…正直、あんまり長々と話を続けたくは無いのですが…。このペースじゃ完結まで100話以上掛かる……マジで。
…サンタさんへ。…話を纏める力をください。
……ある日の夜。
深夜の闇に沈む街に、1人の青年が月をバックに立っていた。
…風にはためくコート、深く被ったワークキャップ…。
ーーーーーーーーーニュウだ。
彼は辺りを素早く見渡し、暗い路地の中に誰も居ないのを確認するとポケットから小さな懐中電灯を取り出した。
…取り出したソレを、嫌な物を見るかの様にジッと見詰めていたニュウだが、やがて小さく呟いた。
「……………やらなきゃ……。」
暗がりの中で彼はそう呟き、ライトの先端を引っ張った。
ライトの先端が伸縮し、ライトカバーの内側から一つのスイッチが現れる。…スイッチの横には、小さなスピーカーの空いた穴が見える。
「……。」
ニュウはカチリ、とスイッチを押した。……スピーカーから小さな雑音が流れ始める。…やがて雑音は弱まり、音がクリアになって行く。
ーーーーーーーーーそして、今や携帯式通信機器となった懐中電灯から、人の声が聞こえてきた。
『………もしもし。ーーーーーーーーー此方、Dr.アビド。…貴公はニュウか?』
聞こえたのはしわがれた老人の声。…ニュウは暗闇の中で頷く。
「はい、ニュウです。……少々遅れましたが、報告をしに連絡致しました。……Dr.ゾルゲさんはまだ居ますか?」
……しばしの沈黙の後、またさっきのしわがれた声が聞こえて来た。
『…悪いがゾルゲ殿は今手が離せない。…代わりにワシが聞いておこうーーーーーーーーーそれにしても、遅かったでは無いか?ニュウ。…我々連邦がお前を〈オーステルン〉の〈イースター〉の巣窟へ送り込んでからもう1ヶ月経つぞ。』
ニュウは少し黙り込んだ。…しわがれた声が続ける。
『………ニュウよ。対象とはちゃんと接触できたのだろうな?』
ニュウの脳裏にネオが過ぎった。
「……はい。出来ています。」
『…宜しい。ーーーなら、どうだ?……上手く対象を我々の元に連れ戻せそうか??』
冷たい夜風がニュウのコートを大きく揺らす。
「………今の時点では厳しいです。…まだ時間が掛かると思われ……」
『ーーーーしかし、1ヶ月経ったんだぞ?情報は集まった筈だ。対象は〈オーステルン〉から離れた事は無いのか?常に〈イースター〉の元に対象がいるとも限らない筈だ。……対象を連れて、〈オーステルン〉を去るタイミングはあったのでは無いか??』
ニュウは黙り込んだ。
……やろうと思えば、チャンスは幾らでも有った。…ネオは、バサラよりかは控え目とは言え、突然フラッと居なくなる事がある。
そんな風に1人になった頃を見計らってネオを無力化すれば、後は彼女を連れて〈オーステルン〉を脱出するのみだ。…丁度、コッチには一撃で対象を気絶させられる〈
…だが、ニュウはしなかった。
「………対象を連れて脱出する術が有りません。ネオさn……ネオは基本〈オーステルン〉から離れませんし。……其方が迎えに来てくれるのなら、話は別ですが。」
『…ソレは無理じゃ。ーーーーーーーーー送るのが連邦の飛行艇一機だとしても〈オーステルン〉を刺激する事になる。…あの移動要塞都市は中々に厄介な代物なのだ。今はお前達に戦力を割けん。…忌々しき一年前の〈新人類優勢思想事件〉以来、連邦の力は低下しつつある。』
「…………。」
『…悪しき天聖亡き後も、その意を汲んだ者共が蜂起しては連邦を脅かし、連邦の新人類に対する差別的な体制を巡って内外の軋轢も高まっている。………〈連邦の中枢〉も一枚岩では無い。〈統帥閣下〉によって今は何とか踏みとどまっているが、内乱すら起きてもおかしくは無いのだ。分かるか??』
「……分かっています。」
『ーーーーーーー新人類を巡る各国の思惑は闇の様に深く、底無しだ。…連邦の力そのものが弱まっている今、各国が其々の思惑を隠そうともしなくなった…………』
夜の闇にしわがれた声が溶けて行く。
『…確かに時間は掛けても良いとは言った。……だが、コレはほぼ急務と言っても過言では無いのだよ。……ネオを再び我々の手に戻す事は、連邦の未来、ひいては人類の未来が懸かっているのだ。…分かっているな、ニュウ。』
ニュウは闇の中で黙って頷いた。…彼の顔は、夜の闇に紛れてよく見えない。
『……これ以上の通信は探知される可能性もある。なるべく早い吉報を待っているぞ?ーーーーーーーーではの。』
……ブツンッと音を立てて、一方的に通話が切れた。
ニュウは闇の中でライトを元に戻す。
「…………糞。」
……自分が嫌いになる。
……何の為に自分はここに居るのだ??新人類として連邦に捕らえられた皆を、自由にする為にここに来たのでは無いのか??
躊躇う事なんて何も無い筈………筈なんだ。
ーーーーーーしかし、ニュウの脳裏に過ぎるのは〈イースター〉の面々…そしてネオだった。
……此処には少なくとも自由があった。…自分が求める自由が。
そして、彼等はその自由の中に生きていたのだ。彼等と共にいる間は、自分も自由になれる気がした。
ーーーーーソレを壊したく無い、連邦の事など全て忘れて放り投げだしてまいたい。…そう思ってしまう自分が居る事に、どうしようも無く心の中が乱されるのだ……。
月が雲に隠れ、微かな月光すら届かなくなった路地裏で、ニュウは何時迄も突っ立って居た。
前書きで話を長くしたくないと言ったばかりですが、逆にこっから先の話がもう無くなっちゃったんですよ……。いきなりクライマックスは不味いからね…電王じゃあるまいし()
もしかしたら、一気に作中時間軸を飛ばすかもしれ無いっす。
次回多分、おそらく、きっと新章開始。