モンスターストライク 〜星ノ呼ビ聲〜   作:犬社長

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そんなにモンストが好きになったのか。ウルトラマン。






2話 〈原典の少女と偽典の少年〉

 

 

 

 

 

…足元には虚空が広がっている。

 

 

 

 

…吹き付ける風に、羽織った黒い上着がはためく。

 

 

 

頭に掛けたヘッドホンから、心地の良い音楽が耳朶に響く。

 

 

 掌に浮かび上がる、()()()()()()ーーー〈セラムキューブ〉ーーーを片手でクルクルと回しながら、私は登りきった太陽を見上げて目を細めた。

 

 

(……暖かい。だんだん肌が光と一つになって行く……)

 

 

ーーーーーーー陽の光を浴びるのは好きだ。…古い記憶を光の中に葬り去ってしまえるから。

 

 

…こうしていると、時々()()()()()()

 

 

 

 

…♬♫♩♩♬♫♩……

 

 

 

 

「……聴こえた。…歌。」

 

 

 ヘッドホンをして居ても、そこから流れる音楽を貫通して直接脳裏に響くかの様な、微かな歌。

 

 ずっと昔から、自分にしか聴こえない歌がこの空を漂っている事を、私は知っていた。

 

…一体何の歌なのだろう?………この問いに答えが来る日は、きっと来まい。

 

 

「……はぁ。」

 

 

ーーーーーー歌は一瞬にして聴こえなくなった。いつもそうだ。…ため息を一つ吐いて、私は立ち上がる。

 

 ちょうどその時、上着のポケットが振動した。…電話だ。誰から掛かって来てるかは、画面を見なくても分かる。

 

 

 

「……もしもし(ハロー)。ネオです。」

 

 

私は電話に出た。その瞬間、

 

 

「もっしもーーーし!!ネオちゃーーーーん!?」

 

 

 電話の奥から、明るくて活発な気配を漂わせる女の子の声が大きく響いて来て、私は思わず通話の音量を3段階ぐらい落とした。

 

「聞こえてる。…そんなに大きく叫ばなくても大丈夫。」

 

電話の主は快活に笑った。

 

「えっへへ〜。でも、そうやって大きな声で叫んで現実に引き戻しとかないと、ネオちゃんどっかに行っちゃいそうだからね。」

 

「…………………。」

 

 

軽く肩をすくめて、歩き出す。もちろん、通話は繋いだままで。

 

 自分を見下ろすのは、青い空と、今自分が居る〈工業区域〉の細長いタンク達。

 

…この場には、今は自分一人しか居ない。

 

 

「ーーーーーーーと言うかさぁ…。前から思っているんだけど、()()危なくない?…()()()()()()()()()()()()()

 

 

 電話の向こうのやや心配そうな声に、私は軽くさっきまで居た場所を振り返ってから、返事を返す。

 

「…心配ありがと。落ちない様にはしてるから大丈夫。…それに落ちても、平気だよ。」

 

何なら、落ちても良いぐらいだ。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーこの()()()()()()()()()()()から、重力に身を任せて落ちてみるのも、きっと悪くない。

 

 

 

 

 私がそう考えたのを知って知らずか、電話の向こうの声がちょっとキツくなった。

 

「ーーーーーーーーーそうやって思っていても、もしもの事があると行けないじゃん!?……命は大事にしてね?」

 

「…分かってる…()()()。今帰りの途中だから、もう大丈夫。」

 

そう言うと、電話の向こうで彼女(アミダ)のため息が聞こえた。

 

「………ん。取り敢えず、帰って来てね〜。ーーー朝ご飯は出来てるよ。今日は何と!私が作っちゃいました〜!!偉い?」

「………えらい、えらい。」

「……テキトー言ってない?」

「言ってない。」

「ーーーーーーーーーま、良いや。じゃ、待ってるからね〜〜!」

 

 

……その声を最後にして、通話は終わった。私は携帯を上着に仕舞い込むと、歩き出す。ーーーーーー今の自分にとって、帰るべき場所へ。……()()()()()で帰る場所があるのはきっと、とても恵まれた事なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーXXXXX年。 この星は、未曾有の災害に包まれた。

 

 

 

…少なくとも、人間にとっては。

 

 

 

 突如として地中、即ち星の中心より現れた巨大な自然構造物〈星の花〉と、その〈星の花〉から放たれる実体化して質量を持つに至った魂の残滓〈星のセラム〉が、この星の大部分を埋め尽くしたのだ。

 

〈星のセラム〉は、自然を急速に蘇らせ、動植物に進化と再生を促す。

 

ーーーそれだけなら良かった。……しかし、〈星のセラム〉にはもう一つの効果が有ったのだ。

 

 

それが、()()()()()()()()()()()()()()ーーーである。

 

 

 この効果により、〈星のセラム〉に覆われた土地では、人間は一切住む事が出来なくなった。

 

 また、一説では〈星のセラム〉が地上を覆った〈大災害の日〉に、この毒に侵されて死んだ人間の数は、30億にも及ぶと言う。

 

…更に、更にだ。

 

ーーーーーー〈星のセラム〉には、また別の効果があった。

 

 それが、人類に対して敵対的な存在である〈壊獣 ノーマン〉を生み出す事……である。

 

