アミダ獣神化しましたね。
…ま、持ってないから関係ないけどネ。
「「「……脱走兵???」」」
静かな大部屋にイースターの面々の声が響いて消える。
「はい。」
シャイターンが頷いた。
「……なぁるほどな。ーーー連邦軍からの脱走兵…しかも新人類部隊。…結構厄介な代物だぞ?それは。」
バサラが目頭を抑えながら呟いた。隣でアミダも首を縦に振る。
「ーーーーーーそうだよね?…連邦軍が脱走兵を取り戻しに来るか、粛清しに来るんじゃない?!」
ハレルヤが間に入る。
「…ま、脱走兵を追いかけて〈アステール〉まで連邦が態々来るかって言うと、微妙な所だけどね。」
「分からんぞハレルヤ?…アソコにいる奴らは実働部隊兼実験体だって話だ。……脱走兵としてでは無く、実験体を取り戻す名目で来るかも知れねぇ。…連邦の野郎どもは実験大好きだからな……。」
…さて、ここで連邦軍新人類部隊について説明しよう。
ーーーーーーーー連邦軍新人類部隊とは、数いる新人類の中から連邦によって選出された、高い戦闘力を持つ者達によって構成された部隊である。
連邦軍に選ばれた彼らは、実験施設からの解放と引き換えに連邦軍に所属し、連邦に抵抗する勢力との抗争や、壊獣ノーマンとの戦闘に駆り出され、戦う事を強いられる。
…しかし、それでもただの実験体だった時に比べれば、待遇は良くなる。……部隊に編入されれば、限定的とは言え自由も与えられ、報酬も得る事が出来るのだ。…それを望む新人類達は数多い。
抑圧を高めた中で、自由への道をチラつかせれば、誰だって飛びつくだろう。
ーーーーーー旧人類より優れた種をどのように利用すべきか………連邦はこのシステムを用いて新人類という存在を如何に上手く、飼い慣らせるか探っているとも言えるのだ。
…そして、新人類部隊は新人類の貴重な実戦データを採取する為の実験場でもある。彼等の戦闘データは連邦の糧となり、新人類研究分野の礎となるのだ。
(…問題は、その脱走兵が連邦にとってどれだけ重要な存在なのか……って所だな。…もし、データを取る価値のある存在なら、バサラさんの言う通り連邦は連れ戻しに来る。)
…ニュウはそう考えていた。新人類部隊の事なら、よく知っている…だって、ニュウもその1人なのだから。
そんなニュウの考えを知る由も無く、バサラ達は話を進めて行く。
「ソイツは何処にいるんだ?…いま会えるのか?」
「ーーーーー今は別の部屋におります。ずっと眠っておりますが。…案内しましょうか?」
シャイターンの言葉に、バサラは頷いた。
「ああ、頼む。…
「かしこまりました。ーーーーーーーーーでは、此方に。」
シャイターンは部屋から出て行く。バサラが後に続き、ニュウ達も互いに顔を見合わせてから彼女の後を追って、その脱走兵が居る部屋に向かった………
◇◆◇
「ーーーーーーーーーうぅ……。」
………
目の前に横たわる彼は童顔金髪で、白のシャツにカーキ色のズボンを履いている。
彼が寝ているベットの側には、彼が被っていたであろうベレー帽が置いてあった。怪我をしている様には見えないが、何故か包帯も一緒に一巻きにして置いてある。
……何より特筆すべきは、彼の首に付いているチョーカーだろうか。
丸まった竜の刻印が施されたチョーカーは、まるで彼の首を締め付けているかの如き、異彩な雰囲気を放っていた。
「……コイツが、シャイターンが言ってた脱走兵なのか?」
ーーーーーーーーー少年が寝ている部屋の中で、バサラの囁き声が響いた。
ソレに答えたのは、少年の横に座る薄紫の髪の少女ーーーーーーー
「……ええ。…首に付けてあるチョーカーに刻まれた印……丸い竜は、連邦の印です。バサラさんも見ますか?」
「……なるほどーーーーーーんで、
「…いえ、ソレは違います。見つけたのはーーーーーーーーー…」
「ーーーーーーーー少年を見つけたのは私だ。」
バサラと薄紫の髪の少女…アビスの話の間に、部屋に居たもう1人の赫髪の女性が割り込んだ。
「……アルスラーンか。」
バサラの呟きに、赫髪の女性…アルスラーンが頷く。
「ーーーーーーああ。昨日、霧の森の手前で倒れていた所を見つけたのだ。…怪我はない様だが、衰弱が激しくてな。……連邦の脱走兵だと言う事は分かっていたが、かと言って見捨てる訳にも行かず、ここに連れて来た訳だ。」
「……理解した。ーーーとは言え、中々に厄介なヤツ持ち込んだなアルスラーン?」
アルスラーンは、赫い三つ編みを揺らしながら首を振る。
「…見捨てる訳には行かんだろう?ーーーバサラ。同じ立場なら、貴方だってそうした筈だ。」
