モンスターストライク 〜星ノ呼ビ聲〜   作:犬社長

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 前回イースター支部のメンバーを紹介すると言ったな、アレは8割嘘だ。…2割は本当。




26話 〈反連邦団体イースター《アステール支部》〉

 

 

 

◇◆◇

 

 

………星屑の街〈アステール〉は、限りなき喧騒に包まれていた。

 

 何せ、弩級移動要塞都市〈オーステルン〉が物資補給の為に寄港しているのだ。……補給の間、暇を持て余したオーステルン市民が〈アステール〉に降りて来る。

 

 そんな人達相手に商売しようとする者が街中から集まり、出店を構える所為で〈オーステルン〉の〈脚〉の近くはちょっとしたお祭り状態となっていた。

 

 

 

 

「ーーーーーーーヘイらっしゃい!!果樹園で採れたリンゴはいかが!?」

「エインセル河上流で獲った鮮魚はどうだい?今なら安くしとくよ?!」

「水晶のアクセサリーもありますよ!!移動要塞都市じゃ、絶対に手に入らない宝石類!是非ご覧下さい!!」

「家具も忘れるな?!ーーーーーーーアステール郊外、霧の森の丈夫な木材から作られた木製家具!!……お!ご購入で?まいどぉ!!!」

「もうちょっと安くなりませんかね?」「いやぁ……これ以上は無理でんな。」「コレの色違いってあります?」「少々お待ちをーーーーーーーー」「ソレがーーー……」「あれのーーーーーー……」

 

 

「……うおぉ…凄い人だぁ。」

 

 ニュウが人混みに揉まれながら、呆然と呟く。前を行くアミダが、彼に賛同する様に頷いて口を開いた。

 

「ねー。洗濯機の中に放り込まれた洗濯物の気分だよ〜…。」

「あぁ、全くだな。…逸れんなよ?」

 

 ニュウの隣を歩くバサラがそう言ってニュウの肩を叩いた。

 

「俺は大丈夫ですよ。…昔住んでた事もあるので。地形ならある程度把握して有ります。」

「あー、そう言えばそんな事ハレルヤが言ってたな。…そっか、そうだったな。でも、一応気ぃつけろよ?昔と今の街並みは違うからな。」

「ええ。気をつけておきます。」

「私も気をつけよっと。……迷子になるのは嫌だからね。」

「ああ、頼むぜ。…迷子になったアミダを探すのは手間取りそうだ。」

「ーーーちょっと?!ソレってどう言う……?」

 

 そう3人が話を交わす隣で、ネオが顔を顰めながら小さく呟いた。

 

「………騒がしいのは嫌いじゃ無いけれど、コレは騒ぎすぎだよ…。」

 

ソレを聞いたハレルヤが笑う。

 

「あはは。ーーーーーー支部に着くまでの辛抱だよ、ネオ。支部に着いたら、多少は静かになれるさ。」

「………そうだね。」

 

 ネオはそう呟いて、少しズレかけているヘッドホンの位置を直した。そして、音楽の音量を上げてからまた歩き出す。

 

 

 

「ーーーーーーーーそう言えばバサラさん。」

「お?どうしたニュウ。」

 

 前方からやって来る大きな荷車を避けながら、ニュウはバサラに声を掛ける。

 

「ーーーーーーーーー此処に来る前に〈支部〉って言ってましたけど、〈支部〉はどんな所で、どんな人がいるんです??…俺、何も知らないんですが……。」

「ーーーーーーおお、そうだったな。悪りぃ、完全にいつものノリで来てた。お前は知らないのも当然だよな。」

 

 あっけらかんとバサラは笑って道の先を指差した。ーーー見ると、道の向こう…遠くの方に中々に豪華な建物が建っている。

 

 17、8世紀ぐらいのお屋敷を思わせる見た目の建物は〈アステール〉の空に漂う〈星のセラム〉の所為で、まるで星空に浮かぶ城の様にも見えた。

 

