モンスターストライク 〜星ノ呼ビ聲〜   作:犬社長

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今年最後の投稿となりやす。

…コレを見てくださっている物好きな方へ。

良いお年を!!




28話 〈追手と安堵〉

 

 

 

ーーーーーーーーー星屑の街〈アステール〉郊外《霧の森》

 

 

……太陽光を遮る程分厚く立ち込めた〈星のセラム)に閉ざされ、常に夜明け前の空の様に薄暗い森。

 

…そんな森の中に、並び立つ4人の人影があった。

 

 

「………発信機(チョーカー)からの電波を元に来て見れば、まさか星屑の街(アステール)に逃げ込むとはねぇ……。」

 

 小型のパソコンを叩きながら、女性の様に長い藍色の髪を持つ白衣の男が呟いた。

 

 彼の左眼には片眼鏡(モノクル)が、腰には丸鋸の様なモノがぶら下がっている。

 

「ーーーーーーーしかも〈オーステルン〉が補給停泊中とは…。間の悪い時に脱走したモノだ。フェムトくんは……。」

 

 彼の呟きに、隣に居た銀髪の青年が小さく肩をすくめて答えた。

 

「……そんな事言って、本当は彼が脱走する事を見越していたのでは?ーーーーーーー貴方は何時も何時も、先を見越して動いている…らしいですからね。」

 

 最後の言葉はやや皮肉めいていたが、長髪の男は気にしていない。

 

「ふっふっふっ…。分かっているじゃあないか()()()()()くん。ーーーーーーー(フェムト)は、私の立てた『新人類に関する82番目の仮説』を今、証明してくれるかも知れないのだ。……勿論、君達にも手伝って貰うからな?」

 

 それを聞いた3人目……黒髪の憂鬱げな表情を浮かべた少年が、ため息を吐いてボソボソと呟き出した。

 

「はぁ…。ったく、なんで僕がこんな事を……。そもそも、()()()()()()が、()()()()()の命令を無視して()()()()()()()(フェムト)を新人類部隊に入れるからこうなったんですよ?………しかも脱走された事を、仮説の証明とか何とか言って喜んでるとか…頭おかしいよ……。」

 

黒髪の彼は、本当に面倒臭そうに頭を抱えた。

 

「……そもそも、何でフォリーさんがこんな所まで出張って来るんですか…?ーーー連邦の研究員なんだから、態々こんな所まで来なくても良いじゃないですか。」

 

……白衣を着た長髪の男ーーーーー改め、フォリーが口を鳴らしながら指を振った。

 

「チッチッチッ…。分かってないな()()()()()()()。ーーーーーーーデータは新鮮な方が良いだろう??新人類部隊での実験は、研究室に閉じこもっていては出来ない事ばかりなのさ。……で、私は意外とアウトドア派なんだ。ゾルゲ氏や、アビド、マターの様な根暗な閉じ籠りじゃあ無いのだよ。」

 

「……そりゃ、僕には分からないでしょうね。研究狂いの人間の考え方なんて。」

 

 フォリーに、アラミタマと呼ばれた黒髪の少年はそう呟くと、空に目をやった。…そして、ヘッドホンを取り出すと、耳につけて外界シャットアウトモードに入る。

 

…そんな彼の隣で4人目ーーーーーーーーー白い弓を手に抱きかかえる様に持つ少女が、小さく言葉を発する。

 

「あっ、あの…私は、今回は何をしたら…。」

 

 緊張しているのか、少し言葉が詰まりがちな少女に向かって、フォリーは手をひらひらと振った。

 

「…()()()くんは、クシミタマとアラミタマのサポートに回り給え。ーーーーーーあぁ、君にも案外期待しているからな?仮説27と42の証明には、君が適任なのだ。」

 

 少女ーーーーーーキラリは、小さく頷いた。……そんな彼女の手は、微かに震えている。

 銀髪の青年ーーーーーーーーークシミタマは、緊張しているであろう彼女を落ち着かせる様に、優しめの口調で声をかけた。

 

「…気負うことは無いよ。ーーーーーーキミは君の戦い方をすれば良い。…コッチはコッチで、好きにさせて貰うからね。」

「は、はい…!」

 

 そう会話する2人を見ながら、フォリーは小型PCを動かしていく。

 

「…さて、いまフェムトくんは反連邦団体〈イースター〉の《アステール支部》と言う中々厄介な場所に匿われてる。」

「………!」

 

