モンスターストライク 〜星ノ呼ビ聲〜   作:犬社長

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私はポストアポカリプスものが、すごく好きなんですよ。

あの、全てが終わった後って感じの世界がね…




20話 〈最早、この星の支配者は人類では無い〉

 

 

◇◆◇

 

 

……久しぶりに感じる浮遊感。

 

……窓の外を流れる白い雲。

 

 

ニュウは今、空を飛んでいた。

 

 

「ーーーーーーまさか、バサラさんがオスプレイの操縦まで出来るとは…思っても無かったですよ?」

 

 窓から迫りつつある地上を見下ろしながら、ニュウは操縦席のバサラに話しかけた。

 

「…出来る様になったのはつい最近だ。ーーー〈オーステルン〉の操縦士に教えて貰ってな。…結構ムズイから、墜ちたら悪りぃな。」

「えぇ…………。」

 

 ニュウの顔が軽く歪んだ。隣でカノンがフォローを入れる。

 

「操縦にはAIによるアシストが付いてるから、滅多な事はないよ。」

「で、ですよね。」

 

ーーーそんな事を話している間にも、地上はみるみる近付いて来ている。

 

「……やっぱり、緑豊かだな。地上は。」

 

 窓の外に広がる大樹海を見ながら、ニュウは呟いた。

 

「…ああ。コレも〈星のセラム〉が成した所業だな。」

 

 コックピットから同じ様に地上を見つめていたバサラが、頷いて言った。

「ーーーーーーーーー〈星のセラム〉によって、植物は急激な進化と成長を促された。…人間以外の動物も皆んなだ。」

カノンが後に続いて口を開く。

「……〈星のセラム〉に覆われ、人が居なくなり、人が創った建造物も〈ノーマン〉に壊され、何も無かった頃に戻った地上に、セラムによる進化と成長の恩恵を受けた〈自然〉が蘇る……。」

 

「…所謂、〈超自然化現象〉って奴ですね。」

 

 地平線の果てまで続く樹海を睨みながら、ニュウが最後に呟いた。

 

「ーーーーーー地球の自然環境は、人類が台頭する以前の状態に戻ったって言う者も居る。自然が豊かになるのは、普通はいい事なんだろうけどな。」

 

 そう言ったバサラが、操縦桿を握って2人に声を掛ける。

 

「サテライトからの情報によれば、救難信号の出所はこの辺りだ。……着陸するぞ。」

 

 彼の繰るオスプレイは、着陸の為に高度を下げ始めたーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

ーーーーーーー頭上を飛ぶサテライトのドローンが、絶えずピーピーと警告音を出している。

 

「おい。サテライト!……音消せるか?ーーーどうせ〈星のセラム〉濃度が高えって警告だろ?俺達には不要だ。」

 

 バサラが空を飛ぶドローンに向かってそう呼び掛けると、ドローンからサテライトの声が聞こえて来た。

 

『ラジャー。…確かに〈新人類〉にとっては問題無い濃度かな?切っとくねー。』

 

…ピタッと警告音が止む。

 

 地上に降り立ったニュウは、ふかふかとした大地を踏みしめながら、自分達が降り立った辺りを見渡した。…其処は樹高何十メートルにもなる巨木に囲まれた窪地で、やけにスケールの大きい木漏れ日が差し込んでいる。

 

 足元には沢山のふわふわな苔やシダ植物。そして、咲き誇る色とりどりの花たち。…腐葉土の香りが微かに鼻につき、何処からか小鳥の囀りが聞こえて来る。

 

 

ーーーーーーーーー正に、悠久なる大自然がそこには有った。

 

 

「綺麗だ……。〈星の花〉が自然界のバランスを整える役割を果たしてるって仮説も、強ち間違いじゃ無いのかもな…」

 

 ニュウの呟きに、カノンが頷いて手を宙に翳した。……彼女の指先に、綺麗なエメラルドグリーンの翅を持つ蝶が止まる。

 

 指先で翅をパタパタと動かしている蝶を見詰めながら、カノンは口を開いた。

 

「……星からしてみればーーーーーーーーー」

彼女の指先から蝶が飛び立って空に消えて行く。

「ーーーーーーーーー私達の方が、星を脅かす害悪なのかもね。」

 