「アレが〈反連邦団体イースター《星屑の街アステール支部》〉だ。ーーーーーーーーコッチのメンバーは会った時に紹介しよう。」

 

そう言って、バサラは屋敷へと近づいていく。

 

 屋敷までの道は緩やかな上り坂になっていて、上に上がっていく度に、〈オーステルン〉の停泊場からは遠ざかり、ソレに伴って喧騒も鎮まり出す。

 

 周りの建物も、停泊場の周囲の商店街の様なモノから、質素だが堅実な造りの民家に置き換わっていく。

 

 時折、何処からか路地を駆け回る幼子の声が微かに響き、石畳の道の端には、猫が寝そべってコチラをジロリと見詰めていた。

 

 民家の庭先には美しい花や草木。生垣の合間から、洗濯物が柔らかな風に吹かれているのが見える。

 

 そして道中には、移動要塞都市ではお目にかかれない自然の川があった。煌めく水の中に魚影がちらつき、煉瓦造りの橋がその上に架かっている。河原では、誰かが釣り糸を垂らして寝そべっていた。…きっとボウズだろうが、彼は気にしていないだろう。

 

 

 

ーーーーーーーーーそこは…ニュウの知らない平和な世界だった。

 

 

 

「………あぁ。ーーーーーーなんて……。」

 

 思わずニュウは声を漏らす。……連邦の一員として、暗い世界に身を置き続けていたーーー今もまだ、そうだーーー彼の目には、この平和な街並みは眩し過ぎた。……泣きたくなる程に。

 

「今にも泣き出しそうだけど、大丈夫??」

 

カノンがニュウの顔を覗き込んで、そう言う。

 

「…あ、あぁ。大丈夫です。」

「……そう。」

 

……大丈夫では無いが、流石に此処で泣き出す訳にはいかない。ニュウは輝かしい光から目を背け、もう随分と近くなった〈アステール支部〉の屋敷を見上げる。

 

「……大きな支部ですね。…本部よりおっきいんじゃ無いですか??」

「あぁ、まぁな。……でも、移動要塞都市内は敷地面積が限られているから仕方ねぇんだよ。…ただでさえ、〈イースター号〉の格納にスペース取るのに、あれ以上建物は大きく出来ん。」

 

…そんな事を喋りながら敷地内に入るバサラ達。

 

 綺麗な噴水の置かれた玄関前の広場の様な場所を横切り、大きなドアの前に立つ。

「よし。…問題は、()()2()()が居るかどうかだな。」

 バサラが呟いて、ドアに付いている音叉の形をした叩き金(ドアノッカー)を叩いて、来訪を告げた。

 

 

………暫しの静寂の後、ドアがカチャリと少し開く。ーーーが、微かに隙間が空いただけで、開くのは止まってしまった。

 

「………?」

 

 訝しんだニュウが、ドアの隙間の向こうを覗き込もうとした瞬間ーーーーーー……

 

「……あ、ソコ危ないぞニュウ!!」

 

ーーーーーーーーーギュイーーーーーンッ!!

 

「ーーーーーーーっだぁ!!??」

 

ーーーーーーー瞬間、引き裂く様な音と共に、ドアの隙間からニュウの顔面目掛けて、チェーンソーが飛び出して来た。

 

 ネオがすんでの所で体を後ろに引いてくれたお陰で、顔が真っ二つになる事態は避けれたが、前髪の5、6本は持ってかれたかも知れない。

 

「…危なかったね。」

「ーーーーーーな、な、何事ッ?!え?…襲撃!?」

 

 驚き固まるニュウの前にバサラがずいっと立ち塞がって、ドアの向こうに声を掛けた。

 

「シャイターン!!ーーー俺だ!バサラだ!!取り敢えずその物騒なもん仕舞ってドア開けてくれ!!」

 

…その声が聞こえたのか、ドアの向こうで鳴っていたチェーンソーの音が止まり、ドアが滑らかにスイッと開いた。

 