 フォリーの目が、片眼鏡(モノクル)越しに森の外……六芒星の形をした〈アステール〉の街並みを捉える。

 

「ーーーーーーどうせ、彼を取り戻す為には戦闘は避けられまい。……そろそろ日も落ちる。……全てを始めるのは夜だ。其れまでは、精々街で時間を潰そうじゃないか。」

 

 フォリーは立ち上がり、街の方に向かって歩き始めた。キラリ、クシミタマ、そしてアラミタマも彼の後に続いて街へ降りて行く。

 

 

………彼等が去った後の霧の森には、ただ静けさだけが残っていた。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

…………裏庭に降り立つと、立ち並ぶ木々から差し込む木漏れ日がニュウを優しく出迎えた。

 

 

 ちょっとした森の様になっている裏庭を、ニュウは歩いていく。…目指すのは、さっき3階から見えた墓標だ。

 

(あんな所に…なんで墓標が…?)

 

 微かな疑問を抱きながら、ニュウは歩く。ーーーーーーーーー目指す墓標は、すぐ目の前に現れた。

 

…一際大きな木の下に、茂った枝葉に守られる様にして、綺麗に切り出された滑らかな石が、置かれている。

 

…側には小さな音叉。石に彫られた文字を読み取ろうとニュウが墓標のそばにしゃがみ込んだ時ーーーーーーーーー

 

 

「…それはお墓だよ。」

 

 

「ーーーーーーーーー!!」

 

 後ろから聞こえた声にニュウが振り返ると、ネオの青色の瞳と目が合った。

 

「…ネオさん。」

 

彼女はニュウの横に並んで墓標を見おろす。

 

「……此処に〈イースター〉のメンバーが1人…眠ってる。」

「……!!」

 

少なからず驚いたニュウは、墓標を見詰めた。

 

「…誰なんです?」

「ーーーーーーーーーアビスの友達の男の子。…まだ、私がイースターに加入する前、連邦絡みの戦いで亡くなったんだって。」

「…………。」

 

黙り込むニュウ。

 

「…私も後で聞いた話だけど、その人はずっとアビスと一緒にいて、とっても仲が良かったみたい。」

 

ネオは話を続ける。

 

「ーーーーーーアビスはね、連邦の研究の一つたる『星のセラムを保存する方法の実験』によって生まれた副産物らしいの。…彼女は自らの内に〈星のセラム〉の瘴気を溜め込み、封じる事が出来る。」

「………セラムの…封印ですか……。」

「うん。…彼女は連邦にとっても重要な存在だった。だから連邦は彼女を取り戻そうとして、此処じゃ無い別の街でアビス達と衝突した。…その時、その人はアビスを逃すべく、犠牲となった……。」

 

 墓標の側に置いてある小さな音叉が、木漏れ日を受けてキラリと煌めく。

 

「きっと、彼女にとって大事な人だったんだろうね。……アビスはその時に、封じていた〈星のセラム〉の一部を解放して連邦を退けた。…しかし、その結果として戦場となった街は〈星のセラム〉に呑まれてしまった……。」

 

…その瞬間を見たわけでは無いのに、ニュウの脳裏に町中に広がる〈星のセラム〉と、その中心に立つアビスの姿が見える気がした。

 

「……凄まじい力ですね。」

「そうだね。……ちなみに、亡くなったその人の遺体は戦いの混乱の中で消えちゃったみたいで、此処にあるのは正確にはお墓と言うよりかは、慰霊碑みたいな物なんだって。」

 

………ニュウは黙って墓標を見詰め続ける。

 

「……俺は…。」

 

やがてポツリとニュウは呟いた。

 

「ーーーーーーもしも、俺がアビスさんなら、立ち直れませんね。……大事な人が、死んでしまったら。」

 

ネオがニュウの方を見た。

 

「…貴方には、誰か居るの?大事な人。」

 

ーーーーーニュウは、連邦の実験施設にいる沢山の同胞を思い浮かべていた。アビスのとは、少し意味合いが違うかも知れないが、みんな大切な人達である事に間違いは無い。

 

「…………居ますよ。いっぱい。」

 

ネオは微かに笑った。

 

「ーーーーーそう。…私にもいるよ……〈イースター〉の皆が。」

 

…風に揺れる木漏れ日がネオを照らす。

 