「……面倒ごとは苦手だが、否定はしねぇ。」
そう会話をする3人を横目に、ニュウはベットに寝転ぶ少年の顔を覗き見た。ーーーーーーーベットの上の彼は悪い夢でも見ているのか、しきりに唸っている。
(この人は、どんな思いで脱走兵となったのだろう……。何か、どうしても脱走しなければならない理由が有ったのかな……)
「ーーーーーーーーーしかし、話は変わるがバサラよ。……新しい者が本部には入った様だな?」
そんなアルスラーンの声でニュウが顔を上げると、彼女のルビーの様な瞳と目が合った。
「あぁ、ニュウだ。…大体1ヶ月前にウチに入隊した新入り…ってヤツだな。ーーーーーーーーちょっと真面目すぎるが、良いヤツだぞ?」
ニュウは軽くアルスラーンとアビスの2人に向けて会釈する。
「…如何も初めまして、俺ニュウって言います。お二人が、バサラさんの言っていたアステール支部のメンバーなんですね?」
2人は頷いた。
「ーーーーーーーあぁ。その通りだ。…改めて名乗っておこう、私は《アルスラーン》。ーーー新人類達の連邦からの解放を願い、戦う者だ。よろしく頼む。」
そう言って不敵な笑みを浮かべる彼女の隣で、薄紫の髪の少女がスッと頭を下げる。
「ニュウさん…ですね。ーーーーーーーー私は《アビス》と言います。…よろしくお願いします。」
………こうして横に並んだ2人を見ると、まるで騎士と巫女の様だーーーーーーーニュウはそう思った。
「………支部のメンバーはこれで全員ですか?」
ニュウの問いに、アルスラーンが首を振った。
「いや、正式なイースターの一員なら私達2人だけだが、この屋敷にはあと2人居る。…1人は《ハクビ》、もう1人は《サクア》と言うが…今は街に出ていてな。ーーーまた、顔を合わせたら挨拶する様言っておこう。」
「ーーーーーーーーなるほど。」
ニュウが頷いている横から、バサラが口を挟んだ。
「ーーーーーーーーーあぁ、あとイースターのメンバーは1人居るからな。…《アルセーヌ》って奴だ。…ソイツと支部の2人と、俺たち入れて全8人ーーーーーーーーーコレがイースターの全貌だ。」
「アルセーヌ……。その人は今何処に?」
ニュウの呟きに、バサラは肩をすくめた。
「知らねえ。…はぐらかしてる訳じゃ無いぞ?ーーーーーーーアイツは〈
「…へぇ。面白そうな人ですね。」
そうニュウが言ったところで、アルスラーンがチラリと壁掛け時計を見て口を開いた。
「ーーーーーーーーーさて、初めて会う者との挨拶も済んだ事だし、取り敢えず荷物を部屋に置きに行き給え。…まだ、
バサラが頷いた。
「…あぁ。そうさせて貰おうかな。ーーーーーーー
それを聞いたカノンがちょっと頭を下げて微笑んだ。……彼女は心なしか少し、そわそわしている気がする。
「ーーーーーーーーーありがとう、バサラさん。…行ってきます。」
「ああ。一応気をつけて行けよ。」
「ん、行ってらっしゃいカノンちゃーん。」
ーーーーーーー何処に行くんだ?…と疑問に思っているニュウの前で、カノンは部屋からそそくさと出て行った。カノンの去った後の部屋で、バサラが口を開く。
「よし。…取り敢えず、部屋に荷物置きに行こう。ーーーーーーー別にロクなもん持って来ては無いがな。」
「「「りょーかいでーす。」」」
こうして、バサラ達も部屋から出て行った。
ーーーーーーーーーバサラ達が出て行った後の部屋の中で、アルスラーンがアビスに話を振る。
「…ニュウ…か。ーーー彼を如何思う?アビス。」
「……如何……ですか。ーーーーーー彼は……」
アビスは、彼が立ってベットの上の脱走兵を見下ろしていた場所に目をやった。
……あの時の彼の目はーーーーーーーーー
「……根は良い人だと思います。…ただ、心の奥に何か…暗いモノを持ってるかも知れないかも…ですね…。」
「…そうか。」
アルスラーンがそう呟く。……静かになった部屋には、壁掛け時計が時を刻む音だけが響いていたーーーーーー
◇◆◇
ニュウは、自分に割り当てられた部屋に荷物(…とは言っても、大した物は無い。)を置いた後、屋敷内を歩いて回る事にした。
(初めて来る所は先ず地形把握から始める……コレはもう、癖みたいなもんだな。)
そんな事を思いながら、綺麗な絨毯の敷かれた屋敷内を歩き回るニュウ。
…屋敷は4階だてで、かなり立派な造りだ。台所や食堂らしき場所は1階に、客間は2階と3階に分かれて存在し、4階は他の階に比べると全体的に面積が狭く、鍵の掛かっている部屋が多かった。
(…ただ、全ての階に言える事だけど、沢山明かり取りの窓があるから開放感が凄いな。………ん?)