〈ノーマン〉は、()()の名が示す通り、人類が作り出した人工物に対して強い破壊衝動を持ち、同じように人間そのものに対しても強い敵愾心を持っている。

 

 目や鼻、口に心臓など、生命維持のための器官が存在せず、ただ人間を駆逐する為に生み出されたに等しい〈ノーマン〉を、人類は恐れ、同時に敵視した。……長い戦いの歴史の始まりである。

 

 

 

 

 

…一方で未だ星に留まり、広がり続けている〈星のセラム〉。人類はそれでも何とか生き延びようと、セラムの濃度の薄い場所や、空気よりもセラムの方が質量が重いという性質を利用して、地上から離れた所に〈空中都市〉を建設するなど、生き残るための知恵を絞り出した。

 

 

ーーーーーーーーーしかし、〈星のセラム〉は年々広がり続けている。一定範囲のセラム濃度が濃くなると、標高の高い場所にもセラムが漂って来る事になるので、何時迄も空中都市が安全…と言う訳では無い。

 

 

故に人類は生み出した……〈()()()()()()〉を。

 

 

 空中都市と同じ高さを維持しながら、都市そのものが移動するので〈星のセラム〉の濃度が濃くなり次第、直ぐに場所を変える事が出来る様になる。…これによって、人類は高い安全性を獲得するに至った。

 

 

…そして、今日(こんにち)まで至るのだ。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーこの物語の舞台も、数ある〈移動要塞〉の内の1つの上で繰り広げられる事になる。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー朝の光に照らされながら、ごちゃっとしたスラム街らしき地区を歩く、青年が1人。

 

 

 

 ちょっと軍服風の白っぽい格好に身を包み、同じ様に白い色のワークキャップを深めに被って居る。

 

帽子の影から覗く瞳の色は紫。顔はまだ微かに少年らしい幼さが残る。

 

 

……彼は、特に何の目的もないかの様にフラフラと歩いていた。ーーーーーーーいちおう、目的はあるが。

 

 

そんな彼に背後から声が掛けられる。

 

 

「ハイハイハイ。そこのおにーさん…止まりなさい。」

 

 青年が振り向くと、そこには警官らしき格好をした二人組が彼を指差して立っていた。

 

「…警察の方ですか?」

 

 青年が口を開く。静かな、しかしどこか物憂げな声の響きだった。

 

 

「ーーーーーーーーー警察って程大した組織じゃないがな。…俺たちはこの移動要塞都市〈オーステルン〉の自警団だ。…おにーさんココの人じゃないよね?……何しに来たの?観光?」

 

 

青年は軽く笑った。

 

「…よく分かりましたね。ぼk……俺がココの人じゃないって。」

 

自警団の1人が肩をすくめた。

 

「ま、いっつもこの道通るのは似た様やつばっかだからな。……もし観光なら、ココをほっつき歩くのはやめた方が良い。ーーーーーーココはスラム街だ。見ての通り、治安は最悪だからよ。」

 

ま、観光な訳ないかーーーーーーと言って笑う自警団の2人。

 

青年は辺りを見渡して、成る程と頷いた。

 

「…確かにそうですね。ーーー実は昨日の深夜…日付的には今日か…ココに来たばっかりなので、まだ区域とか分からなくて。」

 

自警団の2人が頷く。

 

「…成る程。ーーーもしかして、マジで観光?こんなとこ来ない方が良いぞ?…この移動要塞都市がどんな都市か…分かってるのか?」

 

 青年は首を縦に振った。…それは分かってる…十分過ぎるぐらいに。

 

「分かってます。ーーーーーーーーー連邦政府非加盟移動要塞都市〈オーステルン〉…かの有名な反連邦組織〈イースター〉の主な拠点として、世界にその名が轟いてますから。」

 

自警団の2人は顔を見合わせた。

 

「何だ。…知ってんじゃん。マジで何しきたんだよ…?ま、良いや。手荷物検査だけ協力してくれるかい?…ウチは入管とか無いからさ。ヤバイもん持ってないかだけ、確認させてくれや。」

 

「あぁ、良いですよ。」

 

 青年は両手を上に挙げて、自警団のチェックが終わるのを待った。

 

「あ、そうだ。身分証明するモノ持ってる?」

 

青年は自分の服の胸ポケットを顎で指した。

 

「ーーーーーーーーー胸ポケットにありますよ。」

 

「…じゃ、失礼。確認だけするな。」

 

 自警団の1人が、彼のポケットから一枚のカードらしき物を取り出した。

 

「………普通二輪車免許。…へぇ、免許持ってんだ。珍しい。」

 

 自警団の1人がそう言って、免許証に書いてある名前を読み上げる。

 

「N…E…W。…『ねぅ』?ーーーコレがお前の名前か?変な名前だなぁ。」

 

「ーーーーーーどういう言い間違えしてるんですかぁ!?」

 

 あり得ない良い間違えに、思わず青年は突っ込んでしまった。

 

 返された免許証を2人に見せる様に持って、彼は自分の正しい名前を2人に教える。

 

 

 

 

 

「Nーeーw。…New(ニュウ)。ーーーーーーーーー俺、『ニュウ』って言います。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






自警団1:どっちにしろ変な名前じゃね?

自警団2:それな。

ニュウ:名前についての文句は俺にこの名を与えた人に言って下さい。


追記2023.6.1 タイトルを変更 文章をごく僅かに修正
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