「…もし、〈イースター〉の誰かが死ぬ様な事があったら……きっと凄く悲しい。そんな事があったら、私も立ち直れないと思う。」

 

「…………。」

 

 ザザァ…と風が吹いて、2人の間を分つ様に通り過ぎて行った。

 

◇◆◇

 

「ーーーーーーーーーと、言うか貴方は何故裏庭に来たの?」

 

 話を変える様なネオの声に、墓標を見詰めていたニュウは顔を上げる。

 

「ーーーえ?…あぁ。3階の窓からコレ(墓標)が見えたので。……ネオさんの方は、何故此処に?バサラさん達と一緒じゃ無いんですか?」

 

ネオは肩を小さくすくめた。

 

「バサラさん達は街に行ったよ。カノンはカノンで人に会いに行ってるし。ーーーーーーーーー私は街には降りない事にしたんだ。」

「…何故です?」

 

ネオが顔に若干面倒臭そうな表情を浮かべる。

 

「街に行くと必ず絡まれるんだよ………〈信者〉に。」

 

………一瞬、何の事か理解出来なかったが、アステールに到着する前にバサラが言っていた事をニュウは思い出した。

 

「…あぁ。ネオさんを崇める人が多いって聞きました、そう言えば。ーーーーーーーーーそんなに面倒なんです??」

 

 ネオが今までニュウの見た事がない様な顔…心底煙たがっている様な表情を浮かべながら、口を開く。

 

「………少なくとも、私を見るなり五体投地し始める人が道端に大勢居たら、歩きづらい事この上ないよ。」

 

 その場面をちょっと想像したニュウは、思わず声をたてて笑った。

 

「ーーーーーーははははッ…。面白いですね、その光景。神様のお通り〜みたいな感じで。」

「…笑い事じゃないよ……。本当に。前此処に来た時とか、私を讃える歌なんか作り出してたんだよ???…聞いてるコッチが恥ずかしいよ。」

 

 うんざりとした顔をするネオに、ニュウは笑いながら声を掛ける。

 

「ーーーーーーま、良いんじゃないです?……それだけ貴女を信奉してる人達なら、いざと言う時に助けになってくれそうじゃないですか。御恩と奉公ってヤツですよ。」

「……とっても前向きな考え方だね。」

 

ネオが苦笑しながら呟いた。

 

◇◆◇

 

「ーーーーーーところで、さっきカノンさんは人に会いに行ってるって言ってましたけど、誰に会いに行ってるんですか?」

 

 今度は、ニュウが話を変える様にネオに話しかける。

 

「……カノンは、最初はこの街に居たんだよ。ーーーーーーカノンの生まれについての話って聞いた?」

「…えぇ。バサラさんから。」

「分かった。ーーーじゃあ、話の始めは端折るね。…カノンは連邦から離脱した後、彷徨った末アステールに流れ着いた。…そこで、1人の少年に会って、暫く過ごしてたんだ。…イースターに入る前にね。」

 

「……ほぉ。」

 

ネオは続ける。

 

「…で、イースターに加入する時に、彼女は〈アステール〉に残ろうとしたんだけど、その少年が説得して〈オーステルン〉に移ったらしいよ。」

「…説得ですか。…別に此処に居ても良いと思いますけど、なんか理由あったんですかね?」

「ーーーーーーーカノンに自由に世界を見て欲しかったらしいよ。その少年は。」

「…へぇ。」

 

 変わった願いだとニュウは思ったが、きっとカノンにとっては、大事な願いだったのだろう。ーーーーーー実際に彼女は〈オーステルン〉に居るのだから。

 

「…カノンもそうしたかったらしいからね。…その少年には、家族もいるから〈アステール〉を離れられない。でも、カノンに色んな世界を知って貰いたいんだって……バサラさんとかに話してたそうだよ。ーーーーー因みに、今は《アステール支部》のバックアップ要員として頑張って貰ってるみたいだね。」

「…カノンさんの事、良く考えてる人なんですね。」

 

ニュウの感想に、ネオは頷いた。

 

「…うん。カノンにとっても、大事な人だから。時々会えるのを楽しみにしてるみたい。」

「……だから、あんなにソワソワしてたのか…。」

 

ニュウは呟いた。

 

