブリタニア〉と〈グローリー〉を一瞥し、ニヤリとした笑みを浮かべながら手元の機械を操作していた。

 

 彼が操作しているのは、オーステルンの秘められし力ーーーー〈クロノスシステム〉による破壊兵器〈雷霆〉である。

ーーーー彼の居城〈オリンポスタワー〉が変形した〈オンリンポスキャノン〉が放つ、超強力な一撃必殺だ。

 

 既にチャージはほぼ完了しており、雷光渦巻くキャノンの砲身は遥か遠くに浮かぶ巨人をロックオンしていた。

 

「雷霆、チャージ完了。いつでも撃てる。」

 

 彼のサポートをしていたアンソニー・Dが、ゼウスの方を振り返る。

 

「よっしゃ!ーーーーコッチもオーケーだぞ!お前ら!」

 

 ゼウスは深く頷くと、通信越しにブリタニアとグローリーに命令を飛ばす。

 

 

「全艦、各種兵装発射用意!!」

 

 

「「了解!」」

 

 

「目標ーーーー北の巨人!!撃てぇぇえ!!!!」

 

 

叫ぶゼウス。

 

 

 そして3人はそれぞれ異なる場所で、全く同じタイミングで命令を下した。

 

 

 

 

「ーーーー〈アナテマの雫〉発射(ティアドロップ)!!」

「ーーーー〈飛龍ノ息吹〉発射(ファイヤ)!!」

「ーーーー〔雷霆〕発射ぁ!!!!」

 

 

 

 移動要塞ブリタニアがその大きなアギトを開く。開かれたアギト型の巨砲から放たれたのは、天上の火もかくやと言わんばかりの熱と閃光のブレス。

 

 少し離れた所では、移動要塞グローリーが巨大な羽を開き、内側に閉じ込めていたエネルギーの塊を解き放った。

大気を歪めて飛翔する、翠色の雫にも似た閃光。

 

 そして、2つの移動要塞都市のちょうど間の位置から、オーステルンが破滅の雷たる〔雷霆〕を放つ。

 

 

 

ドキューーーーーーーーーーンッ!!!

 

 

 

 アステールに集いし3隻の要塞から解き放たれた3条の究極必殺(最終兵器)は、波動と共に終焉の空を奔り、遥か北に聳える巨人へと向かい、そしてーーーーーーーー

 

 

 

 

 

ズドォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッッッ!!!!!!!

 

 

 

 

ーーーーーーーー聳える巨人の上半身を寸分違わず撃ち抜いて破壊し、勢いそのまま大気圏を突破して宇宙へ至るのだった…………

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「うおおおおっっ?!?!」

 

 

 

場面はネオ達の元へ移る。

 

 

 目の前に立ち塞がっていた巨人が、アステールの方角から飛んできた3条の閃光に撃ち抜かれた時、ニュウは直ぐ間近でそれを見ていた。

 

 ガラガラガラ……と重たい音を立てながら、上半身の殆どが消し飛んだ巨人が崩れていく。

 

 辺り一面の雲が爆発の衝撃によって吹き払われ、空を飛んでいた壊獣達までもが、巻き添えになって蒸発した様だ。

 

 浮遊大陸の岸壁の一部も、損傷して地上へと崩落している。

 

「今のは、オーステルンか…??すっげぇ……!なんて一撃なんだ……!」

「うわぁ…私、言葉も出ないよぉ……」

「……驚いたな。流石は、超弩級移動要塞…。」

 

 唖然とするニュウ達の近くで、ネオはアステールの方角を振り返りながらり心の中でゼウス達に感謝を述べていた。

 

(ゼウスさん……。アステールも大変な筈なのに……ありがとう。ほんとに。)

 

ネオは顔を前に向けると、再び走り出す。

 

もはや、彼らを止める者は何も無い。

 

 こうして、ネオ達は長い道のりを踏破し、遂に星の花の根本ーーーー創星の地たる〈浮遊大陸(楽園)〉へ辿り着いたのだったーーーーーーーー

 

 

 

………さて、誰か忘れてはいないだろうか…?