 見上げた空の向こうには、輝く星々の様に〈星のセラム〉が浮かんでいた。

 

「……〈星のセラム〉があんなに高い所まで昇ってる…。だいぶと此処も危ないですね。」

 

ニュウのその声に、バサラが頷いて口を開く。

 

「ああ。強力な〈ノーマン〉が生まれるかも知れねぇし、アレがそのままコッチに流れて来たら厄介だな。……サテライト!ーーー風向きはどっちだ?」

『こっち向きだよ。…あの〈星のセラム〉の雲が流れて来る前に、要救助者を探した方が絶対に良いと思う。』

「…だろうな。急がねぇと、面倒な事になりそうだ……。」

 

 バサラは小さくため息を吐くと、ニュウ達に先立って歩き始めた。

 

 ニュウとカノンも、彼の後を追って歩き出す。こうして3人と1機は、深い樹海の奥へと足を踏み入れたのだったーーーーーーーーー

 

 

 

◇◆◇

 

 

「…サテライト。近くに〈ノーマン〉の反応は無いか?」

 

 バサラの問いに、頭上を飛ぶドローンがサテライトの声で答える。

 

『…確認されている識別パターンは、全てオレンジーーーつまり、動物のものだから、〈ノーマン〉は居ないよー。』

「…分かった。動物にも気をつけた方がいいな。……〈星のセラム〉のせいでどんな進化してるか…分かったもんじゃねぇ。」

 

 バサラの呟きを聞きつつも、ニュウは絶えず辺りを警戒していた。

 

…〈星のセラム〉によって進化を促された動物達は、最早人類の立ち去った後の地上世界の支配者として君臨している。

 

ーーーーーーこの星の生態系は、嘗ての様にヒト科を頂点とはしなくなったのだ。

 

「なんだか、懐かしいかも…。」

 

隣で木漏れ日を浴びながら、カノンが呟いた。

 

「…何がですか?」

 

 ニュウの問いかけに、カノンは遠くを見つめながら答えていく。

 

「……昔、『お母様』に連れられて、地上に降りた事が何度かあるの。……もちろん、遊びに行った訳じゃないけど。」

「……カノンのお母さん…ですか。」

 

 彼女は頷いた。…純白の髪が少し揺れて彼女の額に掛かり、彼女の目を隠す。

 

「……うん。もう会うつもりは無いけれど、記憶は残るモノ…。ーーーナツカシイ感情は、いつだってお母様を呼び起こさせる……。」

 

ニュウは片眉を上げた。…何か訳ありなのだろうか?

 

「会うつもりが無い?……どうしてーーーーいや、話したくなければ、それで良いですが…。」

 

カノンは小さく微笑んだ。

 

「私とお母様の進む道は違った。…唯、それだけだよ。」

「………道?」

 

 そうニュウが呟いた時、先をゆくサテライトのドローンから、何かを告げる声が聞こえて来た。

 

『…!!ーーー先輩達!!この先に複数のオレンジパターンが集まってる所がある!…多分、助けを待ってる人達だよ!!』

 

「ーーーーーーーー!そうか?!でかしたぞ、サテライト!」

 

 バサラが足を早めて進み出す。ニュウ達も後に続いた。

 

 

◇◆◇

 

 

…やがて、樹海の鬱蒼とした木々が少し疎になった所に辿り着く。

 

「ーーーーーーーーー!?……アレは…。」

 

そこに有る物を見て、ニュウは小さく呟いた。

 

「……高層ビルの廃墟?…〈ノーマン〉に壊されてない物が残ってたのか。」

 

ーーーーーーーーー樹海の先に現れたソレは、上半分を失って廃墟と化した高層ビルだった。…あちこちに蔦が絡みつき、一部は樹海の巨木に埋もれてしまっているが、確かにソレはビルだった。

 

…周りを見ると、嘗て此処が大都会の中心だったであろう事を示唆するかの様に、苔だらけの看板や、潰れた車、そして破壊された建物の一部があちこちに転がっている。

 

 そしてソレ等は全て、遥か昔に忘れ去られたかの様に、静かな空気の中に佇んでいた。

 