「ーーーーーーそう言う事。…機会があったら、カノンから話を聞けるかもね。ーーー結構プライベートに踏み込んだ話になってしまうけど、意外と快く話してくれるよ。」

「ま、聞く機会があったら…に、しときます。」

「うん。それで良いと思う。」

 

 

…そこでこの話は終わりになった。

 

 

ーーーーーーー若干傾きかけた日差しの中、2人は屋敷の中へと戻って行く。後には墓標が1つ、木漏れ日の中に佇むのみとなったーーーーー………

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

ーーー時刻は夕方。

 

 

ーーー日の光も既に随分と傾き、赤々とした空が辺りを満たす頃。

 

 

 ニュウ達は《アステール支部》の屋敷にて、夕食を取る為に集まっていた。

 

…既に食堂の方には準備がなされている。…天井から吊り下げられたシャンデリアの光の下で照らされている料理の数々は、余り料理に明るくないニュウの目にも、かなり手の込んだ品々に見えた。

 例えるなら、なんだか貴族の屋敷に御呼ばれしてるみたいな感じだ。

 

「…ほお。ーーーーーフェムトって言うのか、お前。…良くこんな所まで逃げてきたものだな。やるじゃねぇか。」

 

…そう言うのはバサラだ。声を掛けた先には、ニュウ達が来た時には眠っていた脱走兵の少年ーーーーフェムトと言うらしいーーーーが、肩身狭そうに椅子に座っている。

 

「…そんなに縮こまらなくても良いぞ?ーーーー此処は安全なのだから。」

 

 アルスラーンがそう言うが、フェムトは少し頷いただけで、椅子の上で殆ど固まってしまっている。

 

「…てか、フェムトくん。ーーーーキミは何で、逃げてきたの?やっぱり、嫌だったから?」

 

 そう彼に問うたのは、アミダだ。フェムトは頷いて口を開く。

 

「…そ、そうだね。……そもそも、僕は新人類部隊に入る気なんて無かったんだ。…なのに、急に僕も戦えとか言われて……。」

 

「…連邦はアタシ達を都合の良い武器みたいに使うんだ。…逃げてきて正解だよ、そんな所。ーーーアタシも昔、居た事があるから。」

 

そう言うのは、ケモ耳緑髪の少女ーーーーーサクア。

隣でアルスラーンが頷く。

 

「……サクアはそうだったな。ーーーーーーフェムト。キミが望むなら、キミは何時迄も此処にいて良い。…私は歓迎する。何方にせよ、行くあては無いのだろう?」

 

フェムトは頷いた。

 

「…うん。……もし、そんな事をしてくれるなら、嬉しいな。ーーー暫くの間だけでも…。」

 

「いやいや。暫くと言わず、ずっと居ていいぞ。ーーーーーーキミの様な者を、連邦から解放する為に私達が居るのだから。」

 

…その言葉に、フェムトは少なからず衝撃を受けた様だった。

 

「……そ、そんなの…。僕……。」

 

 言葉に詰まってしまったフェムト。アビスが彼に優しく声を掛けて行く。

 

「…今まで大変だったのでしょう?ーーーもう大丈夫です。…貴方はこれ以上、連邦の束縛に囚われる事は無い。…だから、安心して下さい。」

 

それを聞いたフェムトの目に、涙の粒が宿った。

 

「…ほ、本当に…良いの?ーーーーーーーー僕は、僕はもうアソコに居なくても…良いの?安心して良いのかな??」

 

アルスラーンとアビスは強く頷いた。

 

…フェムトは椅子に座ったまま、体を震わせていた。

 

ーーーいま彼は、己を縛るものから遂に解き離れる事が出来たのだと、強く実感していたのだ。……逃げ出した先で、望む自由を手に入れたのだと……。

 

 

 彼に溜まっていたであろう積年の感情が溢れ出し、フェムトは静かに泣き出した。…ただ、流れるのは悲しみの涙では無い。…全ての終わりを感じさせる安堵の涙だった。

 

 

……それを、ニュウはただ黙って見詰めていたーーーーーーーーー…

 

 

 

 

 

 

 





登場させる予定の無かった人達が次々と湧いて来やがる…

6千字近く書いて、ほぼキャラ説明とキャラ設定解説に回すとかダメなんじゃないっすかね……

 最後の方にフェムトにかけられた言葉の数々、どんな思いでニュウ君聞いてんのかね?未だ連邦に雁字搦めにされてるニュウ君の心、ズタズタになってるんじゃなーい??

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