 

 

 星の花を目指していたのは、ネオ達だけでは無かった筈だ。

 

 

 ネオ達は気付かなかった。ーーーー終焉の混乱に乗じて、もう一組、密かに星の花を目指していた存在がいるという事を。

 

 

 

 

「…あ?」

 

ーーーーバサラはふと見た。

 

 エリミネイターとの戦いの最中、赤い彗星のような光が空を横切っていくのを。

 

「…あれは?」

 

サマと戦うカノンも見た。

 

赤い光が星の花へ飛んでいくのを。

 

「…ん?何アレ…。」

 

 アドゥブタと対峙するアミダも見つける。ーーーー赤い光と、広がる翼を。

 

そして、ソレは加速する。

 

 混成空軍と戦いを繰り広げている壊獣達に、その彗星を止める手段は無く、絶級達もイースターと対峙しているせいでソレを止められない。

 

 

ーーーーそのまま誰にも邪魔される事なく、赤い彗星は速度を上げ〈浮遊大陸〉へ勢いよく降り立った………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈北極点上空 星の花の根本(浮遊大陸(楽園))〉

 

 

 

 

 

 

 

遥か北。北極の上空10000メートルに浮かぶ浮遊大陸。

 

 最後の審判の開始と同時に、空に浮かび上がった星の花に引き剥がされる様にして地上から剥離した岩盤から構成される大地は、今や緑豊かな楽園と化していた。

 

 見たことの無い草木が生い茂り、美しい花畑を蝶や小鳥が飛び交っている。

 

 これもおそらくは、星のセラムの為し得る事なのだろう。

 

不思議と、周りの空気すら春のように暖かかった。

 

「……なんだコレ…。北極点なのに全然寒く無いし、花や草まで……。」

 

ニュウが、唖然とした様に周囲を見渡す。

 

「…まるで、楽園だな。凡ゆる生命が此処に居るかのようだ。」

 

 アルスラーンが、彼女の側を飛び交う小鳥達を眺めながら口を開いた。

 

「……そうだね。それに、此処は温かい。気温じゃ無くて、この場所を満たしているオーラ…とでも言ったらいいのかな…?」

 

ネオがそう言って、辺りを見渡しながら歩く。

 

 確かに、そこは常に温かく穏やかな『何か』に包まれている様な気がした。この中では歳さえも取らないのではないか…そう思いこみそうになる。

 

……上を見れば、浮遊大陸の上空全体に広がった〈星の花〉の枝葉が見え、途轍もなく太い〈星の花〉の幹が天を貫かんばかりに伸びていた。

 

 

ーーーー此処は星の花の真下なのだ。

 

 

「もう…目と鼻の先なんだね。花の根元は。」

 

ニュウのそばで、ネオがそう声を上げる。

 

「そうですね。……辿り着けてよかった。」

「ーーーーうん。皆んなのお陰だよ。」

 

ネオは、ニュウに静かに微笑んだ。

 

「勿論、貴方もね。…守ってくれてありがとう。」

「いやいや…。別に僕はーーーー」

 

首を振るニュウ。

その隣で、ネオは星の花を見上げながらそっと呟く。

 

「ーーーー全ては此処で終わる。…世界が変われば、もう壊獣も居なくなるし、星のセラムも無くなる。私達が争い合う事も無くなって、世界に安寧が戻る。」

 

ネオはニュウの方へ顔を向けた。

 

「ねぇ。……全てが終わったらさ。貴方とーーーーーーー」

 

 

………彼女がその続きを言う事は出来なかった。

 

 

 

「ーーーーキミも辿り着いたか。この輝ける楽園(エデン)へ。」

 

 

 

「「「「「ッ?!」」」」」

 

 

空から響く、ネオ達とは違う声。

 

 

 弾かれた様に顔を上げたネオ達の前に、真紅の光が降り立つ。

 

ーーーーズドンッ、と大地が揺れ、土埃が立ち込めた。

 

 もうもうと湧き上がる土埃の中から、真紅の眼光が煌めく。

そして、ネオ達の前に3つの人影が立ち塞がった。

 

「…な…アイツはーーーーニルヴァーナ…!?」

 

3人のうちの1人を見て、いち早く反応したアルスラーン。

 

「……アッチはアムール・ソワン…?ーーーーって事は………」

 

 フェムトが、隣に立つ少女の姿を見てそう声を上げる。

 

みるみる内に彼の顔が青ざめた。

 

「…貴方は……ふ、フォリー博士…っ?!」

 

 

「その通りだとも。見た目は変わったが、声は変わらずだ。ーーーー久しぶりだなフェムト君。ーーーーそして……ネオ。」

 

 

ーーーーネオの前に立ち塞がった機械仕掛けの神(フォリー・ソレイユ・壊)は、彼女達を迎え入れる様に両腕を広げた。

 

 

「私も遂に辿り着いたぞ……この楽園へ!ーーーーーーーさぁ、神は二柱(ふたり)も要らぬ。決めようじゃないか。次の世界の創造者(楽園を継ぐ者)は、どちらに成るのかを!!!」

 

 

 

 

 最後に立ち塞がるは、誰もーーーー神すらも予想だにして居なかった存在。

 

 

 新人類(星の子)よりその地位を奪い、ヒトの身でありながら神へ至りし者ーーーードクトゥール・フォリーの成れの果てであった…………

 

 

 

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