 

「…〈ノーマン〉による破壊から少し免れた場所っぽいな。…空間が開けてるから不時着し易いし、〈ノーマン〉や猛獣から身を隠す場所にもなる。…良い場所だ。」

 

 ザッと全体を見渡して呟いたバサラが、廃墟に近付いていく。

 

頭上から、サテライトがナビゲートを始めた。

 

『反応はあのビルの中。…一応気をつけてね、バサラ先輩!…猿の集団の可能性もあるから!』

 

「おお。」

 

 そう言いつつ、バサラは廃墟の中へ入って行く。ニュウもその後に続いて、中に足を踏み入れた。

 

……意外と中は暗かった。それに、絡み合う蔦植物や、崩れた壁や天井が行手を阻んでいる所為で動き難い。

 

「コレは…暗いな…。」

 

 ニュウはコートのポケットから、小さな懐中電灯を取り出して、スイッチを点けた。

 

…小さいながらも、パワフルな光が中を照らす。

 

「…お、そんなもん持ってるのか。小さいのに明るくて良いじゃねぇか。」

 

感心した様に呟くバサラを尻目に、ニュウは奥へ進んで行く。

 

ーーーーーーーーーやがて、開けた場所に出た。…天井がゴッソリと抉り取られている所為で、光が良く差し込んでいる。

 

…そしてソコに一箇所に固まる様にして、20人程の人達が集まっていた。

 

近づくと、ニュウが来た事に反応したのか、皆一斉に顔を上げる。

 

「ーーーーーーあ!……ま、まさか。」

 

そう呟いた1人に、ニュウは片手を上げて答えた。

 

「…どうもこんにちは。……救難信号を聞いて助けに来ました。大丈夫でしたか?」

 

皆の顔がパッと明るくなった。

 

「おおお!!ーーー来て下さったんですね!?あ、ありがとうございます!!!」

「怪我人とかは居ますか?」

「…は、はい。不時着時の衝撃で何人か怪我を…足を怪我して歩けない者も居ます。」

「なるほど…。こっから〈イースター号〉まで歩くのは無理か…。」

 

後ろで話を聞いていたバサラが口を挟む。

 

「じゃあ、俺がコッチに急いで〈イースター号〉を持って来る事にするか。…大量の〈星のセラム〉がコッチに迫りつつある。…今はまだ大丈夫だが、もう間も無くすれば、高濃度のセラムに此処は包まれるぞ。」

 

 それを聞いた人達が、不安げに顔を見合わせた。…どうも彼等は全員旧人類らしい。…ニュウ達新人類とは違って、ごく僅かな〈星のセラム〉でも死に至る。

 

故に急いで此処を離れねばならないのだがーーーーーーーーー

 

 

『……!!??ーーーーーーーーーちょっと、まずい事になって来たよ先輩達!!』

 

 外で周囲情報を収集していたサテライトのドローンが、勢い良く戻って来て叫んだ。

 

「なんだサテライト!?俺はコレからイースター号をコッチにやる為に急がなきゃならねぇんだが……」

 

サテライトのドローンが首を振る様にブンブン動いた。

 

『ーーーーーーーーーコッチに向かって来る生体反応を検出したの!!…分析パターン青!!壊獣〈ノーマン〉だよ!!!』

 

集まっている人達の顔がサッと青褪めた。

 

更にドローンは続ける。

 

『……しかも、一体で巨大かつ体型が複雑ーーーーーーーーー間違い無く〈五ツ星級〉!!!…単独討伐不可レベルのやばいヤツだよ〜ッ!?』

 

「マジかよ。面倒なヤツが来たもんだなッ!?」

 

バサラが宙を仰いで額に手を当てた。

 

「……しょうがねぇ。ーーーーーーーーニュウ、カノン!…やるぞ!!」

 

2人は顔をチラリと見合わせて頷いた。

 

「了解!!」

「いつでも大丈夫!」

 

…遠くから、〈ノーマン〉が迫り来る地鳴りの様な音が聞こえ始めていた…………

 

 





パターン青!!使徒です!!

…今回も3話に別れちゃいました。…許して下さい…。
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