新章です。
…地上。
……嘗て、ヒトの栄華の舞台となった場所。
………しかし、今や地上は〈星のセラム〉に包まれ、嘗ての栄華の名残は殆ど残って居ない。
ーーーーーーーこの
◇◆◇
「………おぉ。」
…暗い聖堂の様な場所の中で、誰かが声を上げている。
…震えるその声は、恐怖と言うよりかは歓喜に満ちている様な気がした。
「……おぉ!」
…地に落ちた十字架を足蹴にする様に、1人の男が立っている。
聖堂の礼拝台……嘗て十字架がかけられて居たであろう場所には、十字架に取って代わる様にして螺旋状の幹を持つ樹…又は、大きな花を模したであろうオブジェが鎮座して居た。
…男は足に十字架を踏みつけ、両手をそのオブジェに向かって崇める様に掲げている。
「…時が来るのですね?ーーーーーー神よ。…貴方の歌が、導いてくれるのですね??」
震えた声が、がらんとした聖堂内に響いた。
やがて、声は笑い声に変わっていく。
「んふふふ………はははははは………。」
何が面白いのか、男は笑いながら天を仰いで叫んだ。
「…ははははははッッ!!キテます!!キテますよぉぉぉぉぉッ!!!!」
彼の真っ黒な瞳が開かれ、
「……………ネオぉ……。」
◇◆◇
星暦XXXX年 10月 19日
場所:移動要塞都市〈オーステルン〉〈イースター本部〉
「ーーーーーーーよう、お前ら。今日は俺の《ばーすでい》だ、祝え。」
そんなバサラの声が二階の大部屋に響いて、
「ーーー〈two for all〉の中だと、何の曲が好きなんです?」
「……《Circle of Life》。朝の雰囲気に合う。」
部屋の隅っこで話しているニュウとネオ。
「アミダ〜。俺とカノンのコート乾いたかな?…どうだろう?」
「…ん〜。最近曇ってるからね。…コインランドリー行く?もし行くなら、私も一緒に行くよ〜。」
「……私も行かせてもらおうかな。」
彼を象徴する蒼いコートと、カノンの白いコートを持ちながら、アミダと話を交わすハレルヤ、そしてカノン。
半泣き(嘘)でバサラが叫ぶ。
「……無視はねぇだろぉ!?無視は!!!」
「あーはいはい。バサラさん、誕おめ誕おめ。」
アミダがプラプラと手を振って、あんぐりとするバサラの前を通り過ぎて行く。
「とりあえず、寿司頼んどきますね。…じゃあ、俺アミダ達とコインランドリー行ってきます。」
次にハレルヤが笑いながらそう言って、部屋から出て行く。
「……《生まれる》と言う事は、きっととても素晴らしい事。……じゃ、行ってくるね。」
カノンが最後にそう言ってハレルヤ達と一緒に部屋から出て行った。
……静かになった二階にて、バサラの慟哭が響く。
「……まったくよぉ!どいつもコイツもテキトーにあしらいやがって……。」
いじけた彼は、部屋の真ん中に出してあるコタツに潜り込む。……まるで引き篭もった亀みたいだ。
「……あの…バサラさん?」
ニュウの声にバサラが頭だけコタツの端から出す。…亀っぽさがより加速した。
「何だニュウ。」
「……誕生日おめでとう御座います。」
バサラがガタンッと音を立ててニュウの元に駆け寄ると、彼の両手をがっしりと掴んだ。
「お前だけだ!!ーーーニュウ!!そんな事言ってくれんのは!!……あいつ等にお前の爪の垢煎じて飲ませたいぜ?!」
「…爪に垢は溜まって無いです。」
「…諺だよ。知らねぇのかお前。……まぁ、良いか。」
バサラはニュウの隣に腰を下ろす。
「……まぁ、冗談というか茶番はさておき。お前が此処にきて1ヶ月半ほど経ったわけだが、どうだ?慣れたか?」
ニュウは頷いた。
「ええ……慣れたと思います…。」
「…あぁ。らしいな。あいつ等と仲良くやってくれて俺ァ安心だぜ。…マジでな。」
…そう言いつつ、バサラはニュウの隣のネオの方をチラッと見る。思えば、意外とニュウはネオとも良くやって行けている様だった。ソレがバサラには案外嬉しかった。
「ーーー何だか、まるで親みたいですねバサラさん。……因みに、何歳になったんです?」
ニュウのその質問に、バサラはニヤッと笑って返した。
「ふっ…………秘密だ。」
◇◆◇
ゴゴゴゴ…………
ーーーーーーー歯車が回る音がする。
〈オーステルン〉の〈脚〉が、樹海を踏みしめながら大地を移動して居るのだ。