各階を見て回っていたニュウだが、3階の廊下から裏庭を覗いた時、裏庭の隅…大きな木の側に、何かが置いてあるのに気が付いた。
…木漏れ日に照らされ、木の葉に守られる様に地面に置かれているソレはーーーーーーーーー…
「アレは……墓標?」
◇◆◇
ーーーーーーーーードタバタと、絨毯を踏み鳴らす音にアルスラーンとアビスは顔を上げた。
「……帰ってきた様ですね。」
「ああ。そのようだな。」
アルスラーンがそう言った次の瞬間には、2人がいる部屋の扉がガチャリと開かれ、両手に荷物を抱えた2人組が部屋に飛び込んで来た。
「ただいまぁーーー!!買い物終わった!!」
「ただいま戻りました。王よ。」
「あぁ、お帰り。姫、サクア。…意外と遅かったじゃ無いか。」
アルスラーンが手を挙げると、緑髪に獣の耳を付けた少女ーーーーーーーサクアが、ニンマリと笑う。
「へへへ…。いっぱいお店があってね。ーーーーー少し時間がかかってしまったんだよ。ごめんねアルスラーン。」
サクアの隣の、白と黒に色分けされた短い髪をして、毛皮のフード付きマントを身に纏った女性ーーーーーーーハクビが凛とした表情で口を開いた。
「ーーーーーーーサクアが彼方此方とふらふらして居なければ、王を待たせる事も無かったのですが……。」
サクアのケモ耳がピクっと動いて、頬が膨れる。
「ーーーーーーーハクビも結局、アタシと一緒にふらふらしてたじゃん。」
「私はサクアが迷子にならない様見張っていただけです。……決して店舗巡りが楽しかったとかじゃありません!」
「…つまり、楽しかった…って事だよネ。」
2人のやり取りを聞いたアルスラーンが小さく笑った。
「ふふふ…楽しんだのなら何よりだよ。」
「…いえ。ソレで王をお待たせしてしまっては面目無い。」
頭を下げたハクビに、アルスラーンは気にして無い事を示す様に手を振った。
「…いやいや。気にして無いさ、姫。……それより、いま〈イースター本部〉…〈オーステルン〉の方のメンバーが来てる。夕餉までは居るだろうし、もしかしたら1泊ぐらいしてくかもな。ーーーーーー会ったら挨拶しておく様に。」
「「……はい!」」
ハクビとサクアが一緒になって頷いた。
ーーーーーーーーーと、そこで彼女達の背後…ベットに臥せっていた脱走兵の少年が、部屋の中の話し声に反応したのか微かに身じろぎした。
そして、彼の目が薄っすらと開かれる。
「……うぅ……うん?」
「あ。……目を覚ました??」
アビスがベットの上の彼の顔を覗き込む。
少年のぼんやりとした
「ーーーーーーーーーあれ?……此処は何処?貴方達は…誰?」
微かに警戒心の宿る少年の小さな声が、部屋に響く。
アビスとアルスラーンは互いに顔を見合わせた。ーーーーーそして、アルスラーンが口を開く。
「……心配しないでくれ、我々は君の敵じゃない。……先に聞くが、君は誰だい??」
……少年は、ゆっくりと瞬きしてから、絞り出す様に声を出した。
「ぼ、僕はーーーーーーー
…最初はこんなはずじゃ無かった…
アステール支部のメンバーは、アルスラーンとアビスだけの筈だった…
書き出したらコレですよ。…シャイターンとハクビとサクアが無から生えてきました……
ちな、ハクビは獣人の姫君で、アルスラーンは獅子皇(百獣王)…。なんか、ベストマッチしてる気がする……しない?