 開かれたドアの向こうには、ボサボサの金髪ツインテールにメイド服と言う出で立ちの女性が1人、立っていた。

 

 片方の手にはメイドらしくデッキブラシを、もう片方の手には、馬鹿でかいチェーンソーが握られている。…さっきニュウを殺し掛けたモノだ。

 

「…メ、メイド?」

 

 ニュウがそう呟くと、彼女が恭しく腰をちょっと曲げて挨拶する。そして、怠そうにしている見た目とは裏腹の意外と通る声で話し出した。

 

「ーーーーーーーー如何もお久しぶりですバサラ様。…そしてイースターの皆々様。」

 

ネオとニュウを除く他の面々が、挨拶を返す。

「シャイターンちゃん、久しぶり〜!相変わらずチェーンソーブンブンしてるの〜?…危ないよソレ。(真顔)」

「…うん。久しぶりだね、シャイターン。」

「…元気そうで良かったです。」

 

ニュウは隣のネオに囁いた。

 

「…ちょ…なんなんですかこの人?…いきなりチェーンソー突きつけて来るメイドさんとか、怖すぎるんですケド???」

「初めての人だから、警戒されたんだよ。…たぶん。」

「だからっていきなり殺しに来ますかねぇ…??」

 

 若干冷や汗を流しているニュウの前で、バサラがシャイターンと言う名前らしきメイドに話し掛けている。

 

「ーーーあ〜、シャイターン?取り敢えず…目に付いた見知らぬ奴にチェーンソーぶん回すのやめようか?…ニュウの顔が無くなるところだったぜ?…コイツは新しく入った仲間なんだ。顔覚えといてくれ。」

 

「……畏まりました。」

 

 そう言ったシャイターンは、ニュウの方に向き合うとスッと頭を下げた。

 

「ーーーーーーー先程は申し訳ありませんでした。ニュウ様。…てっきり、お屋敷に侵入を試みる不届き者(ゴミ)共なのかと。」

 

「………お、おう。大丈夫です。怪我とか無いんで…。」

 

「ーーーーーーー危なかったなニュウ。…彼女ーーーシャイターンは、この屋敷のメイド兼用心棒見たいなモンなんだ。初対面の人は大体殺しにかかる奴だって事、先言っとけば良かったな。」

「ソレは本当に先言っておいて欲しかった………。」

「……いやぁ、マジ悪りぃ。」

 

 

◇◆◇

 

 

ーーーーーーーーーそんなハプニングが有ったものの、一行は〈アステール支部〉に到着した。

 

 チェーンソーを担いだシャイターンに先導されて、ニュウ達は屋敷の中の広間に案内される。…大きな窓から外の光が燦々と差し込み、大きなテーブルと木製の椅子がシンプルだが綺麗なラグの上に置かれている部屋だ。

 

「んで、シャイターン。ーーーーーーーアイツらは居るのか?」

 

 バサラが椅子にドサッと腰掛けながら、影の様に隣に立つシャイターンに問い掛けた。シャイターンが澱みのない声で答える。

 

「…今、お二人は《ある者》の看病しております。」

アミダが慌てた様に口を開いた。

「…え?誰か病気なの?ーーーだれ?ハクビ?ソレともサクアちゃん!?」

「待ちなよアミダ。その2人だったら態々《ある者》…なんて言い回ししないさ。……もしかして、何か訳ありだったりする?」

「…わ、訳あり……?」

「はい。その通りで御座いますハレルヤ様。」

 

シャイターンは小さく頷いて囁く様に口を開く。

 

「………どうも、《連邦軍新人類部隊》からの脱走兵だそうで。」

 

 

 

………続く

 

 





アステール?エインセル河?霧の森?……やがて王になる死にゲーですかね???(すっとぼけ)

…ソレはともかく、新章の舞台到着から物語開始まで既に3話消費しております…やっちまったなぁ?!
 
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