塔のような鋼鉄の脚が大地を踏み締める度に、100mを優に超える土埃が立ち、大地が揺れ、驚いた鳥達が木々から飛び立って空に黒い影となり消えて行く。
……まさに動く巨城。
…そしてその巨城は今、ある場所を目指していたーーーーーーー
◇◆◇
〈移動要塞都市オーステルン 中枢 操舵室〉
「ーーーゼウス艦長。…間も無く〈アステール〉です。」
「……うん?!今話しかけないでくれ!!…
此処は〈オーステルン〉の航路を決める操舵室。
そんな操舵室の真ん中で青褪めながら滝の様な汗を流しているのは、他でも無いこの移動要塞都市のリーダーであるゼウス艦長である。
…どうやら妻に浮気がバレたらしい。
「こ、殺される。…間違いなく殺される……。
この世の終わり見たいな顔をしながらブツブツ呟くゼウス艦長を見て、誰しもが心の中でため息をつく。
(((またやってるよこの人。……懲りないな。)))
呆れこそすれど、同情する者は誰も居なかった。
…と言うか、そんな事やってる場合では無いのだ。
何故なら、あと少しで〈オーステルン〉は星屑の街〈アステール〉に到着及び、停留を開始するからである。
既に操舵室いっぱいに広がるメインモニターが、地上に六芒星を描く様に広がる街並みを映し出していた。
新人類の街。ーーーーーーーーー〈アステール〉だ。
ギリシャ語で星屑を表す名を冠すその街は、その名の通り星屑の様に集まる〈星のセラム〉に周囲を囲まれ、あたかも星の海の中に浮かぶ島の様に見える。
ソレをモニター越しに見た操舵室の人達が、口々に話を交わす。
「…おぉ……本当にギリギリの所まで〈星のセラム〉が迫ってるんだな。」
「ああ、そうだな。…だが、あの星々が連邦の介入をある程度防いでいるらしい。………〈アステール〉は星に守られているとも言える。」
「……自然の要塞ってワケか。」
「ーーーーーーソレに……ほら、見ろ。」
ーーーーーーーーー操舵室の1人が、モニターを指差して口を開く。……指す先は、アステールの街では無くその更に向こう………
「…〈星の花〉が、見えるぞ。」
誰しもが、ハッとなってモニターを見た。……此処にいる人達は、皆〈星の花〉を見た事がある者達ばかりだ。
………しかし何度見ても〈星の花〉は、まるで初めて見た時の様な衝撃に近いものを、見た者に与えるのだ…。
………地平線の彼方に朧げに見える〈星の花〉は、《花》と言うよりかは《樹》に近い見た目をしていた。
〈アステール〉からだいぶと遠くにある筈なのに、直ぐ近くで自分達を見下ろしている様にも感じられる〈星の花〉。
ソレは世界の全てを変えた《元凶》か。…或いは新世界の始まりを告げる《吉報》なのか。
操舵室の1人が地平線の彼方に見える〈星の花〉を見詰めながら、ボソリと呟く。
「……いっつも言葉が出なくなるんだよ、俺。〈星の花〉を見るとさ…なんていうか……その…余りにも綺麗な景色を見た時の、声も出せなくなる感じって言うのか?ーーーいや、違うな……ダメだ、わかんねぇ。」
「………分かるよ。すっごくよく分かる。」
………誰かがそう答えた。
「ーーーーーーーーーともかく、何時迄も見惚れてる訳にもいかん。……速度を落とすぞ。……これより当艦は〈アステール〉に入港する。」
「「ラジャー!!」」
その声を合図に、操舵室は再び慌ただしく動き始めた。
空に響く駆動音を立てながら〈オーステルン〉は進行速度を落とし、星屑の街〈アステール〉へと近づいて行ったーーーーーーー
「……ユルシテ…ユルシテ、モウ浮気シナイカラ、オネガイシマスゥ……。」
ーーーーゼウスはそれどころじゃ無かったが。
◇◆◇
ーーーーーーーーー此処は星屑の街〈アステール〉。
星に抱かれ、眠る六芒星の街。
この星唯一の、新人類安住の地。
…この
今はまだ、誰も知らない。
さて、どうなりますかね……
…ま、ソレはソレとして、最近1話から23話まで見直してみたんですよ。
その結果、真にいらない話は第4話のカロリーゼロの下りだという結論に達しました。
…まじであの下りいらん。……近々修正するねアレ。個人的に4話を乗り越えた人は猛者です。私がこの話の読者だったら4話で切ってます。
というか1話も、ちょっと掴みが弱いかもしれん。
追記2023.6.1 一部修正追加